翼指竜亜目

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翼指竜亜目
Pterodactyloidea
生息年代:
Late Jurassic - Late Cretaceous
Pterodactylus antiquus - IMG 0681.jpg
Pterodactylus antiquus
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
中生代ジュラ紀後期 - 白亜紀
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
: 翼竜目 Pterosauria
亜目 : 翼指竜亜目 Pterodactyloidea
学名
Pterodactyloidea
Plieninger, 1901
和名
翼指竜亜目
プテロダクティルス亜目
翼手竜亜目
下位分類群(
本文参照 *

翼指竜亜目(よくしりゅう あもく、学名Pterodactyloidea)は、翼竜目の2大グループの一つ。 和名では「プテロダクティルス亜目」「翼手竜亜目」とも言う。

中生代ジュラ紀後期から白亜紀末までを世界中に分布する代表的な飛翔動物として繁栄していた。

呼称[編集]

グループの名称は、この一群を代表する属プテロダクティルスPterodactylus)の語義「πτερόν (=翼) + δάκτυλος (指)」から採られ、和名はそれを意訳したものである。

生物的特徴[編集]

翼竜目のもう一つのグループである嘴口竜亜目に遅れて中生代ジュラ紀後期に現れ、以後、白亜紀の終焉までを世界の空に繁栄した。 嘴口竜亜目に比べていっそうの特殊化が進んでおり、祖先種と目される化石はまだ発見されていないが、嘴口竜亜目から進化したことはほぼ間違いないと考えられている。 生息期後期には非常に大型の種が現れたことでも知られ、史上最大の飛翔動物もこのグループに属する一方、最小種プテロダクティルス・エレガンス(Pterodactylus elegans)は翼竜の中でも最小の翼開長25cmほどである。

形態[編集]

嘴口竜亜目に対して以下のような身体的特徴を持つ。

  • は短縮しており、ほとんど退化消失しかかっている。
  • 中手骨は長く、最低でも前腕長の半分以上、場合によっては前腕よりも長くなる。
  • 頭骨は非常に伸長し、外鼻孔(naris)と前眼窩窓(antorbital fenestra)が一体化して鼻前眼窩窓(nasoantorbital fenestra)となる。大後頭孔は頭骨の下方に向かって開口するため、頸椎は頭骨下部に接続する。
  • 後肢の第5はほとんど退化消失している。
  • 頭蓋骨の前部・後部の正中線上に鶏冠(とさか)状構造が発達することがある。また、を失う者も多い。
  • 頸椎が伸長して首が長くなっていることがある。
  • 後期には身体が大型化し、滑翔・帆翔に適応したと思われる種が多く現れた。
  • 胸胴椎の前部が融合して背心骨(notarium)と呼ばれる構造になっていることがある。

生態[編集]

基本的には魚食性、小型の者は虫食性であると考えられているのは嘴口竜亜目などと変わりはないが、特筆すべき点として濾過摂食性の者が現れていることが挙げられる。 クテノカスマ科の翼竜は上下辺縁に細長い歯が外向きにびっしりと並び、プテロダウストロ科では下顎から上向きに細い毛状の濾過構造(真性の歯かどうかは明確にされていない)が並び、時代や場所を超えて似たような濾過摂食に適応した構造を進化させた。 彼らは現生鳥類フラミンゴカモ類のように水中の微小生物をその構造で濾過して食べていたと考えられている。

嘴先端に水切りを持つアンハングエラ

また、魚食性の仲間にも捕食行動に即した構造を独立に獲得した者がいる。 クリオリンクス科やアンハングエラ科では、口吻先端に団扇のような半円の鶏冠状構造を有している。 これは一般的には、水面上を飛翔しながら口吻を水面下に投入して餌となる魚を捕まえる際に、水切りとして抵抗を減ずるための構造であったと考えられている。 現生の鳥類にもが側扁(そくへん)している者はいるが、特に口吻先端にそのような鶏冠状構造を発達させたのは翼竜独自の方法である。

「翼竜類は羽ばたく能力を持たず全て滑空のみであった」という旧来の説は現在ではほとんど否定され、翼竜はちゃんと羽ばたいて動的飛翔を行っていたというのが一般的な見方である。 しかし、このグループに属する白亜紀後期に現れた大型種もばたばた羽ばたいて飛翔していたというのは、さすがに現実的ではなく、主な飛翔は滑翔・帆翔によると考えられている。 ジュラ紀や三畳紀の翼竜も飛翔動物である以上、常に羽ばたき飛翔を行っていたのではなく、ある程度の大きさの者は羽ばたきに滑翔・帆翔を織り交ぜて飛翔していたのはほぼ確実であるが、滑翔・帆翔をその主な飛翔形態としていたのが明らかとなったのは白亜紀後期の翼指竜亜目の仲間が最初である。

分類[編集]

上位分類[編集]

下位分類[編集]

翼指竜亜目には以下のが含まれる。 嘴口竜亜目に対してその科数は4倍となっており、多様性の増大が認められる。 基本的な構成は Wellnhofer (1991) に従っている。

プテロダクティルス・コキの復元図
  • プテロダクティルス科 Pterodactylidae Bonaparte, 1828
ジュラ紀後期、ヨーロッパに分布。翼指竜亜目最古の科。しかしこのグループは、出現した時点ですでに翼指竜亜目としての特徴を全て具えていた。プテロダクティルス模式属とする。
  • ガロダクティルス科 Gallodactylidae Fabre, 1974
ジュラ紀後期、ヨーロッパに分布。プテロダクティルス科に含める説もある。ただし模式属であるガロダクティルス(Gallodactylus)はキクノランプスCycnorhamphus)のシノニムであり無効であるとの見解を1996年にクリストファー・ベネットが提示しており、それを受けた上でアンウィンはキクノランプスをクテノカスマ上科に分類している (Unwin, 2006) 。
ゲルマノダクティルス属の復元図
  • ゲルマノダクティルス科 Germanodactylidae Young, 1964
ジュラ紀後期ヨーロッパに分布。ズンガリプテルス科に含める説もある。模式属はゲルマノダクティルスGermanodactylus)。
  • クテノカスマ科 Ctenochasmatidae Nopcsa, 1928
ジュラ紀後期、ヨーロッパに分布。濾過摂食性。Nesov(1981) の説によれば白亜紀後期まで生存。クテノカスマ属に代表される。
  • プテロダウストロ科 Pterodaustridae Bonaparte, 1971
ジュラ紀後期から白亜紀前期 南米に分布。濾過摂食性。クテノカスマ科中のクテノカスマ亜科に分類する説もある。模式属はプテロダウストロ
  • ケアラダクティルス科 Cearadactylidae Wellnhofer, 1991
白亜紀前期、南米に分布。魚食性。クテノカスマ科中のグナトサウルス亜科に分類する説もある。ケアラダクティルス属に代表される。
白亜紀前期、南米・中国に分布。歯がなく、前頭部に大きな鶏冠を持つ。模式属はタペヤラ
トゥプクスアラ・レオナルディ(Tupuxuara leonardi)の全身骨格化石標本(ニューヨークアメリカ自然史博物館
  • トゥプクスアラ科 Tupuxuaridae
白亜紀前期、南米に分布。全身骨格が発見されて研究が進んだことから独自の科であるとの説が出されているが、歯が無い、頭部に鶏冠を持つ、等の特徴が共通する事からタペヤラ科に含められることもある。模式属はトゥプクスアラ
  • ズンガリプテルス科 Dsungaripteridae Young, 1964
ジュラ紀後期から白亜紀前期、東アジアに分布。不確定ながら南米にも分布か。口吻先端がピンセット状になっており、甲殻類や貝類を食べていたのではないかと推測されている。ズンガリプテルス属に代表される。
ゼニイアンゴプテルス(チェージャンゴプテルス 、Zhenjiangopterus アズダルコ科)の復元図
白亜紀後期、ヨーロッパ・北米中央アジア西南アジアに分布。大型翼竜を擁するグループで、模式属・アズダルコ(Azhdarcho)と今日知られる限り史上最大の飛翔動物であるケツァルコアトルスのほか、ハツェゴプテリクス(Hatzegopteryx)、バコニドラコ(Bakonydraco)属、その他を含む。
ジュラ紀後期から白亜紀後期、ヨーロッパ・アフリカ・南米に分布。オルニトケイルス(Ornithocheirus)属、リャオニンゴプテルス(リアオニンゴプテルス)属など。
  • クリオリンクス科 Criorhynchidae Hooley, 1914
白亜紀前期、ヨーロッパ・南米に分布。魚食性。口吻前端に水切りを持つ。本科に属するクリオリンクスとトロペオグナトゥスをオルニトケイルスのシノニムと見て、オルニトケイルス科に分類する説(Unwin, 2003)もある。
  • アンハングエラ科 Anhangueridae Campos et Kellner, 1985
白亜紀前期、南米に分布。魚食性。口吻前端に水切りを持つ。アンハングエラに代表される。上述のクリオリンクス科を無効とする考えのもとでは、これもオルニトケイルス科に分類される。
ニクトサウルスの復元図
  • オルニトデスムス科 Ornithodesmidae Hooley, 1913
白亜紀前期、ヨーロッパに分布。口吻は縦扁し、歯のあるカモの様になっている。しかし、模式属とされたオルニトデスムス(Ornithodesmus)の模式標本は、小型獣脚類のものであることが1993年になって指摘され、それまでオルニトデスムスであるとされた翼竜には2001年に新たにイスティオダクティルス(Istiodactylus)という名称が与えられた。その見解をとる場合、科名もイスティオダクティルス科(Istiodactylidae)と変更される。
白亜紀後期、ヨーロッパ・北米・南米・東アジアに分布。日本からも本科と思われる化石が発見されている。プテラノドンを模式属とする。
  • ニクトサウルス科 Nyctosauridae Williston, 1903
白亜紀後期、北米・南米に分布。プテラノドン科に含められる場合がある。ニクトサウルスを模式属とする。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • ペーター・ヴェルンホファー 『翼竜』 渡辺政隆訳、平凡社〈動物大百科 別巻 2〉、1993年ISBN 4-582-54522-X
  • エドウィン・H.コルバート・マイケル・モラレス 『脊椎動物の進化』 田隅本生訳、築地書館1994年ISBN 4-8067-1113-6
  • 内田亨・山田真弓監修 『動物系統分類学 第9巻 下 B2』 中山書店、1992年ISBN 4-521-07201-1
  • Unwin, David M. (2005). The Pterosaurs: From Deep Time. Pi Press. ISBN 0-13-146308-X.