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パーソナライゼーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

パーソナライゼーション: personalization)は、パーソナライズ(personalize)という動詞名詞形であり、「何かを個々人向けに最適化すること」を意味する。

概要

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personalizeは日本語で「個人化する」と訳す。一見、意味を取りづらい言葉のように見えるが、もとは非常に簡単な単語であり、たとえば米国で「personalized eraser」と言うと、単に「Jack」だの「Nancy」だのという名前をケースに書いた消しゴムであったりする。要するに「あなた用のもの」という程度の意を持つ。

日本語でパーソナライズというと、計算機ソフトウェアに関連する用法として、かなり限定された使い方をされており、一般には「ウェブページを個人向けに最適化する」という意味が多い。利用者の属性、趣味嗜好などに基づいてページを最適化するという意味である。My Yahoo!などがこれに相当する。

パーソナライズは、「レコメンド」「レコメンデーション」と近い文脈で使われることが多い。これは、パーソナライズしたデータの最大の活用方法は、サービスを提供する側(一般には企業)にとっても、受ける側(利用者)にとっても、「おすすめのものを提示すること」だからである。たとえばアマゾンにおいて、「あなたにおすすめの商品」という形で表示されるものがこれである。

X-Press-OとGoogle News

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パーソナライズサービスを高度な形で日本で最初に提供したものとしては、NEC読売新聞が共同でサービスを行ったX-press-Oというものがあった(後に読売COLiNSへと改称)。これは1996年というWWWが普及し始めた極めて早い時期に、自動パーソナライズ(利用者の記事購読履歴に基づく自動最適化)、プッシュ型配信(WindowsActive Desktop機能を利用したデスクトップへのプッシュ型配信やパーソナライズメール配信などを含む)などを総合的にパーソナライズするサービスを実施したものであるが、後にサービスは中止されたが、上記サービスの基本技術は開発者である神場らによる論文に示されている[1][2]

その後、パーソナライズは高度な技術というよりはWebページ上でのごく当たり前の技術として使われるようになり、登録型サービスであればID、パスワードを入力して表示されるページが、何らかの形でパーソナライズされているのは当然のこととなっている。

Eメール

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Eメールのパーソナライゼーションによって、マーケティングキャンペーンのクリックスルー率が60向上し、コンバージョン率が25%向上したとの報告[3]がある。ここでのパーソナライゼーションとは、一律の内容に名前などを単に差し込むのではなく、ターゲットに関連するコンテンツを組み込むことを指している。

印刷メディア

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2000年代に入り、デジタル印刷技術が飛躍的に進歩したことで、バリアブル印刷(可変印刷)の応用範囲が大きく広がった。従来は宛名や住所などの単純なデータ差し替えが中心だったバリアブル印刷は、パッケージや商業印刷の分野にも本格的に導入されるようになり、印刷業界に新たな可能性をもたらした。

その代表的な応用例が、ダイレクトメール(DM)やパッケージにおける「パーソナライゼーション(パーソナライズ化)」である。ここでいうパーソナライゼーションとは、バリアブル印刷の語源であるVariable Data Printing(VDP)が本来想定していた住所や宛名といった基本的なデータの可変だけにとどまらない。画像、テキスト、レイアウト、さらにはデザイン要素に至るまで、表示コンテンツのすべてを個々の受け手に合わせて最適化することを意味している。

マーケティングとの融合

この技術の進化により、印刷物とデジタルマーケティングの境界が曖昧になってきた。例えば、Webサイトで実施されているようなレコメンデーション機能(おすすめ商品の提案)を、納品書や請求書に組み込むことが可能になった。顧客の購買履歴や閲覧履歴を分析し、その人に最適な商品情報を印刷物上に表示することで、紙媒体でありながらOne-to-Oneマーケティングを実現できるようになったのである。

また、Webサイトと連携したハイブリッド型の印刷物も登場している。顧客がWebサイトで閲覧した商品や興味を示したコンテンツを自動的に抽出し、それをカタログやパンフレットとして印刷・配送するサービスなども実用化されている。これにより、すべての顧客に同じカタログを送る従来の方式と比べて、はるかに高い反応率と費用対効果が期待できる。[4]

新しい商品カテゴリーの誕生

パーソナライゼーション技術は、ビジネス用途だけでなく、消費者向けの新しい商品開発にも活用されている。その代表例が「パーソナライズ絵本」である。子どもの名前や年齢、好きなものなどを物語に組み込むことで、世界に一つだけのオリジナル絵本を作成できるサービスが普及し始めた。誕生日プレゼントや記念品として人気を集めており、印刷のパーソナライゼーションが持つ感情的価値の高さを示している。

このように、デジタル印刷とバリアブル印刷技術の進化は、単なる生産効率の向上にとどまらず、印刷物の価値そのものを変革しつつある。データドリブンなマーケティングと組み合わせることで、印刷物は再び強力なコミュニケーションツールとしての地位を確立しつつあるのである。[5]

関連項目

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脚注

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  1. ^ Tomonari Kamba, Krishna Bharat, Michael C. Albers (1995). “The Krakatoa Chronicle - An Interactive, Personalized, Newspaper on the Web”. Proceedings of the Fourth International World Wide Web Conference. https://www.w3.org/Conferences/WWW4/Papers/93/. 
  2. ^ なお、論文共著者の一人にGoogle Newsの開発者であるKrishna Bharatがおり、Bharatは後のインタビューにおいてこの技術がGoogle Newsの元になったことを説明しており、パーソナライズ技術を利用した2つのサービスである読売COLiNSとGoogle Newsのその後の経緯の相違は興味深い。
  3. ^ SlideShare - Personalization & Relevancy: Targeting Your Message for Your Audience (litmus & dotmailer)
  4. ^ 印刷の可能性を拡げるクロスチャネル対応とパーソナライズ”. JAGAT. 日本印刷技術協会 (2017年6月12日). 2025年10月3日閲覧。
  5. ^ 2022 デジタル印刷市場の展望と戦略”. 矢野経済研究所. 矢野経済研究所 (2022年3月18日). 2025年10月3日閲覧。