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福岡一家4人殺害事件

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最高裁判所判例
事件名 傷害,詐欺,住居侵入,強盗,建造物侵入,窃盗,強盗殺人,死体遺棄被告事件
事件番号 平成19(あ)836
2011年(平成23年)10月20日
判例集 刑集第65巻7号999頁
裁判要旨
国際捜査共助の要請によって中華人民共和国内で作成された共犯者の供述調書が、取調べに際して、黙秘権の実質的告知がなされ、肉体的・精神的な強制がなされていなかったことを理由として、刑事訴訟法321条1項3号の書面に当たるとされた。
第一小法廷
裁判長 白木勇
陪席裁判官 宮川光治 桜井龍子 金築誠志 横田尤孝
意見
多数意見 全員一致
意見 なし
反対意見 なし
参照法条
刑訴法321条1項3号
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福岡一家4人殺害事件(ふくおかいっかよにんさつがいじけん)とは、2003年6月20日福岡市東区で起きた、中国人留学生3名による強盗殺人事件。

事件の概要

2003年6月20日に、福岡県博多湾で4人の遺体が発見された。遺体には首を絞められた跡があり、捜査の結果4人の遺体は近くに住む一家のA、Aの妻、Aの子供二人のものと判明した。 発見現場近くの目撃証言と、犯行に使われた手錠とダンベルが販売された店舗の防犯カメラの映像から3人の容疑者が割り出されることとなった。3人は一家4人をベンツに乗せて、手錠をはめて遺体を海に沈めていた。

犯行グループのうち楊寧と王亮は中国に帰国していたが、中国公安当局の協力により逮捕起訴された。一人については別件で警察に拘束されていた。

遺族のなかには共犯がいる疑いがあるとして捜査に納得していない人もおり、再捜査を求めている。[1]

裁判経過

楊寧被告人は1審で死刑判決を受け、控訴棄却を経て2005年7月12日に死刑執行された。一方、王亮被告人は遼寧省遼陽市人民検察院により無期懲役が確定した。 日本で逮捕起訴された魏巍被告人は1審の福岡地裁で事実を認めた後、ほぼ黙秘を通し、死刑判決を受けた。2審では、一転して動機や犯行過程、3人の役割、遺族への謝罪などを詳細に証言したが、控訴は棄却された。上告したが2011年10月20日最高裁第1小法廷白木勇裁判長)は上告を棄却して死刑が確定した[2]

2016年現在、魏巍は福岡拘置所収監されている。

日中の捜査共助と問題点

同事件は主犯格2人が中国に逃亡したため、中国との捜査共助が最大の焦点となった。結果的には日本国内の反響の大きさに配慮した中国当局が積極的に協力したため、早期逮捕が実現したが、一方で他の事件では日中間の捜査協力がほとんどなされていない実態や、アメリカ韓国以外と犯罪人引渡し条約が結ばれていない現状も指摘され、国際化する犯罪に各国捜査当局の対応が遅れている点が浮き彫りとなった。

また、福岡地裁で行われた魏巍被告人の公判では、中国公安当局が作成した王亮、楊寧両被告人の供述調書が日本の裁判で初めて証拠採用された。これまで日本の刑事裁判では、海外の捜査当局が作成した調書は「証拠能力なし」とされることが多かったため、この判断は「国際犯罪の捜査に道を開く」と評価されたが、黙秘権が存在しない中国の調書を問題視する意見もあり、議論を呼んだ。

報道と名誉毀損

  • 事件当初には被害者家族及び親族の私生活を中傷する報道があり、中傷された関係者がマスメディア数社に対し名誉毀損の民事訴訟を起こした結果、遺族側が勝訴し、その賠償額が過去の例と比較して高額になっている点が話題になった。
  • 2005年7月27日東京地裁は、「フライデー」(講談社)に対して880万円の損害賠償の支払いを命じた。(遺族側の勝訴確定)
  • 2005年8月29日、東京地裁は、「週刊新潮」(新潮社)に対して330万円の支払いを命じた。新潮側は控訴したものの、2006年2月に行われた東京高裁の判決で、親族の事業にも影響を来したとして、賠償額を770万円に倍増させる異例の判決が下された。その後も新潮側は争う姿勢を見せたが、2006年8月に最高裁は上告を棄却、高裁の判決が確定した。
  • 2006年9月28日、東京地裁は、「週刊文春」(文藝春秋)に、1100万円の支払いを命じた。

脚注

関連項目

外部リンク