寿限無

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寿限無』(じゅげむ)は、早口言葉あるいは言葉遊びとして知られる古典的な噺であり、落語前座噺である。

上方落語では古くは別題を「長名」という。

概要[編集]

生まれた子供がいつまでも元気で長生きできるようにと考えて、とにかく「長い」ものが良いととんでもない名前を付けた、という笑い話。縁起のいい言葉を幾つか紹介され、どれにするか迷った末に全部付けてしまった、という筋の場合もある。

生まれた子供にめでたい名前を付けようとして、お寺の和尚さん(人物が異なる場合もある)の所へ相談に行った父親は、和尚さんから色々と教えてもらったおめでたい言葉を、全て並べて子供の名前にしてしまう。子供はすくすく育って腕白小僧になる。近所の子供とけんかをし、殴られてこぶを作った子供が父親のところに言いつけに来る。やり取りの中で長い名前が繰り返されるうちに、こぶが引っ込んでしまった、というのがサゲ。

元々は「“子供が川に落ちた”という言葉を人々がやり取りするうちに、その長い名前が災いして助けが間に合わず溺れ死ぬ」という皮肉を含んだ話だったが、子供が死ぬという描写が時代に合わず改作が登場した。このような時代背景を鑑みた内容の変更は落語でも珍しいことではない。他にも「子供は大変な寝坊助であり、入学式の日に家族が名前を呼んでいるうちに、夏休みを迎えてしまう」という展開もある。

基本的には前座噺であり、噺の内容に興趣があるというよりも、暗記技術の練習、会話の間の取り方、人物の演じ分けなど、落語家の基礎訓練のためのものという色彩が濃い。しかし早口言葉の面白さがあり、前座噺のなかではよく知られたもののひとつである。プロの落語家にも、最初歩の練習として師匠からみっちりとこの噺を教え込まれたという者は多い。このような良く知られた前座噺を面白く聞かせるには、高度な技術が要求され、3代目桂春團治のように大看板が得意としたこともある。

代表的な例[編集]

以下はこの噺の主人公である赤ん坊に付けられる「名前」の一例である。日本で最も長い名前、としてしばしば語られる。

「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうすけ」

寿限無、寿限無
五劫の擦り切れ
海砂利水魚の
水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処
藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助

(ここでは、NHK教育テレビにほんごであそぼ」での紹介例に漢字を当てた。)

なお、落語家によって一部細かい部分での違いが見られる。

解説[編集]

寿限無
限り無い長寿のこと。
五劫の擦り切れ
本来は「五劫の摺り切れず」が正しい。言い回しのために「ず」が省略されてしまうことがあるらしい。
天女が時折泉で水浴びをする際、その泉の岩の表面が微かに擦り減り、それを繰り返して無くなってしまうまでが一とされ、その期間はおよそ40億年。それが5回擦り切れる、つまり永久に近いほど長い時間のこと。別の落語では、天女が三千年に一回、須弥山に下りてきて羽衣で一振りして、須弥山がなくなるまでが一劫である。
海砂利水魚
海の砂利や水中の魚のように数限りないたとえ。
水行末雲来末風来末
水・雲・風の来し方行く末には果てがないことのたとえ。
食う寝る処に住む処
衣食住の食・住より。これらに困らずに生きて行ける事を祈ったもの。
藪ら柑子の藪柑子
やぶらこうじのぶらこうじ、とも。「やぶらこうじ」とは藪柑子(やぶこうじ)で生命力豊かな縁起物の木の名称。「ぶらこうじ」はやぶこうじがぶらぶらなり下がる様か(?)単に語呂の関係でつけられたようにも思える。
パイポ、シューリンガン、グーリンダイ、ポンポコピー、ポンポコナー
唐土のパイポ王国の歴代の王様の名前でいずれも長生きしたという架空の話から。グーリンダイはシューリンガンのお妃様で、あとの2名が子供(娘)達という説も。
長久命
文字通り長く久しい命。また、「天地長久」という読んでも書いてもめでたい言葉が経文に登場するので、そこからとったとする説も。
長助
長く助けるの意味合いを持つ。

派生[編集]

『寿限無』を元にした新作落語がいくつか存在する。三笑亭夢之助の『寿限無』『たらちね』を混ぜた『寿限たら』、4代目桂福團治の『大人になった寿限無』、三遊亭白鳥の『スーパー寿限無』など。3代目三遊亭圓丈『新寿限無』では遺伝子工学(または生物学)の先生が名付け親となる。他に笑福亭笑子の『新・寿限無』がある。

ほかに長い名前がネタになる落語として「たらちね」があるが、これは実際の名前ではなく、名前の説明まで名前と勘違いするもの。

本作のパロディとして、落語漫画『じょしらく』(久米田康治ヤス)の単行本付属ドラマCD所収の『二次限無』がある。これは、めでたい名前の代わりに、近年のツンデレ系美少女キャラの名前を用いるというもの。

『寿限無』に由来する事物[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]