ぼくのメジャースプーン

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ぼくのメジャースプーン』は、辻村深月による日本小説講談社ノベルスより刊行された。2007年には、第60回日本推理作家協会賞長編及び連作短編部門にノミネートされた。

ストーリー[編集]

「ぼく」はお母さんの家系から受け継いだある特別な能力を持っていた。 『Aをしなければならない。そうしなければBになってしまう』 特別な声を使って言うことで相手にAとBを選ばせ強制的に縛る「条件ゲーム提示能力」である。 「ぼく」のお母さんはこの能力を忌み嫌っており、一度無意識ながらも能力を使ってしまった時にはお母さんに厳しい口調で能力を忘れるように言いつけられ、また「ぼく」も時が経つうちにその能力の存在を忘れていった。

時が経ち、小学4年生になった「ぼく」が通っている学校で飼われていたうさぎ達が市川雄太という大学生の手によって殆どが命を落としてしまう事件が起きる。 兎を誰よりも可愛がっていた「ぼく」の幼馴染みの「ふみちゃん」は現場ではさみで切り刻まれたうさぎ達の姿を見てしまい、それから心を固く閉ざしてしまう。

市川雄太に復讐する為、ふみちゃんの心を取り戻す為、「ぼく」は能力を使って戦うことを決意する。 「ぼく」のお母さんのおじにあたるD大学教育学部児童心理学科教授・秋山一樹に能力の正しい使い方を教わりながら「ぼく」の復讐劇が始まる。

主な登場人物[編集]

ぼく
本作の主人公兼語り手。小学4年生。物語開始時から2年前、小学2年生のときに『条件ゲーム提示能力』に目覚める。ふみちゃんの心を傷つけた市川雄太に罰を与えるため、その力を使おうとする。ふみちゃんからメジャースプーンを1本貰い、宝物にしている。事件の日に風邪をひき、飼育当番をふみちゃんに代わってもらったことを後悔している。
ふみちゃん
「ぼく」の幼馴染み。眼鏡をかけ、矯正のブリッジを嵌めている。うさぎの形の石がついたメジャースプーンをキーホルダーのようにランドセルにつけている。小学生としては知識も豊富で、誰にでもやさしく接する。特定の仲の良い友達というのはいない。うさぎが好きで、餌やりの当番を決めたり、怪我をしたうさぎの車椅子を作ってやったりする。
市川雄太の起こした事件によって深く心を抉り取られ、言葉を失う。
タカシ
「ぼく」の親友。サッカーが上手で、女子から非常にモテる。「ぼく」曰く、クラス一の人気者。賢いふみちゃんと同じ班になることで、先生から難しい質問をされたときに代わりに答えてもらおうとするなど、少々打算的な面がある。
トモ
「ぼく」のクラスメート。短絡的な性格で、意図せず「ぼく」を傷つけてしまったことも。ふみちゃんを軽んじた言動が「ぼく」の怒りを買い、殴り合いの喧嘩にまで発展する。
あーちゃん
「ぼく」のクラスメート。美少女であり、男子からの人気も高い。「ぼく」曰く、タカシと仲が良い。ふみちゃんが考案したうさぎの車椅子に対して取材が行われたとき、トモと一緒にテレビ出演を果たした。
千加子(ちかこ)
「ぼく」の母親。秋山の姪。自身の血筋に伝わる『条件ゲーム提示能力』の存在と概要は把握していたが、詳しくはわからないため、秋山に「ぼく」への指導を依頼する。
自らの危険を顧みない息子・「ぼく」に対して不安を募らせる。「ぼく」の誕生日に夫と離婚しており、以降は息子と二人で暮らしている。「ぼく」を厳しく叱ることを多いが、息子への愛情は深い。
秋山一樹(あきやま かずき)
「ぼく」の母・千加子のおじに当たる、D大学教育学部児童心理学科教授。『条件ゲーム提示能力』の能力者だが、過去の事件からその力を封印していた。千加子から頼まれ、能力がいかなるものかを「ぼく」に説いていく。
市川雄太(いちかわ ゆうた)
K大学医学部3年生。小学校に忍び込んでうさぎを切り刻んだ犯人。

章タイトル[編集]

本作は、各章のタイトルを「○○の××」の形式で名づけ、次の章では前の章の「××」の部分の語句を受け継ぎ、「××の△△」、その次は「△△の□□」という法則でタイトルをつけるというスタイルをとっている。このルールに従って第1章の「眼鏡のふみちゃん」から、第11章の「なかみの秘密」まで続く。

他作との関連[編集]

  • 子どもたちは夜と遊ぶ
    • 秋山一樹が登場するほか、本作に登場する「額に傷跡のある料理の下手な女のひと」と「耳とまぶたにピアスの跡がある男の人」はそれぞれ月子と石澤恭司である。また、台詞のみだが白根真紀も登場する。
  • 凍りのくじら
    • ふみちゃんが言葉を取り戻すために話し方教室に通っているほか、同じピアノ教室の「松永くん」が登場する。
  • 名前探しの放課後
    • ふみちゃんと「ぼく」がこれから死ぬはずの同級生の名前探しに参加している。台詞は出ていないが秋山一樹も登場し、「松永くん」も同じ同級生として登場する。

舞台化[編集]

2022年に『辻村深月シアター』として、著者の同じ「かがみの孤城」の再演と共に初めて舞台化[1]。脚本・演出は成井豊、企画・製作・主催はナッポスユナイテッド

公演日程
出演者

脚注[編集]

外部リンク[編集]