ヒメオドリコソウ
| ヒメオドリコソウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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1. 花をつけた株(英国、5月) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Lamium purpureum L. (1753)[1][2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| ヒメオドリコソウ(姫踊子草[5]、姫踊り子草[6]) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| deadnettle[7], red deadnettle[7][8][9], purple deadnettle[7][8], purple archangel[7], blind nyanthogue[9] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 種内分類群 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ヒメオドリコソウ(姫踊子草、姫踊り子草、学名: Lamium purpureum)は、シソ科オドリコソウ属に分類される越年草の1種である。三角状卵円形でちりめん状の葉が対生し、上部の葉が紫紅色を帯びることが多い(図1)。花期は基本的に春であり、花は上部の葉腋に数個ずつつき、淡紅紫色、長さ1センチメートルほどの唇形花(図1)。果実は分離果で分果はエライオソームをもつ。ヨーロッパ原産であるが、北アメリカやオセアニア、東アジアにも帰化している。日本でも北海道から九州の道端や空き地などにふつうに見られる春の花である。和名の「ヒメオドリコソウ」は、オドリコソウに似ているが小さいことに由来する[5][10]。
特徴
[編集]一年草であり、基本的に越年草(冬型一年草)であるが[11][8][5][6]、夏型一年草となることもある[7][12][9][4]。根茎を欠き、短い主根をもつ[9][11](下図2a)。茎は匍匐し、基部で分枝して立ち上がり、草丈は10–30センチメートル (cm) になる[8][9][13](図1, 2a, b)。茎の断面は四角形、下向きの短毛がある[8][13][4]。茎や葉を折ると悪臭がする[10]。精油成分としては、ゲルマクレンD、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、α-ブルネセン、ノナナール、β-エレメンなどを含む[14][注 1]
葉は対生し、下部では節間(葉をつけた部分の上下の間隔)が長いが、上部では詰まっており葉が密生する[11][9][6][13](上図1, 2a, b)。下部の葉は長さ1–4 cmの長い葉柄をもつが、上部ほど葉柄は短くなり、頂端では葉柄は非常に短い[11][8][9][13][4](上図2a)。葉身は長さ1–4 cm程度の三角状卵円形、葉脈は細い網目状で表面で窪み、葉面はちりめん状にシワが入り、両面とも毛がまばらにあり、葉縁には鈍い鋸歯がある[11][8][5][6][13](上図2c)。葉はやや青みを帯びた緑色であるが、上部の葉はしばしば紅紫色に色づき(上図1, 2b)、特に日向で乾燥した場所ではこの色が濃いが、日陰では色づかないことがある[11][5][6]。
花期はふつう春(日本では2–5月)であるが[8][5]、夏から秋に開花・結実することもある[7][9]。花は上部の葉腋に数個ずつつき、ほぼ無柄[11][8][13](上図2b, 3a, b)。萼は中央付近まで深く5裂し、裂片はほぼ同形で細長く、縁には長い毛がある[11][8][5](上図3b)。花冠は淡紅紫色の唇形花冠で長さは約1 cm、外面に毛が密生し、基部は細い管状、上部では腹側に大きく膨らみ、上唇と下唇に分かれている[11][8][6](上図3a, b)。上唇は直立し、かぶと状で先端に凹みがある[11][8][6](上図3a, b)。下唇は送粉者であるハナバチ類の足場となり、3裂し、側裂片は幅広く短く、中央裂片は大きくさらに2裂し、各裂片には濃紅色の斑紋がある[11][8][6](上図3a)。まれに花冠が白い変異体が生じ、シロバナヒメオドリコソウとよばれる(下記参照)[11][13]。雄蕊は4個、上唇中へ伸びており、下側の2個の方が長く、葯は有毛、2個ずつ縦列し、半葯も上下にならんでいる[11][6](上図3a)。花粉は橙赤色[4]。花粉は三溝型[16]。雌蕊は1個、柱頭は2裂する[11]。開花せずに自家受粉する閉鎖花をつけるものもいる[4]。
果実は4個の分果からなる分離果であり、やや開出した萼で囲まれている[11][17](上図3c)。分果は長さ2–3ミリメートル (mm) 、重さ0.65–0.9 mg、左右と腹面中央に稜がある3稜形であり、濃褐色で淡色の斑紋があり、基部にはエライオソームが付随している[4][11][8][17][12](上図2a右下)。染色体数は 2n = 18[11]。
分布・生態
[編集]自生地は北アフリカ西部、ヨーロッパからロシア、コーカサス、トルコ、シリア、サウジアラビアにかけてとされる[2]。また、北米、南米、グリーンランド、東アジア、オセアニアにも帰化している[2]。日本へは明治時代に帰化し、1893年(明治26年)に松村任三によって東京駒場から初めて報告された[8][13]。その後徐々に広がり、北海道から九州でごくふつうに見られるようになった[13][18][19][注 2]。

畑、樹園、荒地、路傍、林縁、河岸など開けた場所で見られ、特に肥沃地に多く、しばしば大量に群生し、一面を覆うことがある[10][18](図4)。砂質土から粘質土まで土壌への適応性は大きい[7][18]。霜に対する耐性はある[20][12]。他の植物に対するアレロパシーを示すことがある[21]。
ハナバチ類などによって送粉されるが、自家受粉も行う[20][12][22][23][24]。
1株が約600個の分果(種子)をつけるが、条件によっては27,000個の記録もある[20][12]。種子は休眠し、休眠打破の要因は温度や光である[20][12]。種子の寿命は比較的長く、土壌中での種子損失割合は年間20–60%が報告されているが、ヨーロッパ中世の遺跡から発芽能をもつ種子が見つかった例もある[18][20][12]。果実(分果)にはエライオソームが付随しており、アリによって散布される[22]。また、土壌内に長く埋蔵されるため、土壌ごと散布されることもある[12]。おもに種子繁殖を行うが、茎の断片が不定根を生じて栄養繁殖することもある[20][12]。
さまざまなナメクジにとって好ましい餌であることが報告されている[12]。日本では、ミツボシツチカメムシがついて吸汁していることがある[22]。
人間との関わり
[編集]北米やオセアニア、日本では外来種であり、在来種や畑作物との競合、害虫や寄生菌の保持植物となることが懸念され、米国では侵略的外来種に指定されている[18][25]。冬作物や春の植え付けにおいて、害草となることがある[13][26][20]。また、ダイズシストセンチュウの冬の宿主になることがある[27]。家畜動物に対する毒性は知られていない[12]。
欧米では民間薬とされ、ハーブティーとして利用されることがあり(図5)、糖尿病、利尿、下剤、発汗、止血に有用とされる[28][29][30]。
欧米では食用として利用することがあり、サラダ、スムージー、スープ、炒め物、キャセロールとして食されることがある[29][30]。日本では一般的ではないが、おひたしや天ぷらなどに利用している例がある[31][32]。
分類
[編集]本種は、リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物、つまり最初に学名が与えられた植物の一つである[2]。種小名の purpureum は、ラテン語で「紫」を意味し、花や葉の色を示している[7]。本種は、オドリコソウ属(Lamium)のタイプ種である[4]。
種内分類群
[編集]ヒメオドリコソウには、以下の4変種が認識されていることが多い[2][9]。
表1. ヒメオドリコソウの種内分類[2]
- Lamium purpureum L. (1753)
- Lamium purpureum var. purpureum
- 茎は高さ15–30 cm。葉身は心形から卵形、鋸歯がある。ヨーロッパから西アジアに分布し、耕作地、庭、路傍、荒れ地、開けた森林などに生育する[4]。
- Lamium purpureum var. ehrenbergii (Boiss. & Reut.) Mennema (1989)
- 茎は短く、長さ5–10 cm。葉身は心形から菱形、鋸歯がある。ときに閉鎖花をつける。トルコ南西部からシリア、レバノンの標高1700–2300 m、山岳地や草原に分布する[4]。
- Lamium purpureum var. incisum (Willd.) Pers. (1806)
- 茎は高さ20–30 cm。葉身は心形から卵形、深く不規則な切れ込みがある。ヨーロッパ西部から北部を中心に北アフリカ西部、トルコからシリアに分布し、耕作地、庭、路傍、荒れ地、岩場などに生育する[4]。
- Lamium purpureum var. moluccellifolium Schumach. (1801)
- 茎は高さ10–20 cm。葉身は腎形・心形から菱形、粗い鋸歯または深い切れ込みがある。ヨーロッパ(フランス、ドイツ、イギリス、スカンジナビア半島、バルト海沿岸)に分布し、低地の耕作地、庭、路傍、荒れ地などに生育する[4]。
- Lamium purpureum var. purpureum

モミジバヒメオドリコソウ(キレハヒメオドリコソウ; 図6)はヒメオドリコソウの変種の1つ(Lamium purpureum var. hybridum)とされることもあるが[4]、近年では独立種(Lamium hybridum)とされることが多い[11][13][35]。分子系統解析から、本種はヒメオドリコソウと Lamium bifidum の異種間交雑に由来する異質倍数性の4倍体であることが示唆されている[36]。また、Lamium confertum は、ヒメオドリコソウとホトケノザ(Lamium amplexicuale)の異種間交雑に由来する異質倍数体であることが示唆されている[36][注 3]。
まれに花冠が白い変異体が生じ、シロバナヒメオドリコソウとよばれ、このような個体は葉なども紅紫色を帯びない[11][5]。品種(Lamium purpureum f. albiflorum H.Lindb. (1932))として分けることもあるが、分類学的には分けないことも多い[5][37]。
類似種
[編集]日本で見られる類似種としてはホトケノザ(Lamium amplexicaule)があり、同所的に見られることもある。葉が扇状円形で先端はとがらず鋸歯が粗いこと、花はより大型(長さ20 mm以上)で立ち上がること、萼に毛が密生すること、果時でも萼が開出しないことなどでヒメオドリコソウとは区別できる[11][5][6]。
ヨーロッパ原産のモミジバヒメオドリコソウ(キレハヒメオドリコソウ、Lamium hybridum; 図6)は、1992年に日本で初めて報告され、現在では北海道から九州で見られる[13]。本種はヒメオドリコソウに酷似するが、葉が不規則に中裂から深裂し、鋸歯が尖る点でヒメオドリコソウとは異なる[11][13][5]。また、花がやや大きく、長さ11–15 mmほどある[11][13][38]。
ギャラリー
[編集]- 花(側面観)
- 花冠上唇部拡大(4個の雄蕊が見える)
- 雌蕊先端(左)と雄蕊先端(右)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ↑ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Lamium purpureum L. ヒメオドリコソウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年8月25日閲覧。
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外部リンク
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- “ヒメオドリコソウ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2026年4月25日閲覧。
- “Lamium purpureum”. N.C. Cooperative Extension. 2026年4月28日閲覧。(英語)
- “Deadnettles”. CornellCALS. 2026年4月28日閲覧。(英語)