孤立語

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孤立語(こりつご、: isolating language)とは、言語類型論において、言語形態論的な特徴から分類したときの類型の一つで、理想的には1が1形態素に対応する、総合の指標が非常に低い言語のこと。分析的言語(ぶんせきてきげんご、英:analytic language)の最も極端なタイプである。

特徴[編集]

孤立語は語と形態素が1対1に対応する言語であり、最も理想的な例の一つとしてベトナム語が挙げられる。

Khi tôi đến nhà bạn tôi, chúng tôi bắt đầu làm bài.
when I come house friend I PL I begin do lesson
私は私の友達の家へ行って(私たち=私と友達は)レッスンを始めた。

上のベトナム語の文を見ると、時制などによって語の形が変わっていないことが分かる。例えば「私は」も「私の」も、単語の形は両方とも tôi であり、意味の違いは語順によって表されている。このように、孤立語に分類される言語は接辞の付加やその他の手段による語形変化の体系を持たず、総合的言語において一般に語形変化で示されるさまざまな文法範疇が、文脈語順接置詞などによって表現される。

孤立語という分類は、アウグスト・シュライヒャーが提案した言語の3類型(孤立語・膠着語屈折語)にもとづいているが、この分類はその後エドワード・サピアが提案した、総合の指標融合の指標という2つの指標によって捉えなおされている。このうち総合の指標とは1語を構成する形態素の数にもとづく指標で、この点からは孤立語とは総合の指標が極端に低い言語として定義できる。

孤立語に分類されるのは、シナ・チベット語族中国語(特に古典中国語)、チベット語ビルマ語などや、マレー語をのぞく東南アジア大陸部の言語(ベトナム語ラオス語タイ語など)、およびクメール語サモア語などである。

分析的言語[編集]

分析的言語とは総合の指標が比較的低い言語のことであり、分析的言語の極端なタイプが孤立語であるといえる。分析的言語では、さまざまな文法範疇語形変化ではなく文脈語順接置詞などの機能語によって表現し、結果的に1つの語は少数の形態素から構成されることになる。

中国語は代表的な孤立語であり分析的言語であるが、現代語では複合語が多数存在し助辞も頻繁に用いられるので、古代中国語にくらべるとやや分析的性格が弱くなったといえる。また、英語屈折語に分類されることが多いが、は法助動詞によって表され主語目的語(直接、間接)の違いは語順や前置詞によって示されるなど、分析的性格が強いものとみることができる。

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以下に普通話(中国語)による例を示す。

品詞[編集]

  • 干什么呢?(做什麼?)(副詞;何してるの?)
  • 你爸爸家?(你爸爸家嗎?)(動詞;お父さんは家にいますか。)
  • 哪儿打工?(哪裡打工?)(前置詞;どこで働いてるの?)

」の発音はいずれも "zài"。

時制[編集]

  • 昨天我了图书馆。(昨天我了圖書館。)(昨日、私は図書館へ行った。)
  • 今天我图书馆。(今天我圖書館。)(今日、私は図書館へ行く。)
  • 明天我要图书馆。(明天我要圖書館。)(明日、私は図書館に行く。)

」の発音はいずれも"qù"。

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  • 喜欢意大利面。(喜歡義大利麵。)(主格;彼女はスパゲッティが好きだ。)
  • 他对很热情。(他對很溫柔。)(目的格;彼は彼女に対してとても優しい。)

」の発音はいずれも"tā"。

関連項目[編集]