エリコンKD 35 mm 機関砲
エリコンKD 35mm機関砲(英語: Oerlikon KD series 35mm cannon)は、旧エリコン社(現在のラインメタル社)が開発した35mm口径の機関砲。
来歴
本砲の開発は1952年より開始された。開発は基本的に、先行して開発された20mm口径のエリコンKA 20 mm 機関砲(タイプ204-GK)をもとに、大口径化して行われた。まず、水冷式の試作型としてMk.352が開発されたのち、1959年には1-ZLA/353MKが開発された。これに小改良を加えた2-ZLA/353MKは、KDAとして量産化された。また、まもなくKDAを元にした軽量化改良型のKDB、ベルト給弾式からリンクレスに変更したKDCがラインナップに加えられたほか、のちにはKDAをもとに発射速度を落として軽量化したKDEが開発された。
これらのガス圧作動式の機関砲とは独立して、1991年より、35mm口径のリヴォルヴァーカノンの開発が開始された。この砲は35/1000と称されており、4チャンバーのリヴォルヴァーカノンとすることで、その名の通りに1,000発/分の発射速度を実現した。製品名としてはKDGと命名されたが、従来の35/1000という名称も引き続き使用されている。
実装
牽引型
KDシリーズのもっとも一般的な実装が、GDFシリーズの牽引式対空砲である。
1960年代初頭、KDBの最初の実装として開発されたのがGDF-001である。1969年には、エリコン社が三菱電機と共同で開発したスーパーフレーダーマウス射撃統制システムとともに35mm2連装高射機関砲 L-90として陸上自衛隊に採用された。1980年には、改良型のフェランティ社製射撃統制システムを採用したGDF-002が発表され、のちに自己潤滑性材料の採用などの改良を施したGDF-003にマイナーチェンジされた。112発の即応弾と126発の予備弾が搭載されている。1985年、全面的な改良版であるGDF-005が発表された。これは、ガンキング照準器とレーザー測距儀を組み込んだ新しい射撃統制システムを採用しており、280発の即応弾と自動装填装置を搭載している。これらの連装砲架は、スカイ・ガード・システムとして市場に提示され、広く採用された。
1990年代中盤、高発射速度のリヴォルヴァーカノンであるKDGが実用化された。これを従来のような連装砲架ではなく単装の砲塔に配したシステムとして、GDF-020が開発された。GDF-020は射撃統制システムとともに、スカイ・シールド・システムとして市場に提示されたほか、ドイツ陸軍の新しい野戦防空システムであるSysFla(Systems Flugabwehr)において、MANTIS次期空間防護システム(旧称 NBS C-RAM)として採用されている。
また、KDG用に開発された新しい調整破片型ABM弾であるAHEAD弾の実用化に伴い、従来のGDFシリーズにもこれがバックフィットされた。AHEAD弾の運用に対応したものには新しいモデルナンバーが付与されており、GDF-001/002/003はGDF-006、GDF-005はGDF-007と称されている。
なお、1980年代にエリコン社より技術・資料の提供を受けた中国においては、GDF-002を山寨化して90式35mm連装機関砲が開発され、中国人民解放軍に装備されるとともに輸出市場にも提示されている。中国は、90式はGDF-002とGDF-003の中間的な性能を備えていると主張している。
車載型
本砲が装甲戦闘車両に搭載される場合、もっとも一般的な利用は自走式対空砲としてのものである。ただし、日本では、KDEを歩兵戦闘車の主砲としても採用した。
- 搭載車両
- 87式自走高射機関砲(KDA)
- 89式装甲戦闘車(KDE)
- ゲパルト自走対空砲(KDA)
- ITPSV 90 Marksman(KDA)
- PLA ロアラ(KDA)
艦載型
1969年ごろより、イタリアのブレーダ・メッカニカ・ブレシャーナ社と協同して、艦載型マウントの開発が開始されており、まず連装のGDM-Aと単装のGDM-Bが開発された。また、日本においても、1970年代にGDM-Bと同様の単装マウントが日本製鋼所(JSW)によって開発されて海上保安庁の大型巡視船(PL/PLH)において標準的な装備となったほか、後には87式自走高射機関砲と同系列の連装マウントがJSW社と三菱電機によって開発され、ヘリコプター2機搭載型巡視船である「しきしま」に搭載された。これらのマウントの搭載砲は不詳であるが、単装マウントについてはKDAと推測されている。
また、KDGの開発に伴い、ラインメタル社製の砲塔システムとしてGDM-008が開発された。これは、おおむね地上用牽引型のGDF-020を艦載化したものであり、ミレニアムCIWSの主要な火力として採用されている。
GDM-008は、砲塔重量3,200kg、200-252発の即応弾を搭載しており、AHEAD弾の採用により、対レーダーミサイルに対して1,200メートル、巡航ミサイルに対して2,000メートル、航空機に対して3,500メートルの距離で交戦できる。
- 搭載艦艇
諸元・性能
KDA | KDB | KDC | KDE | KDG | |
---|---|---|---|---|---|
口径 | 35x228mm | ||||
砲身長 | 90口径長 | 80口径長 | |||
全長(mm) | 4,740 | 5,206 | 4,273 | 4,110 | |
全幅(mm) | 356 | 280 | 424 | 344 | |
全高(mm) | 653 | 479 | n/a | 322 | |
重量(kg) | 695 | 435 | 510 | 450 | |
作動方式 | ガス圧作動方式 | リヴォルヴァーカノン式 | |||
発射速度(rds/min) | 550 | 200 | 1,000 | ||
後座長(mm) | 55 | 60 | 170 | n/a | |
反動(kg) | 2,650 | 1,500 | 1,200 | ||
砲腔内圧(MPa) | 380 | ||||
砲口初速(m/s) | 1,385(弾種により変化) | ||||
最大射程 | 5,000メートル (2.7 nmi) | ||||
最大射高 | 4,000メートル (13,000 ft) |
参考文献
映像外部リンク | |
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KDB(GDF-005) | |
KDE(89式装甲戦闘車) | |
KDG(スカイ・シールド) |
- ATEN (2008年). “Army Guide - KDA, Gun” (英語). 2011年10月12日閲覧。
- www.navweaps.com (2008年10月22日). “Germany / Switzerland 35 mm/1000 KDG Millennium GDM-008” (英語). 2011年10月12日閲覧。
- Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629