シーベルト
シーベルト | |
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記号 | Sv |
系 | 国際単位系 (組立単位) |
量 | 線量当量 |
定義 | 1Gyに放射線荷重係数を乗じた量 |
シーベルト(Sievert。スウェーデン語発音: [ˈsiːvəʈ]、英語発音: [ˈsiːvərt])は、生体の被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)の単位。記号はSv。SI単位の一つである。
線量当量とは、吸収線量(放射線から受けるエネルギー)に、法令で定められた係数(放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさ)を掛けたものである。
シーベルトという呼称は、放射線防護の研究で功績のあったロルフ・マキシミリアン・シーベルトにちなむ。
定義
シーベルトとグレイ
ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy。定義 J/kg)である。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。
- Sv = 修正係数 × Gy
例えば、等価線量を算出する際には、修正係数として放射線荷重係数が使用される。放射線荷重係数は、放射線の種類によって値が異なり、X線、ガンマ線、ベータ線は 1、 陽子線は 5、 アルファ線は 20、 中性子線はエネルギーにより 5 から 20 までの値をとる。これらの係数は無次元量(単位がない)なので、シーベルトはグレイと同じ J/kgでも書ける。
シーベルトとレム
SI単位系に切り換わる以前はレム (rem) が使われており、次のとおりに換算できる。
- 1 Sv = 100 rem = 100,000 mrem (ミリレム)
シーベルトの単位換算
- 1 Sv = 1000 mSv(ミリシーベルト) = 1000000(100万)μSv(マイクロシーベルト)
※参考 1 km = 1000 m ( = 100000cm ) = 1000000 mm (Sv=km、mSv=m、mm=μSv)
毎時シーベルト
毎時シーベルト (Sv/h) は、1時間あたりの生体への被曝の大きさの単位。シーベルト毎時ともいう。シーベルトが被曝の総量を表すのに対し、毎時シーベルトは、被曝の強さを表す。1毎時シーベルトは、1時間で1シーベルトの被曝量を受けることに相当する強さ。
(例)
- 25 μSv/h (毎時マイクロシーベルト) の被曝を2時間にわたって受けると、被曝の総量は 50 μSv (マイクロシーベルト) = 0.05 mSv = 0.00005 Sv になる。
- 毎時 400 ミリシーベルト (400 mSv/h) の被曝を15分間受けると、被曝量は 100 mSv (ミリシーベルト) = 0.1 Sv になる。
- 毎時 10 シーベルト(10 Sv/h) の被曝を30分受けると、被曝量は 5 Sv(シーベルト) = 5000 mSv = 5000000 μSvになる。
放射線防護とシーベルト
人体が放射線にさらされる事を放射線被曝 (ほうしゃせんひばく) といい、人体は世界平均にして年間およそ 2.4 mSv (= 2,400 μSv) の自然放射線にさらされている。大量の放射線は人体に有害であるため、放射性物質を扱う環境にある人は、自分がどの程度の放射線を受けたのかを、常に厳密に管理しなくてはならない。その際に用いられる尺度の一つがシーベルトである。
2 Sv(= 2,000 mSv) の放射線を全身に浴びると5%の人が死亡し、4 Sv (= 4,000 mSv) で50%、7 Sv (= 7,000 mSv) で99%の人が死亡すると言われている。一方で、0.2 Sv (= 200 mSv = 200,000 μSv)以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされるが、こちらは長期的な影響について議論があり、また低線量の被曝についても「健康被害が生じた」として訴訟が起きている[参考 1]。
なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線とガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。
短時間・大線量被曝でシーベルトが用いられない理由は線量率効果[参考 2]である。なぜなら単位「シーベルト」に求められる性質のひとつは数値の加算可能性であり、ある時点Aでの被曝と別の時点Bでの被曝の影響を全体として評価する場合に、両者の評価数値を加算したものに意味がなければならないからである。同じ放射線を被曝しても線量率によって影響が異なるのであるから、低線量率被曝の評価数値と高線量率被曝の評価数値は加算できない。シーベルトは低線量率の被曝環境下での人体への影響評価を目的とした単位である。
これに加えて、シーベルトはグレイに対して放射線種や対象組織による係数(厳密な数値ではない)を乗じて得る単位なので、たとえ放射線種がX線やガンマ線であってもグレイと同等の厳密さを持つと考えてはならない。SI組立単位に入ってはいるがシーベルトは管理された環境下での人体防護を主眼とした放射線管理・放射線防護目的の単位であり、社会学的な単位とも言える。
脚注
参考文献
- ^ JCO事故・健康被害訴訟 第18回公判 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
- ^ 線量率と生物学的効果 原子力百科事典ATOMICA