行動ターゲティング広告

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行動ターゲティング広告(こうどうターゲティングこうこく)とは、広告の対象となる顧客の行動履歴を元に、顧客の興味関心を推測し、ターゲットを絞ってインターネット広告配信を行う手法。例えば、旅行関連のページを最近訪れたことがあったり、航空会社の広告をクリックしたことがあるユーザーは、「旅行」というジャンルに興味関心があると判定し、「旅行」関連の広告を配信するといったもの。ここでいう「行動」は、ページの閲覧、広告のクリック、検索のキーワードなどを指し、広告の配信を行う媒体・事業者によって定義は異なる。コンテンツ連動型広告を併用している場合が多い。行動ターゲッティング広告は、追跡型広告(ついせきがたこうこく)やリターゲティング広告とも呼ばれる。

行動ターゲティングで期待される成果[編集]

行動ターゲティングは、特定のジャンルに興味関心を持つ顧客に絞って広告を見せることができるため、広告効果を高めることができ、無駄な広告の露出を控えることにもつながるため、結果として費用対効果が高くなることが挙げられる。また、年齢・性別などの属性による静的な広告配信と比べると、直近のユーザーの行動に沿ってダイナミックに広告を表示することができる。

行動ターゲティングの実現方法[編集]

サイト内での行動分析[編集]

会員制の物販サイトなどでは、会員ごとの購買履歴を基に会員の嗜好を分析することができる。購買履歴以外にも、会員がログイン中に閲覧した商品の履歴を基に嗜好を分析することもできる。

会員制でないサイトでは、HTTP cookieを用いて閲覧者を識別するIDを発行することにより、訪問者の閲覧履歴を得ることができる。また、会員制サイトにおいても、同様の方法により、ログインせずにアクセスしている訪問者に対して閲覧履歴を得ることができる。

ポータルサイトなどの大規模サイトにおいては、サイト内でのアクセス履歴から、訪問者の行動分析が十分に行えると考えられる。Yahoo! JAPANは、2007年2月、行動ターゲティング広告のネットワーク配信を開始すると発表[1]。それによると、「Yahoo! JAPANのどのようなサービスを閲覧したかや、Yahoo!検索においてどんなキーワードで検索したかをもとに、利用者(ブラウザ)を興味・関心別の約 800のグループに分類」できるという。

アドネットワークを活用した行動分析[編集]

広告の配信媒体が多数のウェブサイトに広告スペースを持っている場合、アドネットワークを形成して、広告配信サーバーを1つにまとめることにより、広告配信サーバーへのアクセス履歴から、広告の閲覧者(クリックしなくても広告を表示しただけでよい)がどのウェブサイトを訪れているかを把握できる。これを、広告スペースのあるウェブサイトの内容情報と組み合わせることにより、閲覧者の嗜好を分析することができる。

cookieを用いた閲覧者識別[編集]

広告配信サーバーが閲覧者を識別するためにHTTP cookieを発行する場合、そのcookieはサイト運営者ではない第三者が発行するcookie(サードパーティcookie)となる。Internet Explorerではバージョン6以降、デフォルト設定でサードパーティcookieの受け入れが拒否されるようになったため、ウェブサーバーにP3P英語版のコンパクトポリシーの設定が必要となる。このように行動を追跡するために発行されるサードパーティcookieのことを「トラッキングcookie」と呼び、スパイウェア対策ソフトがスパイウェアとみなして削除することがある。

携帯電話の契約者固有IDを用いた閲覧者識別[編集]

日本の携帯電話においては、2008年4月以降、すべての通信キャリアにおいて契約者固有IDを取得することができるようになったため、契約者固有IDを用いて閲覧者を識別することができる。cookieのように削除されることがないので、長期間にわたって閲覧者を追跡して嗜好を分析することができる。

ブラウザーの閲覧履歴を参照する手段を用いた方法[編集]

cookieを使用せず、アドネットワークにも依存せずに閲覧者の行動を分析する手法として、2008年6月に楽天ドリコムが営業活動を開始した「楽天ad4U」がある。楽天ad4Uは、ウェブブラウザーの見えない領域に大量のリンクを表示し、各リンクが訪問済みであるか否かをJavaScriptで調べることによって、その場で閲覧者の嗜好を分析する。その場で表示する広告を決定することから、閲覧者の識別を必要としない。

しかし、オープンソースのウェブブラウザーであるMozilla Firefoxは、2010年3月、この方法による閲覧履歴の参照をできなくする対策をとると発表[2]。今後、他のブラウザーにも対策が広がれば、この方法による行動ターゲティングは不可能になると予想される。

ディープパケットインスペクションを用いた方法[編集]

インターネットサービスプロバイダ(ISP)にディープパケットインスペクションと呼ばれる装置を設置して、すべての通信内容を分析することにより、そのISPの契約者のそれぞれの嗜好を分析する方法がある。米国では、NebuAdが、2008年2月にこの方法による行動ターゲティング広告を一部のISPで開始したが、2008年5月に米国下院の議員らがISPに中止を要請したことなどから、撤退するISPが続出し、NebuAdは利用されなくなった。英国では、Phormが、ISPのBTグループなどで実施を試みていたが、2006年に契約者に告知することなく秘密裏に実験を行ったことが発覚し、違法ではないかと問題視されている。

問題点[編集]

プライバシーの問題[編集]

行動ターゲティングによる広告露出を効果的に行うためには、個々の顧客について過去の行動の履歴を収集・分析する必要があるが、この際顧客側のプライバシー保護との関係が問題となる。特にインターネット上では顧客の行動履歴収集が容易に行えるため、プライバシー保護を訴える人々との間でしばしば論争が起きている。

過去には、当該Webサイトの運営者とは異なる第三者(サードパーティー)によってユーザの行動履歴追跡に使われるCookieがWebブラウザに付与されることに対するプライバシーの問題が活発に議論され、2002年にはある特定の条件下でサードパーティーからのCookieをブロックすることができるようにするため、P3P(Platform for Privacy Preferences)と呼ばれるプロトコルがWorld Wide Web Consortium(W3C)によって標準化された。P3PはマイクロソフトInternet Explorerなど一部のWebブラウザに採用されている。

2008年には、Adobe Flashオブジェクトの中に数千個の隠しリンクを設け、リンクの表示色を調べることでそのリンク先を過去に訪問したことがあるかどうかを調べる手法を用いた「楽天ad4U」が登場して物議をかもした。また、携帯電話契約者固有IDを利用してユーザの行動履歴を収集する手法も登場してきており、セキュリティ研究家からは「プライバシーの観点から問題がある」との批判がなされている[3][4]

過去の経緯と現状、今後の展望[編集]

脚注[編集]

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関連項目[編集]