へっつい盗人
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へっつい盗人は上方落語の演目。初代桂春團治が得意ネタとした。
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[編集] あらすじ
友人の引越し祝い二人の男が相談するが。
「どんなもん祝うたらよろしやろ。」
「すぐ使えるものやな。」
「どうでっしゃろ。カンナ屑」
「おい。おい。おい。おい。何言うてんねん。そんなもん火事の元じゃ。・・・・せやないがな、今はいらんけど、あとで、あああってよかったと喜ばれるやつ。」
「ほたら棺桶は。」
「これ、棺桶送るて、そらなんでやねん。」
「あそこ、寝たきりの年寄りおるさかい。今いらんけど、後であってよかったて喜ばれます。」
「アホか!このガキ・・・ホンマ、どう言うたらわかるねん。もろてびっくりするやつや。」
「ダイナマイト!」
「家ふっ飛ぶがな。」
・・・そんな調子で話がまとまらない。
ようよう、へっつい(竈)を祝うことに決まるが二人とも金がない。仕方なしに深夜道具屋に忍び込んで盗んでしまうこととなる。 しかし、アホの方は良心がとがめるのか。
「もし道具屋のオヤジに見つかったらどうしよ。」と不安がる。
相方は「どうもあるかい。覚悟決めておっさんとこ行ったらええがな。」と言い放つ。
「あんたンとこのおっさんてどこですか。」
「さあ。このまえまで天満の堀川にいたはったんやが。方角悪いからいうて堺に宿替えしたんじゃ。」
「どんな家でっか。」
「レンガの洋館でな。高い塀あるねん。」
「ウワア、大きな家でんなあ。何か呉れますか。」
「呉れるとも。時計呉れよんで。」
「そら、ええなあ。やはり金時計でっか。」
「アホ、無期徒刑じゃ。」
「・・・ムキトケイ・・・そ、それ監獄とちゃいますんか。」とやっと気づく。
「そうじゃ。」
「いやあ・・・わて監獄嫌いですねんがな。」
「誰かて嫌いじゃ。ま、そんだけの覚悟で行けいうこっちゃ。ホタラ晩に来いよ。」
だが一人はどうも間が抜けていて、盗人の開店祝いだからと称して家主の家からモーニングを盗んで着てくるような男、案の定、失敗の連続で道具屋の店先で小便するわ。竹の垣どけようとして大きな物音を立てるわ、へっつい持ちあげて縄をかけようとするが、相棒の足の上に竈を落として大騒ぎ。・・・・
とうとう一人は我慢できずに怒り出す。
「鈍やな。おのれは!ぼけっ!かすっ!あほんだら!しっかりせいっ!」
「ポンポン言うな!ポンポン!そら、俺はアホや!そやけどこんなアホ連れてへっつい盗みにくるお前もアホじゃ! お前と俺とどっちがアホか。ここの親父起こして聞いてみよ!」
「そんなアホなことできるかい。」と喧嘩になる。
[編集] 概説
[編集] 後半部
この噺には続きがあり、翌朝竈を盗まれた道具屋の主人が二人の家に押しかけ、さんざん油をしぼったあと二人の服を身ぐるみ剥いでしまう。二人は「これもへっついさんなぶったたたりやろ。」でサゲとなる。昔へっついを粗末に扱うと祟りがあるという俗信があり、それにちなんでいるが、現在は全く通じず、現在は 上記の件で「おなじみのへっつい盗人でございます。」で打ち切っている。
この短縮バージョンは、初代桂春團治がレコード吹き込みの際、時間の都合でカットしてしまったのが始まりである。一人の落語家によって噺が打ち切られる形で残るのは、同じ初代春團治の「いかけや」「鰒のし」初代三遊亭圓遊による「野ざらし」、ほか「品川心中」などがある。いずれも時間の都合や筋の運びに無理があるなどの理由で打ち切られている。
[編集] 初代桂春團治の「へっつい盗人」
初代桂春團治の「へっつい盗人」が今日演じられている型であるが、初代らしく全編くすぐりに満ちていて大阪らしいあくの強い演出が聞きどころである。東京のさらりとした滑稽噺と違うが、一度聞くと笑いの連続でただただ圧倒される。特に初代のレコードは1世紀近くたっても笑わされ、「爆笑王」とよばれた名人芸をうかがうことができる。
あふれかえるギャグもさることながら、初代が考案したオノマトペも聞きどころである。
ジャジャー、ジャージャージャアアアア・・・ポトン、チョピン(小便の音と雫の音)
カラッ。カラコロカラコロカラコロカラ・・・(竹の垣をどける音)
ドンバラバッチャ!プップウ!!(石灯篭が落ち、驚いた男がそばにあった三輪車のラッパをつかんで鳴らす。「おい!何で二つプップウやねん。」「・・いやア、あんましええ音やったさかいもう一回鳴らした。」「そら何すんねん。」のくすぐりが入る。)
なお、レコードには「何か祝いしたいんやけど。どんなのがええやろ?」「どうでっしゃろ。地震の子なんか。」「オイ、地震の子、そんなんどこにあんねん。」「さあ、横浜に言うてやってね、二匹くらい小包で送らして」という奇抜なクスグリがある。これは1923(大正12)年9月1日の関東大震災をテーマにしており、初代が時代の最先端の演出に工夫したことがうかがわれる。
初代柳家金語楼は爆笑王として人気絶頂のころ来阪、初代桂春團治の「へっつい盗人」の小便のオノマトペを聞いて感動した。「私あの話を聞きましてほとほと舌を巻きましたね。・・・・時間計ったらあの小便している間がレコード一枚分たっぷりある。私、東京へ帰ってこれを寄席で試しにやってみましたが一分とももたない。客を飽きさせないで、あれを三分間もやれるというのはよっぽど味のある名人芸でなきゃできませんよ。」(毎日新聞夕刊 1954(昭和29)年9月28日)と証言している。
現在も人気ネタとして多くの落語家が演じている。初代以降の演者としては2代目桂春團治、2代目三遊亭百生、2代目露の五郎兵衛などがいる。現春團治は、柄に合わないのか演じていない。


