核種
核種(かくしゅ、英: nuclide[1]、(nuclear) speciesとも[2])は、陽子と中性子の数により決定される原子核の種類である[2]。ほぼすべての原子核は、陽子と中性子から構成される[3][4]。核種は原子核の同位体やその他の性質を区別するために利用される。
日本語では元素名の後ろに質量数を添えることで、核種を表す。例えば酸素16、炭素12など。英語では Helium-4 のように、元素名の後ろにハイフンを挿入して質量数を添えることで表す。
核種には放射能を持つものと放射能のない安定なものが存在する[5]。たんに核種と言った場合双方を意味し、放射能を持つ核種の事だけを言いたい場合は放射性核種などと呼ばれる[5]。
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原子記号による表記法 [編集]
核種を区別するため、原子核の核子の数である質量数を元素記号の左上に、陽子の数である原子番号を原子記号の左下に添える[2]。例えば炭素の最多の同位体である炭素12は質量数 "12" で陽子の数 "6" であるため、
と表記される[6]。原子番号6と原子記号
は同じ情報であり、一方が判れば他方は決まるために、原子番号を省略して質量数だけを付け
と表記されることもある。中性子数は、質量数と原子番号の差から求められるが、明示する場合や、初学者向けなどで丁寧に表記する場合には、中性子の数を右下に添えて
のように表記される。
原子核には様々なエネルギー順位があり、安定でない状態では通常1秒にも満たない極めて短い半減期でガンマ崩壊するが、まれに半減期が長い状態も存在する。このエネルギー状態の異なる安定または準安定状態の事を核異性体といい[7]、これらは別の核種であると明確に区別される[8]。例えば臭素35は半減期18分でベータ崩壊するが、半減期4.4時間を持つ準安定状態の臭素35mも存在し、後者が核異性体であり前者とは別物と区別される[8]。
半減期が短いものは通常そのまま表記されるが、寿命が長いものにmetastable(メタステーブル、準安定状態の)という意味から"m"という文字を質量数のあとに付けて表記し、テクネチウム99mを例にとれば
のように表記される。核異性体が3つ以上あるときは、寿命が短いものから順にm1、m2、m3が付けられる[9]。
核種の分類について [編集]
核種は陽子と中性子の数などによって区別されるが、その特定の組み合わせによって様々な分類が存在する。
特定の元素にはさまざまな核種があるが、中性子の違いによりこれらは同位体と呼ばれる。英語圏では、核種(Nuclide)という呼び名が国際的に定着する(1950年代)以前は、漫然と同位体(Isotope)という言葉が使われていた。質量数の等しく原子番号の異なる核種は同重核(Isobar)と呼ばれていた。同中性子体(Isotone)は、中性子の数が等しく原子番号の異なる核種を示す言葉である。日本語圏では、現在でも核種という呼び名は定着しておらず、元素や同位体という言葉で表す核種もある[10]。
以下はその分類手法と主な特徴などの表である。
| 名前 | 特徴 | 例 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 同位体 | 原子番号が同じ | 炭素12、炭素13 | アイソトープとも呼ばれる。 |
| 同中性子体 | 中性子の数が同じ | 炭素13、窒素14 | 同調体とも呼ばれる。 |
| 同重核 | 質量数が同じ | 窒素17、酸素17、フッ素17 | ベータ崩壊を参照 |
| 同余体 | 陽子と中性子の差が同じ | ウラン238、トリウム234 | アルファ崩壊により不変 |
| 鏡映核、鏡像核(en:Mirror nuclei) | 中性子と陽子の数を交換したもの | 水素3(トリチウム)、ヘリウム3 | 2つの核種の質量数は等しい(同重核である) |
| 核異性体 | エネルギー状態が異なる | テクネチウム99とテクネチウム99m | 長寿であるか、安定している |
放射性核種の種類 [編集]
自然界には約300の核種の存在が知られており、そのうち約270種が放射能を持たない安定した核種で残り約30種類が放射性核種である[2]。放射能をもつ核種である放射性核種の崩壊生成物は放射生成核種(Radiogenic)と呼ばれる。
天然の放射性核種には3つの種類がある。第1は、半減期(T1/2)が少なくとも地球の年齢(約46億年)の10%に達するものである。これらは太陽系の形成以前の恒星にて生じた原子核合成の残りかすである。例えば、ウラン238(T1/2=4.5×109)は天然に存在するが、ウラン235は(T1/2=0.7×109)は138倍も稀少である。第2はラジウム226 (T1/2=1602) であり、これはウラン235やトリウム232の放射性崩壊の連鎖により形成される。第3は炭素14といった核種で、より重い核種の宇宙線による核破砕反応により生じる。
核実験や原子炉などで人工的に生成可能である核種は2000種類以上知られており、理論上存在が予想されているものを含めるとその数は約6000種類にも上る[2]。
脚注 [編集]
- ^ ラテン語のnucleus(中心部分、中核)から。
- ^ a b c d e 小田稔ほか編、『理化学英和辞典』、研究社、1998年、項目「nuclide」より。ISBN 978-4-7674-3456-8
- ^ 軽水素の原子核は1個の陽子のみで中性子は含まない。
- ^ 陽子と中性子は、原子核の構成要素であることから、核子とも呼ばれる。
- ^ a b 吉村壽次ほか編、『化学辞典 第2版』、森北出版、2009年、項目「核種」より。ISBN 978-4-627-24012-4
- ^ 昔は質量数は右上に添えられていた。
- ^ 長倉三郎ほか編、『岩波理化学辞典』、岩波書店、1998年、項目「異性核」より。ISBN 4-00-080090-6
- ^ a b 吉村壽次ほか編、『化学辞典 第2版』、森北出版、2009年、項目「異核性」より。ISBN 978-4-627-24012-4
- ^ 安斎育郎著『放射線と放射能』ナツメ社 2007年2月14日初版発行 ISBN 9784816342554
- ^ 核種の合成を元素合成と呼ぶ、放射性核種を放射性同位体と呼ぶ、など。
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
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