ボンバルディア グローバル・エクスプレス

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グローバル・エクスプレス

ルートン空港を飛び立つグローバル・エクスプレス

ルートン空港を飛び立つグローバル・エクスプレス

ボンバルディア グローバル・エクスプレス (Bombardier BD-700 Global Express) は、カナダボンバルディア・エアロスペース社が開発した高速ビジネスジェットである。長大な航続距離をもち、軍事目的にも転用された。

同じクラスの競争機にガルフストリーム G550ダッソー ファルコン 7Xなどがあげられる。

概要[編集]

テスト飛行後にモントリオール国際空港に着陸するグローバル・エクスプレス

グローバル・エクスプレスは途中で燃料を補給することなく大陸横断が可能であり、世界中のどこに向かおうとも1回の補給で事足りる。また、スラストリバーサースラットの装備により、このクラスの機体としては高い短距離離着陸能力も持つ。コックピットは6つの表示装置を備えたグラスコックピットで、最新ロットでは表示装置が大型のものに変更され数も4つになった。長い客室は3つの区画に分けることができ、搭乗員の休憩区画やギャレー、化粧室などを備えることも可能。

開発にあたってカナディアが定めた目標は、これまでのあらゆるビジネスジェット機よりも高速かつ長い航続距離を有すること、同クラスの航空機の中で最大かつ最も多様性に富む客室を有すること、そして運航及び飛行時の信頼性を可能な限り高くすることであった。設計・製造にはCAD/CAMが用いられ、1996年10月13日に試作機が初飛行した。1998年7月にはカナダの型式証明を取得し、その直後から顧客への引き渡しを開始した。

以前は分担生産に三菱重工業も参加しており、胴体中央部と主翼の製造を行っていたが、現在はMHICA(三菱重工のカナダにおける現地法人)が行っている。

4つのモデル[編集]

  • グローバル・エクスプレス:シリーズ最初のモデル。計画は1993年にスタートし、1996年に初飛行。1998年7月にカナダ当局から、同年9月にFAA(連邦航空局)から型式証明を得た。1999年に初デリバリー[1][2]
  • グローバル 5000:グローバル・エクスプレスの短胴型モデル。計画は2002年2月にスタートし、2003年3月7日に初飛行[3]。2017年7月時点で現行モデル。
  • グローバル・エクスプレス XRS:グローバル・エクスプレスの改良モデル。計画は2003年10月にスタートし、2005年1月16日に初飛行[4]
  • グローバル 6000:グローバル・エクスプレス XRSが2011年5月に改名したモデル[5]。2017年7月時点で現行モデル。


デザインと開発[編集]

ボンバルディア・エアロスペースは、1991年から研究を始め、1993年に公式にプロジェクトを立ち上げた。1996年10月13日に初飛行を行った。グローバル・エクスプレスは、ボンバルディア CRJシリーズと胴体の断面形状を共有しており、全長は同程度である。しかしサイズは同程度だが、二つの機種の役割は大きく異なる。グローバル・エクスプレスは、迎角が35度の進化した新しい超臨界型の翼とウィングレット、新型のT型尾翼を持っている。 また、FADECを備えたBMW ロールス・ロイス製のBR-710ターボファン・エンジンを動力としている。

グローバル・エクスプレスは1991年10月28日のNBAA(全米ビジネス航空協会)の総会で発表された。そして、原寸大のキャビン・モックアップが翌年のNBAA総会で展示された。コンセプトデザインは1993年初頭に始まり、同年12月20日にプロジェクトは公式に開始された。機体の高速飛行形態の開発は1994年6月に凍結され、低速飛行形態は同年8月に完了した。

ボンバルディアの子会社は、この計画で3つの役割を担った。カナディアはデザイン・リーダーであり、胴体先端部を生産する。ベルファストにあるショート・ブラザーズは、エンジンナセル、水平スタビライザー、胴体前部の設計と製造を担当する。デ・ハビランド・カナダは、胴体後部や垂直尾翼を生産し、最終組み立てを担う。主要な外部サプライヤーには、翼や胴体中央部を生産する日本の三菱重工業がいる。2015年、ボンバルディアは、ラテンアメリカロシア中国などの市場の景気減速や地政学的要因により、生産量を減らすと発表した[6]

グローバル 5000[編集]

グローバル 5000
離陸するグローバル 5000

グローバル 5000(Global 5000; 型番:BD-700-1A11)は、グローバル・エクスプレスの派生機で、全長が81.3cm(32インチ)短縮され、航続距離も2,222km(1,200海里)短くなっている。また、最大19人の乗客を乗せることができる。この機の計画は2001年10月25日に公表された後、15機分の購入趣意書を得て手応えを持ち、2002年2月5日に公式に開始された[7]

機体はオンタリオ州トロントボンバルディア・エアロスペースで生産され、いわゆるグリーン機の状態で、最終仕上げのため、ケベック州モントリオールジョージア州サバンナイリノイ州カホキアへ飛行する。

グローバル 5000は、グローバル・エクスプレス XRSと同じ生産ラインで作られ、2種類のシリアルナンバーが混在している。

最初のグローバル 5000(S/N 9127)は、2003年3月7日に飛行した[8]。その飛行は、基本システムの機能をテストし、機体の取り扱いや飛行品質を評価するために行われた。その機体は、飛行テスト計画を実施するウィチタのボンバルディアの施設に移動する前に、ダウンスビュー英語版にあるボンバルディアの施設で予備テストを終えた。グローバル 5000は、2003年6月のパリ航空ショーで初披露された。

多くの運航者の平均飛行時間は、マッハ0.85~0.89で飛んだとして、2.5時間である。この速度から、今日利用可能な長距離ジェットで最速との評価を受けている[9]

典型的な構成は、フルフラットベッドにできるシートと後部のラウンジ(またはベッドルーム)を含んで、最大18人分の座席を特徴としている。また、完全なギャレーと二つのトイレを持っている。乗員の休憩エリアは取り除かれたが、その新しいバージョンが検討されている[10]

導入当初の最大離陸重量は40,200kg(88,700 lb)だった。また、典型的な装備と乗客用の内装を含んで、空虚重量は22,600~22,800kg(52,000-55,000 lb)だった。その後2008年4月に改良を行い、ボンバルディアは、総重量は41,954kg(92,500 lb)に増加したと発表した。この増加で燃料搭載量が増えた結果、最大航続距離も伸びて9,637km(5,200海里)となった[11]

認証された最大高度は16,000m(51,000フィート)だった。典型的な接近速度は200km/h(108ノット) で、着陸に必要な滑走路長は790m(2,66フィート)である。

グローバル 5000はグローバル・エクスプレスと比べて主に以下の点が異なる。

  • 胴体が81.3cm(32インチ)短い。
  • 尾部の燃料タンクが撤去され、翼の燃料が制限された。
  • 最大離陸重量が2,500kg(5,500 lb)減少。
  • 航続距離が2,222km(1200海里)減少。
  • キャビン長を伸ばすために、航空電子機器を再配置。
  • 内装設備の許容量を3,200kgに増加

グローバル 6000[編集]

2014年のファーンボロー国際航空ショーで着陸するグローバル 6000

グローバル 6000(Global 6000)は、以前は「グローバル・エクスプレス XRS」という商品名だった。元の機から、巡航速度を増し、航続距離を伸ばし、キャビンレイアウトと照明を改善したバージョンである。このモデルは、フロリダ州 オーランドで開催されていたNBAA(全米ビジネス航空協会)総会の会期中、2003年10月6日に発表された。XRSからグローバル 6000への最大のアップグレードは、ボンバルディア製のVision flight deckや、ロックウェル・コリンズ英語版製のPro Line Fusionという電子機器が導入されたことである。また、XRSに比べて、防音材も改善された[12]

航続距離の増加は、674kg(1,485 lb)の燃料タンクを翼の付け根に増設したことによる。ボンバルディアは、コンピュータシステムの改善や機械の改良により、グローバル 6000への給油はXRSに比べて15分早く済むとしている。グローバル 6000は、2012年初頭にサービスを開始した。機体の価格は4,550万ドルと推定されている。

軍用型[編集]

イギリス空軍のセンチネル R.1

イギリス空軍E-8の小型版ともいえる地上監視機として改造しセンチネル R.1(en)の名称を与えている。前部胴体下部に搭載した合成開口/動目標表示レーダーは奥行333kmの戦場を画像化でき、その情報を戦術データ・リンクによりリアルタイムで味方地上軍司令部や攻撃航空部隊に伝えることができる。

アメリカ空軍も電波の届きにくい山岳地帯での通信中継機としてE-11Aの名称で採用している。他にもボツワナドイツなどいくつかの国が、政府専用機としてグローバル・エクスプレスを運用している。

仕様[編集]

出典: Specifications Bombardier Global Express, Airliners.net: Bombardier BD-700 Global Express

諸元

  • 乗員: 操縦士2名、乗務員1 - 2名
  • 定員: 8 - 19名
  • 全長: 30.3 m (99 ft 5 in)
  • 全高: 7.57 m (24 ft 10 in)
  • 翼幅: 28.65 m(94 ft 0 in)
  • 翼面積: 94.9 m2 (1,022 ft2
  • 空虚重量: 22,600 kg (49,750 lb)
  • 有効搭載量: 805 kg (1,775 lb)
  • 最大離陸重量: 44,500 kg (98,000 lb)
  • 動力: ロールス・ロイス・ドイチュランド BR700 ターボファンエンジン、65.5 kN (14,750 lbf) × 2
  • キャビン全長:14.73 m (48 ft 4 in)
  • 胴体幅:2.49 m (8 ft 2 in)
  • キャビン幅:2.11 m (6 ft 11 in)
  • キャビン高:1.91 m (6 ft 3 in)
  • キャビン面積:31.1m2 (335 ft2)

性能

  • 最大速度: 950 km/h (マッハ .89, 590 mph)
  • 巡航速度: 904 km/h (マッハ .85, 488 kt, 562 mph)
  • 航続距離: 11,390 km (6,325 nm, 7,080 mi)
  • 実用上昇限度: 15,500 m (51,000 ft)
  • 上昇率: 436 m/min (1433 ft/m)
  • 翼面荷重: 468 kg/m2 (95.9 lb/ft2
  • 推力重量比: 0.301


お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

脚注[編集]

  1. ^ http://www.bombardier.com/en/about-us/history.html
  2. ^ "Bombardier Global Express successfully concludes another rigorous ground test program". (Press Release). Bombardier Aerospace. May 6, 2003.
  3. ^ "Bombardier Global 5000 successfully completes first flight". (Press Release). Bombardier Aerospace. March 7, 2003.
  4. ^ "First Bombardier Global Express XRS Meets All Expectations On Demanding Maiden Flight". (Press Release). Bombardier Aerospace. January 18, 2005.
  5. ^ "Bombardier Global XRS 6000". Air Charter Service.
  6. ^ Trautvetter, Chad (14 May 2015). "Global 5000/6000 Output Cut To Affect 1,750 Workers". Aviation International News.
  7. ^ "Bombardier Aerospace launches Global 5000 business jet". wingsoverkansas.com
  8. ^ Simpson 2005, p.33.
  9. ^ "The fastest long range private jets available". Private Jets For Sale In South Africa. Retrieved 2016-02-20.
  10. ^ Bombardier Global 5000 - Sitting pretty, Flight International, 7–13 October 2008, p.49
  11. ^ "Global 5000 Adds Fuel and Range", Flying Magazine, May 16, 2008.
  12. ^ http://aviationweek.com/business-aviation/bombardier-global-6000

外部リンク[編集]