キランソウ

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キランソウ
Ajuga decumbens
Ajuga decumbens
東京都町田市、2006年4月29日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : 真正キク類I Euasterids I
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
亜科 : キランソウ亜科 Ajugoideae
: キランソウ属 Ajuga
: キランソウ A. decumbens
学名
Ajuga decumbens
Thunb.[1]
和名
キランソウ(金瘡小草)、ジゴクノカマノフタ
品種
  • シロバナキランソウ A. d. f. albiflora
  • ウズキランソウ A. d. f. condensata
  • モモイロキランソウ A. d. f. purpurea

キランソウ(金瘡小草、学名: Ajuga decumbens)は、シソ科キランソウ属多年草道端などに生える雑草。別名、ジゴクノカマノフタともよばれる。

名称[編集]

和名キランソウの由来は諸説あり、はっきりしない。一説には、ランに似た紫色の花を意味する「紫蘭草(しらんそう)」が転訛したものとする説[2]。また、「キ」は紫の古語、「ラン」は藍色を意味するところから、花色から紫藍色に由来するという説[3]。茎を地面に伸ばして群生する様から、織物の金襴にみたてて「金襴草」と名付けたとする説[3]などがある。

別名で、ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)という呼び名もあるが、これは根生葉が地面に張り付くように放射状に広がる様が、地獄の釜の蓋(ふた)に見立てられたもので[4][3]、さまざまな病気に対して薬草としての効能から医者がいらず、「これで地獄に落ちないで済む」[5]という意味や、「病気を治して地獄にふたをする」[6]という意味が由来だといわれている。また、医者が必要ないというところから、イシャゴロシ(医者殺し)の異名もある[3]

地方により、イシャイラズ(医者いらず)[7]、イシャナカシ(医者泣かし:愛媛県)、オドゲソウ(鹿児島県)、チチグサ(愛媛県、鹿児島県)、チリメンソウ(三重県)などの方言名でも呼ばれている[5]

漢名(中国名)では、金瘡小草という[3][8]。金瘡とは刀傷のことで、キランソウの葉を潰して傷に塗ると、切り傷や腫れ物に効用があることから名付けられたものである[3]

仲春を表す季語にもなっている[5]花言葉は、「あなたを待っています」「追憶の日々」「健康をあなたに」である[3]

形態・生態[編集]

多年生の草本で、全体に縮れた粗いが多い[7][2]。草丈は、2 - 20センチメートル (cm) で[5][2]は直立せず四方に分枝して、草全体がロゼット状に地表に這って円盤状の形になる[7]。ランナーのような花茎を出し地表を這うが、節から根を出さない[2]。シソ科では珍しく、茎の断面が丸い[8]

葉は対生、基部のものでは長さ4 - 6 cm 、幅1 - 2 cmで、倒披針形で、先端側が幅広く、基部は次第に狭くなる[7]。また葉の縁には波状の粗い鋸歯がある[8]。表面は深緑でつやがあり、裏面は紫色を帯びる[7]。株元の葉は放射状に地面についている[7]

花期は春から初夏(3 - 5月)、茎の先端近くの葉の付け根に濃紫色の小花を数個つける[7][2]。花は唇形花で、上下二つに分かれた上唇は下唇よりもごく小さい[8]。下唇は平らに大きく発達して三裂、特に中央の裂片が長くつきだし、先端は切れたようにまっすぐで、中央が切れ込んだようになって浅く二裂する。

果実分果で、一つの花の宿存萼の中に4粒でき、脱落しやすい[7][9]。分果は緑褐色をした倒卵形で丸みがあり、表面ははっきり目立つ凸凹した網目模様がつき、腹面には大きめの楕円形をした着点(へそ)がつく[9]。種子で増えるほか、株が分かれて繁殖する[7]

分布・生育環境[編集]

原産は日本在来とされ[5]、日本の本州四国九州や、朝鮮半島中国に分布する[8]

草地土手[7]丘陵地など[5]、特に背丈の低いところに生え、山里、道ばた、公園、などでよく見られる[9][2]。日当たりが良く、排水が良い土地を好む[7]

利用[編集]

開花期の全草は筋骨草(きんこつそう)という生薬である。漢方では使われない[7]高血圧鎮咳、去淡、解熱、健胃下痢止め切り傷などに効果があるとされるが、民間薬的なものである[5][7]

薬効は収斂作用があり、花期に全草を採取して茎葉についている土砂を洗い落とし、天日乾燥させたものを使うか、生でも使用される[7]。高血圧、解熱、下痢止めには、乾燥品1日量5 - 7グラムを水300 で半量になるまでとろ火で煮詰めた煎じ液を、1日3回分服する用法が知られている[7]。また、火傷切り傷、毒虫の刺傷あせもなどに、生葉汁を直接つける用法が知られている[7]

近縁種[編集]

脚注[編集]

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参考文献[編集]

  • 稲垣栄洋『残しておきたいふるさとの野草』三上修・絵、地人書館、2010年、98頁。ISBN 978-4-8052-0822-9
  • 稲垣栄洋『ワイド判 散歩が楽しくなる 雑草手帳』東京書籍、2018年5月22日、128 - 129頁。ISBN 978-4-487-81131-1
  • 稲垣栄洋監修 主婦の友社編『野に咲く花便利帳』主婦の友社、2016年11月10日、29頁。ISBN 978-4-07-418923-6
  • 大嶋敏昭『花色でひける山野草の名前がわかる辞典』成美堂出版、2005年3月20日、111頁。ISBN 4-415-02979-5
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、72頁。ISBN 978-4-09-208303-5
  • 佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 草本 2 離弁花類』平凡社、1982年。ISBN 978-4-582-53502-0
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の 種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2018年9月20日、73頁。ISBN 978-4-416-51874-8
  • 平野隆久写真『野に咲く花』林弥栄監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1982年、171頁。ISBN 4-635-07001-8
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、44頁。ISBN 4-416-49618-4

関連項目[編集]

外部リンク[編集]