公文書等の管理に関する法律
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公文書等の管理に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 公文書管理法 |
法令番号 | 平成21年法律第66号 |
種類 | 行政手続法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2009年6月24日 |
公布 | 2009年7月1日 |
施行 | 2011年4月1日 |
所管 | 内閣府[大臣官房] |
主な内容 | 公文書の管理など |
関連法令 | 公文書館法、国立公文書館法、特定秘密保護法 |
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ウィキソース原文 |
公文書等の管理に関する法律(こうぶんしょとうのかんりにかんするほうりつ)は、日本の行政機関(府・省・庁等)や独立行政法人等における公文書の管理方法を定めた法律である。法令番号は平成21年法律66号、2009年(平成21年)7月1日に公布された。通称は公文書管理法。
2009年6月24日に成立(2011年4月1日施行)した当法律は「公文書」を「国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録」「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけると共に、国民主権の理念に則り、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存および利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにすることを目的とする(第1条)。
公文書の作成・保存に関する各省庁共通規則を定めており、この法律に従い行政機関の長は毎年度内閣総理大臣に管理の状況を報告し、その内容は公表される。公文書には外交文書が含まれる[1][2][3][注 1]。
さらに歴史的に重要とされる公文書は国立公文書館に保存され、行政文書管理規則の制定・変更等の重要な行為については公文書管理委員会に諮問が必須である(第29条)
主務官庁
[編集]成立経緯
[編集]※肩書きは全て当時のもの
1995年から1999年にかけて、アメリカ情報公開法がビル・クリントン政権下で大幅に改正された。1998年から2000年にかけて我部政明がアメリカ国立公文書記録管理局に秘密文書の開示請求を続け、沖縄財政密約の全容が解明された。日本でも行政機関の保有する情報の公開に関する法律による開示請求ができそうになると、外務省アメリカ局長・吉野文六は口止めをされ、外務省は1200トンの秘密文書を破棄したという(西山事件#米国の公文書公開以降の動き)。[6]
1999年に情報公開法が制定されたものの、公文書管理法は制定されなかったため、情報公開請求において文書不存在を理由とする不開示処分が多発し、文書保存期間満了前の誤破棄(2007年 海上自衛隊補給艦「とわだ」の航泊日誌誤破棄事案)、文書の未作成 (装備審査会議の議事録)、文書の不適切管理(年金記録問題)等の、ずさんな公文書管理が問題視されていた。 また民間団体(情報公開クリアリングハウス、自由人権協会、日弁連など)からも、情報公開法の制定以来、十分な公文書管理を強く求められてきた。 情報公開法に関する民主党PTプロジェクト・チーム座長の枝野幸男は[7]「日弁連等の情報公開法の利用者からヒアリングしても話を聞けば聞くほど、これはダメだとなりました」「霞が関からヒアリングしても全く問題意識を持っていないという印象」と述べている。
上記経緯から2003年5月内閣府大臣官房長(当時 江利川毅)の研究会として「歴史資料として重要な公文書等の適切な保護、利用等のための研究会」(座長高山正也・慶応大学教授)が設置され[8]、同年12月に内閣官房長官(当時 福田康夫)主宰の「公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会」(同座長) と発展させ、翌年6月22日に第二次報告書を取りまとめた[9]。しかし前月の福田の年金未納問題に由来する突然の退任により棚上げとなっていたが、2007年に福田が内閣総理大臣に就任し、翌年1月18日の施政方針演説で「行政文書の管理のあり方を基本から見直し、法制化を検討するとともに、国立公文書館制度の拡充を含め、公文書の保存に向けた体制を整備します」と表明[10]、3月12日から公文書管理のあり方に関する有識者会議(座長尾崎護・元大蔵省事務次官) が開催され[11]、法制化された。
鳩山政権の発足後、外務大臣の岡田克也は早速、核持ち込みや沖縄返還をめぐる日米間の密約の資料調査を命じた。ただ、役所に不都合な文書の保存や公開には官僚の抵抗も予想される為、作成中の公文書管理の統一ルールが「骨抜き」にされないよう注視し、定期的な見直しについての検討が必要とされた[12][要ページ番号]。
2018年〜2019年に陸上自衛隊の「日報」、森友学園に国有地を売却した際の「交渉記録」の廃棄を巡って批判がなされ、政府の公文書管理委員会で見直しの議論が行われた。
行政文書の管理に関するガイドライン
[編集]公文書管理における実務上の注意点等を示したものとして「行政文書の管理に関するガイドライン」がある[13]。公文書管理法施行5年目に当たる2016年に公文書管理委員会で行われた検討を経て2017年にガイドラインが改正された[14]。
制定後の公文書管理を巡る問題
[編集]東日本大震災
[編集]2012年1月27日、野田内閣は菅内閣が東日本大震災に関する15組織のうち10組織が議事録を未作成、そのうち5組織では議事概要も未作成または一部作成であったとする調査結果を発表。野田佳彦は午前の参議院本会議で「文書で随時記録されなかったのは遺憾。会議の意志決定過程を把握できる文書作成は国民への説明責任を果たすため極めて重要。」と答弁した。副総理(行政刷新担当大臣・公文書管理担当大臣も兼務)の岡田克也は5組織出席者から聞き取り調査のうえ、2月中に議事概要の作成を関係閣僚に求めた[15][16][17]。3月9日初めて公表され、原子力災害対策本部と政府・東電統合対策室の各議事録概要は12月までで合計約1400ページ、3月分は100ページ未満であった。当時内閣官房長官だった枝野幸男は3月9日の記者会見で「有事の際は録音し混乱のなかでも事後的な記録作成に役立つように備えるべきだった」と述べている[18]。
自衛隊のイラク派遣の際の活動報告(日報)の取り扱い
[編集]2009年までの自衛隊イラク派遣が非戦闘地域に限定されていたか否かの検証に関連し、当時の活動報告(日報)が存在するかどうかが2018年に国会で質疑された[19]。2018年2月当初、防衛省は当時の日報は見つからないとしたが、後に見つかり[19][20]、これを受けて野党は公文書管理法の改正案をまとめ始め、与党自民党も公文書管理に関する改革検討委員会を開催した[20]。
森友学園問題での文書改竄
[編集]学校法人森友学園の学校用地として国有地が不当に安く売却されたことが疑われた。その過程で、政治家関係者からの照会状況が公開され得る状態を避けたいとする財務省理財局長の意向を受け、2014年から2016年の決裁文書における政治家関係者の記載が改竄された[21][22][23]。これを受け、政府は2018年に再発防止策として内閣府に公文書監察室を設置し、公文書の改竄等に対する監視機能を強化することとした[24]。公文書監察室は公文書管理法に定められた事務の一部(行政機関への報告・資料の徴収、実地調査に関する事務(同法第9条第3項、同条第4項)、その結果に基づいて行う勧告に関する事務(同法第31条))を担う[25]。
桜を見る会の招待者名簿の取り扱い
[編集]内閣総理大臣が主催する公的行事である「桜を見る会」の招待者名簿について、官房長官の菅義偉は2020年1月の一連の記者会見で、2011~2017年度の7年分の招待者名簿の管理・廃棄について、公文書管理法に違反する取り扱いがあったことを認めた。公文書管理法に基づき、保存期間が1年以上の公文書については、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「管理簿」に記載しなければならない。また廃棄した場合は、「廃棄簿」に記載するよう政府のガイドラインは定めている。しかし、招待者名簿は「管理簿」や「廃棄簿」に記載しておらず、廃棄について、公文書管理法が義務づける首相の同意(実務的には内閣府の同意)を得る手続きも取っていなかった[26]。内閣府は2011年〜2017年に文書管理を所管していた人事課長5名を内閣府内規に基づく厳重注意とした[27]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “ねほりはほり聞いて!政治のことば/外交文書”. nhk. 2023年4月27日閲覧。
- ^ 外交文書 (コトバンク)
- ^ a b “外交文書の自動公開規則を施行 外務省、作成30年後に”. 朝日新聞. (2010年5月25日)
- ^ 第208回国会 衆議院 外務委員会 第5号 令和4年3月16日 (国会会議録検索システム)
- ^ “日米合同委員会 ― より開かれた運用を”. 衆議院議員岡田かつや (2022年3月18日). 2023年4月27日閲覧。
- ^ 西山太吉の記事。 田島康彦・清水勉 『秘密保全法批判-脅かされる知る権利』 日本評論社 2013年3月 pp.163-164.
- ^ 仙谷由人、枝野幸男、簗瀬進 他「誌上鼎談 情報公開法改正案について」(自由と正義59(7), 41, 2008-07)
- ^ “歴史資料として重要な公文書等の適切な保存・利用等のための研究会”. 内閣府. 2020年9月3日閲覧。
- ^ “公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会”. 内閣府. 2020年9月3日閲覧。
- ^ “第169回国会における福田内閣総理大臣施政方針演説”. 首相官邸 (2008年1月18日). 2020年9月3日閲覧。
- ^ “公文書管理の在り方等に関する有識者会議”. 内閣官房. 2020年9月3日閲覧。
- ^ 出典:「朝日キーワード2011」(版:朝日新聞社)
- ^ 公文書管理をめぐる近年の動き 2020年
- ^ 行政機関における文書管理 2018年
- ^ 読売新聞2012年1月27日夕刊3版1面及び翌28日朝刊13S版1,2,3,4面、震災関連会議、10組織で議事録作らず(2013年1月11日時点のアーカイブ)
- ^ 原発事故の議事録ほとんどなし 枝野長官「多分、記憶に基づく証言求められる」(2011年5月12日時点のアーカイブ)産経ニュース2011年5月11日
- ^ 平成24年1月27日(金)午前 .閣議の概要について(斎藤勁内閣官房副長官)、平成24年1月27日(金)午前-内閣官房長官記者会見(斎藤勁内閣官房副長官)
- ^ 読売新聞2012年3月10日13S版「スキャナー」3面、13版特別面11面5組織の議事録概要
- ^ a b 「存在しない」イラク派遣の陸自日報が見つかる 防衛相が陳謝 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン 2018年4月2日
- ^ a b 公文書管理、法改正論が加速 罰則規定も浮上:朝日新聞デジタル 2018年4月15日 14時47分
- ^ 森友決裁文書改ざん 財務省調査報告書(要旨):朝日新聞デジタル
- ^ 「不愉快だから帰れ」憤る幹部 財務省が隠し続けたもの:朝日新聞デジタル
- ^ 森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書「V 決裁文書の改ざん等の経緯」
- ^ 公文書管理の監視強化 政府、改ざん問題で防止策 悪質行為は免職も 日本経済新聞 2018年7月20日 10:00
- ^ 内閣府公文書監察室の発足と活動状況 | 2019年8月30日、国立公文書館
- ^ 朝日新聞2020年1月11日、桜を見る会名簿「適切に廃棄」のはずが ずさん管理露呈
- ^ 朝日新聞 2020年1月18日 内閣府、12月中旬に認識 桜を見る会名簿の違法状態
関連文献
[編集]- 加藤陽子「何のための記録保存か : 組織の証拠と記録」『レコード・マネジメント』第50巻、記録管理学会、2005年、80-86頁、doi:10.20704/rmsj.50.0_80。
- 小谷允志「国際標準から見た日本の文書管理の課題 : ISO15489の意味するもの(イノベーションとしての記録管理)」『レコード・マネジメント』第45巻、記録管理学会、2002年、26-33頁、doi:10.20704/rmsj.45.0_26。
- 村岡正司「公文書管理法への対応に向けた適正な公文書管理のあり方 : 今後の自治体の文書管理改善の課題とその方策」『レコード・マネジメント』第62巻、記録管理学会、2012年、39-56頁、doi:10.20704/rmsj.62.0_39。
- ARMA International 東京支部、記録管理学会、日本アーカイブズ学会、学習院大学人文科学研究所共同研究プロジェクト「情報基盤としてのアーカイブズ制度を構築する戦略的研究」「「公文書等の管理に関する法律」施行後5年見直しに関する共同提言書」『レコード・マネジメント』第70巻、記録管理学会、2016年、75-94頁、doi:10.20704/rmsj.70.0_75。
関連項目
[編集]- 文書
- 情報公開法
- 国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案
- 歴史的緊急事態
- 紙背文書 - 古代日本においては公文書の保存期間が過ぎると廃棄されるか裏面が再利用された。
外部リンク
[編集]- 公文書管理法の概要
- 内閣府 公文書管理委員会(内閣府ホーム>公文書管理>公文書管理委員会)