君たちはどう生きるか

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君たちはどう生きるか[1]
作者 吉野源三郎
日本の旗 日本
言語 日本語
シリーズ 日本少国民文庫[1]
発表形態 書き下ろし
初出 1937年[1]
刊行 新潮社[1](1937年)
未来社(1954年)
ポプラ社(1958年)
講談社(1963年、少年少女日本文学全集)
岩波書店(1982年、岩波文庫)
マガジンハウス(2017年)
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漫画 君たちはどう生きるか[2]
漫画
原作・原案など 吉野源三郎
作画 羽賀翔一
出版社 マガジンハウス[2]
発売日 2017年[2]
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君たちはどう生きるか』(きみたちはどういきるか)は、吉野源三郎小説。吉野は児童文学者であり雑誌「世界」の編集長も務めた。

総説[編集]

当初、『日本少国民文庫』の最終刊として編纂者山本有三みずから執筆する予定であったが、病身のため代わって吉野が筆をとることになったとされる[3]1937年新潮社から出版され、戦後になって語彙を平易にするなどの変更が加えられてポプラ社岩波書店から出版された[4]

児童文学の形をとった教養教育の古典としても知られる[5]

2017年には羽賀翔一により漫画化され、『漫画 君たちはどう生きるか』のタイトルでマガジンハウスから出版された。また、同年には宮崎駿が制作中のアニメ映画のタイトルを、本作から取って『君たちはどう生きるか』にすることを発表した[6]

構成[編集]

旧制中学二年(15歳)の主人公であるコペル君こと本田潤一は、学業優秀でスポーツも卒なくこなし、いたずらが過ぎるために級長にこそなれないがある程度の人望はある。父親は亡くなるまで銀行重役で、家には女中が1人いる。同級生には実業家大学教授医者の息子が多く、クラスの話題はスキー場映画館銀座避暑地にも及ぶ。コペル君は友人たちと学校生活を送るなかで、さまざまな出来事を経験し、観察する。各章のあとに続いて、その日の話を聞いた叔父さんがコペル君に書いたノートという体裁で、「ものの見方」や社会の「構造」、「関係性」といったテーマが語られる、という構成になっている。

コペルニクスのように、自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると考えるか、それとも、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと坐りこんでいると考えるか、この二つの考え方というものは、実は、天文学ばかりの事ではない。世の中とか、人生とかを考えるときにも、やっぱり、ついてまわることになるのだ。

ものの見方について(おじさんのノート)[7]

最後にコペル君は叔父への返答としてノートに自分の将来の生き方について決意を書き綴り、語り手が読者に対して「君たちは、どう生きるか」とたずねてこの小説は終わる。

評価[編集]

本書は軍国主義による閉塞感が高まる1930年代の日本において、少年少女に自由で進歩的な文化を伝えるために企画された「日本少国民文庫」のうちの1冊である[4]

丸山眞男は、子供であるコペル君が現実を観察し、色々な事を発見していく過程をごく自然に描く作者の筆致と、叔父さんからの手紙という形で主人公の発見を補完する構成を称賛している。また本書の題ともなっている「君たちはどう生きるか」という問いかけには、「いかに生きるべきか」という倫理的な問題だけでなく、どういった社会科学的な認識のもとで生きていくかという問題が提示されている点を評価している[8]

著者の吉野源三郎によれば、『君たちはどう生きるか』はもともと文学作品として構想されたものではなく、倫理についての本として書かれた[4]。しかし高田里惠子によれば本書は、教養主義の絶頂期にあった旧制中学校の生徒に向けて書かれた教養論でもある[9]。高田は主人公たちの家庭環境やその「階級」に注目し、本書が「君たち」と呼びかける、主体的な生き方のできる(つまり教養ある)人間が、当時は数の限られた特権的な男子であったことを指摘している[9]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 君たちはどう生きるか 山本 有三/著,吉野 源三郎/著”. 国立国会図書館. 2017年11月9日閲覧。
  2. ^ a b c 漫画君たちはどう生きるか 吉野源三郎 原作,羽賀翔一 漫画”. 国立国会図書館. 2017年11月9日閲覧。
  3. ^ 竹内長武. “君たちはどう生きるか(山本有三・吉野源三郎著 新潮社 1937年)”. 大阪府立国際児童文学館. 2017年11月9日閲覧。
  4. ^ a b c 吉野源三郎「あとがき」『君たちはどう生きるか』岩波文庫、1982年 301-303頁
  5. ^ 児玉英明「吉野源三郎に学ぶ教養教育の理論と思想 : 教養教育の源流をふまえた質保証」、『日本教育学会大會研究発表要項』第73巻、日本教育学会2014年、 110-111頁、 NAID 110009876273
  6. ^ 宮崎駿監督、新作タイトルは「君たちはどう生きるか」”. 朝日新聞デジタル (2017年10月28日). 2017年12月4日閲覧。
  7. ^ 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫、1982年 25頁
  8. ^ 丸山真男「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫、1982年 310-311頁
  9. ^ a b 高田里惠子『グロテスクな教養』ちくま新書、2005年 25-27頁