アトムの最後

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アトムの最後(アトムのさいご)は別冊少年マガジン(現・月刊少年マガジン1970年(昭和45年)7月号(講談社)に掲載された手塚治虫漫画作品である。

概要[編集]

鉄腕アトムの後日談的内容の作品であり、題名の通り「アトムの最後」をテーマとしている。作品内容も1976年(昭和51年)の朝日ソノラマの単行本において、作者自ら「陰惨でいやな気分になる」[1]と記述したように殺伐とした悲劇として描かれ[2]あまりにも救いのない内容に賛否分かれるが、一部では高い評価を得た作品である。

ただし、本作ではアトムの存在は脇に置かれており、主人公の丈夫とガールフレンドのジュリーの間に起きた悲劇が物語の主軸となっている。

内容[編集]

主人公の青年・丈夫は、幼い頃、隣に住む少女ジュリー(壽理)と遊んでいた際、子供故の無邪気さから来る残酷な遊びで彼女に瀕死の重傷を負わせてしまう。その後ジュリーが家出したと聞いた丈夫は、両親の言いつけを破り夜の街へとジュリーを探しに行くが、暗闇の中、両親から与えられていた銃でジュリーの母親を誤って撃ってしまい、その際ジュリーの母親がロボットであることを知ってしまう。

それから時は流れ、無事保護され美しく成長したジュリーと再会した丈夫は、互いに好意を持ち愛を育むようになっていった。だがある日、それまでの生活がすべて偽りだった事を知ってしまう。実はジュリーの母親同様丈夫の両親もロボットであり、親としての優しさは偽りで、丈夫に対する愛情など微塵もなく、ただ単に自分たちの娯楽である殺し合いの道具として育てていたのだった。

近未来[3]、地球は環境汚染が進んだために人類の数が激減し、それに替わってロボットが支配する世界となっていた。貯蔵所に保存してある精子卵子人工授精させ、人工子宮で培養されて産まれた人間の子供をロボットの親が育て、ある年齢まで成長すると育てた子供同士で殺し合いをさせ、それを娯楽として楽しむ世界。この世界では、人間は単にロボット達の家畜であり見世物であり、そして殺し合いの道具でしかなく、両親が子供の丈夫に銃を与えたのも、銃の扱いを覚えさせて将来の殺し合いに備えるためであった。

真実を知った丈夫はやがて闘技場に送られるが、殺し合いの見世物となる事を拒否。ジュリーの母親と闘技場のロボットたちを破壊し、ジュリーを連れて脱走する。そしてジュリーと共にロボット博物館に向かい、そこに保存展示されていたアトムにエネルギーを与えて甦らせるとそれまでの事情を話し、それを聞いたアトムは2人を無人島へ連れて行く。

事情を知ったアトムは2人を助け追っ手と戦う事を決意するが、戦いに赴く直前のアトムの言葉、そして丈夫の前に現れた追っ手のロボットたちの言葉からジュリーに関する残酷すぎる事実が明かされていく。それは全て、2人が子供の頃の「残酷な遊び」が原因であった…。

劇場作品[編集]

ASTRO BOY 鉄腕アトム特別編 輝ける地球(ほし)〜あなたは青く、美しい…〜

2004年2月7日公開。京都駅ビル「KYOTO手塚治虫ワールド」内300インチシアターで上映された、「ASTRO BOY 鉄腕アトム」の劇場作品。キャラクターやストーリー展開は変更されているが「環境破壊の末にロボットに支配された未来の地球」や「役目を終え博物館に眠るアトム」といった「アトムの最後」の要素を基にしている。
ストーリー
200年後の地球は環境破壊が進んだ末にロボットが支配する星となり、人間はロボットによって排除される存在となっていた。地下に逃れ生き延びた数少ない人間の一人となっていた少年・ティコは、ある日荒廃した街に出て最後の科学省長官である祖父・飯田橋博士の誕生祝いのプレゼントを探しているうちに警備ロボット・プルトスの群れに見つかり追われることとなる。そしてロボット博物館に逃げ込んだティコはそこで遠い昔に役目を終えて眠りについていたアトムと出会い、そこに襲いかかってきたプルトスの攻撃のショックでアトムは目覚めを迎える。こうして200年ぶりに目覚めたアトムはティコの導きで飯田橋博士と出会い、地球が今のようになってしまったいきさつと環境破壊を食い止めんとして今の事態を引き起こした地球環境管理スーパーコンピューター・ガイアの事を知り、狂ってしまったガイアを正常に戻すため尽力する…。
スタッフ
  • 監督:出崎統
  • 脚本:森田真由美
  • 演出:桑原智
  • 作画監督:西田正義
  • 美術監督:斎藤雅巳
  • 色彩設計:川添恵
キャスト

脚注[編集]

  1. ^ 『こんなマンガがあったのか』名作マンガの知られざる続編・外伝 斎藤宣彦 編メディアファクトリー 1999年(平成11年) ISBN 4-88991-946-5
  2. ^ 秋田書店刊『鉄腕アトム別巻1』の作者自身の解説によると、「執筆当時、急進的な学生運動が流行り、漫画や劇画の内容も暗くてニヒルなものが多く、それらの影響を多分に受けた作品」と評している
  3. ^ 作中では西暦2055年