バジリスク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

バジリスクまたはバシリスク: basilisk, : basiliscus, 古希: βασιλίσκος [basiliskos])は、ヨーロッパの想像上の生物である。名称はギリシア語で「小さな[1]」を意味し[2][3]βασιλεύς (basileus) に由来する。ヘビの王[2][4](爬虫類の王[3]とも)であり、見ただけで死をもたらす力を持っていると思われていた[2][3]

古代の伝承[編集]

姿はヤマカガシに似ており、頭部に冠状のトサカが隆起している。身体を半分持ち上げて進むと言われ[2]、それが音を立てると周囲のヘビが逃げていく[4]。この特徴から、後世には、インドに生息するコブラからこの生物を想像したのではないかとも考えられている[2][4]。リビアや中東にある砂漠地帯は、そこを住処とするバジリスクの力で砂漠となったと言い伝えられた[3]

古代ローマの学者大プリニウス22 / 23 - 79)が書いた『博物誌』(77年)第8巻第33(21)章第78 - 79節及び29巻19章66節の記述をまとめると以下のようになる。バジリスクはクレタ・キュレナイカ州産の小型[4](体長は12ディジット[4]=24cm[2][4]以下)のヘビ[2](トカゲ[4]とも)であり、その通った跡には人を死に至らしめるほどの毒液が残った[要出典]。頭には冠のような白い斑点がある。その毒は非常に強力で、匂いにより他のヘビを殺し、息に含まれた毒は石を砕く[2][4]。また、人間にとってはバジリスクに睨まれただけで致命的である、とその邪視についても言及がある[2][4]。しかしイタチが一種の天敵であるとも言われている[2][4][5][注釈 1]

エレミヤ書』や『詩篇』では、バジリスクは救世主によって倒される悪魔の象徴と言われている[3]

中世の伝承[編集]

ウリッセ・アルドロヴァンディ(Ulisse Aldrovandi)著 『怪物誌』(Monstrorum historia)より、「バジリスク」(Basilisk)、木版画、1642年、ボローニャ
ニワトリに似たバジリスク
聖ミカエルがバジリスクを殺すシーンを描いたズヴォーレ市章

中世になると、バジリスクについての伝承はコカトリスのものと合流し、同一視されるようになる[6]。バジリスクは、雄鶏の産んだヒキガエル[7](またはヘビ[5]など)が孵化させて生まれると言われるようになり、その姿や生態についての記述には雄鶏のそれが取り入れられた[7](後年の主な姿態としては、頭に鶏冠を持ったヘビ、あるいは8本足のトカゲなどがある[6])。そして、コカトリスとは雌雄関係にある(どちらが雄か雌かは不明)とも言われ、「バジリスク」の別称として「コカトリス」が用いられるようにもなった。また、ジェフリー・チョーサー1343頃-1400)は『カンタベリー物語』(14世紀)に「バシリコック」(バジリコックとも。Basilicok)という名前でバジリスクを登場させた[5]

その後、バジリスクの恐ろしさに関する記述はどんどん大げさになっていく。例えば、さらに大きな怪物とされたり、口から火を吹くことになっていたり[5]前述のコカトリスの能力同様に視線を合わせた者は石になってしまったり[要出典]、その声だけで人を殺せる等とされたりした。中には、バジリスクと間接的に触れるだけで死ぬとした書き手すらいた。つまり手に持った槍がバジリスクと接触しただけで毒を逆流させられて死ぬというのである[5]

また、石化の魔眼を鏡で反射すると逆にバジリスクが石になるとされていたり、バジリスクよりも先にバジリスクを見たら、バジリスクが死亡するという伝承も存在する[要出典]

近世以降[編集]

もっとも、このように驚くべき危険さが喧伝されたせいで、かえってバジリスクは信じられなくなったのかもしれない。[独自研究?]ルネサンス時代には、「本当にそれほど危険であれば、実際にバジリスクを見た者は生きて帰れないので、誰もそれについて語れないはずだ」という意見が出てきた[2][5]。それでもバジリスクの伝承はヨーロッパの文化に根付き、貴族や団体などがバジリスクを紋章のデザインに取り入れており、こんにちまで続いている[5]

バジリスクは、その危険な能力故に、過去20~30年[いつ?]ほどの間に多くのファンタジーを舞台とする本や映画やゲームに強敵として登場している。主なところではダンジョンズ&ドラゴンズソード・ワールドRPGなどのテーブルトークRPGでも事実上のボス敵として登場している。これらのほとんどでは、特徴的な「猛毒を持つ」「視線で石化する」という2つの能力が共通して登場している。ファンタジー作品におけるバジリスクは、コカトリスと混同されるケースも多い[8]

1768年に発見されたあるトカゲは、バジリスク(本来はコカトリス)を思わせるトサカを持っていたため、バシリスクと名付けられた。ただし、毒はなく、もちろん、見たものを殺す能力もない。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ その血がマギ僧に珍重されたとの伝承もある[要出典]

出典[編集]

  1. ^ アシモフ, アイザック 『アシモフ博士の世界』 小隅黎・十河矜也訳、早川書房1983年2月、244ページ。ISBN 978-4-15-203221-8
  2. ^ a b c d e f g h i j k 世界幻想動物百科』 24ページ
  3. ^ a b c d e 世界の怪物・神獣事典』 323ページ
  4. ^ a b c d e f g h i j 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』 178ページ
  5. ^ a b c d e f g 世界の怪物・神獣事典』 324ページ
  6. ^ a b 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』 179ページ
  7. ^ a b 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』 179-180ページ
  8. ^ RPG幻想事典』 133、144ページ

参考文献[編集]

原典資料[編集]

二次資料[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]