京将棋

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京将棋(きょうしょうぎ)とは10種類46枚の駒と10x10の将棋盤を使用する将棋の一種であり、2人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。

京将棋連合[1]が作ったものであり、メディアに取り上げられたことはないが、他の多くの変則将棋と異なり、一定数のプレイヤーが存在し、京将棋ができるサイト、ソフトも存在している。

ここでは、京将棋連合の作った変則将棋のうち、京以外の駒を追加するものについても取り上げるものとする。

概要[編集]

京将棋の最大の特徴は2つある初期配置(後述)から後手番方が一方を指定する権利を有するというルールである。

46枚の駒の内訳は、本将棋の駒40枚プラス「京」2枚、「銅」2枚、「歩」2枚である。持将棋、後述する初期配置の様式美と面白さ、先後の公平性により日本将棋の最進化型を目指しているとされる。ルールは京将棋連合が制定している。本将棋より縦横1マス分広いので「ワイド将棋」とも呼ぶことがある。

振り駒について[編集]

京将棋では、振り駒の結果により、先手を取るか、初期配置を選択するかが選べる。

持将棋について[編集]

京将棋では、本将棋同様、相入玉によって勝敗がつかないと判断される場合は持将棋を行う。

本将棋では、各々の駒に設定された点数を計算し、合計が24点以上であれば勝ちで、双方24点以上なら引き分け指し直しとなるが、

京将棋では、点数計算をせず、京を2枚持っていた方が勝ちとなる。ただし双方が1枚ずつ持っていた場合は引き分け指し直しである。

また、持将棋指し直し局が実施できない場合は持将棋をせず後手番の勝ちとすることもある。

駒について[編集]

京将棋連合では、置換駒(後述)4種と京将棋用歩兵を各2枚と京将棋と本将棋が遊べる盤(ラミネート加工の紙2枚で1つの盤になる)のセットを「将棋ペンタスロンセット」として販売している。[2]

セットに入っている駒は全てスタンプだが、歩兵以外は裏が以下の2種類ある。[3]

  1. 表の名称(読み)の頭文字[4][5]
  2. 以下のイラスト
    • 京翔:鳳凰
    • 銅将:銅鐸
    • 山車:山車[6]

金翅は成らないので裏は本将棋の金将、玉将同様に白紙である。

初期配置について[編集]

京将棋では、盤を大きくし、新たな駒を2種追加したことで、左右対称ではなくなり、2つの初期配置が発生することとなった。

初期配置は、振り駒の結果により、後手となった者が選択できるとすることで、不公平性を排除したのである。

京将棋では、京の位置によって右京配置左京配置と呼んでいる。

以下がその配置である。

右京配置[編集]

                   
                   
                   
                   

左京配置[編集]

                   
                   
                   
                   

新駒について[編集]

京将棋には前述の通り、本将棋にない駒が2種追加されている。

これが新たな戦略を生み出す。

以下に追加された駒の動きを示す。

元の駒 動き 成駒 動き
京翔(きょうしょう)

京凰(きょうほう)

京鳳(きょうおう)

     
     
通称「京」

京には3種類の名称があるが、一方が京鳳、京凰のどちらかを持つ場合は、もう1人が
もう一方を持つことになる。
前に3マス、横に1マスの位置に動ける。
囲碁でいう大ケイマの位置に動くといえる。
桂馬の一マス先に飛べるともいえる。
小京将棋では桂馬を置換する駒となる。

成京
金将と同じ
銅将(どうしょう)
通称「銅」

縦と斜め前に1マス動ける。
平安大将棋を除く古将棋にある同名の駒と同じ動きである。
銅将棋では銀将を置換する駒となる。

成銅
金将と同じ

小京将棋[編集]

京将棋には、本将棋の盤を用いる変種が存在し、これを小京将棋という。

これは、本将棋に2枚ある桂馬の片方を京に置き換えたものである。

初期配置は、京将棋同様、振り駒の結果により、後手となった者が選択できる。

小京将棋でも、京の位置によって右京配置左京配置と呼んでいる。

以下がその配置である。

右京配置[編集]

                 
                 
                 

左京配置[編集]

                 
                 
                 

将棋ペンタスロンと将棋30++[編集]

京将棋連合では、京・銅以外にも変種駒を作っており、それらを用いた将棋も用意している。

基本的なルールは京将棋と同じである。

置換駒とその動き[編集]

京将棋連盟の変種駒は歩以外の小駒を置き換えることが目的であり、これらを置換駒ということもある。

京将棋に出てくる京・銅についても置換駒となることがある。

以下に京・銅以外の置換駒の動きを示す。

元の駒 動き 成駒 動き
山車(さんしゃ[7]
   
   
   
   
通称「山」

前に何マスでも動ける。

ただし、1つ前のマスを飛び越えることができる。

(☆の位置へ移動する[8])

山車将棋では香車を置換する駒となる。

成山
金と同じ
金翅(きんし)
通称「翅」

縦と斜め前と左後ろに1マス動ける。

古将棋にある同名の駒とは異なる動きである。

金翅将棋では金将を置換する駒となる。

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将棋ペンタスロン[編集]

将棋ペンタスロンは本将棋の歩以外の小駒を1枚置き換えた将棋に本将棋を加えて五種競技とするものである

本将棋以外の4つは左右型を有するという京将棋と同様のコンセプトで作成されている。

公式サイトには、将棋トライアスロン(三種競技)、将棋デュアスロン(二種競技)も示されている。

なお、実施順序は示されていない。

以下に本将棋以外の将棋の初期配置と置換駒の対応を示す。(置換駒を太字で示す)

将棋の種類 左置換 右置換 駒の対応
山車将棋
                 
                 
                 
                 
                 
                 
香車⇒山車
小京将棋
                 
                 
                 
                 
                 
                 
桂馬⇒京翔
銅将棋
                 
                 
                 
                 
                 
                 
銀将⇒銅将
金翅将棋
                 
                 
                 
                 
                 
                 
金将⇒金翅

将棋30++[編集]

将棋30++は将棋ペンタスロンに出てくる4つの置換駒を複数導入するという考え方で生み出されたものである。
ただし、ここでは置換駒は左右どちらかにまとめる必要がある。
置換駒が1つだけであれば、将棋ペンタスロンに出てくるものになるが、これも内包する概念といえる。

持将棋[編集]

将棋30++においては以下の2つのルールがある。

  1. 京翔がある場合は京将棋に倣って京翔の枚数によって勝敗を決める。
  2. 京翔がない場合は置換駒を小駒(1点)として扱い本将棋同様に点数計算し勝敗を決める。

名称の由来[編集]

以下の2点がこの将棋の名前の由来といえます。

  • 置換数

置換数は1~4個が考えられるが、置換枚数ごとに初期配置の数を考えると、
1枚置換:
2枚置換:
3枚置換:
4枚置換:
となるため、通りになり、これが左右置換系を持つため、全部で30通りとなる。

  • +の意味
  1. 初期配置の種類の増加
  2. 面白さの増加

この2つの意味があるとされる。

これらより、初期配置の30、2つの増加の+をもって、将棋30++と名付けられた。

金斗将棋[編集]

連合では、将棋ペンタスロンや将棋30++に属さない将棋もつくっており、その中でも置換駒を用いるものに、金斗将棋がある。

金斗将棋は金将を金斗に置き換える以外はこのページの他の将棋と同様のルールで行われる。

金斗は金翅と対になる駒として定義されたが、金翅と指し味が変わらないので、基本的には金翅が用いられ、金斗は理論上の穴埋めとして存在するのみになっている。[9]

金斗の動き[編集]

金斗は以下の動きである。

元の駒 動き 成駒 動き
金斗(きんと)
通称「斗」

縦と斜め前と右後ろに1マス動ける。[10]
金斗将棋では金将を置換する駒となる。

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金斗将棋の初期配置[編集]

金斗将棋の初期配置は以下の通りである

将棋の種類 左置換 右置換 駒の対応
金斗将棋
                 
                 
                 
                 
                 
                 
金将⇒金斗

脚注[編集]

  1. ^ 以下この記事のすべての内容がこのリンクの内容に基づくものである。
  2. ^ 山車と金翅が入ってないセットが「将棋トライアスロンセット」として販売されていた
  3. ^ 将棋トライアスロンセットには彫り駒もあったが将棋トライアスロンセット自体、将棋ペンタスロンセットに置き換える形で絶版となっている。
  4. ^ 成銅についてはと金と区別が付きにくくなるので「う」と書かれている
  5. ^ 後述の駒の項でもこの表記で記述する
  6. ^ 駒自体はさんしゃと読み、書かれているのはだしである。
  7. ^ 連合は通俗的に「だし」と呼んでもいいとしている。
  8. ^ これを「だし抜く」という。
  9. ^ 金斗駒は連合からの発売はされておらず、金斗将棋の対局記録は確認されていない。
  10. ^ 連合では、金斗の「斗」が動きを示しているともされる。