V2語順

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V2語順(V2ごじゅん、動詞第二位語順)とは、平叙文の二番目のが常に動詞または助動詞である語順であり、ゲルマン語派英語を除く)に見られる。V2 語順は、まず動詞または助動詞を文頭に移動し、次に話題を文頭に移動するものと考えられる。一般疑問文では話題化が起きず、V1 語順(動詞第一位)になる。

主節(主文)でのみV2 となるものを CP-V2 と呼び、ドイツ語オランダ語スウェーデン語がこれに当たる。従属節(副文)でも V2 となるものを IP-V2 と呼び、アイスランド語イディッシュ語がこれに当たる。

基底の語順は SOV 型でも SVO 型でもあり得る。ドイツ語、オランダ語は SOV-V2 であり、スウェーデン語、アイスランド語、イディッシュ語は SVO-V2 である。

ドイツ語[編集]

以下にドイツ語の例を示す。ドイツ語は SOV 型で、助動詞が動詞のあとに来るので、基底の語順は日本語とまったく同じである[1][2][3]枠構造と呼ばれるものは、V2 語順による動詞の移動の結果である。

ich dieses Buch lese
私が この本を 読む
↓V1
lese ich dieses Buch
↓話題化 ↓V2
Ich lese dieses Buch.
私は
Dieses Buch lese ich.
この本は
ich dieses Buch lesen wollen habe
私が この本を 読み たかっ
↓V1
habe ich dieses Buch lesen wollen
↓話題化 ↓V2
Ich habe dieses Buch lesen wollen.
私は
Dieses Buch habe ich lesen wollen.
この本は

不変化詞動詞(いわゆる分離動詞)の挙動も矛盾なく説明される[4]

er heute in Tokio an- kommt
彼が 今日 東京に 着く
↓V1
kommt er heute in Tokio an
↓話題化 ↓V2
Er kommt heute in Tokio an.
彼は
Heute kommt er in Tokio an.
今日は
In Tokio kommt er heute an.
東京には
er heute in Tokio an- kommen wird
彼が 今日 東京に 着く だろう
↓V1 ↓融合
wird er heute in Tokio ankommen
↓話題化 ↓V2
Er wird heute in Tokio ankommen.
彼は
Heute wird er in Tokio ankommen.
今日は
In Tokio wird er heute ankommen.
東京には

一般疑問文では話題化は起きない。

er dieses Buch liest
彼が この本を 読む
↓V1
Liest er dieses Buch?

疑問詞疑問文では必ず疑問詞が文頭に来る。

wer dieses Buch liest
誰が この本を 読む
↓V1
liest wer dieses Buch
↓疑問詞 ↓V2
Wer liest dieses Buch?
er was liest
彼が 何を 読む
↓V1
liest er was
↓疑問詞 ↓V2
Was liest er?

従属節では、従属節標識があるため動詞が移動できない。

dass ich dieses Buch lese
こと 私が この本を 読む

オランダ語[編集]

以下にオランダ語の例を示す。オランダ語も SOV であるが[5]、助動詞が動詞の前に来る点がドイツ語と異なる。

ik dit boek lees
私が この本を 読む
↓V1
lees ik dit boek
↓話題化 ↓V2
Ik lees dit boek.
私は
Dit boek lees ik.
この本は
ik dit boek heb willen lezen
私が この本を たかっ 読み
↓V1
heb ik dit boek willen lezen
↓話題化 ↓V2
Ik heb dit boek willen lezen.
私は
Dit boek heb ik willen lezen.
この本は

不変化詞動詞(いわゆる分離動詞)もドイツ語と同じように説明される。

hij vandaag in Tokio aan- komt
彼が 今日 東京に 着く
↓V1
komt hij vandaag in Tokio aan
↓話題化 ↓V2
Hij komt vandaag in Tokio aan.
彼は
Vandaag komt hij in Tokio aan.
今日は
In Tokio komt hij vandaag aan.
東京には
hij vandaag in Tokio zal aan- komen
彼が 今日 東京に だろう 着く
↓V1 ↓融合
zal hij vandaag in Tokio aankomen
↓話題化 ↓V2
Hij zal vandaag in Tokio aankomen.
彼は
Vandaag zal hij in Tokio aankomen.
今日は
In Tokio zal hij vandaag aankomen.
東京には

一般疑問文では話題化は起きない。

hij dit boek leest
彼が この本を 読む
↓V1
Leest hij dit boek?

疑問詞疑問文では必ず疑問詞が文頭に来る。

wie dit boek leest
誰が この本を 読む
↓V1
leest wie dit boek
↓疑問詞 ↓V2
Wie leest dit boek?
hij wat leest
彼が 何を 読む
↓V1
leest hij wat
↓疑問詞 ↓V2
Wat leest hij?

従属節では、従属節標識があるため動詞が移動できない。

dat ik dit boek lees
こと 私が この本を 読む

英語[編集]

英語は今は単純な SVO 型で、V2 語順ではない。これはゲルマン語派の中では例外である。しかし、かつては SVO-IP-V2 であった。そのなごりが、疑問文と、文否定の副詞(句)または there、here、so などの副詞(句)が文頭にある文とで見られる、主語と動詞・助動詞の倒置である。

例: Hardly have I seen such a beautiful sunset.

フランス語[編集]

フランス語はゲルマン語派ではないが、フランク人ゲルマン系であったためゲルマン語の影響を受け、V2 であった時期がある。そのなごりが、文語の疑問文での主語と動詞の倒置である。フランス語の疑問文を参照すること。

例: Parlez-vous français ?

参考文献[編集]

  1. ^ 福本義憲 (1991), はじめてのドイツ語, 講談社, ISBN 978-4061490734 
  2. ^ 吉田光演 (1995), “ドイツ語の語順の変動について”, 広島ドイツ文学 (広島大学) 9, http://home.hiroshima-u.ac.jp/mituyos/wortstHR.pdf 
  3. ^ 吉田光演 (1995), “動詞第2位文の派生について”, 言語文化研究 (広島大学) 21: 225-246, http://home.hiroshima-u.ac.jp/mituyos/V295my.pdf 
  4. ^ 岡本順治 (2001), “ドイツ語における不変化詞動詞の統語的・意味的連続性”, 『東西言語文化の類型論特別プロジェクト研究』研究成果報告書 4, http://www.pocus.jp/pdfs/continuity.pdf 
  5. ^ Koster, Jan (1975), “Dutch as an SOV Language”, Linguistic Analysis 1: 111-136, http://www.dbnl.org/tekst/kost006dutc01/kost006dutc01_001.htm