冷たい校舎の時は止まる

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冷たい校舎の時は止まる
著者 辻村深月
発行日 (上) 2004年6月5日
(中) 2004年7月5日
(下) 2004年8月5日
発行元 講談社ノベルス
ジャンル ホラー推理学園小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 ノベルズ
ページ数 236, 268, 284
公式サイト 講談社特設サイト
コード (上) ISBN 4-06-182375-2
(中) ISBN 4-06-182378-7
(下) ISBN 4-06-182382-5
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冷たい校舎の時は止まる』(つめたいこうしゃのときはとまる)は、講談社から刊行されている辻村深月推理小説。第31回メフィスト賞受賞作。『月刊少年マガジン』にて漫画版が連載された。

ストーリー[編集]

大学受験を控えた高3の冬、の中集まった8人の生徒たちは、無人の校舎閉じ込められる

クラスの学級委員達8人以外の姿が見当たらぬ中、学園祭自殺したクラスメイトの名を、どうしても思い出せないことに気付く。自殺したというクラスメイトがこの状況に関わっているのか。この8人のうち、1人が死んでいるのでは…? 疑心暗鬼はふくらみ、彼らは追いつめられていく。

迫る5時53分の恐怖と戦いつつも、過去の闇に立ち向かい、彼らは文化祭で自殺したクラスメートの名を探し続ける。

主な登場人物[編集]

鷹野博嗣(たかの ひろし)
県下一の進学校・青南学院高校の3年生。深月とは幼馴染みで、いつも登下校を共にしている。眼鏡を掛けた冷静沈着且つ親しみやすい好人物。成績も優秀な入学金免除のB級特待生。元陸上部所属。T大法学部志望。
担任教師の榊とは従兄弟同士であり、容姿もそっくりで、よく榊の兄と間違えられるらしい。
教師からの信頼も厚い完璧な優等生であるが、煙草麻雀の経験もあるなどの一面も持つ。
光待つ場所へ』に収録の『しあわせのこみち』にも登場。
辻村深月(つじむら みづき)
青南学院高校の3年生。鷹野や彼の従兄で昔から近所に住んでいた榊の幼馴染み。明るく優しい性格だが、精神的に打たれ弱い面がある。陸上部のマネージャー。
2年生に進級し文理にクラス分けをした際に角田春子と知り合った。2人は気が合って着々と仲を深め、鷹野に誘われなった陸上部のマネージャーの仕事も春子が手伝ってくれており、その頃の深月も純粋に彼女を好いていた。しかし徐々に受験が近付いてくるにつれ、学業に行き詰まった春子の不満の捌け口になり、彼女の理不尽な被害妄想から苛められてしまう。
一時は拒食症になるまで追い詰められていた。その事から昭彦には「自殺したのは深月なのでは」と思われているものの、当時は鷹野達学級委員が必死に支えたお陰で今は春子の事も割り切っており、通常の生活に戻ってきている筈である。
菅原(すがわら)
青南学院高校の3年生。茶髪や片耳にピアスという不良のような風貌。賭け麻雀と喫煙で停学をくらっており、事件の朝は反省文の日記帳を携えて登校している。不良っぽく振舞っているものの、内面はフェミニストで情に熱い人物。教師志望。
校舎内に閉じ込められた8人の中で自殺した人物を推理している最中も、「菅原だけは絶対に違う」と一風変わった信頼を寄せられている。その楽観的な性格から他の仲間達の心の支えになっている模様。
中学生の頃、母親にPTA会長だった父親が惜しまず寄付をしていた『ひまわりの家』という施設の手伝いを言い渡される。渋々やっていたかの様に見えて、同じく『ひまわり』を手伝っていた青南に通う高校生の『サトちゃん』・2人の小学生で同じ呼び名を持つ『ヒロくん』と『ヒロちゃん』と過ごす日々を、純粋に楽しんでいた。また『サトちゃん』を巡って『ヒロちゃん』とは恋敵の関係だった。
しかし中学2年生の夏に母子家庭だった『ヒロちゃん』が、母親の無理心中に巻き込まれ、幼くして死んでしまう。葬儀の際に夏祭りで自分が買ってやった金のピアスを彼が『サトちゃん』に贈っていたことが分かり、「菅原くんに片方持っていて欲しい」と頼まれて『サトちゃん』とピアスを分け合ってから、『ひまわり』へ通うのを止めている。
ロードムービー』に収録の『雪の降る道』にも『スガ兄』として登場している。
佐伯梨香(さえき りか)
青南学院高校の3年生。一人称は「リカ」。榊に熱烈な好意を抱いており、それは榊本人も含め周知の事実である。また景子とは小学生の頃からの幼馴染み。茶髪に短いスカートなど女の子らしい格好をしていて、とても社交的な性格だが少し短気。菅原と同じく教師志望。
高校生の沙弥と小学生の弓子という2人の妹がおり、現在は離婚した母親の元で暮らしている。
榊とは1年生の時に生徒と副担任という立場で出会った。その頃家庭の事情から荒れていた梨香は彼の事も「勘違いした新米教師」と冷めた目で見ていた為、最初から好感を持っていた訳ではない。しかし夜の街で帰る宛ても無く取り残された際、偶然会った事を切っ掛けに榊の優しさに触れその考えを改める。それからも当時の担任だった山崎に殴られた時や、弓子が風呂場で倒れ意識を失った時など、梨香がどんなに絶望した状況に陥っても、必ず助けてくれた榊へ恋心を抱くようになった。
藤本昭彦(ふじもと あきひこ)
青南学院高校の3年生。常に落ち着いていてどこか達観している。景子曰く「下心をまるで感じさせないフェミニスト」で、女子からの人気も非常に高いらしい。しかし時にその大人びた態度から鷹野と同じく、梨香の様なタイプの人間とは衝突してしまう事も屡々である。
中学生の頃、幼馴染みだが今までクラスも離れており、疎遠になっていた沢口豊とクラスメイトになる。実は沢口は前の学年の時にクラスの中心的な人物達と揉めたことが原因で、クラスメイトの殆どからいじめの対象になっていた。昭彦は別に彼を苛めも特別庇いもしなかったが、沢口は昔馴染みである昭彦を頼っていた模様である。沢口はだんだん不登校気味になり、結果、首を吊って自殺してしまう。
青南に進学しても沢口のことをずっと気に病んでいた昭彦は、2年生になり角田春子に苛められていた深月が沢口に重なり、彼女を気遣って一緒に帰り始める。深月が春子の件を最初に告白したのも昭彦で、そこから鷹野達も漸く事態を把握するに至った。
光待つ場所へ』に収録の『アスファルト』にも登場。主人公である。
桐野景子(きりの けいこ)
青南学院高校の3年生。梨香からは「ケイ」、諏訪裕二からは「けいちゃん」と呼ばれている。また梨香とは幼馴染みで彼女の家庭の事情もよく知っている。両親は医者であり、実家は桐野総合病院。自身も医学部志望。生徒会の副会長を務め、会長の裕二と共に業務をこなしていた。中性的な美人でややクールな口調で話す。下級生の女子からは大人気で、中学の頃はファンクラブもあったらしい。
小学生の頃から付き合いのある牧村という家庭教師を付けており、景子が国立の中学校に入学に入ってからも、変わらず彼に勉強を教わっていた。景子も自分の言う意見を真剣に聞いてくれる牧村の事を信頼していたが、ある日彼氏に振られて悩んでいることを「そんなことで」という一言で済まされてしまう。それが切っ掛けで牧村が景子に勝手な理想を抱いて、彼が女性的な自分を拒絶していることを察する。また己も牧村に夢を見ていたということに気付いて、なんとなく関係も気不味くなっていき、最終的に牧村側の都合で彼は景子の家庭教師を辞めた。
片瀬充(かたせ みつる)
青南学院高校の3年生。温和かつ気弱な性格であり、自己主張に乏しい。『優しい』と評されることが多いものの、それは人を傷つけたくないが故のものであり、他人を受け入れるだけの無責任な優しさだと自覚している。
梨香に恋心を抱いており、その恋心は梨香を含めた周囲の人間も知っている。
清水あやめ(しみず あやめ)
青南学院高校3年。入学金・授業料免除のA級特待生。学業のみならず、美術部に所属し絵画のコンクールで受賞もしている。文化祭では、クラスの催し物のパンフレットの絵を描いた。T大志望。
人間が人間の中に「閉じ込められる」ことに関する知識を持ち、突然の異変に対する方向性を提示する。
光待つ場所へ』に収録の『しあわせのこみち』にも登場。主人公である。
榊(さかき)
鷹野たちの担任教師。茶髪に金色のピアスと教師らしからぬ風貌である。生徒たちからの信頼は厚く、自宅に生徒が度々訪ねてくるほど。
光待つ場所へ』に収録の『冷たい光の通学路』にも登場。

その他の登場人物[編集]

角田春子(つのだ はるこ)
青南学院高校の3年生。鷹野達のクラスメイト。友人だった深月の陸上部のマネージャーの仕事を手伝っており、また彼女と同じ大学を志望していた。受験が迫り自身は学業に専念することにするが、深月はその後もマネージャーを続けていたにも関わらず、必死に努力している自分よりも、深月の方が成績が良かったことなどから、彼女の存在を疎ましく感じ始める。
春子や他の女子に無視されて孤独を感じ拒食症気味になった深月を見ても「あてつけだ」と逆に呆れていることから、鷹野達の記憶上で反省している素振りなどは見受けられない。しかしその事から元々仲が良かった梨香や景子からは少し距離を置かれ、鷹野や昭彦からは文句などは言われなかったものの、もう深月に近づかないで欲しいと思われている。
清水の回想から1年生の頃鷹野に惚れていた事が明らかになっており、真相は定かではないもののクラスメイトに指摘された本人がはっきり否定していない為、あながち誤解ではないと考えられる。
諏訪裕二(すわ ゆうじ)
青南学院高校の3年生。鷹野達のクラスの隣、3年1組の生徒会長。政治家の息子。景子とは同じ中学校の出身で、裕二が中学でも生徒会長をしていた際に、彼女が選挙管理委員会の委員長だった。また鷹野とは1年生の時に同じクラスで、共に学級委員を務めた過去がある。クール且つ傍若無人な振る舞いが目立ち、生徒会も彼のワンマンで運営されている様なものだが、「そこがいい」と女子にはとてもモテる。鷹野と同じくB級特待生。
中学生時代に初めて出会った時はまだ景子のこともただの同級生として見ていた模様だが、だんだん異性として惹かれていき、呼び名も『桐野』から『けいちゃん』と変化している。また青南で自身が生徒会長に就任した際、景子を副会長に誘ったのも彼である。文化祭前日に景子に告白するが、景子は自由な彼を束縛してしまいそうな己を受け入れられず、両想いであるにも関わらず振られた。
雨宮(あまみや)
鷹野達のクラスメイトの女子。校舎に閉じ込められた8人が、自殺の起きた文化祭の最終日を回想する際、妙にたくさん登場している。当日は充と共に受付を担当していた模様。
昭彦に沢口の弟が訪ねてきたことを伝えたり、充に山内祥子の情報を提供したりした。
ヒロくん
第14章『HERO』に登場。本名は不明。『ひまわり』に通う小学生。少し大人しめな性格。『ヒロちゃん』とその母親を放ったらかしにしていた『ヒロちゃん』の父親を殴って失踪した菅原に、「ヒロちゃんが可哀想なのはスガ兄のせいじゃない」と諭すなど賢く心優しい一面も持っていた模様である。また彼の母親と菅原の母親は知り合い同士であり、『ひまわり』に行き始めたのも菅原の母に勧められたから。
『ロードムービー』に収録の『雪の降る道』にも登場。『ヒロちゃん』が亡くなってから彼がどの様に生活してきたのかが描かれている。
ヒロちゃん
第14章『HERO』に登場。本名はヒロナオ・マラヤ。『ひまわり』に通う小学生。日本人の父親とフィリピン人の母親を持つハーフ。相棒である『ヒロくん』とは対照的に悪餓鬼の典型。英語が達者。『ヒロくん』とは違う小学校に通っている。
父は滅多に帰ってこず、母と2人暮らしをしていた。しかしその母も夜遅くまで働いており、彼を迎えに行くことが出来ずそのまま『ひまわり』に泊まることも珍しくはなかった。
夏に突如母の無理心中に巻き込まれ、包丁で刺されてしまう。母はすぐに死亡が確認されたが、『ヒロちゃん』の方は緊急手術の後入院。ベッドの上で3日間頑張ったが、7歳にして急逝した。
みーちゃん
第14章『HERO』に登場。本名は不明。小学生であるが『ひまわり』には通っていない。『ヒロくん』のガールフレンドでよく菅原に彼との関係を揶揄されていた。また夏祭りで『ヒロくん』は菅原に『みーちゃん』へプレゼントする為の指輪を買って貰っている。
『ロードムービー』に収録の『雪の降る道』にも登場。
サトちゃん
第14章『HERO』に登場。本名はチサト。菅原が中学生だった当時、青南学院高校に在学していた。よって菅原よりも年上である。穏やかな心優しい性格をしており、『ひまわり』の子供達からも好かれている。また菅原は『サトちゃん』に恋心を抱いていており、青南に進学を決めたのも彼女の存在が影響している。
実は小学生の頃に『ひまわり』で過ごした過去があり、その縁からか高校生になっても『ひまわり』を手伝いに来ている。英語が得意で上手く日本語が話せない『ヒロちゃん』の母親と、『ひまわり』のスタッフを繋ぐ通訳の役割も果たしていた。章の後半にて『ヒロちゃん』と同じく日本人の父親と外国人の母親を持つハーフである事が明かされている。
菅原が『ひまわり』に通うのを止めて以来、彼との繋がりは一切絶たれ、それっきりである。その後『サトちゃん』は青南を卒業後、名のある国立大学教育学部に進学したと、菅原が風の噂で聞いた内容が語られた。

青南学院高校[編集]

県下一の進学校。鷹野達の代が入学する前年に老朽化した校舎の大幅な改装があり、設備の充実した新校舎となったため、鷹野たちの学年は例年にも増して倍率と偏差値が高くなった。

作中に登場する卒業生はチサト・榊で、また榊は8代前の特待生である。鷹野達の学年の特待生はA級の清水あやめ・B級の鷹野博嗣・諏訪裕二の3人。

雪降るある日、クラス委員の鷹野・深月・梨香・昭彦・充・清水、前々から委員会の活動に協力していた菅原・生徒会の副会長である景子のみが登校し、校内に閉じ込められるところから物語は始まる。

既刊一覧[編集]

講談社ノベルス版

講談社文庫版

漫画版[編集]

冷たい校舎の時は止まる
ジャンル ホラー少年漫画
漫画
原作・原案など 辻村深月
作画 新川直司
出版社 講談社
発表期間 2008年1月号 - 2009年5月号
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本作品を原作にしたコミカライズ作品。全4巻。作画は新川直司。「月刊少年マガジン2008年1月号から2009年5月号まで連載。鷹野の志望学部が医学部であるなど、原作との相違点がいくつか見られる。

単行本[編集]

講談社KCデラックス