経済制裁
経済制裁(けいざいせいさい、economic sanctions)とは、ある国の行った違法若しくは不当な行為に対して経済の力をもって制裁を加え、その行為を制止せんとする国家レベルのボイコットである。
概要
経済制裁(ボイコット)は、対象国に国外から入手していた物資を欠乏させることによって国内的な問題が生じることを狙った外交政策の一環である。ナポレオンの大陸封鎖令、国際連盟の対イタリア制裁(1935年)などの前例がある制裁である。一般的に、経済制裁を受けた国は、経済成長が抑制されるために国力が低下する傾向がある。しかし、経済制裁は遅効性であり、また、第三国と経済関係を持つことも可能であり、
- 代替可能性が最小の商品を選んで規制すること。
- 第三国からの経済支援を阻止すること。
- 国内経済へのコストやマイナス要因に配慮すること。
- 逆に相手からもボイコットされる危険性を考慮すること。
以上の四点に注意を要する。
これらの問題を解決するために、集団的な制裁を行う場合も各国の国益の相違や抜け駆けなどによって制裁が機能しない場合、また、関係国の内部で摩擦が起こる場合も考えられるため、マーガレット・ドクシーは「経済制裁は真の目標を見失ってしまいかねない鈍い手段であり、ブーメラン効果(自国経済への反動)すら生み出しかねない手段である」と述べた。
国際連合の主要機関である国際連合安全保障理事会の決議に基づく経済制裁においては、一定の期間、当該国家の輸出入を停止する。その他、主要貿易相手国によるものや主要物資に掛かるものなどがある。この際に行われる臨検は経済制裁の一環であるものの、軍事行動としての性格をも持つ。
過去に経済制裁を受けた国
- 大日本帝国 (ABCD包囲網 1930年代後半 - 1940年代)
- 南アフリカ共和国(アパルトヘイトなど 1962年 - 1991年)
- イラン(イラン・イラク戦争時 1980年 - 1988年)
- アルゼンチン(フォークランド戦争時 1982年)
- リビア(パンナム機爆破事件関与 1992年 - 2003年9月)
最近経済制裁を受けた国
- イラク(イラン・イラク戦争、クウェート侵攻、大量破壊兵器保有疑惑 1980年 - )
- アフガニスタン(アメリカ同時多発テロ事件を起こしたアルカーイダとの関係 2001年 - )
- スーダン(ダルフール紛争での非アラブ系住民の虐殺 1996年6月 - 2001年9月)
現在でも経済制裁を受けている国
- 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、核兵器・弾道ミサイルの開発とその保有に対する2006年の国際連合安全保障理事会決議1718の採択により経済制裁を受けている。また日本が独自に行う特定船舶入港禁止法と外為法を利用した経済制裁も受けている。
- イランが、ウラン濃縮などの核兵器開発に対する2006年12月の安保理決議1737、2007年3月の決議1747、2008年3月の決議1803の採択により経済制裁を受けている。
なお、1962年から制裁継続中のキューバや、ミャンマー、ジンバブエ、ベラルーシが受けている経済制裁は、国連安保理の決議に基づくものではなく、アメリカ合衆国や欧州連合などの個別国家による独自の制裁である。オイルショックはアラブ石油輸出国機構(OAPEC)諸国によるイスラエル支持国(アメリカ合衆国やオランダなど)への制裁である。
参考文献
- 宮川眞喜雄『経済制裁』(中公新書)
- 深津栄一『国際法秩序と経済制裁』(北樹出版)
- 山本武彦『経済制裁』(日経新書)
- 池田美智子『対日経済封鎖』(日本経済新聞社)