日本鯨類研究所

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財団法人日本鯨類研究所(にほんげいるいけんきゅうしょ)は、東京都中央区に本部を置く日本の公益法人。所管官庁は水産庁

目次

[編集] 概要

[編集] 設立目的

鯨類を主とした海産哺乳類の調査研究と鯨類を主とした海産哺乳類に係る国際情勢に関する調査などを行うことにより、水産資源の適切な管理・利用に寄与すること。

[編集] 事業

  • 鯨類その他の海産哺乳類に関する調査及び研究
  • 鯨類その他の海産哺乳類に関する資料の収集及び提供
  • 鯨類その他の海産哺乳類に係る国際情勢に関する調査及び情報収集並びに提供
  • 捕鯨に関する社会経済及び法学的研究
  • その他、本研究所の目的を達成するために必要な事業

[編集] 所在地

  • 本所 : 東京都中央区豊海町4-5 豊海振興ビル5階
  • 図書室 : 本所に併設 現在資料整理の為無期限休館中
  • 鮎川実験場 : 宮城県石巻市鮎川浜字南68  2011/3/11の東日本大震災において高さ7メートル以上の津波に襲われ施設及び保管されていたDNA資料他を喪失し機能停止中

[編集] 沿革

  • 1941年(昭和16年) 中部幾次郎が中部科学研究所として設立。
  • 1947年(昭和22年) 財団法人鯨類研究所に改組。
  • 1959年(昭和34年) 財団法人日本捕鯨協会・鯨類研究所となる。
  • 1987年(昭和62年) 財団法人日本鯨類研究所設立。

[編集] 調査捕鯨

国際捕鯨取締条約第8条第1項には、「締約政府は、適当と認める制限・条件に従って、自国民が科学的研究目的で鯨を捕殺・処理することを認可する特別許可書を与えることができる。この条による鯨の捕殺・処理はこの条約の適用から除外する。」と規定されている。日本はこの条項の規定に従い、政府が(財)日本鯨類研究所に特別許可書を与え、水産庁委託事業として調査捕鯨を行なっている。実際には、科学調査は(財)日本鯨類研究所が行い、捕鯨業務は共同船舶(株)が行なっている。

調査対象は、南極海ではクロミンククジラナガスクジラザトウクジラ、北西太平洋ではミンククジライワシクジラニタリクジラマッコウクジラとなっている。[2]

[編集] 反捕鯨団体との対立

反捕鯨団体は、(財)日本鯨類研究所および共同船舶(株)の調査捕鯨に対し、様々な方法で批判・妨害を繰り返している。当初はグリーンピース、近年ではより過激なシー・シェパードによる妨害行為への対策には、数億円規模での費用が計上されている。

また、(財)日本鯨類研究所は、一連の妨害活動の記録をサイト上で公開し、抗議書の署名を募集している。[3]

[編集] シー・シェパード

2007年平成19年)2月9日に、日本鯨類研究所が派遣した日本の調査捕鯨母船「日新丸」に対して船2隻で接近し化学薬品(酪酸)入りの瓶を投げ付け船員を負傷させるなどの妨害行為を行なった環境保護団体シー・シェパードに対して、「環境保護団体ではなくテロリストだ」と激しく非難した。

2010年3月12日、海上保安庁はシー・シェパードの抗議船アディ・ギル号の元船長を艦船侵入罪傷害罪威力業務妨害罪器物損壊罪銃刀法違反の容疑で逮捕、同年4月2日、東京地方検察庁東京地方裁判所起訴した。

また、この妨害の様子は同研究所の公式ウェブサイトより、条件付きコピーレフト報道機関向けに一般公開されている[1]

[編集] グリーンピース

2008年5月15日環境保護団体グリーンピース・ジャパンが調査捕鯨船乗組員を業務上横領の疑いで東京地検告発し、農林水産省などに対して(財)日本鯨類研究所や共同船舶(株)による調査捕鯨の停止を求めた。ただし、告発された乗組員は同年6月20日に「嫌疑なし」として全員が不起訴処分とされた。また、グリーンピース・ジャパンが「横領の証拠」として確保した宅配便が、関係者の許可を得ず無断で持ち出されていたものであったため、グリーンピース・ジャパンのメンバー2名が建造物侵入および窃盗罪の容疑で逮捕・起訴され、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決を受けた。

尚、グリーンピースは2009年冬以降に南極海での妨害を行っていないが、これは過激なシー・シェパードと混同されるのを避けるためであるとしている[2]

[編集] 日本鯨類研究所への批判

国際的な批判は「調査捕鯨は擬似商業捕鯨である」という内容が主となっている[3]。国内世論においては調査捕鯨賛成が過半数を占める[4]

また基本的に日本の領海での商業捕鯨の再開を前提とした、公海上での調査捕鯨の停止或いは縮小を主張する意見もある[5]

[編集] 「事実上の商業捕鯨」という批判

(財)日本鯨類研究所は、国際捕鯨取締条約第8条第2項の規定(副産物有効利用の原則)に従い、調査捕鯨の副産物である鯨肉を可能な限り加工・販売し、その売上金によって調査費用の約9割を補填している。

副産物の売上金は60億円以上で、日本国内における鯨肉市場の大部分は調査捕鯨の副産物が占めている。こういった現状に対し、国内外から「調査捕鯨は鯨肉の販売を目的とした、事実上の商業捕鯨だ」といった批判を受けている[6]。また、「資源量102,000頭のマッコウクジラは数頭しか捕獲しないにもかかわらず、資源量69,000頭のイワシクジラを100頭も捕獲するのか」「売れないから捕らないのではないか」[7]といった批判もある。

代表的な捕鯨国における主な捕獲対象の資源量と年間捕獲数の割合
国名・地域 形式 種名 資源量 年間捕獲数 捕獲割合
日本 調査捕鯨 クロミンククジラ 約442,000頭 約850頭 約0.19%
ノルウェー 商業捕鯨 キタタイセイヨウミンククジラ 約107,000頭 約700頭 約0.65%
米国・アラスカ州エスキモー

ロシア・チュクチ

先住民生存捕鯨 ホッキョククジラ 約8,000頭 約67頭 約0.84%
米国・ワシントン州マカ族

ロシア・チュクチ

先住民生存捕鯨 ヒガシコククジラ 約26,300頭 約140頭 約0.53%

[編集] 「天下り」という批判

(財)日本鯨類研究所は、水産庁から毎年補助金を受けて調査捕鯨を行なっている。そのため「水産庁の役人が天下りする受け皿としてもしばしば使われている」などの批判がある[8]

[編集] 税金投入への批判

(財)日本鯨類研究所は、国際捕鯨取締条約第8条第2項の規定に従い、調査捕鯨の副産物である鯨肉を可能な限り加工・販売し、その売上金で調査費用の約9割を補填しているが、その不足分は国庫補助で賄われている。補助額は例年約5億円で、捕鯨継続にこだわるのは農水省の省益のためであるという見解もある[8]。なお、年々過激化する反捕鯨団体の妨害活動への対策費用や原油価格の高騰などにより、近年の補助額は約9億円に増加している。

また、利益が見込めない上に同盟ないし準同盟国の大衆を敵に回し、調査捕鯨における鯨肉の流通が国内零細捕鯨業者の鯨肉と競合する事で苦境に追い込む状況(後述)やIWCで四分の三の賛同を得るのが絶望的である状況を鑑みて、税金投入を続けて調査捕鯨を強行することは、如何に日本の捕鯨論理が正当であっても、国益のバランスを欠く行為であるとの主張もある[9]

[編集] 沿岸捕鯨を圧迫しているという批判

調査捕鯨によるミンククジラ肉の流通により、肉質で劣る沿岸捕鯨のハクジラ類の肉の流通の販路が狭められる事で、沿岸小型捕鯨の存続が危ぶまれる事態が起きているとされる。[10]外房捕鯨においては、調査捕鯨に参画することで、傭船料こそ得られるが調査捕鯨の副産物であるミンククジラ肉が自分たちがメインで捕っているツチクジラ肉の価格を圧迫するという状況も生じている[11]

[編集] 広報活動への批判

日本国内の鯨肉市場の維持・拡大のため、日本鯨類研究所は広報活動にも力を入ている。これに対し「実際は捕鯨推進の広報団体でもある。一般事業費約7億3千万円のうちの約73%の5億3千万円を広報費に、そしてそれ以外のお金で調査研究を行なっている。」などの批判もある[要出典]

その他、広報活動の内容を疑問視する意見もある。

  • 南極のオキアミの資源が減少し、それを捕食する鯨の資源減少を懸念する『ネイチャー』の論文に対して、南極海のオキアミ資源状況は高水準にあると反論しているが、これに対して、反捕鯨の論拠にされるのを恐れてそう反論しているだけなのではないかと指摘する意見がある[12]
  • 日本鯨類研究所・調査部の石川創は反捕鯨団体の行動原理を感情論であると指摘し、その背後に人種差別がある可能性も指摘している[13]。日本捕鯨協会アドバイザーの三崎滋子は、1993年に京都でIWC総会が開かれた際に、英国代表団のひとりがNHKテレビの放送[いつ?]において英語で「IWCが黒人やその他の有色人種(Black and other non-white people)に乗っ取られることが心配される」と発言したと証言している[14]

一方、これに対しては、反捕鯨団体が感情論を公の場で捕鯨の反対の理由にしたことはないとの反論がある[15]。またC・W・ニコルは人種差別的な個人は存在するが、反捕鯨団体の行動原理が人種差別であるという点は否定している[16]。日本の調査捕鯨の急先鋒のシーシェパードのリーダーであるポール・ワトソンはむしろ日本の文明に敬意を評しており、その行動原理が人種差別ではないと分析されている[17]

[編集] 脚注

  1. ^ 日本鯨類研究所 (2011年2月9日), “鯨類捕獲調査に対する不法なハラスメント及びテロリズム” (日本語), プレスリリース, http://www.icrwhale.org/gpandseaJapane.htm 2011年7月3日閲覧。 
  2. ^ 『サイゾー2010年11月号』「マル劇トーク・オンデマンド第47回」グリーンピース・ジャパンの星川淳による
  3. ^ 『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』新潮社、柳沢有起夫 、2009年、ISBN 9784101370514、82頁 海外在中の日本人ライター集団に所属する柳沢は「調査捕鯨」という言い方は国際社会では「ウソ」で「アンフェア」にしか受け取られないと指摘。捕鯨の正当性を訴えるべきだとしている。
  4. ^ [1] 賛成65%で、男女別では男性75%、女性56%、同時に行なわれた鯨を食用にするかという質問では20代、30代女性では賛成が上回る。 『日本の漁業』岩波書店、1994年、ISBN 9784004303619 92頁で著者の魚類学者の河井智康の個人的なクジラを食べるというアンケート(ただし途中経過としている)に89.1%がYESと答えている。
  5. ^ 北海道新聞』2010年4月26日社説や『読売新聞』2009年2月5日社説。「捕鯨の文化歴史話し合う 神奈川大で始まる」(毎日新聞神奈川版、2010年3月28日)、高村薫「「クジラと<飽食>日本人」を語る-もう食べられなくても仕方ない」(週刊ポスト 2010年4月9日号)、『日本の漁業』岩波書店 河井智康
  6. ^ 「『事実上の商業捕鯨』 豪など反発、IWC難航 」 2010年6月23日 朝刊 東京新聞[リンク切れ]
  7. ^ 『日本人はなぜ世界で一番クジラを殺すのか』162頁
  8. ^ a b 天木直人のブログ2008年6月14日『誰のための商業捕鯨か(水産庁の大いなる欺瞞)』 天木自身は文中で反捕鯨団体への憤りを表明している。
  9. ^ WEDGE infinity『メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人をなくす』 谷口智彦 なお、谷口は日本の捕鯨自体は正しいとしている。
  10. ^ 『クジラと日本人の物語 ―沿岸捕鯨再考―』東京書店、小島孝夫、2009年、112-113頁、ISBN 9784885740589
  11. ^ 『クジラと日本人の物語 ―沿岸捕鯨再考―』247頁
  12. ^ 『サバがトロより高くなる日』講談社、井田徹治、2005年、252頁、ISBN 9784061498044 井田は水産庁が近年の環境異変がオキアミ資源や漁場に大きな影響を及ぼしている事を認めている点も指摘している。
  13. ^ 鯨研通信第435号『南極海で撒き散らされる暴力と、嘘と、環境汚染』
  14. ^ http://luna.pos.to/whale/jpn_mis_media.html 捕鯨をめぐる情報戦争
  15. ^ 『ニュートン』1993年5月号、学習社、『捕鯨派、反捕鯨派の論点対照表』
  16. ^ 『鯨捕りよ、語れ!』C.Wニコル、アートディズ、2007年、81頁、ISBN 9784861190896
  17. ^ 『シーシェパードの正体』 佐々木正明 扶桑社 187頁 ISBN 4594062148 詳細はポール・ワトソンの項も参照。尚、この書籍には石川創も寄稿している。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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