テナガエビ

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テナガエビ属 Macrobrachium
Macrobrachium nipponense by OpenCage.jpg
テナガエビ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱(エビ綱) Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : ホンエビ上目 Eucarida
: エビ目(十脚目) Decapoda
亜目 : エビ亜目(抱卵亜目) Pleocyemata
下目 : コエビ下目 Caridea
上科 : テナガエビ上科 Palaemonoidea
: テナガエビ科 Palaemonidae
亜科 : テナガエビ亜科 Palaemoninae
: テナガエビ属 Macrobrachium
学名
Macrobrachium
Bate, 1868
和名
テナガエビ属
英名
Freshwater Prawn
  • 本文参照

テナガエビ(手長蝦)は、エビ目(十脚目)テナガエビ科テナガエビ属 Macrobrachium に分類されるエビの総称。熱帯温帯淡水域や汽水域に生息する大型のエビで、和名通り第2歩脚が長く発達する分類群である。日本ではその中の1種 Macrobrachium nipponense に「テナガエビ」の和名が充てられるが、他にも多くの種類がある。

別義として、主としてイタリア料理などで用いられるアカザエビのことをテナガエビと呼称する場合もあるが、アカザエビは深海域に生息する種(ザリガニ下目に分類される)で完全に異なる。

特徴[編集]

熱帯から温帯に広く分布するが、熱帯ほど種類が多い。たとえば日本の九州以北では通常テナガエビ、ヒラテテナガエビミナミテナガエビの3種しか見られないが、南西諸島では前述の3種を含めた9種が分布する。

体長は5cmほどのものから20cmほどのものまで種類によって差がある。成体は全身が緑褐色-灰褐色だが、若い個体は半透明の体に黒いしま模様があり、スジエビ類に似る。若いテナガエビとスジエビは目の後ろにある肝上棘(かんじょうきょく)の有無で区別でき、スジエビには肝上棘がない。

一番の特徴は和名通り長く発達した鋏脚だが、これは第1歩脚が大きいザリガニカニなどと違って第2歩脚が大きくなったもので、よく見ると大きな鋏脚の内側にもう1対の小さな第1鋏脚がある。成体のオスの鋏脚は種類によっては体長よりも長いが、メスや若い個体は細く短い。この脚は餌をつかんだり、他の個体を排除するのに用いる。水底を歩く時には大小2対の鋏脚を前に突き出し、後ろの3対の歩脚で移動する。

生態[編集]

温暖な地方の淡水域や汽水域に生息する。夜行性で、昼間は石の下や水草の茂みに隠れているが、曇って陽が照っていない時であれば昼でも活動し、姿を確認することができる。縄張り意識が強く、他の個体と遭遇すると排除する。藻類などを食べることもあるが、食性はほぼ肉食性で、小魚や水生昆虫を捕食し、動物の死骸も食べる。えさが少ないと共食いもする。

繁殖期は5-9月までだが、夏に多く産卵する。小卵多産で、メスは直径1mm足らずの卵を1000 - 2000個ほども産卵し、腹脚に抱えて孵化するまで保護する。テナガエビ類はほとんどが両側回遊型で、幼生は海、少なくとも汽水域まで降河しないと成長できない。孵化したゾエア幼生は川の流れに乗って海へ下り、植物プランクトンデトリタスを食べて成長し、1ヶ月ほどで体長5mmほどの稚エビになる。稚エビは川底を歩いてさかのぼり、以降は淡水域で過ごす。

寿命は環境による個体差はかなりあるが、1 - 3年ほどである。20cm級のテナガエビは2 - 3年生きているもので、また、オスのテナガエビのほうが長生きする。

別名[編集]

カワエビ(各地)、ダンマ、ダクマ、ダグマ(九州地方)タナガー(沖縄方言)など

利用[編集]

食用に漁獲され、重要な漁業資源となっている地方もある。地域によって様々な漁法があるが、魚やアメリカザリガニのように釣りで漁獲することもできる。肉食が強いので、釣り餌赤虫やサシ()、ミミズなどが使われる。他にもソーセージ、魚の切り身、イカ等でも釣れる。塩茹でや唐揚げなどで食べられるが、他の淡水魚や淡水性甲殻類と同様に寄生虫を保持する可能性があり、生食はされない。

食用以外に観賞用として飼育する人もいるが、肉食性のため小魚や小型のエビを一緒に飼育すると捕食してしまう。また、多数を一緒に飼育すると共食いや喧嘩を繰り返し結局は1匹だけ残るので、1匹ずつ飼育した方がよい。

おもな種[編集]

ミナミテナガエビのメス
テナガエビ Macrobrachium nipponense (De Haan, 1849)
体長10cmほど。朝鮮半島南部、中国北岸、台湾本州四国、九州に分布するが、九州ではヒラテテナガエビやミナミテナガエビの方が多い。鋏脚が非常に細長く、オスでは体長の1.8倍に達する。地方によっては淡水でも成長できる河川残留型(陸封型)となり、湖やダムで繁殖する個体群もいる。
ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum (De Haan, 1849)
ヒラテテナガエビのメス
ヤマトテナガエビともいう。体長8cmほど。千葉県以南から台湾までの水のきれいな川に生息する。川をさかのぼる力が強く、流れが速い川の上流部にも生息している。名前のとおり第2胸脚が太くて平たく、胸部の横には細い縦じまもようがたくさんある。
ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense Bate, 1868
体長10cmほど。千葉県以南から台湾まで分布し、九州や沖縄で「テナガエビ」といえばこの種類を指すことが多い。第2胸脚はヒラテテナガエビよりは細いが、テナガエビより太くて短い。また、胸部の横のもようは太い"m"字型である。ヒラテテナガエビよりも下流域に多い。
ザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guérin-Méneville, 1838)
体長5cmほどで、テナガエビとしては小型種。長い鋏脚の先端半分に小さな棘が密生し、ザラザラしているのでこの名がある。太平洋インド洋の沿岸河川に広く分布し、日本では種子島以南に分布する。
ショキタテナガエビ Macrobrachium shokitai Fujino et Baba, 1973
日本で唯一の完全河川残留型(陸封型)のテナガエビで、幼生は海に下らずに稚エビになる。沖縄県西表島固有種で、台湾や中国に分布する同様の陸封種タイリクテナガエビ M. asperulum (Von Martens, 1868) から分岐したと考えられている。名前はエビ研究者の諸喜田茂充に対する献名である。環境省レッドリスト準絶滅危惧(2000年)、沖縄県レッドデータブック絶滅危惧II類(2005年改訂)。
コンジンテナガエビ
コンジンテナガエビ Macrobrachium lar (Fabricius, 1798)
体長15cmにもなり、成長したオスは鋏脚を含めると30cmに達する大型種。オスの鋏脚は鋏部分が外側に大きく曲がる。西太平洋とインド洋の沿岸河川に分布するが、日本での分布域はトカラ列島以南である。
オニテナガエビ Macrobrachium rosenbergii (de Man, 1879)
体長30cm程度になる淡水産の大型種。タイマレーシアなどの東南アジア原産。台湾中国などでも移入され、食用に養殖されている。色は藍色で、頭部が大きく、第二歩行足が体長よりも長い。

参考文献[編集]