蒸し物
蒸し物(むしもの)あるいは蒸し料理(むしりょうり)は、蒸気を使って加熱した料理。茹で物のように湯に水溶性の栄養素が溶け出さないこと、または炒め物のように油を必要とせず低カロリーですむことから、蒸し加熱によるヘルシー志向の温野菜調理を好む者もいる。
特徴
湯気による湿潤な状態で加熱ができ、食材を乾燥させずに調理できる。調理後の食材はスープのない料理でもふっくら、しっとりに仕上がることが多い。100℃以上に温度が上がらないため栄養をあまり失わず、形も崩さないため素材を活かすことのできる料理である。その一方で、調理途中に味付けができないため、あらかじめ食材に下味をつけておくか、調理後にテーブルソース(タレ)をつけて食べることが多い。
蒸すときは蒸し器の温度が十分上がり安定してから入れると良い。一般に鶏肉や魚介類など淡白な味わいのものが向き、臭みの強い肉や、アクの強い野菜類には向かない。
蒸し方
蒸すことは、蒸かし(ふかし)ともいう。蒸し器としては蒸籠(せいろ)が使われる。
蒸す際にはあらかじめ鍋で水を沸騰させて蒸し湯を作り、その鍋の上に加熱したい食材を入れた蒸籠を置く。湯気を絶えず充満させるため、水は常に加熱し、蒸籠には蓋をしたままにしておく。中華まん、シュウマイなどの点心はこの方法で蒸されることが多い。蒸篭の蓋は竹や木を編んだものであり湯気が抜けやすく、必要以上に湯気をこもらせて食材をびしょびしょにしてしまうことが起こりにくい特長がある。
蒸籠がない場合は、大きめの鍋に少し水を張り、それよりも高い五徳や茶碗などの台を置いた上に皿や網を乗せ、蓋で密閉して加熱すると蒸すことができる。この方法の方が短時間に蒸すことが可能なため、中華料理の蒸し魚や蒸し蟹はこうして蒸されることも多い。取り出す際にやけどをしやすいため、トングの先を曲げたような形の取り出し器具も中国ではよく使われている。
蒸し湯を沸かした鍋と蒸籠を使う方法のほかに、食材自身や酒などの液体調味料の水分を利用した方法がある。電子レンジでも、器に蓋をしたり、ラップ類を張って加熱することにより、食材の水分を使って蒸すことができる。専用の容器がみられるほか、近年はスチームオーブンなどその機能が付与された機種も見られる。
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餅つきのしたくに餅米を蒸している。
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中華なべを利用した蒸し物。水を張り網を沈めて冷凍食品を加熱。
湯気や水蒸気を用いる他の調理法
湯気を用いて加熱する調理法は別の調理法の副次的な方法としてとられることが多い。食材の中心にまで加熱することを主な目的としている。
- 蒸し焼き
- 焼く過程において、水、酒などを加えて蓋をし、発生した水蒸気や湯気で加熱する調理方法。また、食材に元々含まれていた水分で蒸し焼きする場合もある(例:焙烙蒸し・塩窯蒸し)。肉や魚の炒め物料理や鉄板焼きなどで多く使われる。モロッコなどのタジン鍋は蒸し焼きにするために適した調理器具。
- 蒸らし
- 米を炊く際によく用いられる方法で、調理の最終工程の加熱後、食材に残った熱による調理方法であり、発生した湯気により食材がふっくら、しっとりとした状態にできる。
- ロースト
- ブロック肉や丸鶏など調理する際によく用いられる方法で、通常は安定加熱のためオーブンなどを使用する。オーブン内を数百℃に保ち時間をかけて一定温度で加熱する。投入時は蒸し焼き状態になる。経時後は高温のため湯気が発生せず、乾いた雰囲気により食材表面に焼き目を付けることができる。
蒸し料理の例
日本料理
- 調味料が料理名になったもの
- 容器が料理名になったもの
- 蒸し焼きの別名 (調理法)
- その他
中華料理
魚介類
肉類
- 粉蒸肉 - 豚肉に砕いた米をまぶして蒸す料理。
豆腐
卵
- 蒸水蛋 - 茶碗蒸しに似た卵料理で、各地で具や形状が異なる。
主食
点心の一部
- シュウマイ、包子(中華まん)、蒸しパン、中華おこわ、湯葉包み、スペアリブの豆豉蒸しなど。
- 餃子 - 発祥の中国では水餃子すなわち、煮るもしくは茹でる調理法が多いが、高級料理、宴会料理としての変わり餃子や広東料理としてのエビ餃子(蝦餃)などの変種は蒸される。日本では水餃子よりも、蒸し焼きする焼餃子のほうが浸透している。
スープ
デザート
脚注
出典
- ^ 日本大辞典刊行会 2002, p. 600.
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- ^ a b c 広辞苑第5版
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- ^ 「酒蒸し」『日本国語大辞典』第14巻 (Google ブックス)2018年1月29日閲覧。
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- ^ “天ぷら&蒸し物2種 日本料理”. 西武調理師アート専門学校 (2017年10月25日). 2022年7月29日閲覧。
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参考文献
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- 新村出 (編著)『広辞苑』 5巻、岩波書店、1998年。ISBN 4000801120。 NCID BA38286103。
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