よだかの星

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ヨタカ Caprimulgus indicus

よだかの星」(よだかのほし)は、宮沢賢治短編小説童話)。1921年頃執筆されたと考えられる作品で、賢治が亡くなった翌年(1934年)に発表されている。  

あらすじ[編集]

よだかは、美しいはちすずめかわせみの兄でありながら、容姿が醜く不格好なゆえに鳥の仲間から嫌われ、からも「たか」の名前を使うな「市蔵」にせよと改名を強要され、故郷を捨てる。自分が生きるためにたくさんの虫の命を食べるために奪っていることを嫌悪して、彼はついに生きることに絶望し、太陽へ向かって飛びながら、焼け死んでもいいからあなたの所へ行かせて下さいと願う。太陽に、お前は夜の鳥だから星に頼んでごらんと言われて、星々にその願いを叶えてもらおうとするが、相手にされない。居場所を失い、命をかけて夜空を飛び続けたよだかは、いつしか青白く燃え上がる「よだかの星」となり、今でも夜空で燃える存在となる。

背景[編集]

電波望遠鏡が捕らえた残留熱を放つチコの星(左上のバラ状のガス)

よだかとハチスズメ(ハチドリ)およびカワセミは比較的に類縁関係が近く、分類学的には的を射た設定と言われている[1]。さらに当時は近く、同じブッポウソウ目に分類されていたとされている[2]

西の青白い星とは、オリオン座リゲル[3]、南の青、紫、黄にまたたく星とは、おおいぬ座シリウスを指すといわれている[4]

「よだかの星」がどの星かは特定されていないが、1572年にカシオペヤ座に出現してシリウスよりも10倍明るく輝いたチコの星を連想させる。『銀河鉄道の夜』でも示されているように宮沢賢治は天文学にも詳しく、この有名な超新星を念頭においていたとも言われている[5][6]

日本の評価[編集]

かつて国語の教科書にも採用された、有名な作品である。小学生向けには、弱い者いじめや外見の美醜による差別の否定といった教訓が中心となるが、より核心的に見れば、自らの「存在」への罪悪感から体を燃やして星へと転生するよだかの姿は、賢治の仏教思想(日蓮宗の系統)と併せて、彼が終生抱き続けた「自らの出自に対する罪悪感」を色濃く反映したものとして、宮沢賢治を論じる際にしばしば引き合いに出される。また、賢治の「自己犠牲」の物語[脚注 1]の系譜に位置づけられている。

日本国外での見方[編集]

1996年、賢治の生誕100周年を記念して開催された「宮沢賢治国際研究大会」においては、以下のような意見がみられた。

韓国からの参加者は、よだかはコミュニティーから排除されて初めて、弱い虫の存在に気づくことができたと読み、よだかの最期については、自分の飛翔力を出し切って死をもって自己表現を果したと指摘。一方インドからの参加者はこの作品は、非暴力は最終的に暴力よりも(現状の)破壊力を持つというガンディーの思想と共通していると評価。よだかの最期については心身が清い者ゆえに星になれたのだと読み、インド哲学との共通性を感じ取り、よだかが目的を果たせたのは自分の問題から逃げないで解決法を見つけて、自力でなしとげることを決意したからであると分析している。2人とも共通して、逃避よりむしろ自分の名を守りぬいたことに重点をおいた発言をしている[7](インドは身分によって名前が自由につけられないカースト制の国であり、韓国は日本人によって名前を変更させられた歴史(創氏改名)があると主張している国である)。

脚注[編集]

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  1. ^ 例えば、異常低温による凶作から大勢の人々を救うため、自らの命を投げうって火山を爆発させる『グスコーブドリの伝記』など。

出典[編集]

  1. ^ 教育博物館特集コラム『ハチドリとタイヨウチョウ特集』
  2. ^ 「東京帝室博物館・天産部 列品案内目録」
  3. ^ ">『宮沢賢治語彙辞典』113項
  4. ^ 加倉井厚夫著『宮沢賢治大辞典』276項
  5. ^ 『宮沢賢治語彙辞典』719項 ISBN 9784487731503
  6. ^ 読書教育データベース【よだかの星】
  7. ^ 環境イーハトーブ『宮沢賢治国際研究大会』より

参考文献[編集]

渡部芳紀編『宮沢賢治事典』勉誠出版2007年。

外部リンク[編集]