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「再配分」の版間の差分

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{{Otheruses|人類学|経済学|富の再分配}}
{{Otheruses|人類学|経済学|富の再分配}}
'''再配分'''(さいはいぶん)は、[[文化人類学]]、[[経済学]]、[[社会学]]などで用いられる概念である。[[富]][[共同体]]の中においてある一箇所に集められたのちに、再び[[生産者]]らされる現象を指す
'''再配分'''(さいはいぶん)は、[[文化人類学]]、[[経済学]]、[[社会学]]などで用いられる概念である。再配分では、財集団の中集められたのちに、慣習、法、臨機決定などよって分配される{{Sfn|ポランニー|1998|p=95}}。'''再分配'''とも表記される{{Sfn|浜田|2019a|p=}}


== 概要 ==
== 定義 ==
簡潔な定義として、再配分とは集めて配ることとされる{{Sfn|浜田|2019a|p=11}}。手続きとしての再配分は、財やサービスを集めて成果を配る。再配分は集団的な営為にあたるが、集団の存在は前提条件ではなく、特定の目的に応じて成立する場合もある{{Sfn|浜田|2019a|p=19}}。集める場所は物理的な場所であったり、登記上の占有の変更のように抽象的な場であったりする{{Sfn|浜田|2019a|p=20}}。集める方法や分配の方法は多岐にわたり、捕獲物の貯蔵から現物税制、近代諸国家の租税システムなども含まれる{{Sfn|ポランニー|1998|pp=96-97}}。
再配分は万人の上に成り立つ[[権威]]あるいは[[権力]]に基づいて行われる。[[物資]]や[[農地|土地]]、あるいは[[人材|人的資源]]など[[生産力]]となるものが権威や権力を持つ共同体の[[政府|意思決定機関]]によって集められたのち、[[慣習]]あるいは[[律令|律法]]、時には[[権力者]]による臨機的な決定によって配分がなされる。また、[[教育を受ける権利]]や[[施設]]の[[使用権]]などを対象としたような[[実物貨幣|実物]]を伴わない再配分もある。


再配分は、特に中央権力を有する社会において必ず現れるシステムとされる{{Sfn|栗本|2013|p=1023/3838}}。[[狩猟採集社会]]から[[中央集権国家]]にいたるまで政治制度の一部であり、貯蔵、徴税、分業や社会階層、大規模な儀礼を可能にする{{Sfn|ポランニー|2009|pp=}}。搾取的な性格を持つ場合もあれば、社会保険のように福祉的な性格を持つ場合もある{{Sfn|浜田|2019a|p=20}}。再配分は、中央への運動と外への運動をともない、中心性が不可避とされる{{Sfn|ポランニー|1998|p=97}}。図式的には星状の図表で表され、財や人間の動きは中央に向かう矢と中央から出ていく矢で示される{{Sfn|ポランニー|1998|pp=89-90}}。
再配分と見做せる行為は[[狩猟採集社会]]から[[中央集権|中央集権国家]]に至るまで古今東西問わずあらゆる[[集団]]内において行われている。適切に[[資源]]を分配することによって、[[分業]]や[[量産]]といった高度かつより[[効率]]的な[[生産性|生産活動]]が可能となり、[[生産技術]]を発展させることで[[社会]]そのものが進歩する。反対に再配分が適切に行われない(もしくはそもそも行われていない)場合であれば、[[独占]]や[[寡占]]などによって社会が[[停滞]]し、最終的には[[無政府状態|崩壊]]することが考えられる。


参加者は共同体の意味づけを多様に行うため、再配分の範囲が明確な中心と境界をもつ単一の共同体に限らない場合がある{{efn|たとえば[[ポンペイ島]]の村の再配分では、参加者の立場と状況によって村の意味付けが複数存在する{{Sfn|河野|2019|pp=197-198}}。}}{{Sfn|河野|2019|pp=197-198}}。リーダーや役職が存在せずに徴収と分配が行われ、財の徴収先と分配先が一致しない場合もある。こうした営為を再配分に含めるかについては議論がある{{efn|ニューギニアの{{仮リンク|ツェンバガ|en|Tsembaga Maring tribe}}によるカイコ(kaiko)という儀礼やメラネシア各地におけるリーダーが行う財の集積と分配は、徴収先と分配先の不一致がある{{Sfn|里見|2019|pp=122-124, 133-134}}。}}{{Sfn|里見|2019|pp=133-135}}。[[互酬]]や[[商業|交換]]など[[共同体]]の範疇に囚われない[[流通|経済活動]]を再配分の一種と見なす考えもある{{Sfn|ポランニー|1998|p=91}}。
[[互酬]]や[[商業|交換]]など[[共同体]]の範疇に囚われない[[流通|経済活動]]を再配分の一種と見なす考えもある{{Sfn|ポランニー|2005|p=91}}。

=== 政策との違い ===
政策としての[[富の再分配]]または[[所得再分配]]は、富の格差を是正して公平な分配を達成しようとする[[国民国家]]の政策を指す。累進性のある[[租税制度]]、[[社会保障制度]]などがこれにあたり、再配分される富は基本的に貨幣を指す{{Sfn|浜田|2019a|p=10}}。これに対して人類学における再配分は、国民国家の存在、格差の是正、貨幣の存在を前提としない。饗宴、祝い事、家族内の食物寄託、戦争、交易、公共建築物の建設なども再配分と呼ばれる{{Sfn|浜田|2019a|p=10}}。


== 再配分の形態 ==
== 再配分の形態 ==
=== 家政 ===
;血縁的共同体によるもの
:[[共和ローマ|前帝政期]][[古代ローマ|ローマ]]の[[ファミリア (古代ローマ)|ファミリア]]、[[先秦|先秦時代]][[中国]]の[[宗族]]、[[中世前期|中世]][[ゲルマン人]]の[[ムント]]、[[スラヴ人]]の[[ザドルガ]]など、多くの[[血縁]]に基づく[[部族|大規模共同体]][[国権力]]先立って営まれたこと知らている。こうした共同体においてしばしば強力な[[父長制|父長権]]をもとに、財産[[原始共産制|共有]]や子孫の[[養育]]などを通して物資や[[人力]]の再配分を果たしたとされる。
小規模な集団でも[[政]]として再配分が行われた。[[古代ローマ]]の[[ファミリア (古代ローマ)|ファミリア]]、[[先秦|先秦時代]][[中国]]の[[宗族]]、[[中世前期|中世]][[ゲルマン人]]の[[ムント]]、中央アフリカのクラール、[[スラヴ人]]の[[ザドルガ]]などがこれにあたる。政は集団っての食糧調達も指し、ギリシア語のオイコノミア、ドイツ語のハウスハルトゥングにあた{{Sfn|ポランニー|1998|pp=97-98}}ガーナのダゴンバ地域で族の家の主(yidana)が世帯の再配分の中心なる{{Sfn|友松|2019|pp=149-150}}。家の主は同居家族を食べさせる規範があり、それによって能力が評価される{{Sfn|友松|2019|p=167}}
:
;国家規模によるもの
:[[メソポタミア|古代メソポタミア]]の[[ウル第三王朝|シューメル]]・[[バビロン第1王朝|バビロニア帝国]]、[[エジプト新王国|新王国]]時代の[[古代エジプト]]、[[中国の歴代王朝一覧|中国の歴代王朝]]、[[南アメリカ]]の[[インカ帝国]]など[[中央集権]]的な古代国家が大規模な[[備蓄|貯蔵制度]]による再配分を行ったことが知られている。[[食品|食料]]をはじめとする様々な物資は[[租税]]などの手段を通して集められ、[[自然災害|天災]]などによる[[飢饉]]時の救済措置、あるいは[[賦役]]や[[徴兵令|徴兵]]などの[[動員|国家動員]]に際してこれらの物資を支給した。
:広大な[[領土|支配領域]]を持つ[[国家]]による再配分は、地理的に分化した[[エスニックグループ|集団]]を結びつけ、[[商業|地域間の物品流通]]を促進し国家全体の[[生産力]]を向上させたとする考えがある。
:
;宗教権威に基づくもの
:[[信仰|宗教]]的な意味のある[[祭|祭礼]]を通して再配分を行う例も世界中において確認されている。[[アフリカ]]ではかつての[[ダホメ王国]]の貢祖大祭、[[モシ人]]の[[収穫祭]]であるバスガなどがある{{sfn|川田|2001|pp=}}。[[太平洋]]の[[トロブリアンド諸島]]で交易用[[カヌー]]が進水すると行うサガリは、カヌーの建造に関わった人々に食物を配分する儀式である{{Sfn|マリノフスキ|2010|pp=}}。[[アメリカ大陸]]北西部の[[ポトラッチ]]のように、裕福な者からの[[贈り物|贈与]]は再配分と関係を持つ{{Sfn|モース|2009|pp=}}。
:[[東ローマ帝国]]において、[[貧民]]に対する食糧支給は大土地所有者である[[教会]]によってしばしば行われ、[[キリスト教]]の理念の一つである[[チャリティー]](慈善)と密接に関係していたとされる{{Sfn|大月|2005}}。[[イスラム世界]]にも[[イスラム教]]の「[[五行 (イスラム教)|五行]]」の一つである[[ザカート]](喜捨)に基づく[[ワクフ (イスラム)|ワクフ]]が行われていたことが知られている{{Sfn|加藤|1995|pp=}}。
:
;商業活動によるもの
:共同体間の大規模な富の流動を伴う[[交易]]では、輸入財の分配と輸出財の徴集をより効率的に行うために、再配分を用いた[[経営管理論|管理交易]]が運営される必要がある。管理交易には高度な体制が必要であり、例えば様々な[[国籍]]の[[船]]が集まる[[都心|大都市]]の[[交易港]]では交易財と品物の貯蔵・保護、外部と円滑に中継するための[[道路|道路網]]をはじめとした[[インフラストラクチャー|インフラ]]設備、外国交易者との間の[[トラブル]]に対応するための[[法律]]アシスタントなど多くの機能を備わってなければいけない。


== 再配分と市場 ==
=== 大規模貯蔵制度 ===
[[メソポタミア|古代メソポタミア]]の[[シュメル]]・[[バビロン第1王朝|バビロニア帝国]]、[[エジプト新王国]]、[[中国の歴代王朝一覧|中国の歴代王朝]]、南アメリカの[[インカ帝国]]{{efn|インカにおいては土地の分配、食糧の生産、食糧の貯蔵や分配が管理された。土地は3種類に分類され、太陽信仰のための土地、王の土地、[[アイユ]]という農村共同体の土地が住民に分配された{{Sfn|山本|2014|pp=174, 183, 194-196}}。}}など中央集権的な国家が大規模な貯蔵制度による再配分を行った{{Sfn|ポランニー|1998|p=96}}{{Sfn|屋形|1998|p=}}{{Sfn|山本|2014|pp=174, 183, 194-196}}。
再配分は、共同体の内部において[[市場]]と結びつくことがあり、そうした市場では食料などの[[日用品]]を扱う。古代ギリシアの[[ポリス]]の再配分には、富裕者の家政(オイコス)を用いた方法、都市国家レベルでの[[中央集権]]的な方法、[[アゴラ]]の市場を用いた方法の3種類があった。アテナイの富裕者だった[[キモン]]は古来からの領地にもとづく再配分を行ない、貧困の市民に収穫物を分け与えた。これに対して[[ペリクレス]]はアゴラの方法を推進し、それまで無料だった法廷の陪審者に報酬を支給し、アゴラで食料を入手できるようにした{{sfn|ポランニー|2005|pp=第12章}}。


=== 祭礼 ===
中世ヨーロッパでは領主や教会、のちには都市自治体が食料や日用品の流通を促進させ、必要物資を確保するための市場管理を行った{{sfn|山田|1999|pp=}}。北アメリカでは植民地時代から19世紀にかけて市場法の伝統があり、都市では食料の高騰や欠乏を防ぐためにパブリック・マーケットが設立された。食料品はパブリック・マーケットを通してのみ購入でき、市場外取引、転売、買占めは禁止された。老人、未亡人、身体障害者、貧困者などは売り場使用料や営業時間制限を免除され、路上での[[行商]]が認められた。ニューヨークのように冬が厳しい都市では、食料の他に燃料も管理された{{Sfn|三瓶|2010|pp=}}。
アフリカでは[[ダホメ王国]]の貢祖大祭、[[モシ人]]の[[収穫祭]]であるバスガなどがある{{sfn|川田|2001|pp=}}。太平洋の[[トロブリアンド諸島]]で交易用[[カヌー]]が進水すると行うサガリは、カヌーの建造に関わった人々に食物を配分する儀式である{{Sfn|マリノフスキ|2010|pp=}}。アメリカ大陸北西部の[[ポトラッチ]]のように、裕福な者からの[[贈り物|贈与]]は再配分と関係を持つ{{Sfn|モース|2009|pp=}}。

=== 慈善、喜捨 ===
[[東ローマ帝国]]において、貧民に対する食糧支給は大土地所有者である教会によってしばしば行われ、[[キリスト教]]の理念の一つである慈善と密接に関係していた。これは市民から教会への寄進によって教会の財産が確立し、その財をもとにして慈善活動が行われたことによる{{efn|キリスト教が4世紀から6世紀にかけて東ローマ帝国で体制化していった経緯は、[[テオドシウス法典]]や[[ユスティニアヌス法典]]などで確認できる{{Sfn|大月|2018|pp=46-49}}。}}{{Sfn|大月|2018|pp=46-49}}。[[イスラム世界]]では[[イスラム教]]の「[[五行 (イスラム教)|五行]]」の一つである[[ザカート]]に基づいて[[ワクフ (イスラム)|ワクフ]]が行われ、所得の再分配や社会資本の形成がなされた{{Sfn|加藤|2016|pp=34-38}}。

=== 交易 ===
[[交易]]は、共同体がその場にない財を獲得するために行われる。大規模な交易は政府または政府に管理された組織が担い、再配分を用いた管理交易または条約交易が運営された。輸入された財の分配と輸出材の徴集が行われ、共同体の間では条約の存在が前提とされた{{efn|管理交易では財の交換レート、計測、品質検査、貯蔵、保管、人員などが管理される{{Sfn|ポランニー|1998|p=181}}。}}{{Sfn|ポランニー|1998|pp=179-181}}。

=== 市場 ===
再配分は、共同体の内部において[[市場]]と結びつくことがあり、そうした市場では食料などの[[日用品]]を扱う。古代ギリシアの[[ポリス]]の再配分には、富裕者の家政(オイコス)を用いた方法、都市国家レベルでの[[中央集権]]的な方法、[[アゴラ]]の市場を用いた方法の3種類があった。アテナイの富裕者だった[[キモン]]は古来からの領地にもとづく再配分を行ない、貧困の市民に収穫物を分け与えた。これに対して[[ペリクレス]]はアゴラの方法を推進し、それまで無料だった法廷の陪審者に報酬を支給し、アゴラで食料を入手できるようにした{{sfn|ポランニー|1998|pp=第12章}}。

中世ヨーロッパでは領主や教会、のちには都市自治体が食料や日用品の流通を促進させ、必要物資を確保するための市場管理を行った{{sfn|山田|1999|pp=}}。北アメリカでは[[アメリカ合衆国の植民地時代|植民地時代]]から19世紀にかけて市場法の伝統があり、都市では食料の高騰や欠乏を防ぐためにパブリック・マーケットが設立された。食料品はパブリック・マーケットを通してのみ購入でき、市場外取引、転売、買占めは禁止された。老人、未亡人、身体障害者、貧困者などは売り場使用料や営業時間制限を免除され、路上での[[行商]]が認められた。ニューヨークのように冬が厳しい都市では、食料の他に燃料も管理された{{Sfn|三瓶|2010|pp=}}。

=== 保険、社会保障 ===
保険は加入者が掛け金を支払い、それに応じて保険金が支払われる。企業や政府機関に集めた掛け金を加入者に配りなおす制度という点で再配分に含まれる。他の再配分と異なる特徴としてリスクも集められる点がある{{efn|保険の種類によって効果は異なる。リスク細分型の自動車保険では、掛け金の多寡はリスクの高低にもとづいており個人主義的な性格が強い。他方で掛け金をリスクに応じて差異化しない健康保険は、匿名的な相互扶助による富の移転機能がある{{Sfn|浜田|2019a|p=21}}。}}{{Sfn|浜田|2019a|pp=20-21}}。
[[介護保険]]の制度は、若年層からの保険料で親や祖父母の介護を可能とするという点で、扶助原理にもとづく所得再配分を含んだ再配分制度としての面がある{{efn|介護保険と同様に所得再配分機能に依拠して設計された制度として[[年金]]がある{{Sfn|加賀谷|2019|p=67}}。}}{{Sfn|加賀谷|2019|pp=66-67}}。

社会保障のもとになる租税システムをどのように解釈するかで、社会保障と再配分の関係は異なって解釈される。税金を払うことで何らかのサービスを受け取る権利があると主張する場合は再配分よりも交換の概念に近い。税金を払っているのは自分の他にもおり、集められた財の配分を求める場合は交換よりも再配分に近い。このように個人の見通しによって異なる{{efn|福祉国家の体制を持つフィンランドは、予算増大のなかで公的サービスを維持するために市場経済に親和的なケアシステムが模索されている。そうした状況下で、たとえば高齢者ケアにおける緊急通報システムは人的資源が限られるため再配分の論理が強く働いている{{Sfn|高橋|2019|pp=43-44}}。}}{{Sfn|高橋|2019|pp=42-43}}。

=== 格差是正 ===
インド政府は、[[カースト]]による差別の撤廃と個人の平等を実現するために{{仮リンク|留保制度|en|Reservation in India}}を実施した{{Sfn|田口|2019|p=104}}。不平等の原因となっていたカーストに代わって[[指定カースト]]や[[指定トライブ]]という新しい概念の集団を定義し、教育、公職、議席の優遇措置を定めた{{efn|後進集団は{{仮リンク|その他の後進諸階級|en|Other Backward Class}}, OBC)とも呼ばれ、[[インド憲法]]では「社会的・教育的後進階層」と表記されているが、その意味については解釈が分かれてきた{{Sfn|田口|2019|p=95}}。}}{{Sfn|田口|2019|pp=95-96}}。留保制度の中にはヒエラルキーと平等性のモラルが併存することになり、論争や反対運動を起こしつつ拡大傾向にある{{Sfn|田口|2019|pp=96-98}}。


== 数学と文字 ==
== 数学と文字 ==
{{see also|会計史}}
再配分で管理する物資の数量や種類が増えるにつれ、計算や記録も複雑化した。このため再配分システムは、シュメルのトークンと[[ブッラ]]{{Sfn|木原|2006|pp=}}や、ミケーネ文明の貯蔵制度{{Sfn|周藤|2007|pp=}}における[[線文字B]]など、初期の文字の発達と関連があるとされている。エジプトで[[エジプト式分数]]が発達した理由として、再配分による現物経済もあげられている{{Sfn|ジョーゼフ|1996|pp=}}。
再配分で管理する物資の数量や種類が増えるにつれ、計算や記録も複雑化した。このため再配分システムは、[[シュメル]]のトークンと[[ブッラ]]{{Sfn|木原|2006|pp=61-62}}や、[[ミケーネ文明]]の貯蔵制度における[[線文字B]]{{efn|ミケーネ時代のギリシアには20から30の小王国があり、いずれも宮殿に物資を貯蔵して管理する再配分制度を基盤としていた{{Sfn|周藤|2007|pp=14-15}}。}}{{Sfn|周藤|2007|pp=14-15}}など、初期の文字の発達と関連があるとされている。古代エジプトで[[エジプト式分数]]が発達した理由として、再配分による現物経済もあげられている{{Sfn|ジョーゼフ|1996|pp=101, 109}}。


== 出典・脚注 ==
== 出典・脚注 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|author=[[大月康弘]] |title=中世ローマ帝国の社会経済システム : 再分配国家と市場の役割 |url=https://seijo.repo.nii.ac.jp/records/5405 |journal=経済研究所年報 |publisher=成城大学経済研究所 |year=2018 |month=apr |volume= |issue=31 |pages=33-51 |naid= |issn=0916-1023 |accessdate=2024-01-16|ref={{sfnref|大月|2018}}}}
=== 単行本 ===
* {{Cite journal|和書|author=[[加藤博]] |title=イスラム経済の基本構造 |url=http://jswaa.org/jswaa/JWAA_07_2006_061-081.pdf |format=PDF |journal=経済研究所年報 |publisher=成城大学経済研究所 |year=2016 |month=apr |issue=29 |pages=5-44 |naid=40020877109 |issn=09161023 |accessdate=2024-01-16|ref={{sfnref|加藤|2016}}}}
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| series = 講談社学術文庫
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| first = 康弘
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| first = 博
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| author-link = 加藤博
| title = 文明としてのイスラーム
| publisher = 東京大学出版会
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| year = 1995
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* {{Citation| 和書
| first = 順造
| first = 順造
84行目: 69行目:
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* {{Cite journal|和書|author=木原徳子 |title=トークンからみたウルク・エクスパンション |url= http://jswaa.org/wp/wp-content/themes/jswaa/pdf/jwaa/07/JWAA_07_2006_061-081.pdf |format=PDF |journal=西アジア考古学 |publisher=日本西アジア考古学会 |year=2006 |month=mar |issue=7 |pages=61-81 |naid=40015182195 |issn=13456288 |accessdate=2020-07-16|ref={{sfnref|木原|2006}}}}
* {{Citation| 和書
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* {{Citation| 和書
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| first = 弘喜
| first = 弘喜
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| chapter = 十九世紀アメリカにおける市場
| chapter = 十九世紀アメリカにおける市場
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134行目: 130行目:
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* {{Cite journal|和書|author=[[周藤芳幸]] |year=2007| |url=https://hdl.handle.net/2237/11271 |title=ミケーネ社会からポリス社会への構造転換に関する統合的研究 |journal=研究報告書.科学研究費補助金報告書;基盤研究(C);16520438 |accessdate=2020-07-16|ref={{sfnref|周藤|2007}}}}
* {{Cite book|和書|year=2019|title=再分配のエスノグラフィ―経済・統治・社会的なもの |editor=浜田明範|publisher=悠書館|series = 国立民族学博物館論集|ISBN=|ref=harv}}
** {{Cite book|和書|author=加賀谷真梨|title=再分配制度としての介護保険法とコミュニティの再編―沖縄・離島社会を事例に|ref={{SfnRef|加賀谷|2019}}}}
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** {{Cite book|和書|author=友松夕香|title=執拗なる共食の実践―ガーナ北部の西ダゴンバ地域における穀物の不足と同居家族の経済関係|ref={{SfnRef|友松|2019}}}}
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** {{Cite book|和書|author=浜田明範|title=12月のプランカシ―ガーナ南部において集める/集まるということ|ref={{SfnRef|浜田|2019b}}}}
* {{Citation| 和書
* {{Citation| 和書
| author = カール・ポランニー
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140行目: 146行目:
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152行目: 158行目:
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* {{Citation| 和書
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| title = [[大転換|大転換-市場社会の形成と崩壊]](新訳版)
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* {{Cite journal|和書|author=[[山本紀夫]] |title=第5章 インカ帝国の農耕文化 : 主としてクロニカ史料の分析から |url=https://doi.org/10.15021/00008939 |journal=国立民族学博物館調査報告 |publisher=国立民族学博物館 |year=2014 |month=mar |issue=117 |pages=159-207 |naid= |issn=13406787 |accessdate=2024-01-16|ref={{sfnref|山本|2014}}}}


=== ・記事 ===
== 関連 ==
* {{Cite journal|和書|author=[[明石茂生]] |title=古代メソポタミアにおける市場,国家,貨幣 : 商人的経済再考 |url=http://id.nii.ac.jp/1109/00003647/ |journal=経済研究所年報 |publisher=成城大学経済研究所 |year=2015 |month=apr |issue=28 |pages=163-236 |naid=120005765221 |issn=0916-1023|accessdate=2020-07-16|ref={{sfnref|明石|2015}}}}
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* {{Cite journal|和書|author=[[周藤芳幸]] |year=2007| |url=https://hdl.handle.net/2237/11271 |title=ミケーネ社会からポリス社会への構造転換に関する統合的研究 |journal=研究報告書.科学研究費補助金報告書;基盤研究(C);16520438 |accessdate=2020-07-16|ref={{sfnref|周藤|2007}}}}
| last = 大月
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| title = 帝国と慈善 ビザンツ
| publisher = 創文社
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| year = 2005
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}}
* {{Cite journal|和書|author=久保亮輔 |title=ワクフと経済発展 : ティムール・クランの「長い分岐」論をめぐって |url=https://doi.org/10.15057/74297 |journal=一橋経済学 |publisher=一橋大学大学院経済学研究科 |year=2022 |month=sep |volume=13 |issue=1 |pages=5-34 |naid= |issn= |accessdate=2024-01-16|ref={{sfnref|久保|2022}}}}
* {{Citation| 和書
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| author-link = 重田園江
| title = 連帯の哲学Ⅰ フランス社会連帯主義
| publisher = 勁草書房
| series =
| year = 2010
| isbn =
}}
* {{Citation| 和書
| author1 = [[ナンシー・フレイザー]]
| author2 = [[アクセル・ホネット]]
| title = 再配分か承認か?―政治・哲学論争
| publisher = 法政大学出版局
| series = 叢書ウニベルシタス
| translator = [[加藤泰史]]
| year = 2012
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| ref = {{sfnref|フレイザー, ホネット編|2012}}
}}(原書 {{Cite| 洋書
| last =
| first =
| author = Nancy Fraser, Axel Honneth
| year = 2003
| title = Redistribution or Recognition?: A Political-philosophical Exchange
| publisher = Verso
| isbn =
}})


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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*[[互酬]]
*[[互酬]]
*[[社会階層]]
*[[社会階層]]
*[[正義]]
*[[富の再分配]]
*[[非市場経済]]
*[[非市場経済]]
*[[資源配分]]
*[[資源配分]]
*[[福祉]]
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== 外部リンク ==
*{{Wayback|url=http://homepage3.nifty.com/thinkers/smlgtr1.htm |title=フェリックス・ショムロー『経済生活の原初形態』 |date=20040901153729}} - [[島村博]]・[[三苫民雄]]訳

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2024年2月16日 (金) 04:13時点における版

再配分(さいはいぶん)は、文化人類学経済学社会学などで用いられる概念である。再配分では、財が集団の中で集められたのちに、慣習、法、臨機の決定などによって分配される[1]再分配とも表記される[2]

定義

簡潔な定義として、再配分とは集めて配ることとされる[3]。手続きとしての再配分は、財やサービスを集めて成果を配る。再配分は集団的な営為にあたるが、集団の存在は前提条件ではなく、特定の目的に応じて成立する場合もある[4]。集める場所は物理的な場所であったり、登記上の占有の変更のように抽象的な場であったりする[5]。集める方法や分配の方法は多岐にわたり、捕獲物の貯蔵から現物税制、近代諸国家の租税システムなども含まれる[6]

再配分は、特に中央権力を有する社会において必ず現れるシステムとされる[7]狩猟採集社会から中央集権国家にいたるまで政治制度の一部であり、貯蔵、徴税、分業や社会階層、大規模な儀礼を可能にする[8]。搾取的な性格を持つ場合もあれば、社会保険のように福祉的な性格を持つ場合もある[5]。再配分は、中央への運動と外への運動をともない、中心性が不可避とされる[9]。図式的には星状の図表で表され、財や人間の動きは中央に向かう矢と中央から出ていく矢で示される[10]

参加者は共同体の意味づけを多様に行うため、再配分の範囲が明確な中心と境界をもつ単一の共同体に限らない場合がある[注釈 1][11]。リーダーや役職が存在せずに徴収と分配が行われ、財の徴収先と分配先が一致しない場合もある。こうした営為を再配分に含めるかについては議論がある[注釈 2][13]互酬交換など共同体の範疇に囚われない経済活動を再配分の一種と見なす考えもある[14]

政策との違い

政策としての富の再分配または所得再分配は、富の格差を是正して公平な分配を達成しようとする国民国家の政策を指す。累進性のある租税制度社会保障制度などがこれにあたり、再配分される富は基本的に貨幣を指す[15]。これに対して人類学における再配分は、国民国家の存在、格差の是正、貨幣の存在を前提としない。饗宴、祝い事、家族内の食物寄託、戦争、交易、公共建築物の建設なども再配分と呼ばれる[15]

再配分の形態

家政

小規模な集団でも家政として再配分が行われた。古代ローマファミリア先秦時代中国宗族中世ゲルマン人ムント、中央アフリカのクラール、スラヴ人ザドルガなどがこれにあたる。家政は集団にとっての食糧調達も指し、ギリシア語のオイコノミア、ドイツ語のハウスハルトゥングがこれにあたる[16]。ガーナのダゴンバ地域では大家族の家の主(yidana)が世帯の再配分の中心となる[17]。家の主は同居家族を食べさせる規範があり、それによって能力が評価される[18]

大規模貯蔵制度

古代メソポタミアシュメルバビロニア帝国エジプト新王国中国の歴代王朝、南アメリカのインカ帝国[注釈 3]など中央集権的な国家が大規模な貯蔵制度による再配分を行った[20][21][19]

祭礼

アフリカではダホメ王国の貢祖大祭、モシ人収穫祭であるバスガなどがある[22]。太平洋のトロブリアンド諸島で交易用カヌーが進水すると行うサガリは、カヌーの建造に関わった人々に食物を配分する儀式である[23]。アメリカ大陸北西部のポトラッチのように、裕福な者からの贈与は再配分と関係を持つ[24]

慈善、喜捨

東ローマ帝国において、貧民に対する食糧支給は大土地所有者である教会によってしばしば行われ、キリスト教の理念の一つである慈善と密接に関係していた。これは市民から教会への寄進によって教会の財産が確立し、その財をもとにして慈善活動が行われたことによる[注釈 4][25]イスラム世界ではイスラム教の「五行」の一つであるザカートに基づいてワクフが行われ、所得の再分配や社会資本の形成がなされた[26]

交易

交易は、共同体がその場にない財を獲得するために行われる。大規模な交易は政府または政府に管理された組織が担い、再配分を用いた管理交易または条約交易が運営された。輸入された財の分配と輸出材の徴集が行われ、共同体の間では条約の存在が前提とされた[注釈 5][28]

市場

再配分は、共同体の内部において市場と結びつくことがあり、そうした市場では食料などの日用品を扱う。古代ギリシアのポリスの再配分には、富裕者の家政(オイコス)を用いた方法、都市国家レベルでの中央集権的な方法、アゴラの市場を用いた方法の3種類があった。アテナイの富裕者だったキモンは古来からの領地にもとづく再配分を行ない、貧困の市民に収穫物を分け与えた。これに対してペリクレスはアゴラの方法を推進し、それまで無料だった法廷の陪審者に報酬を支給し、アゴラで食料を入手できるようにした[29]

中世ヨーロッパでは領主や教会、のちには都市自治体が食料や日用品の流通を促進させ、必要物資を確保するための市場管理を行った[30]。北アメリカでは植民地時代から19世紀にかけて市場法の伝統があり、都市では食料の高騰や欠乏を防ぐためにパブリック・マーケットが設立された。食料品はパブリック・マーケットを通してのみ購入でき、市場外取引、転売、買占めは禁止された。老人、未亡人、身体障害者、貧困者などは売り場使用料や営業時間制限を免除され、路上での行商が認められた。ニューヨークのように冬が厳しい都市では、食料の他に燃料も管理された[31]

保険、社会保障

保険は加入者が掛け金を支払い、それに応じて保険金が支払われる。企業や政府機関に集めた掛け金を加入者に配りなおす制度という点で再配分に含まれる。他の再配分と異なる特徴としてリスクも集められる点がある[注釈 6][33]介護保険の制度は、若年層からの保険料で親や祖父母の介護を可能とするという点で、扶助原理にもとづく所得再配分を含んだ再配分制度としての面がある[注釈 7][35]

社会保障のもとになる租税システムをどのように解釈するかで、社会保障と再配分の関係は異なって解釈される。税金を払うことで何らかのサービスを受け取る権利があると主張する場合は再配分よりも交換の概念に近い。税金を払っているのは自分の他にもおり、集められた財の配分を求める場合は交換よりも再配分に近い。このように個人の見通しによって異なる[注釈 8][37]

格差是正

インド政府は、カーストによる差別の撤廃と個人の平等を実現するために留保制度英語版を実施した[38]。不平等の原因となっていたカーストに代わって指定カースト指定トライブという新しい概念の集団を定義し、教育、公職、議席の優遇措置を定めた[注釈 9][40]。留保制度の中にはヒエラルキーと平等性のモラルが併存することになり、論争や反対運動を起こしつつ拡大傾向にある[41]

数学と文字

再配分で管理する物資の数量や種類が増えるにつれ、計算や記録も複雑化した。このため再配分システムは、シュメルのトークンとブッラ[42]や、ミケーネ文明の貯蔵制度における線文字B[注釈 10][43]など、初期の文字の発達と関連があるとされている。古代エジプトでエジプト式分数が発達した理由として、再配分による現物経済もあげられている[44]

出典・脚注

注釈

  1. ^ たとえばポンペイ島の村の再配分では、参加者の立場と状況によって村の意味付けが複数存在する[11]
  2. ^ ニューギニアのツェンバガ英語版によるカイコ(kaiko)という儀礼やメラネシア各地におけるリーダーが行う財の集積と分配は、徴収先と分配先の不一致がある[12]
  3. ^ インカにおいては土地の分配、食糧の生産、食糧の貯蔵や分配が管理された。土地は3種類に分類され、太陽信仰のための土地、王の土地、アイユという農村共同体の土地が住民に分配された[19]
  4. ^ キリスト教が4世紀から6世紀にかけて東ローマ帝国で体制化していった経緯は、テオドシウス法典ユスティニアヌス法典などで確認できる[25]
  5. ^ 管理交易では財の交換レート、計測、品質検査、貯蔵、保管、人員などが管理される[27]
  6. ^ 保険の種類によって効果は異なる。リスク細分型の自動車保険では、掛け金の多寡はリスクの高低にもとづいており個人主義的な性格が強い。他方で掛け金をリスクに応じて差異化しない健康保険は、匿名的な相互扶助による富の移転機能がある[32]
  7. ^ 介護保険と同様に所得再配分機能に依拠して設計された制度として年金がある[34]
  8. ^ 福祉国家の体制を持つフィンランドは、予算増大のなかで公的サービスを維持するために市場経済に親和的なケアシステムが模索されている。そうした状況下で、たとえば高齢者ケアにおける緊急通報システムは人的資源が限られるため再配分の論理が強く働いている[36]
  9. ^ 後進集団はその他の後進諸階級英語版, OBC)とも呼ばれ、インド憲法では「社会的・教育的後進階層」と表記されているが、その意味については解釈が分かれてきた[39]
  10. ^ ミケーネ時代のギリシアには20から30の小王国があり、いずれも宮殿に物資を貯蔵して管理する再配分制度を基盤としていた[43]

出典

  1. ^ ポランニー 1998, p. 95.
  2. ^ 浜田 2019a.
  3. ^ 浜田 2019a, p. 11.
  4. ^ 浜田 2019a, p. 19.
  5. ^ a b 浜田 2019a, p. 20.
  6. ^ ポランニー 1998, pp. 96–97.
  7. ^ 栗本 2013, p. 1023/3838.
  8. ^ ポランニー 2009.
  9. ^ ポランニー 1998, p. 97.
  10. ^ ポランニー 1998, pp. 89–90.
  11. ^ a b 河野 2019, pp. 197–198.
  12. ^ 里見 2019, pp. 122–124, 133–134.
  13. ^ 里見 2019, pp. 133–135.
  14. ^ ポランニー 1998, p. 91.
  15. ^ a b 浜田 2019a, p. 10.
  16. ^ ポランニー 1998, pp. 97–98.
  17. ^ 友松 2019, pp. 149–150.
  18. ^ 友松 2019, p. 167.
  19. ^ a b 山本 2014, pp. 174, 183, 194–196.
  20. ^ ポランニー 1998, p. 96.
  21. ^ 屋形 1998.
  22. ^ 川田 2001.
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  25. ^ a b 大月 2018, pp. 46–49.
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  28. ^ ポランニー 1998, pp. 179–181.
  29. ^ ポランニー 1998, pp. 第12章.
  30. ^ 山田 1999.
  31. ^ 三瓶 2010.
  32. ^ 浜田 2019a, p. 21.
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  36. ^ 高橋 2019, pp. 43–44.
  37. ^ 高橋 2019, pp. 42–43.
  38. ^ 田口 2019, p. 104.
  39. ^ 田口 2019, p. 95.
  40. ^ 田口 2019, pp. 95–96.
  41. ^ 田口 2019, pp. 96–98.
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参考文献

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    • 里見龍樹『メラネシア人類学における再分配の境界―「集団」と「戦争」をめぐって』。 
    • 高橋絵里香『誰がボタンを押すのか―フィンランドの緊急通報システムにみる要求/提供のダイナミクス』。 
    • 田口陽子『再分配のアナロジー―インドにおける生モラルと国家制度の重なり合い』。 
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    • 浜田明範『再分配を通じた集団の生成―手続きと複数性に注目して』。 
    • 浜田明範『12月のプランカシ―ガーナ南部において集める/集まるということ』。 
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関連文献

関連項目