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ヒドラジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒドラジン
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識別情報
CAS登録番号 302-01-2 チェック
PubChem 9321
ChemSpider 8960 チェック
UNII 27RFH0GB4R チェック
EC番号 206-114-9
国連/北米番号 2029
KEGG C05361
MeSH Hydrazine
ChEBI
RTECS番号 MU7175000
バイルシュタイン 878137
Gmelin参照 190
3DMet B00770
特性
化学式 H4N2
モル質量 32.05 g mol−1
精密質量 32.037448138 g mol-2
外観 無色の液体
密度 1.013(8) g cm-3
融点

°C, 274 K, 34 °F

沸点

114 °C, 387 K, 237 °F

酸解離定数 pKa 8.10[1]
屈折率 (nD) 1.46044 (at 22 °C) [2]
粘度 0.876 cP
構造
双極子モーメント 1.85 D[3]
熱化学
標準生成熱 ΔfHo 50.63 kJ mol-1(l)[4]
標準モルエントロピー So 121.21 J mol-1K-1
標準定圧モル比熱, Cpo 98.87 J mol-1K-1
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0281
GHSピクトグラム 可燃性 腐食性物質 急性毒性(高毒性) 経口・吸飲による有害性 水生環境への有害性
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H226, H301, H311, H314, H317, H331, H350, H410
Pフレーズ P201, P261, P273, P280, P301+310, P305+351+338
NFPA 704
4
4
3
引火点 52 °C
発火点 24–270 °C
爆発限界 1.8–99.99 %
半数致死量 LD50 59–60 mg/kg (経口:ラット、マウス)[5]
関連する物質
関連物質
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ヒドラジン (: hydrazine) は、無機化合物の一種で、分子式 N2H4と表される弱塩基

アンモニアに似た刺激臭を持つ無色の液体で、空気に触れると白煙を生じる。水に易溶。強い還元性を持ち、分解しやすい。引火性があり、ロケットエンジンの推進剤として用いられる。

常温での保存が可能であるため、非常用電源装置 (F-16) やミサイルの燃料としても広く用いられている。また人工衛星宇宙探査機の姿勢制御用推進器の燃料としても使われている。プラスチック成形時の発泡剤エアバッグ起爆剤、各種脱酸素剤として広く使用され、特に火力原子力発電所用高圧ボイラー防食剤として使用されている。水加ヒドラジンは水素に代わる燃料電池の燃料としても模索されている。

水と共沸し、55 mol%のヒドラジンを含む混合物を与える。化学実験で用いる際は通常、抱水ヒドラジン(ヒドラジン一水和物、N2H4H2O)が用いられる。

人体へは、気化吸引、皮膚への接触ともに腐食をもたらす。また中毒症状をおこす。「毒物及び劇物取締法」により毒物に指定されている[6]

動物において肝毒性が認められており、ラットおよびマウスで巨大ミトコンドリアの出現が報告されている。なお、アセチル転移酵素により代謝・解毒されるが、イヌはアセチル転移酵素を欠くため、特に毒性が発現しやすいことが知られている。

製法

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アンモニアを次亜塩素酸塩で酸化するか、アンモニアを塩素で気相酸化して作る。

反応

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ヒドラジンをカルボニル化合物と脱水縮合させると、ヒドラゾンが生じる。

ケトンを強アルカリ条件でヒドラジンとともに加熱すると、カルボニル基が還元を受けてメチレン基に変わる(ウォルフ・キッシュナー還元)。

(強アルカリ条件)

カルボン酸ハロゲン化物などのアシル化剤と反応し、ヒドラジドを与える。

パラジウム触媒とともに用いると水素源となる。アルケンニトロ基などを水素化してアルカンアミノ基に変え、自身は窒素分子になる。このとき、中間体として生じるジアゼン(N2H2)が高い還元力を持つ。

(パラジウム触媒下)

さまざまな酸とともに対応するヒドラゾニウム塩を生成する。2価の塩基として働き得るが、2段目のプロトン化は極めて弱い。

, pKa1=-0.9
, pKa2=8.10

脚注

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  1. ^ Hall, H.K., J. Am. Chem. Soc., 1957, 79, 5441.
  2. ^ Pradyot Patnaik. Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill, 2002, ISBN 0070494398
  3. ^ グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン英語版. ISBN 978-0-08-037941-8
  4. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  5. ^ Martel, B.; Cassidy, K. (2004). Chemical Risk Analysis: A Practical Handbook. Butterworth–Heinemann. pp. 361. ISBN 1903996651 
  6. ^ 毒物及び劇物指定令(昭和40年1月4日政令第2号)第一条 二十三の二”. 厚生労働省. 2018年11月4日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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