キビナゴ

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キビナゴ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : ニシン上目 Clupeomorpha
: ニシン目 Clupeiformes
: ニシン科 Clupeidae
亜科 : キビナゴ亜科 Spratelloidinae
(ウルメイワシ亜科 Dussumieriinae)
: キビナゴ属 Spratelloides
: キビナゴ S. gracilis
学名
Spratelloides gracilis
(Temminck et Schlegel,1846)
英名
Silver-stripe round herring

キビナゴ(黍女子、黍魚子、吉備女子、吉備奈仔)、学名 Spratelloides gracilis は、ニシン目・ニシン科に分類されるの一種。インド洋と西太平洋熱帯亜熱帯域に広く分布する小魚で、食用にされる。

名称

日本における地方名としてハマイワシハマゴハマゴイ静岡県)、キミナゴ三重県)、キビナカナギ長崎県)、スルル沖縄県)などがある。

中国語では「日本銀帶鯡」。

特徴

成魚は全長10cmほど。体は前後に細長い円筒形で、頭部が小さく口先は前方に尖る。体側に幅広い銀色の縦帯があり、その背中側に濃い色の細い縦帯が隣接する。は円鱗で、1縦列の鱗は39-44枚だが剥がれ易く、漁獲後にはほとんど脱落してしまう。海中にいるときは背中側が淡青色、腹側が白色だが、が剥がれた状態では体側の銀帯と露出した半透明の身が目につくようになる。

ニシン科の分類上ではキビナゴ亜科が設定されているが、ウルメイワシに近縁のウルメイワシ亜科とする見解もある。学名の種小名"gracilis"は「薄い」「細い」などの意味があり、細長い体型に由来する。

生態

本州中部からポリネシアメラネシアオーストラリア北岸、西はアフリカ東岸まで、インド洋と西太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布する。

外洋に面した水のきれいな沿岸域を好む。大きな群れを作って回遊し、海岸にもよく接近する。主に動物プランクトンを捕食する。一方、天敵アジサバカツオダツなどの大型肉食魚やアジサシカツオドリなどの海鳥類がいる。

熱帯域ではほぼ周年産卵するが、亜熱帯海域では春から秋にかけての産卵期があり、たとえば西日本近海での産卵期は4-11月となる。産卵期には成魚が大群を作って沿岸の産卵場に押し寄せる。繁殖集団は潮の流れの速い海域に集まり、海底を泳ぎ回りながら産卵を行う。

ニシン目魚類は海中に浮遊する分離浮性卵を産卵するものが多いが、キビナゴは浅海の砂底に粘着性の沈性卵を産みつける。受精卵は砂粒に混じった状態で胚発生が進み、一週間ほどで孵化する。寿命は半年-1年ほどとみられる。西日本では夏-秋生まれのものが翌年の春に産卵、孵化した子供がその年の秋に産卵し、寿命を終えると考えられている。

利用

刺身

分布域に入る西日本では、沿岸各地で巻き網などで漁獲される。特に鹿児島県長崎県高知県といった暖流に面した地域でまとまった漁獲がある。ただし小魚で傷みが早いこともあり、漁獲地以外に流通することは少ない。

刺身煮付け天ぷら唐揚げ南蛮漬け干物などで食べられる。調理法次第では骨ごと食べられ、体のわりには可食部も多い。生の身は半透明で、小骨が多いが脂肪が少なく甘みがある。キビナゴの刺身は包丁などを使わず、を使った手開きで頭・背骨・内臓を取り除き、いわゆる「開き」の状態で皿に盛り付けられる。食べる際はショウガ醤油や酢味噌で臭みを消す。酢味噌で食べるものは鹿児島県の薩摩料理のひとつとして有名である。また、一晩ほど醤油漬けにして、茶漬けにすることもある。甑島列島では醤油炊きやもろみ炊きといった煮つけ料理にする。長崎県の五島列島では、「炒り焼き」(いりやき)と称するしゃぶしゃぶ風の鍋料理でも食べられる。

食用以外にも、ブリ類やアジ類など大型肉食魚の釣り餌として利用される。

同属種

  • リュウキュウキビナゴ Spratelloides atrofasciatus Schultz,1943 - 旧名バカジャコ
  • ミナミキビナゴ S. delicatulus (Bennett,1832) - インド洋・西太平洋熱帯域
  • S. lewisi Wongratana,1983 - ソロモン諸島からニューギニア島にかけて
  • S. robustus Ogilby,1897 - オーストラリア周辺海域

参考文献

外部リンク