マタタビ

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マタタビ
両性花(2008年7月 福島県会津地方)
蔓を持ち上げて撮影、葉は裏側
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ツバキ目 Theales
: マタタビ科 Actinidiaceae
: マタタビ属 Actinidia
: マタタビ A. polygama
学名
Actinidia polygama
(Sieb. et Zucc.) Planch. ex Maxim.
和名
マタタビ
英名
silvervine
マタタビの実
実をつけたマタタビの枝

マタタビ木天蓼(「もくてんりょう」とも読む)、Actinidia polygama )は、マタタビ科マタタビ属落葉蔓性木本である。別名夏梅ともいう。

特徴

状の互生葉柄があり、形は楕円形で細かい鋸歯を持つ。6月から7月に径2cmほどの白いを咲かせる。雄株には雄蕊だけを持つ雄花を、両性株には雄蕊雌蕊を持った両性花をつける。花弁のない雌蕊だけの雌花をつける雌株もある。花をつけるつるの先端部の葉は、花期に白化し、送粉昆虫を誘引するサインとなっていると考えられる。近縁のミヤママタタビでは、桃色に着色する。

ネコ科の動物はマタタビ特有の臭気(中性のマタタビラクトンおよび塩基性のアクチニジン)に恍惚を感じ、ライオントラなどもマタタビの臭気に特有の反応を示す。イエネコがマタタビに強い反応を示すさまから「ネコにマタタビ」という言葉が生まれた。

なおマタタビ以外にも、同様にネコ科の動物に恍惚感を与える植物としてイヌハッカがある。

分布と生育環境

日本では、北海道本州四国九州に、アジアでは千島列島朝鮮半島に分布し、山地縁に自生する。

和名の由来

古くは『本草和名』(918年)に「和多々比」(わたたひ)、『延喜式』(927年)に「和太太備」(わたたび)の名で見える[1]

貝原益軒日本釈名』(1699年)では、果実に長いものと平らなものができることから、「マタツミ」の義であろうという[2]

アイヌ語の「マタタムブ」からきたというのが、現在最も有力な説のようである。『牧野新日本植物図鑑』(北隆館 1985。331ページ)によるとアイヌ語で、「マタ」は「冬」、「タムブ」は「」の意味で、虫えいを意味するとされる。一方で、『植物和名の研究』(深津正八坂書房)や『分類アイヌ語辞典』(知里真志保平凡社)によると「タムブ」は苞(つと、手土産)の意味であるとする[3]

一説に、「疲れた旅人がマタタビの実を食べたところ、再び旅を続けることが出来るようになった」ことから「復(また)旅」と名づけられたというが、マタタビがとりわけ旅人に好まれたという周知の事実があるでもなく、また「副詞+名詞」といった命名法は一般に例がない。むしろ「またたび」という字面から「復旅」を連想するのは容易であるから、典型的な民間語源であると見るのが自然であろう。

利用等

果実は熟すとそのまま食べられるが、舌に刺激が残り、美味なものではない。生食のほか、塩漬け、みそ漬け、薬用(マタタビ酒)などにして利用される。通常の果実よりも虫こぶになったものが薬効が高い。ちなみにキウイフルーツもマタタビ科であり、果実を切ってみると同じような種の配列をしていることがわかる。

長野県開田地方ではマタタビの葉を風呂に入れ入浴したり、マタタビの葉を茶にして飲む伝統がある[4]

生薬

蕾にマタタビミタマバエまたはマタタビアブラムシが寄生して虫こぶになったものは、木天蓼(もくてんりょう)という生薬である。冷え性神経痛リューマチなどに効果があるとされる[5]

脚注

  1. ^ 小学館日本大百科全書ジャパンナレッジ版、「マタタビ」文化史(湯浅浩史)。2013-08-24閲覧。
  2. ^ 小学館日本国語大辞典 第二版』ジャパンナレッジ版、「またたび」語源説。2013-08-24閲覧。
  3. ^ 和泉晃一「マタタビの語源」
  4. ^ 『信州の民間薬』全212頁中57頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集
  5. ^ 薬用植物一覧表