西ガーツ山脈
西ガーツ山脈 | |
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所在地 | インド |
位置 | 北緯10度10分0秒 東経77度4分0秒 / 北緯10.16667度 東経77.06667度座標: 北緯10度10分0秒 東経77度4分0秒 / 北緯10.16667度 東経77.06667度 |
最高峰 | アナムディ山(2,695 m) |
延長 | 1,600 km |
幅 | 100 km |
プロジェクト 山 |
西ガーツ山脈(にしガーツさんみゃく、英語: Western Ghāts)は、インド亜大陸の西海岸沿いにあり、標高1,000〜2,690mの山々が全長1,600kmにも渡って連なる山脈である。ヒマラヤ山脈よりも古く、インド全域の気候に大きな影響を与えており、多くの川の水源となっている。数々の国立公園、自然保護区域などがあり、世界で最も多様な生物が見られる8つの「ホットスポット」の一つである。2012年、UNESCOの世界遺産に登録された。
概要
[編集]地理
[編集]デカン高原の西縁に沿い、海岸線をわずかに残して高原地帯とアラビア海の境界をなす。グジャラート州とマハラシュトラ州の州境に近いタプティ川の左岸(南側)がこの山脈の北端であり、マハラシュトラ州、ゴア州、カルナータカ州、ケーララ州、タミル・ナードゥ州を南下してインド半島の最南端に達する。その広さは120,000km2に及び、総延長は約1,600kmである。ただし、北緯11度線付近には幅30kmの深い峡谷・パラッカド峡谷により分断される部分がある[1]。平均標高は約1,000mで、ケーララ州のカルダモン丘陵にあるアナムディ山が最高峰(標高2,695m)である。この山脈はアラビア海とベンガル湾へ流入する河川を分ける分水界である[2]。
生物多様性
[編集]西ガーツ山脈は熱帯にありながら、モンスーンの影響でお花畑、高山森林(ショーラ林)と熱帯常緑樹林(ニクズク属の生える沼地)の生態系を有しており[1]、地球上における代表的なモンスーン気候帯の特徴を有している。特に夏の終わりに南西側から吹いてくる湿気を含んだモンスーンを遮断するため、デカン高原の気候にも大きな影響を与える[1]。インド半島は約1億8000万年前にはゴンドワナ大陸の一部としてアフリカと地続きであったが、約1億3000万年前から約5000万年前までは孤立した島となり、その後、ユーラシア大陸に衝突して現在の形となった。このような地史を反映して、アフリカ由来とアジア由来の生物が混在し、さらに独特の進化が見られるような進化の移行帯となっている。西ガーツ山脈一帯は種の多様性に富むとともに、大陸にもかかわらず固有種が多い。特に山脈に生息しているハンミョウ科の甲虫類のうち、80%が固有種である。セイロン島を含む一帯の顕著な生物多様性と固有種の多さにより、西ガーツ山脈は地球上で8つの「最もホットな生物多様性ホットスポット」の1つとして知られており、世界的に絶滅が危惧されている植物相、動物相、鳥類、両生類、爬虫類、魚類が少なくとも325種生息している[1]。固有種または保護対象種として、Rhododendron arboreum、Actinodaphne malabarica、インドガンボジ、Phyllanthus neilgherrensis、ゴラカ、Litsea bourdillonii、Magnolia nilagirica、Mahonia leschenaultii、Cinnamomum sulphuratumなどの植物およびトラ、アジアゾウ、ガウル、シシオザル、アクシスジカ、サンバー、イノシシ、ホエジカ、ニルギリタール、ニルギリラングールなどの動物が挙げられる[1][3]。
生物圏保護区
[編集]ニルギリ丘陵にはインド全国に9カ所ある生物圏保護区の一つであるニルギリ生物圏保護区は、ナガルホーレ国立公園、バンディプール国立公園、ムドゥマライ国立公園、ムクルティ国立公園、サイレント渓谷国立公園の5カ所の国立公園と、ワヤナード野生動物保護区、アララム野生動物保護区、カリンプジャ野生動物保護区とサトヤマンガラム・トラ保護区の4カ所の自然保護区を含むインド最大の生物圏保護区であり、生態系の保全が進められてる[3]。また、南端部のシェンドゥルニー野生動物保護区、ペッパラ野生動物保護区、ネイヤル野生動物保護区とカラッカド・ムンダントゥライ・トラ保護区の4カ所の自然保護区を含むアガストヤマラ生物圏保護区もユネスコの生物圏保護区である[4]。
名称
[編集]ガーツとはヒンディー語で階段を意味する言葉でデカン高原の東西両縁の山地が、海岸平野から階段状にせり上がるところから、東ガーツおよび西ガーツと呼ばれる。
農園
[編集]インドでは紅茶の栽培より、コーヒーのほうが歴史は古く、インドで初めてコーヒーが栽培されたのは、17世紀頃のカルナータカ州にある西ガーツ山脈にあるチクマガルールの山地である。この西ガーツ山脈周辺は、標高が1000m以上あることや、モンスーンの影響で雨季乾季がハッキリ分かれていることもあり、今でもコーヒー栽培がとても盛んで約70か国に輸出されている。西ガーツ山脈南部のニルギリ山地は、その名から紅茶のブルーマウンテンと呼ばれる良質のニルギリ紅茶の産地である。また、カルダモン、ムラサキフトモモ、ナツメグ、コショウ、プランテンなどの香辛料と商品作物の栽培も盛んである[4]。
牛頭山
[編集]マラヤ山(カルダモン丘陵、摩羅耶山、秣刺耶山)[5]は、牛頭栴檀(ゴーシールシャ・チャンダナ gośīrşa-candana)というビャクダンが生える牛頭山として仏典『観仏三昧海経』などに記載されている。
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インド地形図
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西ガーツ山脈の衛星写真
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ニルギリ生物圏保護区の地図
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チクマガルールの山
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西ガーツ山脈(ムクルティ国立公園) | |||
英名 | Western Ghats | ||
仏名 | Ghâts occidentaux | ||
面積 | 795,315 ha | ||
登録区分 | 自然遺産 | ||
IUCN分類 | Unassigned | ||
登録基準 | (9), (10) | ||
登録年 | 2012年 | ||
公式サイト | 世界遺産センター | ||
使用方法・表示 |
世界遺産
[編集]2012年、ロシアのサンクトペテルブルクで開催されていた世界遺産委員会にて、インド共和国の推薦を受けてUNESCOの世界遺産に登録。インドの世界遺産としては29番目の世界遺産(自然遺産では6番目)である。固有種や絶滅危惧種が生息する自然保護区が断続的に続いており、トラ保護区や国立公園を含む39箇所が登録された。
登録基準
[編集]世界遺産委員会でも勧告がそのまま受け入れられたので、この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
- (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
- カラッカド・ムンダントゥーライ・トラ保護区
- シェンドゥルニー野生動物保護区
- ネイヤル野生動物保護区
- ペッパーラ野生動物保護区
- クラトゥープジャ区域
- パローデ区域
- ペリヤル・トラ保護区
- ラーニー森林区
- コーニー森林区
- アチャンコーヴィル森林区
- スリヴィリプットゥル野生動物保護区
- ティルネルヴェーリ森林区域(一部)
- エラヴィクラム国立公園
- グラス丘陵国立公園
- カリアン・ショーラ国立公園
- カリアン・ショーラ区域(パランビクラム・トラ保護区の一部)
- マンクラム区域
- チナール野生動物保護区
- マナヴァン・ショーラ
- サイレント渓谷国立公園
- 新アマランバラム森林保護区
- ムクルティ国立公園
- カリカヴ区域
- アタパディー森林保護区
- プッシュパギリ野生動物保護区
- ブラフマギリ野生動物保護区
- タラカヴェリ野生動物保護区
- パディナルクナド森林保護区
- ケルティ森林保護区
- アララム野生動物保護区
- クードゥーレムカー国立公園
- ソメシュワラ野生動物保護区
- ソメシュワラ森林保護区
- アグンベ森林保護区
- ビラハリ森林保護区
- カアス高原
- コイナ野生動物保護区
- チャンドリ国立公園
- ラダナガリ野生動物保護区
脚注
[編集]- ^ a b c d e “Western Ghats” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年5月8日閲覧。
- ^ Manorama Yearbook 2006 (India - The Country). Malayala Manorama. (2006). pp. 518. ISSN 0542-5778
- ^ a b “Nilgiri Biosphere Reserve, India” (英語). UNESCO (2018年10月). 2023年4月23日閲覧。
- ^ a b “Agasthyamala Biosphere Reserve, India” (英語). UNESCO (2019年1月23日). 2023年4月23日閲覧。
- ^ マラヤ山一帯(マラヤ山とは西ガーツ山脈南部のCARDAMON-HILLS)から出る最も香気の強い黄栴檀又は赤栴檀であり、マラヤ山の形が牛の頭に似ているところからこの名がついたと言われている-参照--満久崇磨著『仏典の植物』八坂書房