遊就館

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遊就館
地図
施設情報
専門分野 軍事
管理運営 靖国神社
開館 1882年明治15年)
所在地 102-8246
東京都千代田区九段北3-1-1
プロジェクト:GLAM
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遊就館(ゆうしゅうかん)は、靖国神社境内に併設された、同社の祭神ゆかりの資料を集めた宝物館(博物館法の適用外)。幕末維新期の動乱から大東亜戦争太平洋戦争)に至る戦没者、国事殉難者を祭神とする靖国神社の施設として、戦没者や軍事関係の資料を収蔵・展示している。1882年明治15年)に開館した、日本における「最初で最古の軍事博物館」。[1]

この施設についての論争の詳細は靖国神社問題を参照されたし。

沿革

1882年(明治15年)に、幕末維新の新政府軍(官軍)戦没者ゆかりの品を展示する目的で発足。日清戦争日露戦争を経て、1910年(明治43年)には明治天皇勅令「武器ノ沿革ヲ知ルヘキ物件ヲ蒐集保存シ軍事上ノ参考ニ供スル所トス」(勅令192号)が発布。第一次世界大戦を経て展示資料は増加し、施設も逐次増築されたが、1923年(大正12年)の関東大震災で損壊。翌年に仮館を建設し、1932年(昭和7年)に再建された。

戦時中は、陸軍省の貸出しで鹵獲兵器の展示も行われたが、第二次大戦後に遊就館令が廃止され閉館。国家補助を打ち切られた靖国神社は、遊就館の修理を条件に、建物および周囲の土地の貸与を表明。1947年(昭和22年)11月に、社屋を米軍に接収された富国生命保険と月額5万円(当時)で賃貸契約が結ばれ、同社の「九段本社」として使用された。1961年(昭和36年)に遊就館に隣接する靖国会館の一部を「宝物遺品館」として再開した。昭和55年(1980年)に富国生命保険が立ち退くにあたり、当時の社長が靖国神社の経済的窮状を財界有力者に訴えた。これを契機に「靖国神社奉賛会」が発足。昭和60年(1985年)7月13日に施設の改修が終わり遊就館として再開。その後、建物の老朽化と展示スペースの不足から創立百三十年記念事業の一環として本館改修と新館増築の工事が行なわれた。その際、野外の展資料も館内に収納展示され、2002年(平成14年)7月13日に再公開した。

展示室

本館
新館 玄関付近
零式艦上戦闘機
回天一型
タイより帰還した蒸気機関車C5631
ファイル:Yasukuni Radha Binod Pal Commending Stele.jpg
遊就館本館前のパール判事の顕彰碑

展示資料は、祭神となった戦没者関係の資料及び旧日本軍兵器類を中心とし、大戦中の連合国軍側資料や現在の自衛隊在日米軍に関する資料展示は僅少。敷地内には軍馬慰霊碑もある。

  • 2階展示室では、刀剣類や甲冑、古式銃、戊辰戦争時に官軍が用いた錦旗(きんき)などを見ることが出来る。特に、展示資料中の陸軍歩兵第三百二十一聯隊の連隊旗は、終戦時の軍旗奉焼命令による処分を免れ、唯一完全な形で現存する軍旗として貴重な資料。
    • 2階にはミニシアター程度の「映像ホール」があり、祭神や近・現代日本に関する記録映画を上映。映像資料のビデオDVDは非売品だが、制作した英霊にこたえる会会員になると、「君にめぐり合いたい」と「私たちは忘れない」の2本の頒布が受けられる。
    • 1階大展示室にはヤップ島で発見された艦上爆撃機彗星や九七式中戦車、いわゆる人間魚雷、特殊潜航艇回天や、特攻ロケット桜花のレプリカ、戦艦陸奥各副砲及び砲弾機銃、精巧な軍艦模型等を展示。戦後行なわれた戦没者遺骨収集の際に、戦跡で回収された遺品類を展示。中国戦線で戦死した航空兵の衣服などの遺品や、戦没者の遺書の展示コーナーもある。
    • 順路最後のコーナー「靖国の神々」では、祭神となった戦没者の写真肖像画の一部を展示。

付帯施設

  • 売店:土産品のほか、幕末から現在までの靖国神社に関する様々な書籍を販売している。日章旗や軍旗、自衛隊グッズ、靖国神社側の史観からの歴史の考察本なども豊富で、品揃えは多岐に及ぶ。外国人観光客向けに英語版パンフレットも用意されている。
  • 茶房「結」:喫茶・軽食。旧海軍の軍人が航海中に食していたという「海軍カレー」が看板メニュー。当時のレシピや材料を忠実に再現した結果、少し薄めの味となっている。

基本情報

開館時間
4月~9月 午前9時~午後5時30分
10月~3月 午前9時~午後5時
みたままつり期間中(7月13日~16日)は午前9時~午後9時
※入館は閉館30分前まで
※館内の撮影は1階玄関ホール以外は原則禁止。また退館時刻も厳守のこと。
拝観料
大人800円
大学生・高校生500円
小学生・中学生300円
靖国神社崇敬奉賛会会員は無料

文芸作品に描かれた遊就館

並び聳ゆる櫓には丸きもの角張りたるものいろいろの形状はあるが、いずれも陰気な灰色をして前世紀の紀念を永劫に伝えんと誓えるごとく見える。九段の遊就館を石で造って二三十並べてそうしてそれを虫眼鏡で覗いたらあるいはこの「塔」に似たものは出来上りはしまいかと考えた。
わたしは歴史を翻えす度に、遊就館を想うことを禁じ得ない。過去の廊下には薄暗い中にさまざまの正義が陳列してある。(中略)わたしはそう云う武器を見ながら、幾多の戦いを想像し、おのずから心悸の高まることがある、しかしまだ幸か不幸か、わたし自身その武器の一つを執りたいと思った記憶はない。

展示物・施設周辺画像


脚注

  1. ^ 遊就館ホームページのトップページ「貴重な史資料が真実を語り継ぐ」より

参考文献

  • 遊就館図録 靖国神社 平成15年(2003年)

外部リンク