「W-VHS」の版間の差分
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W-VHSは記録の方式やシステムについてはVHS方式を基本にしているが、テープはより高出力を求め塗布型のメタルテープ (MP) を採用し、カートリッジも[[DV (ビデオ規格)|DVテープ]]のような防塵タイプとした{{efn|D9ビデオ(Digital S)とテープに互換性があり、64分のD9テープで105分W-VHSでは記録できる}}。記録モードはハイビジョン記録が可能なHDモード{{efn|ただし、輝度信号で13.3MHzまで、Pb,Pr式差信号で4MHzまでの記録となる}}、アナログ地上波放送などNTSC信号録用のSDモード、およびNTSC信号の2チャンネル同時録画が可能なSD2 (2つのSD映像間で同期させる必要がある) モード{{efn|SD2モード搭載のW-VHSビデオデッキとして、日本ビクターのHR-SD201があった。2カメラ2アングル撮影記録による医療用途をはじめとした各種立体映像制作や、スポーツ動態分析などの業務用である。}}がある。またテープへの記録方式は、ムービー利用や世界展開を見越し<ref name="naid110003679005">{{Cite journal |和書|author=磯部裕, 小林薫, 柴山健爾, 石井幹十 |authorlink= |title=家庭用ハイビジョンVTR「W-VHS」の技術開発 : 画像情報記録,コンシューマエレクトロニクス |date=1994-03-18 |publisher=社団法人テレビジョン学会 |journal=テレビジョン学会技術報告 |volume=18 |issue=20 |naid=110003679005 |pages=19-24 |url=https://doi.org/10.11485/tvtr.18.20_19 |doi=10.11485/tvtr.18.20_19}}</ref>、MUSEではなく2トラックパラレル記録による[[ベースバンド]]方式である。このため[[Multiple Sub-Nyquist Sampling Encoding|MUSE]][[ハイビジョン]]放送をデッキ単体で録画できないが、録画した映像はハイビジョンテレビに接続するだけで再生できる。またNTSC信号の記録モードであるSDモードは、ハイビジョン180分用のテープで540分記録することができる。このときの記録周波数は輝度信号6.5MHz、色信号1.5MHz (HR-W1ベースの機種は1MHz) までとなっている。かつHDモードと同様に輝度信号と色信号をテープ上で別々の領域に記録するTCI方式を採用しているため、輝度と色の干渉がほとんど無く、メタルテープ化によるS/Nの向上もあってS-VHSと比較しても相当な画質向上が図られていた。そのため、ハイビジョン録画を行わないユーザー・業者でも、高画質なNTSC信号記録機器として導入する例が見られた。 |
W-VHSは記録の方式やシステムについてはVHS方式を基本にしているが、テープはより高出力を求め塗布型のメタルテープ (MP) を採用し、カートリッジも[[DV (ビデオ規格)|DVテープ]]のような防塵タイプとした{{efn|D9ビデオ(Digital S)とテープに互換性があり、64分のD9テープで105分W-VHSでは記録できる}}。記録モードはハイビジョン記録が可能なHDモード{{efn|ただし、輝度信号で13.3MHzまで、Pb,Pr式差信号で4MHzまでの記録となる}}、アナログ地上波放送などNTSC信号録用のSDモード、およびNTSC信号の2チャンネル同時録画が可能なSD2 (2つのSD映像間で同期させる必要がある) モード{{efn|SD2モード搭載のW-VHSビデオデッキとして、日本ビクターのHR-SD201があった。2カメラ2アングル撮影記録による医療用途をはじめとした各種立体映像制作や、スポーツ動態分析などの業務用である。}}がある。またテープへの記録方式は、ムービー利用や世界展開を見越し<ref name="naid110003679005">{{Cite journal |和書|author=磯部裕, 小林薫, 柴山健爾, 石井幹十 |authorlink= |title=家庭用ハイビジョンVTR「W-VHS」の技術開発 : 画像情報記録,コンシューマエレクトロニクス |date=1994-03-18 |publisher=社団法人テレビジョン学会 |journal=テレビジョン学会技術報告 |volume=18 |issue=20 |naid=110003679005 |pages=19-24 |url=https://doi.org/10.11485/tvtr.18.20_19 |doi=10.11485/tvtr.18.20_19}}</ref>、MUSEではなく2トラックパラレル記録による[[ベースバンド]]方式である。このため[[Multiple Sub-Nyquist Sampling Encoding|MUSE]][[ハイビジョン]]放送をデッキ単体で録画できないが、録画した映像はハイビジョンテレビに接続するだけで再生できる。またNTSC信号の記録モードであるSDモードは、ハイビジョン180分用のテープで540分記録することができる。このときの記録周波数は輝度信号6.5MHz、色信号1.5MHz (HR-W1ベースの機種は1MHz) までとなっている。かつHDモードと同様に輝度信号と色信号をテープ上で別々の領域に記録するTCI方式を採用しているため、輝度と色の干渉がほとんど無く、メタルテープ化によるS/Nの向上もあってS-VHSと比較しても相当な画質向上が図られていた。そのため、ハイビジョン録画を行わないユーザー・業者でも、高画質なNTSC信号記録機器として導入する例が見られた。 |
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規格制定当時は、将来の主流放送として[[ハイビジョン]]を想定していたが、MUSE方式に対応したテレビ・MUSEデコーダー・ビデオデッキいずれも[[標準画質|SD]]のみ対応のテレビやノーマルVHS/[[S-VHS]]と比べてたいへん高額であり普及しなかったことから、民生用W-VHSビデオデッキは[[日本ビクター]]の2機種 (HR-W1, HR-W5、いずれもSD2未対応)、そして家庭用ハイビジョンビデオの研究をしていた<ref name="naid110003707098">{{Cite journal |和書|author=山下 |
規格制定当時は、将来の主流放送として[[ハイビジョン]]を想定していたが、MUSE方式に対応したテレビ・MUSEデコーダー・ビデオデッキいずれも[[標準画質|SD]]のみ対応のテレビやノーマルVHS/[[S-VHS]]と比べてたいへん高額であり普及しなかったことから、民生用W-VHSビデオデッキは[[日本ビクター]]の2機種 (HR-W1, HR-W5、いずれもSD2未対応)、そして家庭用ハイビジョンビデオの研究をしていた<ref name="naid110003707098">{{Cite journal |和書|author=山下啓太郎, 中川富博, 降旗 隆, 竹内敏文, 斉藤文成, 竹内明弘 |authorlink= |title=VIR91-33 民生用ハイビジョンVTR 仕様 |date=1991-09-26 |publisher=社団法人テレビジョン学会 |journal=テレビジョン学会技術報告 |volume=15 |issue=50 |naid=110003707098 |pages=1-12 |url=https://doi.org/10.11485/tvtr.15.50_1|doi=10.11485/tvtr.15.50_1}}</ref>[[パナソニック|松下]]および[[日立製作所|日立]]がこれら2機種の[[OEM]]提供を受けて発売した物だけで終わった。業務用としては放送局・制作プロダクション向けに加え、医療用(手術の記録等)として病院向けにも販売された。[[2000年]](平成12年)には[[BSデジタル]]放送の開始に合わせて実質的な後継規格である'''[[D-VHS]]'''が日本でも登場している。 |
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[[2007年]](平成19年)にMUSE方式を利用したハイビジョン放送(BS-9ch)が終了した為、W-VHS方式は役目をほぼ終えたと言えるが、別途[[衛星放送|BSデジタル放送]]・[[地上デジタルテレビジョン放送|地上デジタル放送]]対応テレビやチューナー、[[ケーブルテレビ|CATV]]用デジタル放送対応[[セットトップボックス]]等を接続すれば、より高画質(ほぼハイビジョン画質)で記録・再生することが可能である<!--TS記録との差違を示して下さい-->。ただし、アナログハイビジョンの記録用途を想定して規格化されたため、有効水平走査線数が1032本であり、デジタルHDTVの1080本のうち1032本分しか記録できない。W-VHS専用テープは、120分の物を[[ビクターアドバンストメディア]]が長らく製造・販売し、[[放送局]]や[[制作プロダクション]]などによってはW-VHSを[[機材]]のひとつとして活用していた場合もあったが、2014年1月末をもってW-VHS専用テープは生産完了となった<ref>[http://victor-media.co.jp/media/svhs_dvhs_wvhs_discon.html S-VHS/D-VHS/W-VHSビデオテープ生産完了のお知らせ ビクターアドバンストメディア]</ref>。 |
[[2007年]](平成19年)にMUSE方式を利用したハイビジョン放送(BS-9ch)が終了した為、W-VHS方式は役目をほぼ終えたと言えるが、別途[[衛星放送|BSデジタル放送]]・[[地上デジタルテレビジョン放送|地上デジタル放送]]対応テレビやチューナー、[[ケーブルテレビ|CATV]]用デジタル放送対応[[セットトップボックス]]等を接続すれば、より高画質(ほぼハイビジョン画質)で記録・再生することが可能である<!--TS記録との差違を示して下さい-->。ただし、アナログハイビジョンの記録用途を想定して規格化されたため、有効水平走査線数が1032本であり、デジタルHDTVの1080本のうち1032本分しか記録できない。W-VHS専用テープは、120分の物を[[ビクターアドバンストメディア]]が長らく製造・販売し、[[放送局]]や[[制作プロダクション]]などによってはW-VHSを[[機材]]のひとつとして活用していた場合もあったが、2014年1月末をもってW-VHS専用テープは生産完了となった<ref>[http://victor-media.co.jp/media/svhs_dvhs_wvhs_discon.html S-VHS/D-VHS/W-VHSビデオテープ生産完了のお知らせ ビクターアドバンストメディア]</ref>。 |
2019年12月17日 (火) 07:37時点における版
W-VHS | |
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メディアの種類 | テープ |
記録容量 |
60分 120分 180分 |
読み込み速度 |
33.35mm/s (HDモード) |
策定 |
日本ビクター (現・JVCケンウッド) |
主な用途 | 映像等 |
下位規格 | S-VHS、VHS、VHS-C |
関連規格 | D-VHS |
W-VHSは、1993年(平成5年)1月8日、日本ビクター(現・JVCケンウッド)から発表された民生用アナログビデオ規格である。HD(高精細)、SD(標準画質)記録が可能で、VHS規格の上位規格として策定された。
概要
VHS規格シリーズの特徴に上位互換性が保証されていることがある。このためW-VHSはVHS・S-VHSなどのテープの再生・録画が可能となり、過去のライブラリーが有効活用できる利点がある。W-VHSテープに記録されたHD・SD映像は通常のVHS・S-VHS・D-VHSデッキでは正常に再生できないばかりか、カセット構造が異なるため、VHS・S-VHS・D-VHSデッキに無理に挿入すると故障の原因となる。
W-VHSは記録の方式やシステムについてはVHS方式を基本にしているが、テープはより高出力を求め塗布型のメタルテープ (MP) を採用し、カートリッジもDVテープのような防塵タイプとした[注釈 1]。記録モードはハイビジョン記録が可能なHDモード[注釈 2]、アナログ地上波放送などNTSC信号録用のSDモード、およびNTSC信号の2チャンネル同時録画が可能なSD2 (2つのSD映像間で同期させる必要がある) モード[注釈 3]がある。またテープへの記録方式は、ムービー利用や世界展開を見越し[1]、MUSEではなく2トラックパラレル記録によるベースバンド方式である。このためMUSEハイビジョン放送をデッキ単体で録画できないが、録画した映像はハイビジョンテレビに接続するだけで再生できる。またNTSC信号の記録モードであるSDモードは、ハイビジョン180分用のテープで540分記録することができる。このときの記録周波数は輝度信号6.5MHz、色信号1.5MHz (HR-W1ベースの機種は1MHz) までとなっている。かつHDモードと同様に輝度信号と色信号をテープ上で別々の領域に記録するTCI方式を採用しているため、輝度と色の干渉がほとんど無く、メタルテープ化によるS/Nの向上もあってS-VHSと比較しても相当な画質向上が図られていた。そのため、ハイビジョン録画を行わないユーザー・業者でも、高画質なNTSC信号記録機器として導入する例が見られた。
規格制定当時は、将来の主流放送としてハイビジョンを想定していたが、MUSE方式に対応したテレビ・MUSEデコーダー・ビデオデッキいずれもSDのみ対応のテレビやノーマルVHS/S-VHSと比べてたいへん高額であり普及しなかったことから、民生用W-VHSビデオデッキは日本ビクターの2機種 (HR-W1, HR-W5、いずれもSD2未対応)、そして家庭用ハイビジョンビデオの研究をしていた[2]松下および日立がこれら2機種のOEM提供を受けて発売した物だけで終わった。業務用としては放送局・制作プロダクション向けに加え、医療用(手術の記録等)として病院向けにも販売された。2000年(平成12年)にはBSデジタル放送の開始に合わせて実質的な後継規格であるD-VHSが日本でも登場している。
2007年(平成19年)にMUSE方式を利用したハイビジョン放送(BS-9ch)が終了した為、W-VHS方式は役目をほぼ終えたと言えるが、別途BSデジタル放送・地上デジタル放送対応テレビやチューナー、CATV用デジタル放送対応セットトップボックス等を接続すれば、より高画質(ほぼハイビジョン画質)で記録・再生することが可能である。ただし、アナログハイビジョンの記録用途を想定して規格化されたため、有効水平走査線数が1032本であり、デジタルHDTVの1080本のうち1032本分しか記録できない。W-VHS専用テープは、120分の物をビクターアドバンストメディアが長らく製造・販売し、放送局や制作プロダクションなどによってはW-VHSを機材のひとつとして活用していた場合もあったが、2014年1月末をもってW-VHS専用テープは生産完了となった[3]。
W-VHSを市場から追い出したデジタルハイビジョンはダウンサイジングが進み、2010年代後半のスマートフォンでも、W-VHSを凌駕する画質を実現する事に成功した。
脚注
注釈
出典
- ^ 磯部裕, 小林薫, 柴山健爾, 石井幹十「家庭用ハイビジョンVTR「W-VHS」の技術開発 : 画像情報記録,コンシューマエレクトロニクス」『テレビジョン学会技術報告』第18巻第20号、社団法人テレビジョン学会、1994年3月18日、19-24頁、doi:10.11485/tvtr.18.20_19、NAID 110003679005。
- ^ 山下啓太郎, 中川富博, 降旗 隆, 竹内敏文, 斉藤文成, 竹内明弘「VIR91-33 民生用ハイビジョンVTR 仕様」『テレビジョン学会技術報告』第15巻第50号、社団法人テレビジョン学会、1991年9月26日、1-12頁、doi:10.11485/tvtr.15.50_1、NAID 110003707098。
- ^ S-VHS/D-VHS/W-VHSビデオテープ生産完了のお知らせ ビクターアドバンストメディア