魔法数

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核図表に示された魔法数の位置

魔法数(まほうすう)とは、原子核が特に安定となる陽子中性子の個数のことをいう。陽子数または中性子数が魔法数である核種を魔法核と呼ぶ。

核構造シェルモデルでは、殻(シェル)が「閉じている」状態は安定性が高く、崩壊核分裂が起きにくくなる。計算上特定の値が該当し、魔法数となる。陽子と中性子はよく似ているので同じ値となる。

現在、広く承認されている魔法数は 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126 の7つで、原子番号がこれらにあたる元素は、周辺の元素に比べて多くの安定同位体を持っている。中性子数が該当する同中性子体についても同様で、例えば核種の一覧を見ると、縦の20と横の20には安定同位体が並んでいるのがわかる。

一部の中性子過剰核では、8, 20, 28は消えて、別の魔法数である 6, 16, 32, 34 が現れる事が研究によって示されている[1][2]

魔法数は1949年マリア・ゲッパート=メイヤーヨハネス・ハンス・イェンゼンによって発見され、ノーベル賞授与対象となった。

二重魔法数[編集]

陽子数と中性子数が、ともに魔法数の核種(Zは陽子数、Nは中性子数)

N
2 8 20 28 50 82 126
Z 2 4He
安定
10He
2.7×10-21
8 16O
安定
20 40Ca
5.9×1021年以上
48Ca
4.3×1018
28 48Ni
0.01秒?
56Ni
6.075日
78Ni
0.12秒?
50 100Sn
1.1秒
132Sn
39.7秒
82 208Pb
2×1019年以上

ニッケルとスズは短寿命(周辺核種中では比較的安定)で、鉛164 (Z=82, N=82) は確認もされていない。これは、安定核種が集中する中心(ベータ安定線)から外れると、陽子や中性子の間に働く三体力が核力による繋ぎ止めを妨げるため[3]。原子核が成立できる限界をドリップライン英語版と呼び、鉛のひとつ前のタリウムでは中性子数100以上となっている。

不安定核領域[編集]

魔法数は量子力学の効果を考える事で説明され、理論的な予測もされているが、シェルモデルは素粒子数が多くなると成り立たず、安定核近傍を離れた中性子過剰不安定核領域やドリップライン周辺では、他の理論に基づく推測から追加の魔法数が提案されている。 スキルムモデル(バリオンを扱う)についての、ハートリー-フォック方程式ボゴリューボフ変換による非相対論的エネルギー密度の研究では、N=184, 196が魔法数とされる。 このほか、N=162、Z=108, 114, 120, 126も同様に魔法数と見られる。

  • Z=108, N=162 - ハッシウム270 270Hs 半減期10秒
  • Z=108, N=184 - ハッシウム292 292Hs 未発見

また、超重元素における未発見元素のうち、二重魔法数をもつものは安定の島仮説の中心となっている。

電子の魔法数[編集]

原子の化学的性質はその電子配置でほぼ決定されるが、電子殻における電子にも化学的に極めて安定する特定の数(配置)がある。

電子が魔法数となる原子(希ガス元素)は極めてイオン化しにくく、逆に魔法数に近い原子はイオン化傾向電気陰性度が大きい。このため、魔法数の電子配置を原子核とは別の意味で「核」と呼ぶことがある。

ネオンまでは主殻が閉じるが、以降は副殻であるp軌道が閉じることで安定する。これは内側のd軌道より1つ外側のs軌道エネルギー準位が低いためで、ナトリウム以降は主殻だけが閉じる状態は存在しない。

また、ラドンは化学的反応性を持ちフッ素と容易に反応するなど、魔法数であっても重いほど安定性が低下することは、核子と共通している。

参考資料[編集]

関連項目[編集]