在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカ

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在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカ

創設1944年8月7日
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
軍種アメリカ合衆国空軍の旗 アメリカ空軍
タイプ主要軍団
上級部隊アメリカ空軍参謀本部
アメリカ欧州軍
アメリカアフリカ軍
基地ドイツラムシュタイン空軍基地
渾名USAFE-AFAFRICA
モットーVigilance for Freedom[1]

在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカ(ざいおうアメリカくうぐん・アメリカくうぐんアフリカ、英語: United States Air Forces in Europe– Air Forces Africa, 略称:USAFE-AFAFRICA)は、アメリカ空軍における主要軍団(Major Command, 略称:MAJCOM)の1つ。2012年4月20日の組織改編によって、在欧アメリカ空軍から名称変更されており、活動範囲もアフリカまで拡大した[2]

部隊管理上は空軍参謀本部に直属し、作戦指揮上はアメリカ欧州軍およびアメリカアフリカ軍の指示を受ける。ドイツラムシュタイン空軍基地に司令部を置き、現在は大将(4つ星)が司令官を務めている。2022年6月27日からの現任司令官はジェームズ・ヘッカー英語版空軍大将である[3]

目的[編集]

在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカの目的は、ヨーロッパおよびアフリカ地域でのアメリカ空軍による航空宇宙任務の執行である。管轄地域は、3つの大陸と91か国を含む2,000万 km2の面積で、世界の4分の1の人口を守る事になる。具体的な管轄地域は、イギリスからトルコまでのヨーロッパ、アフリカ大陸全域のほか、アジア地域の一部にまで及んでいる。

在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカは、NATOとも共同訓練を行うなど、有事に備えている。

主要基地[編集]

第31戦闘航空団のF-16C
第48戦闘航空団のF-15E
イングランドを飛行する第100空中給油航空団のKC-135R
イギリスの旗 イギリス
イタリアの旗 イタリア
ドイツの旗 ドイツ

第2次的な基地および支援施設[編集]

歴史[編集]

第二次世界大戦期[編集]

在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカの前身は、アメリカ陸軍航空軍の航空軍の1つである第8空軍であり、これは第二次世界大戦中にヨーロッパ地域への戦略爆撃を行っていた。

ヨーロッパにおける第二次世界大戦の終結後、在イギリスのアメリカ陸軍航空軍部隊は大部分が廃止され、1945年8月にはヨーロッパ地域で活動するアメリカ陸軍航空軍部隊は、在欧アメリカ空軍に再編された。当初はパリ郊外に司令部が所在していたが、1945年9月にドイツのウィースバーデン空軍基地に本部を移転している。

戦後ドイツでの活動[編集]

ドイツ上空を飛行するRB-24 (1945年)

第二次世界大戦後、アメリカとソビエト連邦は相互不信の状態が続き、次第に両国間で対立構造が生じた。ソ連共産圏となったドイツ(後の東ドイツ)などから、西ヨーロッパに圧力をかけ始める(ベルリン封鎖)。事態を重く見たアメリカ側は、東ヨーロッパに向けて偵察飛行を展開した。

この偵察飛行では主に、写真撮影や地図作製などが行われた。1945年秋から1949年まで、中央ヨーロッパ北アフリカ大西洋諸国などに向けての偵察飛行は、在欧アメリカ空軍が行った。偵察飛行は、RB-17RB-24などによって行われた。しかし、偵察飛行はソ連周辺部のほか、ソ連本土にも侵入していた。

1946年には、数度に渡ってソ連側がアメリカ機に射撃するという事件が起こり、アメリカとソ連の間では緊張が高まった。同年に当時のハリー・S・トルーマン大統領は、在欧アメリカ空軍に対して警戒態勢を高めるよう指示し、同年後半から1947年にかけて相次いで、B-29西ドイツなどに配備している。

またこの間、在欧アメリカ空軍はドイツに対し物資の空輸などの支援を行った。この空輸作戦はベルリン空輸と呼ばれる。1949年3月に、雪が積もるヴィースバーデン空軍基地(西ドイツ)に、C-54がベルリン空輸に参加するため駐機し、作戦が開始している。アメリカ海軍イギリス空軍の協力もあり、在欧アメリカ空軍は230万トン以上の食料や燃料、医療品を空輸している。

1948年3月17日には、アメリカなどの西ヨーロッパ諸国とソ連との間で高まる緊張状態に対応するため、NATOが設立される。それによって在欧アメリカ空軍も、NATO戦略防衛に基づいて兵力が強化されている。

1960年代にはフランスのNATO軍事機構からの離脱に伴い、フランス国内の基地から撤退した。冷戦終結後は兵力の削減が行われているが、湾岸戦争に際しては兵力を派遣しており、ユーゴ紛争にも参戦している。

近年の再編[編集]

近年では、冷戦終結後の対露脅威の減少に伴い、陸軍における在欧陸軍と同様に、在欧空軍も基地の整理・閉鎖や兵員の削減、作戦航空機数の削減などを実施している。

また、オバマ政権では世界金融危機に端を発したアメリカの不況と財政赤字・債務残高の増大に伴って、歳出の大幅な削減を進めており、国防分野についても削減が進められている。在欧空軍についても例外ではなく、2011年1月には合理化策の一環として、司令官ポストを将来的にこれまでの大将級(4つ星)から中将級(3つ星)に改めることで部隊の事実上の規模縮小・格下げを実施する予定であることがロバート・ゲーツ国防長官(当時)より発表された[4]がこれは実施されなかった。

2012年4月20日、在欧アメリカ空軍・アメリカ空軍アフリカへと改編され[2]、コスト削減の一環としてラムシュタイン空軍基地の第17空軍が解隊された[5]

2015年1月にはイギリスのミルデンホール基地の移転閉鎖など、アメリカの国防予算の大幅削減に伴う大規模な再編、統合計画が発表されたが[6]、アメリカでの政権交代などの理由により2020年2月に基地閉鎖が2027年まで延長されることが発表された[7]

関連項目[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ BRIEF HISTORY OF THE UNITED STATES AIR FORCES IN EUROPE (USAFE)”. 2023年10月19日閲覧。
  2. ^ a b FACT SHEET: USAFE-AFAFRICA”. usafe.af. 2023年9月16日閲覧。
  3. ^ General Officer Announcements”. U.S. Department of Defense (2022年6月8日). 2022年6月9日閲覧。
  4. ^ “USAFE Commander to be Three-Star Position” (英語) 在欧アメリカ空軍司令官のポストが中将クラスに格下げされる予定であることを報じるアメリカ空軍協会(AFA)発行の雑誌“Air Foece Magazine”の記事。(2011年1月10日掲載・2011年9月25日閲覧)
  5. ^ 17th Air Force stands down, AFAFRICA mission carries on”. U.S. Air Forces in Europe Public Affairs. 2012年5月1日閲覧。
  6. ^ “米国:欧州の米軍の駐留を縮小へ 国防総省再編計画”. 毎日新聞社. (2015年1月9日). http://mainichi.jp/select/news/20150109k0000e030173000c.html 2015年1月10日閲覧。 
  7. ^ “RAF Mildenhall Closure Delayed Until at Least 2027.”. Forces News. (2020年2月14日). https://www.forces.net/news/raf-mildenhall-closure-delayed-until-least-2027 2020年2月17日閲覧。 

外部リンク[編集]