武州公秘話

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
武州公秘話
作者 谷崎潤一郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出新青年1931年10月号-1932年11月号(第12回で中断)
刊本情報
出版元 中央公論社
出版年月日 1935年10月
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

武州公秘話』(ぶしゅうこうひわ)は、谷崎潤一郎の小説である。

博文館の雑誌『新青年』に、1931年10月号から1932年11月号まで連載された[1]。当初は1年間の連載の予定であったが、予定期間を過ぎても完結しなかったため、第12回で中断された。谷崎は『新青年』1933年2月号で続篇の執筆を予告したが、結局、執筆されずに終わっている[2]。その後、加筆修正を経て、1935年10月に中央公論社より刊行された[3][1]。単行本には「摂陽漁夫」(谷崎自身の号)による漢文の「武州公秘話序」と、正宗白鳥による跋がつけられている[4]

戦国時代に舞台をとって、奇矯な行動をとった一人の武士の生き方を描いている。

あらすじ[編集]

桐生武蔵守輝勝は、法師丸と呼ばれていた元服前、筑摩氏の居城、牡鹿城に人質となっていた。牡鹿城は薬師寺家の軍勢に攻められたが、法師丸は戦場に出ることは許されていなかった。そんなある日、法師丸は城中の老女の手引きで、討ち取った敵の首を綺麗にする作業を見学する。その中で彼の目を引いたのは、鼻を削ぎ落した首だった。法師丸はそれに刺激を受け、ある晩、城を抜け出し敵の本陣にもぐりこみ、大将薬師寺政高の首をとり、鼻を削ぎ落すことに成功する。薬師寺勢は病と称して陣を引き、牡鹿城は平和を取りもどす。ところが、筑摩氏の若殿、則重が薬師寺家の娘、桔梗の方と婚儀を結んでから、則重は鼻を狙われるようになる。その原因が自分にあると察した法師丸改め輝勝は、桔梗の方の望みを達すべく陰謀をはかるのであった。

評価[編集]

中公文庫(1984年刊)の「解説」で、佐伯彰一はこの作品の〈語り〉を、アルフレッド・ヒチコックと比較している。

脚注[編集]

  1. ^ a b 「谷崎潤一郎年譜」(夢ムック 2015, pp. 262–271)
  2. ^ 谷崎 2016, pp. 511, 525–526.
  3. ^ 谷崎 2016, p. 526.
  4. ^ 谷崎 2016, p. 521.

参考文献[編集]

  • 笠原伸夫 編『新潮日本文学アルバム7 谷崎潤一郎』新潮社、1985年1月。ISBN 978-4-10-620607-8 
  • 文藝別冊 谷崎潤一郎――没後五十年、文学の奇蹟』河出書房新社〈KAWADE夢ムック〉、2015年2月。ISBN 978-4309978550 
  • 「解説」佐伯彰一:中公文庫『武州公秘話・聞書抄』(ISBN 4-12-201136-1
  • 谷崎潤一郎『谷崎潤一郎全集』 16巻、中央公論新社、2016年8月10日。ISBN 978-4-12-403576-6 

関連項目[編集]

  • 渡辺温 - 『新青年』の編集者として、原稿督促のため楢原茂二(長谷川修二)とともに神戸の谷崎宅を訪れた帰途、乗車していたタクシーと貨物列車との衝突事故により死去した。この事件が、谷崎が『新青年』に本作を執筆する動機となったとされる。

外部リンク[編集]