通訳

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通訳(つうやく interpretation)とは、書記言語ではない二つ以上の異なる言語を使うことが出来る人が、ある言語から異なる言語へと変換することである。つまり一般的には、異なる言語を話す人たちの間に入り、双方の言語を相手方の言語へと変換し伝えることである。

天皇皇后アメリカ合衆国副大統領夫妻の会談に同席する通訳者(左から2人目、および、右から2人目)

また、それを行う職業を指す場合もあり、さらには、それを行っているを指す場合もある。ただし、翻訳(という行為)と「翻訳者」「翻訳家」という語の関係を見れば、人に関しては通訳者通訳士通訳人などと呼ばれるべきであるとも指摘されており、実際、国語審議会などの公的文書ではそのように記載されている。

概説[編集]

通訳とは一般に、異なった音声言語を話す人たちの間に入って、一方の言葉を他方の言葉へ(例えば、英語から日本語へ、中国語からフランス語へ、アラビア語からオランダ語へそれに加えて逆向きにオランダ語からアラビア語へ 等々)変換して音声で伝えることである。さらに、手話の話者と音声言語の話者の間に入って双方の言葉を変換することも通訳と呼ぶことがある。

異言語間の仲介を果たすという意味で翻訳と同列に語られる場合があるが、翻訳の対象は書記言語であり、技能的には全くの別物である。通常、翻訳者はトランスレーター (translator)と呼ばれるのに対し、通訳者はインタープリター (interpreter) と呼ばれる。

ひとことで通訳と言っても、逐次通訳、同時通訳、ウィスパリング通訳などの違いがある。

通訳者は、通訳を行う場所・場面によって、求められているスキルにそれなりの違いがあり、一般的に言えば、それぞれ専門性を持って活動している。代表的なそれとしては、会議通訳(者)、商談通訳、エスコート通訳などがある。

通訳の形式[編集]

通訳は、その方式や形態によって逐次通訳、同時通訳、ウィスパリング通訳など数種類に区分される。以下にその一般的な区分を示す。

逐次通訳 (consecutive interpreting)[編集]

話者の話を数十秒~数分ごとに区切って、順次通訳していく方式であり、一般に通訳技術の基礎とされる。話者が話している途中、通訳者は通常記憶を保持するためにノートを取り、話が完了してから通訳を始める。そのため、後述の同時通訳と比べてほぼ2倍の時間がかかってしまうが、訳の正確性が高まるため需要は多い。

同時通訳 (simultaneous interpreting)[編集]

同時通訳は、話者の話を聞くとほぼ同時に訳出を行う形態であり、通訳の中でもいわゆる花形的な形式である。異言語を即座に自家国言語に訳す能力が必要とされるほか、相手の発言内容をある程度予測する必要もある。通例通訳者は、ブースと呼ばれる会場の一角に設置された小部屋に入り、その中で作業を行う事になる。通訳者の音声はブース内のマイクを通して聴衆のイヤフォンに届けられる。同時通訳作業は非常に重い負荷を通訳者に要求するため、2人ないしは3人が同時にブースに入り15分程度の間隔で交代する。頭を非常に使うため、休憩時はチョコレートのような糖分の高いものを即座に口に入れるという。時にはブース内の控えの通訳者が、単語の提供など訳出の協力もする。多言語間通訳が行われる国際会議で特に多用されるが、多言語地域であるヨーロッパでは通訳の需要のほとんどが同時通訳である。多ヶ国語の同時通訳者にとっても、非母国語間の同時通訳は非常に難しいとされる。

ウィスパリング通訳 (whispered interpreting)[編集]

en:Klaus Bednarzの言葉をガルリ・カスパロフへと通訳する通訳者

方式的には同時通訳と同一であるが、通訳者はブース内ではなく、通訳を必要とする人間の近くに位置して聞き手にささやく程度の声で通訳をしていく。自らの声やその他の音が障害となるため、正確な通訳を長時間行う事は非常に難しいとされる。高価な通訳設備の用意が必要ないため、企業内の会議などで使用される事が多い。


通訳者[編集]

通訳者の種類[編集]

通訳者は、その能力や活動分野によって次のように区分できる。

en:European Court of Justiceにおける会議での通訳者席
会議通訳 (conference interpreter)
同時通訳者ともいう、同時通訳の技術を習得している。主に国際会議などで通訳を務める。エージェントに所属している場合は実力や経験年数による格付けが行われる。高度な学術的内容を扱う会議においての同時通訳を行う事は、すべての通訳の最も上位に位置するとされる。
日本には、会議通訳者の職能団体は存在しないが、ヨーロッパではAIIC(フランス語表記Association Internationale des Interprètes de Conférence、英語表記International Association of Conference Interpreters 国際会議通訳者協会)やアメリカのTAALS(The American Association of Language Specialists アメリカ言語専門家協会)など、歴史のある団体がある。
商談通訳 (business interpreting)
表敬訪問、商談など民間企業内で行われる通訳をまとめてビジネス通訳と呼ぶ。企業内で通訳者を独自に雇用する場合とフリーランスの通訳者を必要に応じて雇う場合とに分かれる。日本では1990年代以降企業の国際的連携が拡大したため、需要が高くなっている。
エスコート通訳 (escort interpreting)
外国から来たアーティストやプロスポーツ選手に随行して記者会見やインタビュー、テレビ出演などでの通訳をはじめ、イベント等での通訳(通訳コンパニオン)等をエスコート通訳と呼ぶ。外国人アーティストやプロスポーツ選手に対しては日常生活の世話やスケジュール管理なども行う事もあるが、芸能関係の仕事のほとんどはエージェントからの派遣は少なく、関係者のコネクションなどが多い。そのため、通訳者を目指し勉強をしていた人ではなく芸能会社の社員や字幕翻訳家が抜擢される事も頻繁にある。仕事内容は会場案内やエスコートや専門性の低い交渉など日常レベルのコミュニケーションを主とする場合が多い。通訳の対象者について行動するために随行通訳(リエーゾン通訳)とも呼ばれる。
コミュニティー通訳 (community interpreting)
地域社会に住む外国人が多くなるにつれ、医療や福祉、教育、司法など様々の公共サービスの場での通訳が必要になってきており、それらを概してコミュニティー通訳と呼ぶ。会議の通訳などよりはるかに報酬が低いため、従来ボランティアで行われる場合が多く、通訳の質については全く保障されていなかった。しかしながら特に医療や司法の通訳は他者の人生を左右する可能性が高く、内容の専門性も高いため、通訳に際しての倫理規定の制定や、通訳者の質及び報酬を保証するための資格制度の必要性が投げかけられている。
アメリカやオーストラリアなど通訳者の国家資格がすでに整備されている国ではこの種の通訳がプロフェッショナルの仕事であるという観点から、公共サービス通訳者 (public service interpreter) と称されることがある。
放送通訳 (broadcast interpreting)
外国のテレビ報道などを訳出して視聴者に届ける通訳形態である。日本では英語日本語の通訳が多く行われている。相手は一般視聴者なので、子どもから高齢者までの幅広い年齢層に、わかりやすい言葉で必要な情報をもらさず正確に伝える能力が必要とされる。
定時のニュースの通訳は放映後、通訳者が数回録画映像を目にしてから訳出するため「時差同通(時差同時通訳)」と呼ばれ、通訳と翻訳の中間とされるが、基本的には1回聞いただけで内容を理解する力が求められる。ごくまれではあるが突発的な事故や出来事のニュースを訳出する場合は外国での放映と同時に行うため、「生同通」と呼ばれる。
通訳案内業 (multi-lingual tour guide)
訪れた地域の言語がわからない外国人の旅行者などに観光地を案内したり、その地域の社会や文化について紹介したりする職業であり、正確には通訳とは一線を画する。日本では正式名称を「通訳案内士」といい、国土交通省管轄の国家試験に合格してライセンスを取得する必要がある。

通訳のプロセス[編集]

通訳は起点言語(原語 the source language:SL)を音韻的に認知・受容 (audition) し、さらに語彙と文法による表層構造の理解(記号の解読 decoding)および世界知識・背景知識・場の知識によって内包や外延をふくむ発言内容の深層構造の理解 (comprehension) に達し、その理解にもとづいて目標言語(訳出語 the target language:TL)へ転換(再記号化 encoding)し、最終的な音韻表現として表出する (re-formulate) 行為である。

[要出典]訳出する際には起点言語と目標言語とにおける、話者が伝えようとする内容に対しての忠実性(fidelity)・聞き手が得る内容に対しての等価性 (equivalence) を重視すると共に、文化的な差異なども考慮に入れねばならない。これはたとえば、長さをメートルからフィートに換算することも含まれる。

通訳者育成[編集]

一部の国ではオーストラリアのNAATI(国家翻訳・通訳認定局)など、資格が整備されている。


日本における通訳者育成[編集]

日本の国語審議会は2000年末に、通訳・翻訳の重要性を指摘し、次のように提案した。 「通訳は、高い母国語能力と外国語能力、言葉の文化的背景を含む幅広い教養など高度な能力を要する専門職である。今後は教育を充実し、国際化に対応するための日本の人的資源として、高度に訓練された職業通訳者及び高い見識を有する通訳理論の研究者を養成することが望まれる。」


関連項目[編集]