成金
成金(なりきん)
由来
成金(成り金・なりきん)は将棋に由来する言葉である。
王将・金将以外の駒が敵陣(1段目〜3段目)を進入させるとき、その駒が「成る」ことを選択できる(詳細は将棋 を参照)。特に、歩兵、香車、桂馬、銀将が成った場合は、以降、金将と同じ動きとなる。駒が成ったことを明らかにするため、その駒を裏返すが、この4種の駒の裏側に書かれている文字はすべて「金」(を崩した文字)であり、たとえば歩の裏側の字はひらがなの「と」に見えるが、これも「金」の字を崩したものである(この「と」に見える文字は「今」の崩し字という説もある)。歩兵・香車・桂馬・銀将が成ったものを、それぞれ「と金」(ときん)・「成香」(なりきょう)、「成桂」(なりけい)、「成銀」(なりぎん)と呼ぶ。これらの金将と同じ動きができるようになった駒、特にと金を俗に「成金」ということがあるが、金将は成ることはできず、金将の裏には何も書かれていないので、「成金」という言葉は正式な将棋用語ではない。
一般的用法
上記の意味より転じて、(1)社会変動の最中で急激に裕になった階層(すなわちニューリッチ)や、(2)庶民や貧困層が、急に莫大な金銭や財産を持つ富裕層に変化する現象(すなわち成り上がり者、アップスタート)を指す。この意味での用法は江戸時代後期に始まったようであるが、明治維新後には、第一次世界大戦による大戦バブル景気によって、急に富裕層に転じた者を指して使うようになり、一般に広まった。だが、これらには世界恐慌のときに没落した者が多い。
一方で、最近では、額に汗して苦労して作り上げた事業や技術が成功して裕福になった者や高給取りの仕事の従業者、いわゆる勝ち組もやっかみや侮蔑を込めて一絡げに成金と呼ばれることもあり、その正当な事業や経済活動に対して正当な評価がされない時もままある。
金持ちになったきっかけを頭につけて、炭鉱成金、船成金、土地成金、石油成金、事故成金、宝くじ成金、戦争成金などと呼ぶこともあり、建てた家を同様に鰊御殿、小豆御殿などとも言う。
元来「成金」の語は、庶民や貧困層から富裕層に転じた人への賞賛の語として用いられていた。しかし戦後混乱期に俄かに財をなして富裕層となった者への反感が一般に強かったことから、現在では、その当人以外が発する場合は、にわかに富裕層になった者への皮肉や非難や侮蔑のニュアンスで用いられるのが通例である。金にものを言わせて傲慢で態度が悪い人を指して「成金」などと皮肉・侮蔑的に呼ぶ場合などである。また、「成金趣味」という言い方もあり、金銭にあかして派手、高尚な趣味を理解していないのにそれを真似ようとして失敗している、趣味が悪いといった否定的な意味に使われる言葉である。暗闇の中で靴を探そうとする女中に対して、紙幣を燃やして灯りを取る成金の風刺画が知られ、山本唯三郎が函館の料亭でその行為を行ったと伝えられている。だが、実際にそうした富裕層が全員そういう金に飽かした生活であったことは決してなく、そのイメージの多くが庶民の羨望心や劣等感の裏返しである。
当人が自らのライフスタイルをそう呼称する場合は感慨や謙遜が入り交じった感情が含まれることが多い。
また、現代においては「ブルジョワ」や「セレブ」(セレブリティ)という語に、この「成金」の語意を含めている場合がある。この傾向に対し、評論家の宮崎哲弥は、「『セレブ』は誤用であり、『成金』ときちんと言うべきである」と述べている。
英語では「new rich」と言うが、英語圏においてもフランス語を使って「nouveau riche」(ニュービュー・リーシュ)と表現する事が多い。
アメリカでは、旧来のブルジョア階層に対して、現在のニューヨークやロサンゼルス、シリコンバレーで成功した企業家やそこで働くエリートビジネスマンを指すことが多い。思想的にはリベラルが多く、平等なスタートラインをつくれる福祉政策を支援している。しかし、もともとのブルジョア階層の保守派から一方的に敵視されている。とくにオバマ政権を支持したニューリッチに対して、オバマの国民皆保険制度を嫌う旧来のブルジョア(ティーパーティやネオコン)が敵視している。[要検証 ]
映画
2つの映画の日本語タイトルである。
- 『成金』 : 監督栗原喜三郎、主演中島岩五郎、製作 大活、1921年
- 『成金』 : 監督リヒャルト・アイヒベルク、主演ヴェルナー・クラウス、製作 ウェスティ、1923年
関連項目
- 内田信也(船成金で政治家)
- 勝田銀次郎(船成金で政治家)
- 山下亀三郎(船成金)
- 山本唯三郎(船成金で破天荒な放蕩を行う)
- 和田邦坊(成金を風刺した漫画家)
- 成金饅頭 - 福岡県直方市の菓子。豆相場で儲けようとして失敗、その豆を使って作った饅頭。
- バブル経済
- 金持ち
- 大戦景気
- 破産