佐久間達哉
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さくま たつや
佐久間 達哉 |
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| 生誕 | |
| 出身校 | 東京大学法学部卒業 |
| 職業 | 法務総合研究所国連研修協力部部長 |
佐久間 達哉(さくま たつや)は、日本の検察官。法務総合研究所国連研修協力部部長。
法務省人権擁護局調査救済課課長、法務省刑事局公安課課長、法務省刑事局刑事課課長、東京地方検察庁総務部部長、東京地検特捜部長、大津地方検察庁検事正などを歴任した。
目次 |
[編集] 来歴
[編集] 学生時代
神奈川県横浜市出身[1]。東京大学法学部で学ぶとともに、アメリカンフットボール部に在籍しクォーターバックとして汗を流した[2]。このとき、あまりにも熱心に部活動に取り組んだあまり、大学の単位を落とし留年している[3]。
[編集] 検事として
大学卒業後、司法修習生を経て1983年に任官した。東京地方検察庁の特捜部には通算4回勤務した経験がある[1]。特捜部に検事として在籍した際には長銀粉飾決算事件を主任検事として担当し、日本長期信用銀行の頭取経験者ら旧経営陣を次々と逮捕した[4]。しかし、この事件は最高裁判所の判決により被告人全員の無罪が確定した。特捜部が手がけた大規模な経済事件において無罪が確定することは極めて異例とされている[5]。この事件では決算時に不良債権を旧基準で査定した行為の違法性が争われた。しかし、当時は日本長期信用銀行以外にも都市銀行14行が旧基準で査定していたにもかかわらず、特捜部は日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の2行のみを立件し、他の銀行は不問に付したことから、当初から捜査の正当性が疑問視されていた[6][7]。
[編集] 検察庁以外の省庁にて
法務省での勤務経験も豊富であり、刑事局の公安課や刑事課にてそれぞれ課長を務めた。人権擁護局調査救済課の課長在任中には、人権擁護法案の取りまとめに力を注いだ。テレビ朝日の『朝まで生テレビ!』にて個人情報保護法案や人権擁護法案がテーマとして取り上げられると現職課長として出演し、討論に参加した[8]。また、在アメリカ合衆国大使館では一等書記官として勤務した[1]。
[編集] 検察幹部として
樋渡利秋ら検察庁幹部からの信頼も厚いとされている。東京地方検察庁の特捜部にて副部長に抜擢され、福島県知事汚職事件や防衛施設庁談合事件の捜査を指揮した[2]。
その後、東京地方検察庁の総務部の部長を経て、特捜部の部長に就任した。一般的に特捜部の部長には特捜検察に長年在籍し捜査に精通した検事が任命されることが通例となっているが、佐久間の場合は法務省での勤務が長く特捜部での在籍歴も僅かなため、近年ではやや異色の人事であるといえよう[3]。就任時の記者会見では「悔いのないよう、いい事件をやっていきたい」と決意を語った[1]。
2010年7月5日、大津地方検察庁の長である検事正に就任した[9]。検事正就任時の記者会見にて「企業や組織での犯罪者を調べていると、自分が同じ立場だったら犯罪に手を染めてしまったかもしれない」[9]と語り、捜査において感じた自らの葛藤を明かした。また、検察官の職務について「社会に潜む犯罪を捜査によって解き明かすのが醍醐味(だいごみ)」[9]と語った。
[編集] 人権擁護法案の策定
- 小泉内閣が人権擁護法の制定を目指した際、佐久間は法務省人権擁護局調査救済課の課長として法案の取り纏めの事務を行った。
- 2001年5月、法務省の人権擁護推進審議会は『人権救済制度の在り方について』と題した答申を発表した[10]。この答申には人権擁護のための新機関として人権委員会を創設する案などが盛り込まれていた[10]。この答申を踏まえ、佐久間は2001年6月に「今回答申をいただいた内容を踏まえまして、次期通常国会に所要の法案を提出すべく、現在一生懸命努力をしている」[11]と小泉内閣の見解を述べ、小泉内閣が法案の策定に強い意欲を示していることを説明した。
- また、新制度では人権救済の申出にあたって国籍は必要要件なのか質問されると、佐久間は「国籍を問題にするというようなことは全く考えられておりません」[11]と小泉内閣の考えを述べたうえで、日本国籍のない者や不法滞在者であったとしても人権委員会に対して申出ができると答弁している。この政府答弁は、人権はすべての人が共有する権利であるから無国籍者や不法滞在者にも人権を有するとの従来の有権解釈をくりかえし述べたにすぎない。
- 小泉内閣が取りまとめた人権擁護法案は2002年の第154回国会にて全閣僚同意により閣法として提出された。しかし解散にともない2003年10月に審議未了となっている。
[編集] 立件した事件
佐久間は検察官として任官されたものの、法務省の本省での勤務が長いことから捜査に従事した経験は少ない[3]。東京地方検察庁特別捜査部に複数回在籍した経験を持つが、いずれも短期にとどまっている。なお、その間にいくつかの事件の捜査に従事し、中心的な役割を果たした。
- 長銀粉飾決算事件
- 「長銀粉飾決算事件」は、佐久間が主任検事として捜査を担当した。証券取引法違反および商法違反容疑で日本長期信用銀行の経営陣3名を逮捕・起訴したが、最高裁判所で被疑者全員に無罪判決が下され、冤罪だったことが確定した[12]。特別捜査部が立件した大規模経済事件において被疑者全員の無罪が確定した完全無罪事件は、前身である「隠匿退蔵物資事件捜査部」時代を含めても史上初めてであり、特捜検察はじまって以来の事態となった[5]。また、捜査の過程で、参考人聴取した日本長期信用銀行の関係者ら複数名が自殺している。
- この事件の主要な争点は、日本長期信用銀行の不良債権査定の際に、大蔵省の通達した新しい決算経理基準を適用せず旧基準を適用した点である。検察は旧基準で査定したのは違法だと主張し、被告人らの主張と全面的に対立した。上告審の裁判長を務めた中川了滋は「新基準は大枠の指針を示したもので、適用するには明確性に乏しかった」[12]と述べて検察の主張を退け、旧基準適用の違法性を完全に否定した。そのうえで、中川は「ほかの大手銀行18行のうち14行も長銀と同じ処理をしていた」[12]と重ねて指摘し、当時の会計処理では旧基準を適用して査定することが一般的だったとしている。なお、この14行のうち立件されたのは、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の2行のみであり、そのほかの銀行には捜査自体が行われなかった。
- 下級審では被告人に有罪判決が下されているが、最高裁判所はそれらの有罪判決について「破棄しなければ著しく正義に反する」[13]と強い口調で断じている。その結果、東京高等裁判所での有罪判決は破棄され、被告人全員の無罪が確定した。
「防衛施設庁談合事件」も参照
- 福島県知事汚職事件
- 「福島県知事汚職事件」は、佐久間が特捜部の副部長として捜査の指揮を執った。収賄容疑で前福島県知事ら福島県庁の幹部らを逮捕・起訴した。東京高等裁判所の判決では、特定企業が受注させる行為が県の職務に対する社会の信頼を失墜させたことを認定はしたものの、知事の弟が受領した土地売買における時価との差額の利益を否定し、換金の利益に留まるとされ、追徴金も免除された[14]。
- PCI事件
- 「PCI事件」は、佐久間が特捜部の部長に着任する直前に発覚した事件であり、佐久間が部長として捜査の指揮を執った。2008年4月、東京地方検察庁特別捜査部は、特別背任容疑でパシフィックコンサルタンツインターナショナルの幹部らを逮捕した。同年7月、佐久間が特別捜査部の部長に就任すると、前任者より引き継ぎ捜査の指揮を執った。
- しかし、東京地方裁判所は、特別背任容疑に問われた持ち株会社「パシフィックコンサルタンツグループ」の元社長に対し、無罪判決を下した。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長に対しては、脱税容疑は有罪としたものの、特別背任容疑については無罪とする判決を下した。2010年5月、東京高等裁判所は検察側の控訴を棄却し、特別背任容疑に問われたパシフィックコンサルタンツグループの元社長に対し、一審同様に無罪判決を下した[15]。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長に対しては、一審同様に脱税容疑は有罪としたものの、特別背任容疑については無罪とする判決を下した[15]。東京高等検察庁は上告を断念したため、持ち株会社の元社長の完全無罪が確定した[16]。また、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの元社長も、特別背任容疑については無罪が確定した[16]。
[編集] 立件した人物
佐久間が主体となって立件した人物のうち、公人など著名人を挙げた。なお、氏名の末尾に附したカッコ内の記述は立件当時の肩書きを示している。
- 大野木克信(前・日本長期信用銀行頭取)
- 長銀粉飾決算事件では佐久間が主任検事として捜査を担当しており、証券取引法違反および商法違反容疑で大野木克信を逮捕した。しかし、最高裁判所で大野木に無罪判決が下され、冤罪だったことが確定した[12]。
- 鈴木克治(元・日本長期信用銀行副頭取)
- 長銀粉飾決算事件では佐久間が主任検事として捜査を担当し、証券取引法違反および商法違反容疑で鈴木克治を逮捕した。しかし、最高裁判所で鈴木に無罪判決が下され、冤罪だったことが確定した[12]。
- 須田正己(元・日本長期信用銀行副頭取)
- 長銀粉飾決算事件では佐久間が主任検事として捜査を担当し、証券取引法違反および商法違反容疑で須田正己を逮捕した。しかし、最高裁判所で須田に無罪判決が下され、冤罪だったことが確定した[12]。
- 佐藤栄佐久(前・福島県知事)
- 福島県知事汚職事件では佐久間が特捜部の副部長として捜査の指揮を執り、収賄容疑で佐藤栄佐久を逮捕した。しかし、東京高等裁判所の判決で佐藤が受領した金は賄賂ではなかったと認定され、追徴金も免除された[14]。現在、最高裁判所に対して上告中。
- 荒木民生(元・パシフィックコンサルタンツグループ社長)
- PCI事件では佐久間が特捜部の部長として捜査の指揮を執り、部長着任前に特別背任容疑で逮捕されていた荒木民生を起訴した。しかし、東京地方裁判所、および、東京高等裁判所で無罪判決が下され、検察が上告を断念したことから、冤罪だったことが確定した[16]。
[編集] 人物評
- 宗像紀夫
- 中央大学大学院教授の宗像紀夫は、佐久間が手がけた事件について厳しく批判している。宗像は長年にわたり検察官を務め、東京地方検察庁特別捜査部では佐久間の10代前の部長として活躍するなど、特捜検察について熟知しており、その立場から捜査手法に対する批判を展開している。
- 佐久間が特別捜査部の副部長として捜査指揮を執った「福島県知事汚職事件」に対しては、当初より検察側の主張に異議を唱えていた。福島県知事だった佐藤栄佐久が収賄容疑で起訴されたにもかかわらず二審判決で賄賂性が否定されたことを指摘し、「検察側の主張の中核が飛び、中身のない収賄事件ということが示された」[4]と厳しく論評した。なお、宗像は福島地方検察庁検事時代に「福島県政汚職事件」を手がけており、佐藤の4代前の福島県知事だった木村守江を逮捕・起訴した経験を持つ。その際は、宗像らの捜査により違法性が立証され、木村の有罪が確定している。
- 佐久間が特別捜査部の部長として指揮を執った「陸山会土地取引事件」に対しては、「現職議員を逮捕するからには政治資金規正法違反のような『形式犯』ではなく、贈収賄や脱税など『実質犯』を問うべき」[17]と主張し、石川知裕を逮捕に踏み切った判断に苦言を呈している。石川を逮捕する必要性は薄かったと指摘したうえで、形式犯でも容易に逮捕できる風潮となった場合、「検察が議員の生殺与奪を握ることにならないか」[17]と懸念を示している。さらに、佐久間らの主張が正しいとするなら、まずゼネコン側の捜査でダム関連の資金経路を明らかにし容疑を固めることが最優先のはずだと指摘し、検察が石川らに対する強制捜査後にゼネコンの家宅捜索を行うのは捜査として順序が誤っているとしている[17]。そのうえで「捜査手法にも疑問が残った」[17]と述べるとともに、「陸山会土地取引事件」は「実質的に特捜部側の敗北」[17]と断じている。
- 郷原信郎
- 名城大学コンプライアンス研究センターのセンター長である郷原信郎は、佐久間が手がけた事件について厳しく批判している。郷原は検察官として東京地方検察庁特別捜査部などで活躍し、捜査畑の経験を豊富に持つことから、捜査手法に対する批判を展開している。なお、郷原と佐久間は学部は異なるものの同じ大学の先輩・後輩であり、司法修習生としては同期にあたる。
- 佐久間が主任検事として捜査を担当した「長銀粉飾決算事件」に対しては、多くの論評を行っている。郷原は検察官退官後はコンプライアンスや企業法務を専門分野としており、その視点からの発言が多い。
[編集] 出演
[編集] 脚注
- ^ a b c d “「いい事件やりたい」 佐久間新特捜部長が会見”. 共同通信社 (47NEWS). (2008年7月14日) 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b “小沢代表を包囲する「日本“最強”捜査機関」のメンツ”. 夕刊フジ (産経デジタル). (2009年3月14日) 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b c 南慎二「「小沢一郎」幹事長に喧嘩を売った「佐久間達哉」特捜部長は「官僚中の官僚」」、『週刊新潮』第55巻第4号、新潮社、東京都、2010年1月、 p.20頁、 ISSN 0488-7484。
- ^ a b 江川紹子 (2010年1月19日). “東京地検特捜部の判断は常に正しい、のか”. 江川紹子ジャーナル. 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b “社説”. 読売新聞 (読売新聞東京本社): p. 3. (2008年7月19日)
- ^ 額賀信 (2004年8月10日). “日債銀判決を批判する 無視された不良資産処理の金融実務”. 社長ヌカちゃんの部屋. ちばぎん総合研究所. 2010年1月19日閲覧。
- ^ 森永卓郎 (2008年8月4日). “長銀事件の無罪判決は当然、真犯人は別にいる”. SAFETY JAPAN. 日経BP社. 2010年1月19日閲覧。
- ^ “激論!言論・表現の自由が消える日!?”. 朝まで生テレビ!. テレビ朝日 (2002年3月29日). 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b c 前本麻有 (2010年7月10日). “大津地検:地域安全に尽力 佐久間検事正が着任で抱負 /滋賀”. 毎日jp (毎日新聞社) 2010年7月10日閲覧。
- ^ a b “人権救済制度の在り方について(答申)”. 審議会等情報. 法務省 (2001年5月25日). 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b “第4回苦情処理・監視専門調査会議事録”. 苦情処理・監視専門調査会. 内閣府男女共同参画局 (2001年6月28日). 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b c d e f “元頭取ら3人逆転無罪 旧長銀粉飾決算事件、最高裁”. 共同通信社 (47NEWS). (2008年7月18日) 2010年1月19日閲覧。
- ^ “判決理由要旨 旧長銀粉飾決算上告審”. 共同通信社 (47NEWS). (2008年7月18日) 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b “土地の時価差額、わいろ性否定/福島県前知事汚職判決”. 四国新聞. (2009年10月14日) 2010年1月19日閲覧。
- ^ a b 共同通信 (2010年5月10日). “PCI事件、二審も無罪 元社長と持ち株会社元社長”. 47NEWS (全国新聞ネット) 2010年5月10日閲覧。
- ^ a b c “PCI背任、元社長ら無罪確定へ 東京高検が上告断念”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2010年5月24日) 2010年5月24日閲覧。
- ^ a b c d e 宗像紀夫「検察阻んだ3人の壁」『朝日新聞』44464号、14版、朝日新聞東京本社、2010年2月5日、5面。