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「自己犠牲」の版間の差分

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== 生物学に於ける自己犠牲 ==
== 生物学に於ける自己犠牲 ==

生物一般に於いても、自己犠牲的な現象が見られる場合がある。親が子をかばう行動は多くの動物に見られる。これは親による子の保護の一例である。それ以外にも様々な例があり、一般的に[[利他的行動]]と呼ばれる。([[行動生態学]]も参照。)
生物一般に於いても、自己犠牲的な現象が見られる場合がある。親が子をかばう行動は多くの動物に見られる。これは親による子の保護の一例である。それ以外にも様々な例があり、一般的に[[利他的行動]]と呼ばれる。([[行動生態学]]も参照。)


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;『星の王子様』
;『星の王子様』
[[アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ]]の『[[星の王子さま]]』では、王子は小さな薔薇のために命をささげる<ref>眞柳 麻美「愛と自己犠牲 : 星の王子さまの死の意味について 部」工学院大学共通課程研究論叢 43(1), 81-91, 2005-10-31[http://ci.nii.ac.jp/els/110004627181.pdf?id=ART0007337842&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1419092927&cp=]</ref>。
[[アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ]]の『[[星の王子さま]]』では、王子は小さな薔薇のために命をささげる<ref>眞柳麻美,「愛と自己犠牲:星の王子さまの死の意味について(1)工学院大学共通課程研究論叢 43(1), 81-91, 2005-10-31, {{naid|110004627181}}。</ref>。


;『銀河鉄道の夜』
;『銀河鉄道の夜』
[[宮沢賢治]]の『[[銀河鉄道の夜]]』で自己犠牲は重要なテーマとなっている<ref name="wada_yasutomo">和田康友「宮澤賢治と自己犠牲」日本文學誌要 54, 50-58, 1996-07-13</ref>。主人公のジョバンニは次のようにつぶやく<ref name="wada_yasutomo" />。
[[宮沢賢治]]の『[[銀河鉄道の夜]]』で自己犠牲は重要なテーマとなっている<ref name="wada_yasutomo">和田康友「宮澤賢治と自己犠牲」日本文學誌要 54, 50-58, 1996-07-13</ref>。主人公のジョバンニは次のようにつぶやく<ref name="wada_yasutomo" />。


{{Quotation|僕はもうあのさそりのやうに ほんたうに みんなの幸のためならば 僕のからだなんか 百ぺんやいても かまはない。|『銀河鉄道の夜』}}
{{Quotation|僕はもうあのさそりのやうに ほんたうに みんなの幸のためならば 僕のからだなんか 百ぺんやいても かまはない。|『銀河鉄道の夜』}}


銀河を走る鉄道の車窓からは、赤い星「さそり」が見えた<ref name="wada_yasutomo" />。さそりが、それまで他の命をうばって食糧として生きてきた罪を、死の直前に懺悔し「まことのみんなの幸いのために私の体をお使い下さい」と祈ったことで天に召されて星になったのである<ref name="wada_yasutomo" />。このさそりの祈り、そして自らの身体を燃やすことで、闇のような世界を照らし続ける「さそり」の姿によって、自己犠牲的精神が描かれている<ref name="wada_yasutomo" />。
銀河を走る鉄道の車窓からは、赤い星「さそり」が見えた<ref name="wada_yasutomo" />。さそりが、それまで他の命をうばって食糧として生きてきた罪を、死の直前に懺悔し「まことのみんなの幸いのために私の体をお使い下さい」と祈ったことで天に召されて星になったのである<ref name="wada_yasutomo" />。このさそりの祈り、そして自らの身体を燃やすことで、闇のような世界を照らし続ける「さそり」の姿によって、自己犠牲的精神が描かれている<ref name="wada_yasutomo" />。
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**『[[幸福な王子]]』
**『[[幸福な王子]]』
*宮沢賢治
*宮沢賢治
**『[[よだかの星]]』 
**『[[よだかの星]]』
**『[[グスコーブドリの伝記]]』 
**『[[グスコーブドリの伝記]]』
**『[[雨ニモマケズ]]』
**『[[雨ニモマケズ]]』
*[[三浦綾子]]
*[[三浦綾子]]
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*[[小泉八雲]]
*[[小泉八雲]]
**[[稲むらの火]]
**[[稲むらの火]]

『かみな』


=== 絵本 ===
=== 絵本 ===
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*『[[グラン・トリノ]]』
*『[[グラン・トリノ]]』
*『[[奇跡の海 (1996年の映画)|奇跡の海]]』
*『[[奇跡の海 (1996年の映画)|奇跡の海]]』



=== 漫画 ===
=== 漫画 ===
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== 自己犠牲に関連する現実世界の出来事の例 ==
== 自己犠牲に関連する現実世界の出来事の例 ==
=== 他者の生命の為に行われた行為 ===
=== 他者の生命の為に行われた行為 ===
*身体を用いた大事故等の阻止 - [[塩狩峠|塩狩峠列車暴走事故]]・[[打坂地蔵尊]]
* 身体を用いた大事故等の阻止 - [[塩狩峠|塩狩峠列車暴走事故]]・[[打坂地蔵尊]]
*危険度の高い難病罹患者への献身 - [[ダミアン神父]]・[[野口英世]]
* 危険度の高い難病罹患者への献身 - [[ダミアン神父]]・[[野口英世]]
*他者の生命と自己の生命の取引 - [[清水宗治]]・[[マキシミリアノ・コルベ]] ・[[廣枝音右衛門]]
* 他者の生命と自己の生命の取引 - [[清水宗治]]・[[マキシミリアノ・コルベ]] ・[[廣枝音右衛門]]
*制御不能となった輸送機械の暴走等から他者を救うための死闘 - [[杉浦茂峰]]・[[T-33A入間川墜落事故]]・[[京福電気鉄道越前本線列車衝突事故]](2000年)
* 制御不能となった輸送機械の暴走等から他者を救うための死闘 - [[杉浦茂峰]]・[[T-33A入間川墜落事故]]・[[京福電気鉄道越前本線列車衝突事故]](2000年)
*他者の生命を救うために行われた危険を伴う行為 - [[新大久保駅乗客転落事故]]・[[ときわ台駅 (東京都)#2007年の踏切事故|2007年ときわ台駅踏切事故]]
* 他者の生命を救うために行われた危険を伴う行為 - [[新大久保駅乗客転落事故]]・[[ときわ台駅 (東京都)#2007年の踏切事故|2007年ときわ台駅踏切事故]]
*他者の救助を自己の救助よりも優先させた行為 - [[エア・フロリダ90便墜落事故]](他の生存者に救助ヘリを譲った男性が死亡)
* 他者の救助を自己の救助よりも優先させた行為 - [[エア・フロリダ90便墜落事故]](他の生存者に救助ヘリを譲った男性が死亡)


=== 味方の損害を低減又は敵方に損害を与えるために行われた行為 ===
=== 味方の損害を低減又は敵方に損害を与えるために行われた行為 ===
*危険度が高い又は死亡を前提とした行為への志願 - [[殿 (軍事用語)|殿]]・[[特別攻撃隊]]
* 危険度が高い又は死亡を前提とした行為への志願 - [[殿 (軍事用語)|殿]]・[[特別攻撃隊]]
*忠義を自己の生命よりも優先させた行為 - [[鳥居強右衛門]]
* 忠義を自己の生命よりも優先させた行為 - [[鳥居強右衛門]]
*抗議の自殺 - [[森川清治郎]]・[[由比忠之進]]・[[ティック・クアン・ドック]]
* 抗議の自殺 - [[森川清治郎]]・[[由比忠之進]]・[[ティック・クアン・ドック]]


== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
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* [[ヨハネの黙示録]]
* [[ヨハネの黙示録]]


== 関連文献 ==
== 外部リンク ==
*宮内 寿子「ケアの倫理における自己犠牲の価値」 筑波学院大学紀要 5, 93-104, 2010 [http://ci.nii.ac.jp/els/110007671854.pdf?id=ART0009486375&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1419092537&cp=]
* 宮内寿子,{{PDFlink|[https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2010/09MIYAUCHI.pdf ケアの倫理における自己犠牲の価値]}}筑波学院大学紀要 5 2010 p.93-104
* 二宮克美, 井上裕光, 山本ちか, [https://doi.org/10.24534/amjspp.16.0_54 A-19 中学生の親の自己決定意識 : 自己優先対自己犠牲の葛藤場面を通して]日本パーソナリティ心理学会発表論文集 16 2007年 p.54-55, 日本パーソナリティ心理学会, {{doi|10.24534/amjspp.16.0_54}}, {{naid|110006433841}}


*二宮 克美井上 裕光山本 ちか「A-19 中学生の親の自己決定意識 : 自己優先対自己犠牲の葛藤場面を通して 」日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集 (16), 54-55, 2007-08-25 [http://ci.nii.ac.jp/els/110006433841.pdf?id=ART0008441344&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1419092750&cp=]


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2020年4月23日 (木) 07:44時点における版

自己犠牲(じこぎせい、self-sacrifice)とは、何らかの目的や他者のために、自己の時間・労力・身体・生命をささげること。

概要

自己犠牲は、様々な宗教で重視されている。

般若心経では、自己犠牲とは自己を放棄することで、『自我を捨て、無我になる』すなわち自分以外のもの、普遍的世界だとしている。

法華経でも自分の利益を犠牲にして他人の利益を図る『利他心』は当然の真理とし、これほど尊いものはないと教えられる。

キリスト教では約2000年前、イエス・キリストが人類のを身代わりに受けるために十字架に架かった、とし、自己犠牲はだとされている。

ヨハネによる福音書』15章13節には「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」とある。

生物学に於ける自己犠牲

生物一般に於いても、自己犠牲的な現象が見られる場合がある。親が子をかばう行動は多くの動物に見られる。これは親による子の保護の一例である。それ以外にも様々な例があり、一般的に利他的行動と呼ばれる。(行動生態学も参照。)

動物における利他的行動は、血縁選択説(血のつながりのある個体)や互恵的利他主義(血のつながりのない個体)で説明される。

自己犠牲をテーマにした作品

小説

宮沢賢治山本周五郎は、自己犠牲をモチーフにした作品を多く残している。宮沢は法華経に帰依し、山本はクリスチャンだった。三浦綾子もクリスチャンである。

『星の王子様』

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』では、王子は小さな薔薇のために命をささげる[1]

『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』で自己犠牲は重要なテーマとなっている[2]。主人公のジョバンニは次のようにつぶやく[2]

僕はもうあのさそりのやうに ほんたうに みんなの幸のためならば 僕のからだなんか 百ぺんやいても かまはない。 — 『銀河鉄道の夜』

銀河を走る鉄道の車窓からは、赤い星「さそり」が見えた[2]。さそりが、それまで他の命をうばって食糧として生きてきた罪を、死の直前に懺悔し「まことのみんなの幸いのために私の体をお使い下さい」と祈ったことで天に召されて星になったのである[2]。このさそりの祈り、そして自らの身体を燃やすことで、闇のような世界を照らし続ける「さそり」の姿によって、自己犠牲的精神が描かれている[2]

絵本

映画

漫画

自己犠牲に関連する現実世界の出来事の例

他者の生命の為に行われた行為

味方の損害を低減又は敵方に損害を与えるために行われた行為

脚注

  1. ^ 眞柳麻美,「愛と自己犠牲:星の王子さまの死の意味について(第1部)」『工学院大学共通課程研究論叢』 43(1), 81-91, 2005-10-31, NAID 110004627181
  2. ^ a b c d e 和田康友「宮澤賢治と自己犠牲」日本文學誌要 54, 50-58, 1996-07-13

関連項目

外部リンク