ミューオニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Addbot (会話 | 投稿記録) による 2013年4月1日 (月) 23:10個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (ボット: 言語間リンク 11 件をウィキデータ上の d:q1196336 に転記)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ミューオニウム (muonium) とは、通常、正の電荷を持ったミュオン+) と電子 (e) の束縛状態(水素原子中の陽子を正ミュオンで置き換えたものに相当)を指し、ミュオニウムとも呼ばれる。これに対し、負ミュオン (μ) が他の原子核に束縛された状態をミュオニック原子と呼んで区別する。なお、ミュオニウムの構成粒子の電荷を入れ替えたもの(負ミュオンと陽電子の束縛状態)は反ミュオニウムと呼ばれる。類似の状態として電子と陽電子の束縛状態であるポジトロニウム (e+-e) があり、ミュオニウムの名称はこれからつけられたが、××ニウムという呼称は同種の粒子と反粒子からなる束縛状態につけられるべきもので、ミュオニウムも本来なら正負ミュオンの束縛状態 (μ+) を表す呼称のはずであったが、歴史的にミュオンと電子の束縛状態をこのように呼び習わして今日に至っている(水素原子の別称がプロチウムであるように、本来ならミュイウムとすべきものである)。

ミュオニウムの形成

ミュオニウムは金属以外の物質に正ミュオンビームを注入した際に高い確率で形成される事が分かっており、相手となる電子はミュオンビームが物質内で減速する過程で周りの原子をイオン化することにより生成することも実験的に確かめられている。また、ケイ酸粉末や高温に熱したタングステンを真空中に置いてミュオンを照射すると、その表面から熱エネルギー程度のミュオニウムが真空中に放出されるという現象も知られており、これを用いて超低速ミュオンビームを生成する研究なども行なわれている。

特徴

物質に注入したミュオンがミュオニウムを形成しているかどうかは、外部磁場に対する応答の違いから直ちに判定する事が出来る。具体的には、ミュオニウムを形成した状態ではミュオンが軌道電子から一定の有効磁場(超微細相互作用)を受けているため、ミュオンスピン回転の周波数が特徴的な磁場依存性を示すのに対し、裸のミュオンのそれは単純に磁場に比例することからその存在が判別される。ミュオニウムの超微細構造は孤立水素原子のそれと(ミュオンと陽子の間の磁気モーメントの大きさの違いを除いて)ほぼ等しく、物質中でのミュオニウムの超微細構造(すなわち電子状態)を調べる事は、同じ環境下での水素原子の電子状態を調べる事に相当する。

関連事項