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標準型ゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

標準型ゲーム(ひょうじゅんがたゲーム、(英: normal form game)はプレイヤー・戦略・利得関数で記述されるゲームである[1]。正規形ゲーム、戦略型ゲーム(せんりゃくがたゲーム、(英: strategic form game)とも。

定義

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標準型ゲーム は次のように定義される[1]:

集合 集合 関数 による三つ組 

用語の定義

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定義を構成する要素はそれぞれ次のように呼ばれる:

表. 標準型ゲームの構成要素名
プレイヤー (英: player)[2] プレイヤー集合 (英: set of players)[3]
プレイヤー の戦略 (英: strategy)[4] プレイヤー の戦略集合 (英: set of strategies)[5]
プレイヤー の利得関数 (英: payoff function)[6]
プレイヤー の利得 (英: payoff)[7]

定義の解釈

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ゲーム的状況は「複数の意思決定主体がそれぞれの目的実現を目指し相互に依存しあう状況」である[8]。この「意思決定主体」がプレイヤーに相当し[2]、「複数の意思決定主体」がプレイヤー集合 に相当する。プレイヤー が取りうる行動の一覧が戦略集合 に相当し、 はそのなかから自身の「目的の実現を目指し」て特定の行動を選択する。この行動が戦略 に相当する[4]。全プレイヤーが戦略を選んだ結果として各プレイヤーには評価が与えられ、この評価値が利得 に相当する[7]。その際、各プレイヤーの利得は全プレイヤーの戦略が「相互に依存しあう」結果として計算され、これが利得関数 として表現されている(戦略の組み合わせ = 戦略集合の直積集合の元)。

性質

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標準型ゲームは非協力ゲームの記述に用いやすい。これは非協力ゲームがプレイヤーの戦略選択に提携のためのルール的制約を掛けないからである。協力ゲームを記述するには に上手くフィットする制約をつけるか、標準型ゲームを拡張するか、別のゲーム形式をとるか(例: 特性関数型ゲーム)が必要である。

標準型ゲームは単一ステージな同時手番ゲームの記述に用いやすい。同時手番ゲームでは他プレイヤーの戦略選択を知ることなく各プレイヤーが戦略を選ぶため、実際のゲーム的状況でプレイヤーが順番に戦略を選んでいたとしても、各プレイヤーが選んだ戦略を最終的にセットにすればそのまま標準型ゲームの戦略プロファイルとして扱える(失われるものがなくモデル化できる)。

標準型ゲームは静的ゲームの記述に用いやすい。静的ゲームには戦略戦略に順序の概念が無いため、各プレイヤーが選んだ戦略をセットにすればそのまま標準型ゲームの戦略プロファイルとして扱えるからである。逆に動的ゲーム(例: 逐次手番ゲーム、複数ステージな同時手番ゲーム)は扱いづらく、標準型ゲームだとターンを上手くモデル化できない。動的ゲームは繰り返しゲームなどで扱われ、そのステージゲームとして標準型ゲームが用いられることはしばしばある。

標準型ゲームへの変換

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展開型ゲームは標準型ゲームより多くの情報を含んでおり、すべての展開型ゲームは標準型ゲームに変換することができる。

展開型ゲームは情報集合と呼ばれる意思決定点 h においてどのような行動 a が選択されるかを問題にする。プレイヤー i が行動する情報集合の集合を Hi とし、それに含まれる情報集合 hi において選択しうる行動の集合を A (hi) とすると、プレイヤー i の純粋戦略は写像 で をみたすもののことをいう。混合戦略は標準型ゲームと同様に定義される。また、A (hi) の元の代わりに、A (hi) 上の確率測度を与えるような写像を行動戦略と呼び、プレイヤー集合、情報集合の集合、および各行動の集合が有限のとき、行動戦略は混合戦略と一致する(クーンの定理)。

展開型ゲームにおいて利得関数はゲームツリーの終点から実数への写像として定義される。終点とは、その点に至るまでにとられた行動の列とみなしてよい。純粋戦略の組 が与えられれば一意に終点が定まるので、新たに標準型ゲームの利得関数として s から実数を与える写像 を定めることができる。

以上のようにして、展開型ゲームから戦略型ゲーム (N, S, u) を定めることができる。

均衡概念

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均衡概念およびそれに準じた概念のうち、代表的なものを以下に挙げる。

プレイヤー集合及び戦略空間が有限集合のとき、ナッシュ均衡および完全均衡が混合戦略の範囲で存在することが知られている(ナッシュの定理)。

分類

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標準型ゲームは課される制約によって様々に分類される。各ゲームの詳細はそれぞれのページを参照。

が濃度 の有限集合に制約されるとき、そのゲームは「標準型の 人ゲーム」と呼ばれる(例: 二人ゲーム[9])。

が で制約されるとき、そのゲームは「標準型の零和ゲーム」と呼ばれる。なお、「標準型の非零和ゲーム」が 制約を指すのか(零和 非零和 )、制約無しを指すのか(零和 非零和)は場合による。

が有限集合に制約されるとき、そのゲームは「標準型の有限ゲーム」と呼ばれる[10]。逆に無限集合に制約されるとき、そのゲームは「標準型の無限ゲーム」と呼ばれる。

の出力が のみに依存するすなわちランダム性を持たないと制約されるとき、そのゲームは「標準型の確定ゲーム」と呼ばれる[9]。

これら制約の組み合わせを用いてゲームを分類する場合もある。例として二人零和有限確定完全情報ゲームが挙げられる。

双行列ゲームとの関係

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2人ゲームの場合、すなわち、プレイヤーが2人の場合には双行列ゲーム (bimatrix game) [11]として表すことがある。特に、以下のようにプレイヤーと戦略を明示する表現がしばしば用いられる[12]。以下では N ={A, B}, SA ={a1, a2, ..., amA}, SB ={b1, b2, ..., bmB} としている。

プレイヤーB
​
プレイヤーA
戦略b1⋯戦略bmB
戦略a1 uA(a1, b1), uB(a1, b1)⋯uA(a1, bmB), uB(a1, bmB)
⋮ ⋮⋱⋮
戦略amA uA(amA, b1), uB(amA, b1)⋯uA(amA, bmB), uB(amA, bmB)

拡張

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標準型ゲームを拡張することで異なるタイプのゲーム的状況を扱える。以下はその一例である:

  • 繰り返しゲーム: 繰り返しゲームのステージゲームとして標準型ゲームを利用できる(他のゲームの場合もある)
  • 混合拡張 (英: mixed extension): 標準型ゲームのうえに混合戦略を用いた標準型ゲームを定義する(他のゲームも混合拡張できる)

混合戦略

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有限での混合戦略

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プレイヤー の戦略集合 が有限集合である場合において、要素 のベクトル が条件

を満たす時、 はプレイヤー の混合戦略(こんごうせんりゃく、(英: mixed strategy)という[13]。

すなわち、有限の場合、プレイヤー の混合戦略 とは に対応する確率ベクトルである。混合戦略は「プレイヤー が確率 で純粋戦略 を選ぶような行動」を意味する[14]。なお、 は の one-hot ベクトルを用いることで混合戦略として表現できる。

プレイヤー の(純粋)戦略集合 と利得関数 に対応して、

  • プレイヤー が取りうる混合戦略全体の集合  : プレイヤー の混合戦略集合
  • 関数  : プレイヤー の期待利得関数

が定義される。 の出力はプレイヤー の期待利得(きたいりとく、(英: expected payoff)と呼ばれる[15]。

無限での混合戦略

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プレイヤー の戦略集合 が無限集合である場合において、適当な Si 上の σ-代数を 1 つ定めてその上の確率測度を混合戦略と呼ぶ場合がある。

脚注

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注釈

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出典

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  1. 1 2 ... ... ... ゲームの定義(堀田 2011, p. 12)
  2. 1 2 プレイヤー player ・意思決定し,行動する主体.(堀田 2011, p. 12)
  3. ↑ プレイヤーの集合 (堀田 2011, p. 12)
  4. 1 2 戦略 strategy ・プレイヤーが取りうる行動(堀田 2011, p. 12)
  5. ↑ プレイヤー の戦略集合 (堀田 2011, p. 12)
  6. ↑ プレイヤー の利得関数 (堀田 2011, p. 12)
  7. 1 2 各プレイヤーの戦略決定後,ゲームは終了し,結果が出る.結果に対する各プレイヤーの何らかの評価値.利得 payoff, 効用 utility(堀田 2011, p. 12)
  8. ↑ ゲーム的状況 game situations ・複数の意思決定主体(プレイヤー)が存在し,各々目的を持ち,その実現を目指して相互に依存しあっている状況(堀田 2011, p. 11)
  9. 1 2 二人零和有限確定完全情報ゲームでは、プレイヤー数が 2 名に限定され、かつランダム性が発生せず、すべての情報が両プレイヤーに公開されることが前提となる。pp.37-38 より引用。中島, 千鶴 (2021). “障害非開示の発達障害者や発達障害の特性に似た傾向を持つ人に対応する周囲の人が専門家の関与なしに支援案を学ぶ手法の提案”. システムデザイン・マネジメント学 (481): 1–121.
  10. ↑ ゲームを構成するプレイヤー全員の各々に許された純戦略全体の集合が有限集合であるゲーム、 有限ゲームp.163 より引用。寺岡, 義伸 (2007). “無限ゲームをめぐって” (PDF). 数理解析研究所講究録. 1559: 163–176.
  11. ↑ “双行列ゲームとは何? Weblio辞書”. 2021年1月24日閲覧。
  12. ↑ 渡辺隆裕『ゼミナール ゲーム理論入門』日本経済新聞出版、2008年4月7日。ISBN 978-4-532-13346-7。
  13. ↑ プレイヤー ... が ... 個の戦略を持つとし ... 確率 ... ... プレイヤー の混合戦略 (mixed strategy) という。 ... である。(菊田 2021, p. 5, 10)
  14. ↑ プレイヤー が確率 で戦略 ... を選ぶような行動を ... プレイヤー の混合戦略 ... という。(菊田 2021, p. 10)
  15. ↑ プレイヤー がそれぞれ混合戦略 を用いるとき,プレイヤー の期待利得 (expected payoff) を と表す。(菊田 2021, p. 11)

参考文献

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関連項目

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