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ヒロハセンブリ
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'''センブリ'''(千振、[[学名]]:''Swertia japonica'' ({{AU|Schult.}}) {{AU|Makino}}<ref name="YList" />)は、[[リンドウ科]][[センブリ属]]の[[二年草]]<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。[[薬草]]として利用され、[[生薬]]名及び別名<ref name="高村 (2005)、239頁">[[#季節の野草・山草図鑑|高村 (2005)、239頁]]</ref>は'''当薬'''(とうやく)という。

== 分布 ==
[[中国]]、[[朝鮮半島]]、[[日本]]に分布する<ref name="高村 (2005)、239頁" />。

日本では、[[北海道]]西南部、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]にかけて広く分布し、日当たりの良く、やや湿り気のある山野の草地に生育する<ref name="佐竹 (1981)、35頁" /><ref name="高村 (2005)、239頁" /><ref name="林 (2009)、254頁">[[#日本の野草|林 (2009)、254頁]]</ref>。[[田中澄江]]は『[[花の百名山]]』の著書で、[[高鈴山]]を代表する花として紹介し<ref group="注釈">田中澄江の『花の百名山』は、[[1980年]]([[昭和]]55年)に第32回[[読売文学賞]](随筆・紀行賞)を受賞した作品。</ref><ref>[[#花の百名山|田中 (1997)、33-36頁]]</ref>、『[[新・花の百名山]]』の著書で[[熊野路]]を代表する花として紹介した<ref>[[#新・花の百名山|田中 (1995)、317-319頁]]</ref>。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
草丈は普通5-30 [[センチメートル|cm]]。[[茎]]は薄紫色を帯び<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />、太さは1-2 [[ミリメートル|mm]]で断面は四角く、直立し根元から数本に分かれて生える。1-3 cmほどの細長い線形の[[葉]]が[[対生]]する<ref name="林 (2009)、254頁" />。[[発芽]]した[[芽]]が[[ロゼット]]状の[[根出葉|根生葉]]となりそのまま越冬し、翌年の8-11月<ref name="林 (2009)、254頁" />に多数の花を咲かせる<ref name="高村 (2005)、239頁" />。白い[[花冠]]は深く5裂し、縦に紫色の線があり<ref name="林 (2009)、254頁" />、基部に蜜腺溝がある<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。蜜腺の周囲には細い毛が生える<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。5枚の[[萼|萼片]]は、線形で尖り<ref name="林 (2009)、254頁" />、長さは5-11 mm<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。[[朔果]]は花冠よし少し長く、[[種子]]はやややや円い<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。[[根]]は黄色を帯びる<ref name="林 (2009)、254頁" />。花、葉、茎、根はずべて苦い<ref name="高村 (2005)、239頁" />。葉の幅が広い[[変種]]の'''ヒロハセンブリ'''(学名:''Swertia japonica'' (Schult.) Makino var. ''latifolia'' {{AU|Konta}} )が[[東京都]]の[[八丈島]]で確認されている<ref name="近田 (2005)、63-65頁" />。花冠が薄紫色の近縁種の[[ムラサキセンブリ]](紫千振、学名:''Swertia pseudochinensis'' {{AU|H.Hara}}<ref>{{YList |id=8160 |taxon=H.Hara |accessdate=2013-10-19}}</ref>)がある<ref name="林 (2009)、254頁" />。
[[九州]]から[[北海道]]までの日当たりの良い山野の草地に自生する。草丈は普通5 - 30cm。茎の太さは1 - 2mmで断面は四角く、根元から数本に分かれて生える。1 - 3cmほどの細長い線形の葉が[[対生]]する。発芽した芽がそのまま越冬し、翌年の9 - 11月頃に多数の花を咲かせる。花は5弁で、白く縦に紫色の線がある。
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ファイル:Swertia japonica rosette.JPG|一年目の[[ロゼット]]状の[[根出葉|根生葉]]
ファイル:Swertia japonica bud.JPG|二年目に茎が伸びてできた[[蕾]]
ファイル:Swertia japonica s3.JPG|[[茎]]は直立し枝分かれする、線形の[[葉]]は[[対生]]する
ファイル:Swertia japonica with ant.JPG|[[花冠]]の細部、基部に蜜腺溝があり、[[アリ]]などの[[昆虫]]が集まり[[受粉]]を媒介する
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== 利用 ==
== 利用 ==
[[ファイル:Hyakuso-gan.JPG|150px|サムネイル|右|センブリを含む医薬品の一例、御岳[[百草丸]]([[キハダ (植物)|キハダ]]を主成分とし、センブリも配合されている、[[長野県製薬]])]]
薬には開花期の全草を用いる。乾燥させ、煎じてまたは粉末にして飲む。薬効は、胃腸虚弱、下痢、腹痛、脱毛など。[[薬局方|日本薬局方]]に収載されている[[苦味チンキ]]の材料のひとつである。
[[1856年]]に[[飯沼慾斎]]は『草木図説』でセンブリについて、「邦人採テ腹痛ヲ治シ、又ヨク虫ヲ殺ス」と書いている。


薬には開花期の全草が用いられる<ref name="高村 (2005)、239頁" />。乾燥させ、煎じてまたは粉末にして飲む。薬効は、胃腸虚弱、[[下痢]]、[[腹痛]]、[[脱毛症|発毛]]<ref name="兼子 (2013)、8頁">[[#薬用植物センブリ|兼子 (2013)、8頁]]</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.takeda.co.jp/kyoto/area/plantno60.html |title=センブリ |publisher=[[武田薬品工業]] |accessdate=2013-10-19}}</ref>など。[[マスカラ]]や[[眉墨]]などの[[化粧品]]に配合されている<ref name="兼子 (2013)、8頁" />。[[薬局方|日本薬局方]]に収載されている[[苦味チンキ]]や[[センブリ末]]の材料のひとつである<ref name="佐竹 (1981)、35頁" />。[[ゲンノショウコ]]、[[ドクダミ]]と共に日本の三大[[民間薬]]の一つとされていて<ref>{{Cite web |url=http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/history/research/cp1/siebold_cyousa.html |title=シーボルトによる日本民間薬の調査 |publisher=[[長崎大学]][[薬学部]] |accessdate=2013-10-19}}</ref>、最も身近な民間薬の一つである<ref name="兼子 (2013)、8頁" />。
センブリの名前の由来は「'''千'''回'''振'''出してもまだ苦い」ということからつけられたとされている。その由来の通り非常に苦味が強く、最も苦い[[生薬]](ハーブ)といわれる。苦味成分はスティアマリン、スエロサイド、アマロゲンチン、アマロスエリン、ゲンチオピクサロイド、などの[[苦味配糖体]](くみはいとうたい)である。中でもアマロスエリンは天然物で苦い物質である。


センブリの名前の由来は「'''千'''回'''振'''出してもまだ苦い」ということからつけられたとされている<ref name="林 (2009)、254頁" />。その由来の通り非常に苦味が強く、最も苦い[[生薬]](ハーブ)といわれる。苦味成分はスウェアマリン(Swertiamarin)、スエロサイド(Sweroside)、アマロゲンチン(Amarogentin)、アマロスエリン(Amaroswerin)、ゲンチオピクサロイド(Gentiopicroside)、などの[[苦味配糖体]](くみはいとうたい)である<ref name="兼子 (2013)、8頁" />。中でもアマロスエリンは天然物で苦い物質である。
[[ドクダミ]]や[[ゲンノショウコ]]と共に有名な薬草である。小種名 ''japonica'' の通り、日本固有の植物であり、生薬名「当薬」も和語である。日本固有の生薬であり、[[漢方薬]]には用いられない。観光地のおみやげ店などで、乾燥したものが売られていることを見かけるが、乾燥品は[[医薬品]]と見なされるので、[[薬事法]]の[[許可]]なく販売することは薬事法違反になる。センブリを使ったセンブリ茶は非常に苦い。

[[ドクダミ]]や[[ゲンノショウコ]]と共に有名な薬草である。生薬名「当薬」も和語である。日本固有の生薬であり、[[漢方薬]]には用いられない。観光地のおみやげ店などで、乾燥したものが売られていることを見かけるが、乾燥品は[[医薬品]]と見なされるので、[[薬事法]]の[[許可]]なく販売することは薬事法違反になる。センブリを使ったセンブリ[[]]は非常に苦い。

[[山野草]]として苗が市販されている。

== センブリの生産 ==
医薬品などに利用されているセンブリは全量日本国内で生産されている。従来は野生の株の採集のみを行っていたが、昭和50年台初頭から[[長野県]]で本格的な生産が始まり、その当時の価格は1 [[キログラム|kg]]あたり30,000円ほどであった<ref name="兼子 (2013)、8頁" />。[[1973年]](昭和48年)から長野県の野菜花き試験場佐久支場で、発芽技術などのセンブリの栽培技術研究が開始された<ref name="兼子 (2013)、9頁">[[#薬用植物センブリ|兼子 (2013)、9頁]]</ref><ref>[[#センブリの栽培研究|宮沢 (1975)、153頁]]</ref>。[[1981年|1981]]-[[2002年]]の国内総生産は年間30 [[トン|t]]程度が最大で、長野県と[[高知県]]の[[農家]]で契約栽培されている<ref name="兼子 (2013)、10-11頁">[[#薬用植物センブリ|兼子 (2013)、10-11頁]]</ref>。[[2007年]]には、長野県ではセンブリさび病<ref>[[#センブリさび病|藤永 (1999)、411頁]]</ref>などにより生産量が大幅に減少した<ref name="兼子 (2013)、10-11頁" />。


==「センブリ」にまつわる話 ==
==「センブリ」にまつわる話 ==
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しかし、上記の苦味配糖体以外には、特に薬効成分は含まれておらず、苦味が舌を刺激して、食欲増進などに効果があると言われるほかには、特に胃の疾患には効果がない。それでも胃の万能薬としてもてはやされているのには、「苦ければ胃によく、[[漢方薬]]である」という誤解が氾濫しているからだと考えられる{{要出典|date=2010年4月}}。
しかし、上記の苦味配糖体以外には、特に薬効成分は含まれておらず、苦味が舌を刺激して、食欲増進などに効果があると言われるほかには、特に胃の疾患には効果がない。それでも胃の万能薬としてもてはやされているのには、「苦ければ胃によく、[[漢方薬]]である」という誤解が氾濫しているからだと考えられる{{要出典|date=2010年4月}}。

== 種の保全状況評価 ==
日本の以下の[[都道府県]]で、レッドリストの指定を受けている<ref name="jpnrdb">{{Cite web |url=http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06040153655 |title=日本のレッドデータ検索システム「マネキグサ」 |publisher=(エンビジョン環境保全事務局)|accessdate=2013-10-19}} - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。</ref>。多数の都道府県で、草地の開発<ref name="kyoto" />、森林開発、生育環境の自然遷移、園芸目的の採集、薬草の採集<ref name="兼子 (2013)、9頁" /><ref name="oita" />などにより減少傾向にある<ref name="ishikawa" /><ref name="kagawa" />。[[阿蘇くじゅう国立公園]]、[[瀬戸内海国立公園]]、[[耶馬日田英彦山国定公園]]、[[祖母傾国定公園]]などの指定植物であり、その採集は禁止されている<ref name="oita" />。
* [[絶滅]](EX) - [[東京都区部]](北多摩地区は絶滅危惧IA類、南多摩地区は絶滅危惧IB類、西多摩地区と[[伊豆諸島]]は絶滅危惧II類)<ref>{{Cite web |url=http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/animals_plants/attachement/2010-04R2.pdf |title=東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版 |publisher=東京都 |format=PDF |pages=32 |date=2010 |accessdate=2013-10-19}}</ref>
* 絶滅危惧II類(VU)- [[埼玉県]]<ref>{{Cite web |url=http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/495221.pdf |title=埼玉県レッドデータブック2011植物編 |publisher=埼玉県 |format=PDF |pages=142 |date=2011 |accessdate=2013-10-19}}</ref>
* 準絶滅危惧(NT) - [[石川県]]<ref name="ishikawa">{{Cite web |url=http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sizen/reddata/rdb_2010/data/documents/sennburi2.pdf |title= いしかわレッドデータブック植物編2010・センブリ |publisher=石川県 |format=PDF |date=2010 |accessdate=2013-10-19}}</ref>、[[山梨県]]、[[香川県]]<ref name="kagawa">{{Cite web |url=http://www.pref.kagawa.jp/kankyo/shizen/rdb/data/rdb1339.htm |title=香川県レッドデータブック・センブリ |publisher=香川県 |date=2004-03 |accessdate=2013-10-19}}</ref>、[[大分県]]<ref name="oita">{{Cite web |url=http://www.pref.oita.jp/10550/reddata2011/02/ss510.html |title=レッドデータブックおおいた・センブリ |publisher=大分県 |date=2011 |accessdate=2013-10-19}}</ref>、[[宮崎県]]
** 一般保護生物(D) - [[千葉県]]<ref group="注釈">千葉県のレッドリストのカテゴリーの一般保護生物(D)は、[[環境省]]の準絶滅危惧(NT)相当。</ref><ref name="chiba">{{Cite web |url=http://www.bdcchiba.jp/endangered/rdb-a/rdb-p/rdb-2009p-5.pdf |title=千葉県レッドデータブック-植物・菌類編(2009年改訂版) |publisher=千葉県 |format=PDF |pages=324 |date=2009 |accessdate=2013-10-19}}</ref>
* その他
** 要注目種 - [[京都府]]<ref name="kyoto">{{Cite web |url=http://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/bio/db/flo0528.html |title=京都府レッドデータブック・センブリ |publisher=京都府 |date=2002 |accessdate=2013-10-19}}</ref>
** 分布重要 - [[鹿児島県]]


==ギャラリー==
==ギャラリー==
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<br clear="all" />
<br clear="all" />

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<div class="references-small">{{Reflist|group=注釈}}</div>
=== 出典 ===
<div class="references-small">{{Reflist|2}}</div>

== 参考文献 ==
* {{Cite journal |和書 |author=兼子まや |title=薬用植物センブリ・ミシマサイコ 生産の効率化に関する研究 |date=2013-01 |publisher=[[千葉大学]] |url=http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/thesis/Kaneko_Maya.pdf |format=PDF |ref=薬用植物センブリ}}
* {{Cite book|和書 |author=高村忠彦(監修) |year=2005 |month=05 |title=季節の野草・山草図鑑―色・大きさ・開花順で引ける |series=実用BEST BOOKS |publisher=[[日本文芸社]] |isbn=4537203676 |ref=季節の野草・山草図鑑}}
* {{Cite book|和書 |author=[[田中澄江]] |year=1995 |month=6 |title=[[新・花の百名山]] |publisher=[[文藝春秋]] |isbn=4-16-731304-9 |ref=新・花の百名山}}
* {{Cite book|和書 |author=田中澄江 |year=1997 |month=6 |title=[[花の百名山]] |publisher=[[文春文庫]] |isbn=4-16-352790-7 |ref=花の百名山}}
* {{Cite journal |author=近田 文弘 |title=東京都八丈島で見出されたセンブリの新変種ヒロハセンブリ |journal=Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany |volume=31 |number=2 |naid=110004665680 |date=2005-06-22 |publisher=[[国立科学博物館]] |url=http://ci.nii.ac.jp/els/110004665680.pdf?id=ART0007395244&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1382240062&cp= |format=PDF |language=英語 |ref=新変種ヒロハセンブリ}}
* {{Cite journal |和書 |author=藤永真史、佐藤豊三、柳沢一馬、荒井好郎 |title=Uredo sp. によるセンブリさび病(新称) |journal=日本植物病理學會報 |volume=65 |number=3 |naid=110002733518 |date=1999-06-25 |publisher=[[日本植物病理学会]] |url=http://ci.nii.ac.jp/els/110002733518.pdf?id=ART0003024039&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1382219502&cp= |format=PDF |ref=センブリさび病}}
* {{Cite book|和書 |author= |editor=[[佐竹義輔]]、[[大井次三郎]]、[[北村四郎]]、亘理俊次、冨成忠夫 |date=1981-10 |title=日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類 |publisher=[[平凡社]] |isbn=4582535038 |ref=日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類}}
* {{Cite book|和書 |author=林弥栄 |year=2009 |month=10 |title=日本の野草 |series=山溪カラー名鑑 |publisher=山と溪谷社 |isbn=9784635090421 |ref=日本の野草}}
* {{Cite journal |和書 |author=宮沢洋一、萩原博司 |title=センブリの栽培研究(第1報) : 発芽について |journal=生薬学雑誌 |volume=29 |number=2 |naid=110008907765 |date=1975-12-20 |publisher=[[日本生薬学会]] |url=http://ci.nii.ac.jp/els/110008907765.pdf?id=ART0009865904&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1382240916&cp= |format=PDF |ref=センブリの栽培研究}}

== 関連項目 ==
* [[センブリ属]]
* [[民間薬]]
* [[生薬一覧]]

== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons&cat|Swertia japonica|Swertia japonica}}
{{Wikispecies|Swertia japonica}}
* [http://dentomed.u-toyama.ac.jp/ja/%E7%94%9F%E8%96%AC%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%83%85%E5%A0%B1/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AA/?w=1 伝統医薬データベース・センブリ] [[富山大学]]和漢医薬学総合研究所
* [http://www.tokyo-shoyaku.jp/f_wakan/wakan2.php?id=142 センブリ] [[公益財団法人]]東京生薬協会
* [http://www1.town.ibigawa.lg.jp/cms/contents_detail.php?co=kak&frmId=157 薬草たちの横顔・センブリ(リンドウ科) Swertia japonica Makino] [[揖斐川町]]
* [http://ci.nii.ac.jp/naid/110003653155 せんぶりSwertia japonica MAKINOより得られる人工塩基について] 藥學雜誌 Journal of the Pharmaceutical Society of Japan. Vol.86, No.12(19661225) pp. 1202-1204
* [http://ci.nii.ac.jp/naid/110003653155 せんぶりSwertia japonica MAKINOより得られる人工塩基について] 藥學雜誌 Journal of the Pharmaceutical Society of Japan. Vol.86, No.12(19661225) pp. 1202-1204
* [http://mitizane.ll.chiba-u.jp/meta-bin/mt-pdetail.cgi?cd=00071530 センブリ トウヤクの標本(鹿児島県上甑島里村で1973年11月1日に採集)] ([[千葉大学]]附属図書館)
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[[Category:生薬]]
[[Category:山野草]]

2013年10月20日 (日) 06:18時点における版

センブリ
センブリ(2013年10月12日、伊吹山)
センブリ (2013年10月・伊吹山
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: リンドウ目 Gentianales
: リンドウ科 Gentianaceae
: センブリ属 Swertia
: センブリ S. japonica
学名
Swertia japonica (Schult.) Makino[1][2]
シノニム
和名
センブリ(千振)
変種
  • ヒロハセンブリ S. japonica (Schult.) Makino var. latifolia Konta[3]

センブリ(千振、学名Swertia japonica (Schult.) Makino[2])は、リンドウ科センブリ属二年草[1]薬草として利用され、生薬名及び別名[4]当薬(とうやく)という。

分布

中国朝鮮半島日本に分布する[4]

日本では、北海道西南部、本州四国九州にかけて広く分布し、日当たりの良く、やや湿り気のある山野の草地に生育する[1][4][5]田中澄江は『花の百名山』の著書で、高鈴山を代表する花として紹介し[注釈 1][6]、『新・花の百名山』の著書で熊野路を代表する花として紹介した[7]

特徴

草丈は普通5-30 cmは薄紫色を帯び[1]、太さは1-2 mmで断面は四角く、直立し根元から数本に分かれて生える。1-3 cmほどの細長い線形の対生する[5]発芽したロゼット状の根生葉となりそのまま越冬し、翌年の8-11月[5]に多数の花を咲かせる[4]。白い花冠は深く5裂し、縦に紫色の線があり[5]、基部に蜜腺溝がある[1]。蜜腺の周囲には細い毛が生える[1]。5枚の萼片は、線形で尖り[5]、長さは5-11 mm[1]朔果は花冠よし少し長く、種子はやややや円い[1]は黄色を帯びる[5]。花、葉、茎、根はずべて苦い[4]。葉の幅が広い変種ヒロハセンブリ(学名:Swertia japonica (Schult.) Makino var. latifolia Konta )が東京都八丈島で確認されている[3]。花冠が薄紫色の近縁種のムラサキセンブリ(紫千振、学名:Swertia pseudochinensis H.Hara[8])がある[5]

利用

ファイル:Hyakuso-gan.JPG
センブリを含む医薬品の一例、御岳百草丸キハダを主成分とし、センブリも配合されている、長野県製薬

1856年飯沼慾斎は『草木図説』でセンブリについて、「邦人採テ腹痛ヲ治シ、又ヨク虫ヲ殺ス」と書いている。

薬には開花期の全草が用いられる[4]。乾燥させ、煎じてまたは粉末にして飲む。薬効は、胃腸虚弱、下痢腹痛発毛[9][10]など。マスカラ眉墨などの化粧品に配合されている[9]日本薬局方に収載されている苦味チンキセンブリ末の材料のひとつである[1]ゲンノショウコドクダミと共に日本の三大民間薬の一つとされていて[11]、最も身近な民間薬の一つである[9]

センブリの名前の由来は「出してもまだ苦い」ということからつけられたとされている[5]。その由来の通り非常に苦味が強く、最も苦い生薬(ハーブ)といわれる。苦味成分はスウェルチアマリン(Swertiamarin)、スエロサイド(Sweroside)、アマロゲンチン(Amarogentin)、アマロスエリン(Amaroswerin)、ゲンチオピクサロイド(Gentiopicroside)、などの苦味配糖体(くみはいとうたい)である[9]。中でもアマロスエリンは天然物で苦い物質である。

ドクダミゲンノショウコと共に有名な薬草である。生薬名「当薬」も和語である。日本固有の生薬であり、漢方薬には用いられない。観光地のおみやげ店などで、乾燥したものが売られていることを見かけるが、乾燥品は医薬品と見なされるので、薬事法許可なく販売することは薬事法違反になる。センブリを使ったセンブリは非常に苦い。

山野草として苗が市販されている。

センブリの生産

医薬品などに利用されているセンブリは全量日本国内で生産されている。従来は野生の株の採集のみを行っていたが、昭和50年台初頭から長野県で本格的な生産が始まり、その当時の価格は1 kgあたり30,000円ほどであった[9]1973年(昭和48年)から長野県の野菜花き試験場佐久支場で、発芽技術などのセンブリの栽培技術研究が開始された[12][13]1981-2002年の国内総生産は年間30 t程度が最大で、長野県と高知県農家で契約栽培されている[14]2007年には、長野県ではセンブリさび病[15]などにより生産量が大幅に減少した[14]

「センブリ」にまつわる話

当薬を胃薬に用いるようになったのは、蘭学に影響しているといわれている。シーボルトが、近江路の製薬所で俵に入ったセンブリを「ゲンチアナ」と間違えたという有名な逸話があるが、ヨーロッパでは、ゲンチアナのような苦い薬を、胃腸薬に使用していた。

しかし、上記の苦味配糖体以外には、特に薬効成分は含まれておらず、苦味が舌を刺激して、食欲増進などに効果があると言われるほかには、特に胃の疾患には効果がない。それでも胃の万能薬としてもてはやされているのには、「苦ければ胃によく、漢方薬である」という誤解が氾濫しているからだと考えられる[要出典]

種の保全状況評価

日本の以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[16]。多数の都道府県で、草地の開発[17]、森林開発、生育環境の自然遷移、園芸目的の採集、薬草の採集[12][18]などにより減少傾向にある[19][20]阿蘇くじゅう国立公園瀬戸内海国立公園耶馬日田英彦山国定公園祖母傾国定公園などの指定植物であり、その採集は禁止されている[18]

ギャラリー

センブリ(2004年10月)
センブリ(丹沢山、2011年10月)


脚注

注釈

  1. ^ 田中澄江の『花の百名山』は、1980年昭和55年)に第32回読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞した作品。
  2. ^ 千葉県のレッドリストのカテゴリーの一般保護生物(D)は、環境省の準絶滅危惧(NT)相当。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 佐竹 (1981)、35頁
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “(Schult.) Makino”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年10月19日閲覧。
  3. ^ a b 近田 (2005)、63-65頁
  4. ^ a b c d e f 高村 (2005)、239頁
  5. ^ a b c d e f g h 林 (2009)、254頁
  6. ^ 田中 (1997)、33-36頁
  7. ^ 田中 (1995)、317-319頁
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “H.Hara”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年10月19日閲覧。
  9. ^ a b c d e 兼子 (2013)、8頁
  10. ^ センブリ”. 武田薬品工業. 2013年10月19日閲覧。
  11. ^ シーボルトによる日本民間薬の調査”. 長崎大学薬学部. 2013年10月19日閲覧。
  12. ^ a b 兼子 (2013)、9頁
  13. ^ 宮沢 (1975)、153頁
  14. ^ a b 兼子 (2013)、10-11頁
  15. ^ 藤永 (1999)、411頁
  16. ^ 日本のレッドデータ検索システム「マネキグサ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年10月19日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  17. ^ a b 京都府レッドデータブック・センブリ”. 京都府 (2002年). 2013年10月19日閲覧。
  18. ^ a b c レッドデータブックおおいた・センブリ”. 大分県 (2011年). 2013年10月19日閲覧。
  19. ^ a b いしかわレッドデータブック植物編2010・センブリ” (PDF). 石川県 (2010年). 2013年10月19日閲覧。
  20. ^ a b 香川県レッドデータブック・センブリ”. 香川県 (2004年3月). 2013年10月19日閲覧。
  21. ^ 東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版” (PDF). 東京都. pp. 32 (2010年). 2013年10月19日閲覧。
  22. ^ 埼玉県レッドデータブック2011植物編” (PDF). 埼玉県. pp. 142 (2011年). 2013年10月19日閲覧。
  23. ^ 千葉県レッドデータブック-植物・菌類編(2009年改訂版)” (PDF). 千葉県. pp. 324 (2009年). 2013年10月19日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク