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2008年4月13日 (日) 09:47時点における版
IBM 650(アイビーエムろくごーまる)はIBMの最初のコンピュータのひとつであり、世界初の大量生産されたコンピュータである。1953年に発表され、1954年の初出荷から生産終了の1962年までに2000システム以上が製造された。保守サポートは1969年に停止された。
概要
650は、IBMのパンチカード機器(タビュレーティングマシンの進化した IBM 604 などの機械)のユーザーに対してまともなコンピュータへのアップグレードパスを提供する目的で設計された。 同時期に科学技術計算用のIBM 701と、磁気テープ装置を基本としたビジネス用のIBM 702がリリースされたが、650が最も多く製造された。1958年までに800台が販売されたが、これは当時世界で販売されたコンピュータ全体の半分以上を占める台数である。トーマス・J・ワトソン・ジュニアはこれを「コンピュータ界のT型フォード」と称した。[1]
ハードウェア
650は、磁気ドラムメモリを記憶装置に採用したバイクイナリ式二進化十進表現のマシンである。バイクイナリとは7ビットで十進数一桁を表すもので、7ビットのうち2ビットだけが常に1となっている。そのため、ビット化けが即座にわかるようになっている。
基本の650システムは以下の3つの機器筐体から構成される。
- コンソールユニット(Type 650)
- 電源ユニット(Type 655)
- カード読取装置/パンチ装置(Type 533、537)
オプション装備として以下のものがある。
- ディスク装置(Type 355)、カード読取装置(Type 543)、カードパンチ装置(Type 544)
- 制御装置(Type 652)、補助装置(Type 653)、補助英字装置(Auxiliary Alphabetic Unit)(Type 654)、磁気テープ装置(Type 727)、問合せ端末(Type 838)
磁気ドラムメモリには2000個の符号付十桁のワードが格納できる(文字ならば、1ワードに5文字格納)。アドレス範囲は 0000 から 1999。しかし、この装置は必要なデータが格納されている部分が回転によってヘッドのところに来るまで読み書きできないため、非常に低速だった(平均アクセス時間は2.5ミリ秒)。このため、各命令ワード内の二つ目のアドレスは次に実行すべき命令のアドレスを格納するようになっていた。プログラムを最適化するには、前の命令の実行時間から次の命令語を置くべきドラム上の位置を計算してアドレスを求める必要があった。Table lookup という特殊な命令が用意されていて、与えられた10桁ワードを次の46ワードぶんのドラム上にあるワードと5ミリ秒間に比較し、次のトラックへ移る(トラックには1回転で50ワードが格納される)。
オプションの補助装置(Type 653)は1955年5月3日にリリースされたもので、以下の3つの機能を持っていた。
- 60ワード分の容量の磁気コアメモリ。アドレスは 9000 から 9059。小さな高速記憶装置(アクセス時間は96マイクロ秒で、ドラムの26倍の速さ)で、テープおよびディスクの入出力バッファとして必要とされた。
- 3個の4桁サイズのインデックス・レジスタ。アドレスは 8005 から 8007。ドラムメモリやコアメモリを追加したとき、それらの拡張された空間にアクセスする手段として使われた。
- 浮動小数点演算装置。8桁の仮数部と2桁の指数部のバイクイナリで浮動小数点数を表す。これで表せる範囲は ±0.10000000E-50 から ±0.99999999E+49 までである。
ソフトウェア
ソフトウェアとしては、FORTRANの一種 FORTRANSIT がある。これは、コンパイル結果としてIT(Interpretive Language)を生成し、さらにそれを SOAP(Symbolic Optimized Assembler Program)という機械語に一対一対応する言語にコンパイルする。他に BLIS(Bell Laboratories Interpretive System)、SPACE(Simplified Programing Anyone Can Enjoy)などのコンパイラがあった。
外部リンク
いずれも英文
- IBM Archives: Workhorse of Modern Industry: The IBM 650
- The IBM 650 at Columbia University
- An IBM 650 Simulator
- IBM 650 documents at Bitsavers.org (PDFファイル群)