ユーロスプリンター

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ドイツ鉄道127型電気機関車
ドイツ鉄道182型電気機関車

ユーロスプリンターEuroSprinter)は、ドイツシーメンスが製造し、ヨーロッパ鉄道事業者に幅広く採用されている、セミオーダーメードタイプの汎用電気機関車の名称である。

概要[編集]

従来の電気機関車は、鉄道事業者のニーズに合わせて製造されたオーダーメードの機関車が主流であったが、「ユーロスプリンター」は、基本的な仕様を予めいくつか定めておいた上で、搭載する電気機器類は極力モジュール化を行い、多種多様のユーザニーズに容易に対応できる構成としたセミオーダーメードタイプの電気機関車である。1992年シーメンスクラウス=マッファイ(当時)によって開発された。

その背景としては、1980年代後半の各国鉄道事業者の深刻な経営難により、従来の機関車の置き換え用としての汎用性の高い機関車が求められていたことがあげられる。汎用化と仕様共通化で、大量生産による製造コスト引き下げと保守部品の共通化などによるメンテナンスコスト低減が期待された。電気機器類の組み合わせにより、重貨物用から高速旅客用まで単一の基本仕様で対応できるような機関車となっている。制御機器はインバータ制御を採用している。パワーエレクトロニクス技術の発展により、機器類の小型化・軽量化が実現したことも、このような汎用型機関車の大量生産を可能にした。

当初は西ドイツ国鉄(当時)向けに、西独120型電気機関車(多目的機として開発されたが、トラブルが頻発していた)に代わって、重貨物用から高速旅客用まで幅広く対応する多目的電気機関車として開発されたものである。しかし、開発は順調ではなく、その後の方針転換によりドイツ鉄道は使用目的別に電気機関車を運用することとなったので、多目的としての開発は頓挫した。一方で、開発中の機関車は貨物用として発注されることとなり、その後、使用目的に応じて電気機器類をカスタマイズする方向に転換し、現在に至っている。

同様のコンセプトで開発された電気式ディーゼル機関車は、「ユーロランナー」(EuroRunner)の名称を持つ。

形式[編集]

形式の命名規則は、「"ES"」+「出力」+「目的」+「対応電源数」による。

"ES"は"EuroSprinter"の略である。「出力」は定格出力を意味し、"64"ならば6400kWを意味する。「目的」は"P"は旅客用(Passenger)、"F"は貨物用(Freight)、"U"は汎用(Universal)を意味する。「対応電源数」は、"2"は2電源対応、"4"は3~4電源対応で、単電源対応の場合は数字は付かない(ただし例外あり)。

軸数はいずれも4動軸で、軸重は約21tである(ヨーロッパの幹線鉄道線路は多くの場合、軸重22.5tまで許容されている)。

ES64P[編集]

単電源対応の旅客用電気機関車。交流15kV16 2/3Hz対応で、最高速度230km/h。プロトタイプとして1両だけが存在。

  • ドイツ鉄道127型:ドイツ鉄道で試用された当時の名称。現在はDispolok社(三井物産系列の機関車リース会社、旧"Siemens Dispolok"社)の所有。

ES64U2[編集]

Taurus

2電源対応の汎用電気機関車。交流15kV16 2/3Hzと交流25kV50Hz対応で、最高速度230km/h。曲線的な前面形状を有する。

ES64U4[編集]

3電源対応の汎用電気機関車。交流15kV16 2/3Hz・交流25kV50Hz・直流3000V対応で、最高速度230km/h。曲線的な前面形状を有する。

  • オーストリア国鉄1216型:3電源対応"Taurus"。2006年9月2日、1216 050号機が、ICE,TGV等、高速旅客専用に製造された動力集中式車両を除けば、汎用の電気機関車としては世界最速となる無改造で357km/hの記録を出している。
  • スロベニア鉄道541型

ES64F[編集]

単電源対応の貨物用電気機関車。交流15kV16 2/3Hzのみ対応で、最高速度140km/h。

ES64F4[編集]

4単電源対応の貨物用電気機関車。交流15kV16 2/3Hz・交流25kV50Hz・直流1500V対応・直流3000V対応で、最高速度140km/h。

上記以外にも、多くの民間鉄道事業者が使用している。自社で保有・運用している場合もあるが、Dispolok社のような鉄道車両保有会社からリースして運用している鉄道事業者も多い。

関連項目[編集]