野球肘

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野球肘
分類および外部参照情報
ICD-9-CM 718.82

野球肘(やきゅうひじ)は、野球によって肘部に生じる疼痛性運動障害の総称[1]。別名、リトルリーガー肘リトルリーガーエルボーベースボール肘ベースボールエルボーとも呼ばれる。

スポーツを要因とする反復性損傷は運動種目ごとに特異的固有的なストレインを発生させることがあり、その代表的なものが外側上顆炎にあたるテニス肘や、内側上顆炎にあたる野球肘である[1]

野球肘は投手に発症することが多い。野球肘は誤った投球動作による投球や投球数の過多などの要因で引き起こされる[1]。10代前半で発症する例が多い[2]

プロ野球選手では、金田正一村田兆治荒木大輔桑田真澄近藤真一松坂大輔田中将大ダルビッシュ有らが患った。

原因と症状[編集]

原因[編集]

主な原因として、過剰な投球数などの肘の酷使による疲労が考えられる。

野球における投球動作は、前腕と手部を後方に残しつつ、肩関節及び肘関節が先行し、肩甲下筋、大胸筋広背筋大円筋を収縮させながら、肩関節は90度外転位で回旋運動を行う[1]棘下筋及び小円筋は上腕骨頭を固定し、肩甲骨は胸郭に固定された状態となる[1]。このような投球動作において肘関節は極度に外反を強制され、同時に前腕屈筋群は強く収縮する[1]。そのため上腕小頭と橈骨近位頭では圧縮ストレス、上腕骨内側上顆では伸縮ストレスが負荷となり、これが反復されるため特に筋腱起始部には微小断裂を生じる[1]。修復過程での修復機転が継続投球によって阻害されることにより極度の痛みや機能障害を発生させる[1]

特に、カーブなどの腕を捻りながら投げる変化球は肘への負担が大きく、野球肘になりやすい。

成人期であれば通常は骨変化は見られないが、特に発育期では内側上顆核の変形・肥大・分離・骨端線の拡大などを生じることが多い[1]

投球フォームに無理があることも考えられる。フォームの欠点は人それぞれであるが、多くの場合、投球のリリースの際に上体が開いている(正面を向いてしまっている)ことにより、が体から遠くを通り、肘にかかる負担を大きくしていることによる。

症状[編集]

野球肘による損傷は3段階に分けられる[3]

  • 軽度(1度、mild) - 痛みの発生から約2週間で腫脹や圧痛も軽微であり、前腕屈筋の抵抗下の自動的収縮(手関節の掌屈の動作)の際に疼痛の増強がみられるが、X線検査では変化が見られないものをいう[3]
  • 中度(2度、moderate) - 腫脹や圧痛が顕著であり、他動的伸展(手関節の背屈の動作)や前腕屈筋の抵抗下の自動的収縮の際に疼痛の増強がみられ、X線検査でも変化が認められるものをいう[3]
  • 重度(3度、severe) - 患部が腫大しており、顕著な圧痛と運動制限を訴えており、他動的伸展や前腕屈筋の抵抗下の自動的収縮が困難または不能なほどに疼痛があるものをいう[3]。重度になるとX線検査の際に骨端軟骨層の拡大や関節遊離体(関節鼠)の存在など顕著な変化が認められる[3]

軟骨が関節から剥離、壊死、欠損すると、通称、関節ねずみと呼ばれる、離断性骨軟骨炎が起こり、関節内で関節遊離体がひっかかり、痛みや運動障害を発症する。重度になると骨が軽石のようにスカスカになってもろくなり、痛みと運動障害が発生して日常生活にも支障をきたす。関節の変形が起こったら治癒することは困難である[4][5][6]

応急処置と治療[編集]

応急処置[編集]

応急処置としては、障害が発症した際は、RICEの法則(Rest(安静)、Ice(アイシング)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上))にのっとった対処法が良い。

治療法[編集]

手術や一定期間の投球制限などで治療する[2]

基本的には内側上顆部の圧痛が消失するまで固定し安静にする必要がある[1]。また、患肢の筋萎縮や体力の低下を防ぐリハビリも必要である[1]

その他、電気治療温熱療法赤外線(近・遠)、レーザー光線超音波療法、マイクロ波による治療などがある。

重症の際は、靭帯や腱の移植、関節遊離体除去などの手術が必要となる。肘の靱帯断裂に対する手術は、損傷した肘の靱帯を切除し、正常な腱を移植することにより患部の修復を図る、トミー・ジョン手術は、1974年フランク・ジョーブによって考案され、初めてこの手術を受けた投手トミー・ジョンにちなんでこう呼ばれている。投球の際にひじの側副靭帯に大きな負担がかかる野球の投手が受けることの多い手術である。

リハビリの際には、筋伸長操法や自動的筋伸長操作の実践などにより、筋肉の円滑な運動性や関節の柔軟性を確保することが重要となる[1]。一時的にキネシオテープを貼ることによって、痛みを和らげる方法もある。体の筋力アップをはかり、にかかる負担を和らげることも出来る。

鍼灸においては局所治療穴として、少海穴小海穴曲沢穴などを用いることがある。

しかし、根本的な解決方法として、もっとも有効なものは投球フォームを改良することである。

専門外来[編集]

日本では北海道大学病院スポーツ医学診療センターなどに専門外来がある[2]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]