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'''花冠'''(かかん、{{Lang-en-short|corolla}}<ref name="terms">{{Cite book|和書
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また、花被のうち内花被も花冠である。
また、[[花被]]のうち、[[内花被]]も花冠である。


==合弁と離弁==
== 合弁花冠と離弁花冠 ==
花冠は合弁花冠と離弁花冠に分けられる。
花冠は合弁花冠と離弁花冠に分けられる。合弁花冠か離弁花冠かは、[[科 (分類学)|科]]によってほとんど決まっているが、例外もしばしばある。
; 合弁花冠
合弁花冠か離弁花冠かは、科によってほとんど決まっているが、例外もしばしばある。
: それぞれの花弁と花弁が合着して花冠をなしているもの。
;合弁花冠
; 離弁花冠
:それぞれの花弁と花弁が合着して花冠をなしているもの。
: 花弁が離れて独立している花冠。
;離弁花冠
:花弁が離れて独立している花冠。


==相称性==
== 相称性 ==
花冠を分類するにあたり、花の相称性も重視される。花の相称性は'''放射相称花'''と'''左右相称花'''と'''非相称花'''があるが、花冠では放射相称花のものを'''放射相称花冠'''、左右相称花を'''左右相称花冠'''として区別する。
花冠を分類するにあたり、花の相称性も重視される。花の相称性は'''放射相称花'''と'''左右相称花'''と'''非相称花'''があるが、花冠では放射相称花のものを'''放射相称花冠'''、左右相称花を'''左右相称花冠'''として区別する。


なお、放射相称とは中心から2本以上の対称軸が引ける形、左右相称とは左右対称の形(1本の対称軸が引ける形)ことである。
なお、放射相称とは中心から2本以上の対称軸が引ける形、左右相称とは左右対称の形(1本の対称軸が引ける形)ことである。


==花冠の種類の例==
== 花冠の種類の例 ==
;ナデシコ形花冠
; ナデシコ形花冠
:離弁・放射相称花冠。花弁は萼筒の下位にある爪部と、上位の舷部からなる。[[ナデシコ科]]に特有。
: 離弁・放射相称花冠。花弁は萼筒の下位にある爪部と、上位の舷部からなる。[[ナデシコ科]]に特有。
;かぶと状花冠
; かぶと状花冠
:離弁・左右相称花冠。花弁ではなく、後萼片がかぶと状になったもの。[[キンポウゲ科]][[トリカブト属]]に存在する。
: 離弁・左右相称花冠。花弁ではなく、後萼片がかぶと状になったもの。[[キンポウゲ科]][[トリカブト属]]に存在する。
;十字形花冠
; 十字形花冠
:離弁・放射相称花冠。4枚の花弁が一対ずつ十字形に[[対生]]する。[[アブラナ科]]に特有。
:離弁・放射相称花冠。4枚の花弁が一対ずつ十字形に[[対生]]する。[[アブラナ科]]に特有。
;バラ形花冠
; バラ形花冠
:離弁・放射相称花冠。ほぼ円形で無爪あるいはごく短い5枚の花弁が水平に開く。[[バラ科]]の花冠全般をさす。
: 離弁・放射相称花冠。ほぼ円形で無爪あるいはごく短い5枚の花弁が水平に開く。[[バラ科]]の花冠全般をさす。
;蝶形花冠
; 蝶形花冠
:離弁・左右相称花冠。上位の旗弁1枚、中位の翼弁2枚、下位の竜骨弁2枚からなる。狭義の[[マメ科]]の花冠を指す。
: 離弁・左右相称花冠。上位の旗弁1枚、中位の翼弁2枚、下位の竜骨弁2枚からなる。狭義の[[マメ科]]の花冠を指す。
;スミレ形花冠
; スミレ形花冠
:離弁・左右相称花冠。上位一対の上弁(2枚)、中位一対の側弁(2枚)、下位の唇弁(1枚)と呼ばれる距のある1個の花弁からなる。[[スミレ科]][[スミレ属]]の花冠。
: 離弁・左右相称花冠。上位一対の上弁(2枚)、中位一対の側弁(2枚)、下位の唇弁(1枚)と呼ばれる距のある1個の花弁からなる。[[スミレ科]][[スミレ属]]の花冠。
;有距花冠
; 有距花冠
:少なくとも一部の花弁が距をもつ花冠をいう。科としての共通性はない。[[キンポウゲ科]][[オダマキ属]]、[[ケシ科]][[エンゴサク属]]、[[ツリフネソウ科]][[ツリフネソウ属]]に見られる。
: 少なくとも一部の花弁が距をもつ花冠をいう。科としての共通性はない。[[キンポウゲ科]][[オダマキ属]]、[[ケシ科]][[エンゴサク属]]、[[ツリフネソウ科]][[ツリフネソウ属]]に見られる。
;壺形花冠
; 壺形花冠
:合弁・放射相称花冠。花冠の上部が壺のようにくびれ、くぶれた部分から裂片が開出する。[[ツツジ科]]や[[カキ]]の花冠。
: 合弁・放射相称花冠。花冠の上部が壺のようにくびれ、くぶれた部分から裂片が開出する。[[ツツジ科]]や[[カキ]]の花冠。
;高坏形花冠
; 高坏形花冠
:合弁・放射相称花冠。平開する花冠裂片と、上下の太さが変わらない花冠筒からなる。[[サクラソウ科]]など。
: 合弁・放射相称花冠。平開する花冠裂片と、上下の太さが変わらない花冠筒からなる。[[サクラソウ科]]など。
;漏斗形花冠
; 漏斗形花冠
:合弁・放射相称花冠。花冠筒が上部に向かって開き、円形の開出部分につながる花冠。[[ヒルガオ科]]の[[ヒルガオ属]]や[[サツマイモ属]]など。
: 合弁・放射相称花冠。花冠筒が上部に向かって開き、円形の開出部分につながる花冠。[[ヒルガオ科]]の[[ヒルガオ属]]や[[サツマイモ属]]など。
;ユリ形花冠
; ユリ形花冠
:放射相称花冠。内花被3枚+外花被3枚。[[ユリ科]]の花冠。
: 放射相称花冠。内花被3枚+外花被3枚。[[ユリ科]]の花冠。
;ラン形花冠
; ラン形花冠
:左右相称花冠。内花被の一枚が変形して、袋状または舌状になる。[[ラン科]]植物に見られる。
: 左右相称花冠。内花被の一枚が変形して、袋状または舌状になる。[[ラン科]]植物に見られる。
;キンチャク形花冠
; キンチャク形花冠
:左右相称花冠。花冠の下が袋状になる。[[ゴマノハグサ科]][[カルセオラリア|カルセオラリア属]]の花冠。
: 左右相称花冠。花冠の下が袋状になる。[[ゴマノハグサ科]][[カルセオラリア|カルセオラリア属]]の花冠。
;唇形花冠
; 唇形花冠
:合弁・左右相称花冠。横向きで花冠裂片が上下に深裂して唇状(上唇と下唇)になっている花冠。上唇と下唇の間の花冠筒部分を花喉とよぶ。[[シソ科]]、[[ゴマノハグサ科]]にみられる。シソ科[[オドリコソウ]]属の花冠は合弁、唇状であるが、上唇がかぶと状になるので、かぶと状花冠とされることもある。
: 合弁・左右相称花冠。横向きで花冠裂片が上下に2深裂して唇状(上唇と下唇)になっている花冠。上唇と下唇の間の花冠筒部分を花喉とよぶ。[[シソ科]]、[[ゴマノハグサ科]]にみられる。シソ科[[オドリコソウ]]属の花冠は合弁、唇状であるが、上唇がかぶと状になるので、かぶと状花冠とされることもある。
;一唇形花冠
; 一唇形花冠
:合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、上唇が発達しないもの。[[シソ科]][[キランソウ属]]など。
: 合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、上唇が発達しないもの。[[シソ科]][[キランソウ属]]など。
;仮面状花冠
; 仮面状花冠
:合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、下唇が特に大きくせり上がって花喉をふさいで仮面状になっているもの。[[ゴマノハグサ科]][[w:Linaria|ウンラン属]]などに見られる。
: 合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、下唇が特に大きくせり上がって花喉をふさいで仮面状になっているもの。[[ゴマノハグサ科]][[w:Linaria|ウンラン属]]などに見られる。
;車形花冠
; 車形花冠
:合弁・放射相称花冠。花冠筒が短く、大きめの裂片が開出する。[[ムラサキ科]]や[[ナス科]]、[[アカネ科]]、[[スイカズラ科]]などに見られる。
: 合弁・放射相称花冠。花冠筒が短く、大きめの裂片が開出する。[[ムラサキ科]]や[[ナス科]]、[[アカネ科]]、[[スイカズラ科]]などに見られる。
;鐘形花冠
; 鐘形花冠
:合弁・放射相称花冠。花冠は筒形または先端が少し膨れ、花冠長は直径の倍以下。[[キキョウ科]]、[[ツツジ科]]にみられる。
: 合弁・放射相称花冠。花冠は筒形または先端が少し膨れ、花冠長は直径の2倍以下。[[キキョウ科]]、[[ツツジ科]]にみられる。
;筒状花冠
; 筒状花冠
:合弁・放射相称花冠。花冠筒が細長く、先端に小さな裂片が開出している[[頭状花序]]の[[中心花]]のことが多い。[[キク科]]([[タンポポ属|タンポポ亜科]]を除く)に特有。
: 合弁・放射相称花冠。花冠筒が細長く、先端に小さな裂片が開出している[[頭状花序]]の[[中心花]]のことが多い。[[キク科]]([[タンポポ属|タンポポ亜科]]を除く)に特有。
;舌状花冠
; 舌状花冠
:合弁・左右相称花冠。花冠筒が短く、大きな非対称の弁状部が広がる。頭状花序の[[周辺花]]となっているが多い。 キク科([[アザミ属|アザミ亜科]]を除く)の多くに見られる。
: 合弁・左右相称花冠。花冠筒が短く、大きな非対称の弁状部が広がる。頭状花序の[[周辺花]]となっていることが多い。キク科([[アザミ属|アザミ亜科]]を除く)の多くに見られる。

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画像:W nadesiko4051.jpg|ナデシコ形花冠([[ナデシコ]]、花弁は5枚)
ファイル:W nadesiko4051.jpg|ナデシコ形花冠([[ナデシコ]]、花弁は5枚)
ファイル:Aconitum carmichaelli 'arendsii' 27-10-2005 16.09.36.JPG|かぶと状花冠([[トリカブト]]の一種)
ファイル:Aconitum carmichaelli 'arendsii' 27-10-2005 16.09.36.JPG|かぶと状花冠([[トリカブト]]の一種)
Image:Brassica rapa (xndr).jpg|十字形花冠([[アブラナ]])
ファイル:Brassica rapa (xndr).jpg|十字形花冠([[アブラナ]])
Image:Rosa-multiflora1.JPG|バラ形花冠([[ノイバラ]])
ファイル:Rosa-multiflora1.JPG|バラ形花冠([[ノイバラ]])
画像:Karasuno.JPG|蝶形花冠([[ヤハズエンドウ]])
ファイル:Karasuno.JPG|蝶形花冠([[ヤハズエンドウ]])
ファイル:Viola_crassa_ssp._alpicola_in_Mount_Jii_2003-08-10.jpg|スミレ形花冠(クモマスミレ)
ファイル:Viola_crassa_ssp._alpicola_in_Mount_Jii_2003-08-10.jpg|スミレ形花冠(クモマスミレ)
ファイル:Tsurifuneso 06d0142csv.jpg|有距花冠([[ツリフネソウ]])
ファイル:Tsurifuneso 06d0142csv.jpg|有距花冠([[ツリフネソウ]])
Image:Enkianthus perulatus3.jpg|壺形花冠([[ドウダンツツジ]])
ファイル:Enkianthus perulatus3.jpg|壺形花冠([[ドウダンツツジ]])
File:Primula florindae inflorescence.jpg|高坏状花冠([[サクラソウ属]]の一種)
ファイル:Primula florindae inflorescence.jpg|高坏状花冠([[サクラソウ属]]の一種)
Image:Ipomoea batatas.jpg|漏斗形花冠([[サツマイモ]])
ファイル:Ipomoea batatas.jpg|漏斗形花冠([[サツマイモ]])
Image:LiliumAuratumVVirginaleBluete2Rework.jpg|ユリ形花冠([[ヤマユリ]])
ファイル:LiliumAuratumVVirginaleBluete2Rework.jpg|ユリ形花冠([[ヤマユリ]])
Image:Bletilla striata2.jpg|ラン形花冠([[シラン (植物)|シラン]])
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Image:Calceolaria bilatata flowers.jpg|キンチャク形花冠([[カルセオラリア]]の一種)
ファイル:Calceolaria bilatata flowers.jpg|キンチャク形花冠([[カルセオラリア]]の一種)
Image:Lamium purpureum 280405.jpg|唇形花冠([[ヒメオドリコソウ]])
ファイル:Lamium purpureum 280405.jpg|唇形花冠([[ヒメオドリコソウ]])
ファイル:Ajuga decumbens2.jpg|一唇形花冠([[キランソウ]])
ファイル:Ajuga decumbens2.jpg|一唇形花冠([[キランソウ]])
ファイル:Linaria canadensis.JPG|仮面状花冠([[マツバウンラン]])
ファイル:Linaria canadensis.JPG|仮面状花冠([[マツバウンラン]])
Image:Forget-me-not closeup 2005 01.jpg|車形花冠([[ワスレナグサ]]属の一種)
ファイル:Forget-me-not closeup 2005 01.jpg|車形花冠([[ワスレナグサ]]属の一種)
Image:Campanula punctata1 flower.jpg|鐘形花冠([[ホタルブクロ]])
ファイル:Campanula punctata1 flower.jpg|鐘形花冠([[ホタルブクロ]])
ファイル:Cirsium dipsacolepis 080913.JPG|筒状花冠([[モリアザミ]])
ファイル:Cirsium dipsacolepis 080913.JPG|筒状花冠([[モリアザミ]])
ファイル:05.2010 löwenzahn 3.jpg|舌状花冠([[タンポポ]])
ファイル:05.2010 löwenzahn 3.jpg|舌状花冠([[タンポポ]])
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==参考文献==
== 脚注 ==
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*[[清水建美]] 「図説 植物用語事典」、323項、[[八坂書房]]、2001年。
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== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書
|author = [[清水建美]]
|title = 図説植物用語事典
|year = 2001
|publisher = [[八坂書房]]
|isbn = 4-89694-479-8
|page = 323項
}}

== 関連項目 ==
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<!-- {{Commonscat|Corolla}} -->
* [[花]]
* [[萼#花被]]
* [[トヨタ・カローラ]] - 花冠の[[ラテン語]]名に由来[http://toyota.jp/faq/car/yurai_02.html] {{リンク切れ|date=2012年5月}}する車名。


<!-- == 外部リンク == -->
==関連項目==
*[[トヨタ・カローラ]] - 花冠のラテン語名に由来[http://toyota.jp/faq/car/yurai_02.html]する車名。


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2012年5月10日 (木) 09:42時点における版

花冠(かかん、: corolla[1])とは、複数の花弁(かべん、: petal[1]、いわゆる「花びら」)からなる、器官のことである。花冠は花弁の集まりであるが、花として花粉媒介者の標的になるだけではなく、と同じく、雄しべ雌しべを保護する役割をもっている。

また、花被のうち、内花被も花冠である。

合弁花冠と離弁花冠

花冠は合弁花冠と離弁花冠に分けられる。合弁花冠か離弁花冠かは、によってほとんど決まっているが、例外もしばしばある。

合弁花冠
それぞれの花弁と花弁が合着して花冠をなしているもの。
離弁花冠
花弁が離れて独立している花冠。

相称性

花冠を分類するにあたり、花の相称性も重視される。花の相称性は放射相称花左右相称花非相称花があるが、花冠では放射相称花のものを放射相称花冠、左右相称花を左右相称花冠として区別する。

なお、放射相称とは中心から2本以上の対称軸が引ける形、左右相称とは左右対称の形(1本の対称軸が引ける形)ことである。

花冠の種類の例

ナデシコ形花冠
離弁・放射相称花冠。花弁は萼筒の下位にある爪部と、上位の舷部からなる。ナデシコ科に特有。
かぶと状花冠
離弁・左右相称花冠。花弁ではなく、後萼片がかぶと状になったもの。キンポウゲ科トリカブト属に存在する。
十字形花冠
離弁・放射相称花冠。4枚の花弁が一対ずつ十字形に対生する。アブラナ科に特有。
バラ形花冠
離弁・放射相称花冠。ほぼ円形で無爪あるいはごく短い5枚の花弁が水平に開く。バラ科の花冠全般をさす。
蝶形花冠
離弁・左右相称花冠。上位の旗弁1枚、中位の翼弁2枚、下位の竜骨弁2枚からなる。狭義のマメ科の花冠を指す。
スミレ形花冠
離弁・左右相称花冠。上位一対の上弁(2枚)、中位一対の側弁(2枚)、下位の唇弁(1枚)と呼ばれる距のある1個の花弁からなる。スミレ科スミレ属の花冠。
有距花冠
少なくとも一部の花弁が距をもつ花冠をいう。科としての共通性はない。キンポウゲ科オダマキ属ケシ科エンゴサク属ツリフネソウ科ツリフネソウ属に見られる。
壺形花冠
合弁・放射相称花冠。花冠の上部が壺のようにくびれ、くぶれた部分から裂片が開出する。ツツジ科カキの花冠。
高坏形花冠
合弁・放射相称花冠。平開する花冠裂片と、上下の太さが変わらない花冠筒からなる。サクラソウ科など。
漏斗形花冠
合弁・放射相称花冠。花冠筒が上部に向かって開き、円形の開出部分につながる花冠。ヒルガオ科ヒルガオ属サツマイモ属など。
ユリ形花冠
放射相称花冠。内花被3枚+外花被3枚。ユリ科の花冠。
ラン形花冠
左右相称花冠。内花被の一枚が変形して、袋状または舌状になる。ラン科植物に見られる。
キンチャク形花冠
左右相称花冠。花冠の下が袋状になる。ゴマノハグサ科カルセオラリア属の花冠。
唇形花冠
合弁・左右相称花冠。横向きで花冠裂片が上下に2深裂して唇状(上唇と下唇)になっている花冠。上唇と下唇の間の花冠筒部分を花喉とよぶ。シソ科ゴマノハグサ科にみられる。シソ科オドリコソウ属の花冠は合弁、唇状であるが、上唇がかぶと状になるので、かぶと状花冠とされることもある。
一唇形花冠
合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、上唇が発達しないもの。シソ科キランソウ属など。
仮面状花冠
合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、下唇が特に大きくせり上がって花喉をふさいで仮面状になっているもの。ゴマノハグサ科ウンラン属などに見られる。
車形花冠
合弁・放射相称花冠。花冠筒が短く、大きめの裂片が開出する。ムラサキ科ナス科アカネ科スイカズラ科などに見られる。
鐘形花冠
合弁・放射相称花冠。花冠は筒形または先端が少し膨れ、花冠長は直径の2倍以下。キキョウ科ツツジ科にみられる。
筒状花冠
合弁・放射相称花冠。花冠筒が細長く、先端に小さな裂片が開出している頭状花序中心花のことが多い。キク科タンポポ亜科を除く)に特有。
舌状花冠
合弁・左右相称花冠。花冠筒が短く、大きな非対称の弁状部が広がる。頭状花序の周辺花となっていることが多い。キク科(アザミ亜科を除く)の多くに見られる。

脚注

  1. ^ a b 文部省日本植物学会編『学術用語集 植物学編』(増訂版)丸善、1990年。ISBN 4-621-03376-Xhttp://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 

参考文献

関連項目