サツキマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
サツキマス
Oncorhynchus masou ishikawae by OpenCage.jpg
Oncorhynchus masou ishikawae
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: サケ目 Salmoniformes
: サケ科 Salmonidae
: タイヘイヨウサケ属 Oncorhynchus
: サクラマス Oncorhynchus masou
亜種 : サツキマス
O. m. ishikawae
学名
Oncorhynchus masou ishikawae
(Jordan and McGregor, 1925)
和名
サツキマス
英名
Red spotted masu trout

サツキマス(皐月鱒、Oncorhynchus masou ishikawae)は、サケ目サケ科に属する。サクラマスの亜種とされる。降海型や降湖型はサツキマス、河川残留型(陸封型)はアマゴと呼ばれる。俵氏がサツキマスの発見者。初めて発見されたのはを昭和30年12月のこと。後年、氏の先輩にあたる岐阜県水産試験場長・本荘鉄夫博士が、この魚が5月頃に遡上することから、サツキを冠した名前をつけた。

目次

形態 [編集]

ヤマメとの違いは、側線の上下から背部にかけて朱点が散在することである。 産卵は9月から11月で、12月から翌年の1月頃に孵化する。孵化した年の秋頃からスモルト化(パーマークが薄れて体色が銀白になる)し、降海するが、若干の朱点が残る個体もある。雌はほぼ全てが降海するが雄は河川残留する。雌でもスモルト化しない個体は河川残留し生活をする。生息域での餌が不足すると、スモルト化する個体が増加する事が報告されている。佐久間誠博士によると、死にかける(餌がなくて)と青い色で囲んだ水槽で養殖すると発生率が高まるとのこと。

生態 [編集]

降海しても大回遊はせずに沿岸域で群れて生活をする。降海後1年で成熟し、河川水温と海水温が等しくなる4 - 6月頃に遡上を始める。10 - 12月頃に源流部近くまで遡上し産卵する。アマゴがいる河川では、アマゴが産卵に参加することが観察されている。広島大学生物生産学部らの研究によれば、河口など汽水域で10日以上~15日前後滞留し遡上をする[1]。海洋での回遊範囲や移動経路は分かっていないが、シロザケほど広くないと考えられている。降海型個体は産卵活動を行うと死亡するが、河川残留型個体は1回目の産卵では死亡せず、翌年2回目の産卵を行い死亡する[2]

食性 [編集]

河川では、河畔林からの落下昆虫や流下する水生昆虫を主な餌とするが、底性生物やプランクトンも餌としている。海洋では、サクラマスの様に顕著な魚食性を示しイカナゴイワシなどの小魚やプランクトンを捕食している。従来、「降海個体は遡上中に餌を摂食しない」と云われていたが、9月までは摂食している個体もいるが、9月以降は抱卵している卵が肥大化し消化管が圧迫されるため餌を食べなくなる[3]

産卵床 [編集]

長良川の支流において2001年から2005年に行われた22床の産卵床を調査した結果では、淵尻に産卵床を形成する事が多く、産卵床の長径は129.5±44.9 cm、短径は85.0±28.9 cm、平均水深は61.5±16.1 cm。表層の平均流速は42.0±15.5 cm/sec、底層の平均流速は25.9±10.7 cm/secであった。産卵床の基質は16-63 mm の礫の割合が高い[4]

分布 [編集]

天然での分布域は神奈川県西部以西本州太平洋岸、琵琶湖、四国、九州の一部以前はヤマメと分布が分かれていたが、近年盛んになった遊漁目的の放流により分布が乱れ、混在するところがある(遺伝子汚染)。本来、日本海側には生息していないが、放流により福井県[5]富山県の日本海側の河川にも生息する。近年、富山県の神通川ではサツキマス(アマゴ)との混血によるサクラマスの魚体の小型化が報告されている[6]。神奈川県西部はアマゴの分布の東限といわれている。なお、琵琶湖に生息[7][8]する個体は、1970年以降に琵琶湖に流入する河川に人為放流されたサツキマスの子孫と考えられ、固有種のビワマスと誤認されている場合もある。なお、琵琶湖ではビワマスとサツキマスの交雑個体が確認されている[9]

アマゴ [編集]

アマゴは、サツキマスの河川残留型(陸封型)である。30cm程度になるとパーマークが薄れる個体もある。降海型と見分けがつかなくなるため、この場合は塩類細胞(エラにある海と淡水を行き来するのに必要な細胞)の数で決定するしかない。雄の場合、成魚になると雄のサケに見られる「両あごが伸びて曲がり込む」鼻曲がりのような状態になる個体もまれにある。

イワメ [編集]

イワメ(学名:Oncorhynchus iwame)は、無斑型のアマゴで、アマゴの突然変異で生まれたと考えられている。大分県三重県岐阜県神奈川県愛媛県の一部の流域に生息しており絶滅危惧種に指定されている。銀毛化したアマゴ(シラメ)やヤマメに似ているが、イワメの無斑は劣性遺伝することが分かっており、アマゴ・ヤマメと比べてもサイズも小さい。ヤマメにも無斑型が生まれることがあるが、こちらはイワメとは呼ばない。釣り人の間ではヤマメイワナ交雑種をイワメと呼ぶこともある。

関連項目 [編集]

脚注 [編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 海野 徹也,清家 暁,大竹 二雄,西山 文隆,柴田 恭宏,中川 平介 (2001). “耳石微量元素分析による広島県太田川サツキマスの回遊履歴の推定”. 日本水産学会誌 67 (4): 647-657. http://ci.nii.ac.jp/naid/110003145319/. 
  2. ^ 棟方 有宗,三浦 剛 (2008). “サクラマスのライフサイクルの調節機構の解明と教材化”. 宮城教育大学紀要 43: 105-112. http://ci.nii.ac.jp/naid/110007058328. 
  3. ^ サケ科サケ属の遡上魚・餌食い話
  4. ^ 長良川の支流におけるサツキマスの産卵床の特性 水産増殖 Vol. 59 (2011) No. 3 p. 483-487
  5. ^ 福井県のダム湖や河川で成育した大形のアマゴについて魚類学雑誌 Vol. 22 (1975-1976) No. 3 P 183-185
  6. ^ 神通川で漁獲されたサクラマスの魚体の小型化は何故起こったのか? - 平成15年度富山県水産試験場研究発表会
  7. ^ 加藤文男:琵琶湖水系に生息するアマゴとビワマスについて魚類学雑誌 Vol. 25 (1978-1979) No. 3 P 197-204
  8. ^ 琵琶湖で獲れたアマゴ魚類学雑誌 Vol. 28 (1981-1982) No. 2 P 184-186
  9. ^ ビワマスにおける早期遡上群の存在魚類学雑誌 Vol. 54 (2007) No. 1 P 15-20

外部リンク [編集]