天国にいちばん近い島

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天国にいちばん近い島』(てんごくにいちばんちかいしま)は、森村桂旅行記1966年に出版された。

概要

子供の頃、亡き父(作家の豊田三郎)が語った、花が咲き乱れ果実がたわわに実る夢の島、神様にいつでも逢える島。働かなくてもいいし、猛獣や虫もいない…そんな天国にいちばん近い島が地球の遥か南にあるという。それが、きっとニューカレドニアだと思い、ニューカレドニアへ行くことを心に誓う。死んでしまった父に、また会えるかも知れない…そう信じて。母が寂しがっていると言えば、心地よいその島暮らしを捨ててでも戻ろうと思ってくれるに違いない。そして、神様の目をぬすんで、父を連れて帰ればいい! そう信じて出発した旅行の顛末。

まだ海外旅行自体が自由にできなかった頃ゆえの苦労、夢と現実のギャップ、現地の人達との交流などの体験が書かれる。

テレビドラマ

1968年NHK朝の連続テレビ小説」の第8作『あしたこそ』としてテレビドラマ化された(『違っているかしら』からも一部原作を引用)。主演は藤田弓子

映画

天国にいちばん近い島
監督 大林宣彦
脚本 剣持亘
原作 森村桂
製作 角川春樹
出演者 原田知世
高柳良一
峰岸徹
音楽 朝川朋之
主題歌 原田知世
天国にいちばん近い島
撮影 阪本善尚
編集 大林宣彦
配給 東映
公開 日本の旗 1984年12月15日
上映時間 102分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 15億5000万円[1]
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角川映画において原田知世が主演した3作目。デビュー作『時をかける少女』と同じく大林宣彦がメガホンを取った。同時上映は薬師丸ひろ子主演『Wの悲劇』。配給収入は15億5千万円。原田が歌う同名主題歌『天国にいちばん近い島』はオリコンチャート週間1位を記録した。

ストーリー

桂木万里は、急死した父・次郎の葬儀を終え、車の中で父が話していた「天国にいちばん近い島」のことを思い出していた。万里は元来、無口でおとなしい性格の女の子だった。父・次郎が時折話すニューカレドニアのことが唯一、万里の心をときめかせていた。万里は葬儀の後、母・光子にニューカレドニアに行きたいと話す。光子は無口でおとなしい性格の万里が初めて自分で何かをしようとしていることを認める。

冬休みのツアーに参加して島に着いた彼女は、一人自転車でヌメアの街に出て、景色を見て回るが、何か違うように思えた。日系三世の青年・タロウと出会い、名も聞かずに別れた。ふとしたことで、中年男の偽ガイド・深谷有一と知り合い、彼のガイドを受けることになった。彼女から「天国にいちばん近い島」の話を聞いた深谷はイル・デ・パン島に連れて行くが、違っていた。深谷は「太陽が沈む時に緑色の光が見えると幸福が訪れるという[注 1]。君にぜひ見て欲しいんだ。20年前に見えたと言った人がいた。あの人は他の誰にも似ていないんだ」という。

万里は、タロウを探しに市場に出かけて見つける。今度はタロウに教えられたウベア島へ、一人船に乗って出かける。万里はウベアで、島の人達の歓迎を受けるが、ここもまた違っていた。海辺を歩いていた彼女は、エイを踏んで倒れショックで熱を出す。そのため、ツアーの帰りの飛行機に乗り遅れてしまい、ホテルを追い出され、ヨットで一晩明かそうとしているところを警察に保護された。身元引受人としてタロウが迎えに来て、万里は次の飛行機が飛ぶまで、タロウの家にいることになった。ある日、祖父・タイチから観光客を好きになるなと忠告されたタロウは、もうすぐウベアに行かなくてはならないからと、ヌメアのホテルに彼女の部屋を取ったと告げる。万里は自分に嫌気がさし、ドラム缶の風呂の中で泣く。

次の日、エッセイスト・村田圭子と戦争未亡人・石川貞が訪れた。貞の夫が死んだ海を一緒に見に行った万里は貞から人を好きになることへの誇りを教えられる。貞たちのいるホテルに移り、そこで深谷と会う。深谷と圭子はかつての恋人であった。二人は万里の言葉で、20年ぶりに愛を確かめ合った。その夜、万里は荷物の中からタロウの手紙とお金の入った袋を見つける。手紙には「このお金で日本に帰って下さい」とあった。「我がままを言っても、言い過ぎるほど人生は長くはないわ」という貞にお金を借りた万里は、タロウのいるウベアに飛んだ。タロウは子供たちに紙芝居を見せていた。万里は、彼にお金を返し、私にも見せてほしいと言う。二人は、紙芝居が終わった後、「私の天国にいちばん近い島を見つけた。それは眼の前にあります」「僕もニッポンを見つけた。それは万里さんです」と告げ合った。日本に帰国した万里は明るい女の子と変貌していた。

海外ロケ

本作はほぼ全編が南太平洋の楽園、ニューカレドニアで撮影された。ニューカレドニアは日本からは非常に遠く、当時はまだ馴染みのない国であったが、この映画のおかげでブームをひきおこし、日本人観光客が増え、ロケが行われたウベア島には、島内に唯一のリゾートホテル「パラディ・ド・ウベア」ができたという[2]

その一方、映画の撮影が行われた翌1985年より、フランス植民地支配に対する独立運動が激化した。撮影当時1984年夏の時点でも既に危険な雰囲気があったという[3]。しかし大林はあえてニューカレドニアの美しい自然をそのまま撮り、映画を観た人が「なんて素晴らしい国なんだろう」と思い、同時に新聞で流血の独立運動が起きていることを知るという作品にしたいと考えた[3]。このため「政治」や「社会」は何も描いておらず酷評された[3]

なお、リゾートツアー団体客を演じるエキストラの中には、原田のファンだった漫画家のとり・みきメカニックデザイナー出渕裕河森正治らが参加している[4][注 2]。とりは作中で重要な小道具となるタロウの紙芝居を描いている。

出演

スタッフ

作品の評価

評論家レビュー

  • 週刊平凡』1984年11月30日号「五ツ星採点表」、白井佳夫「大林監督はATG風の映画もアイドル映画もSF風映画も、じつに器用に何でも作っちゃう人ですねえ。(7点/10点満点)」、藤枝勉「大林監督は手抜きで作ったとしか思えない愚作。ニューカレドニアの風光もほうぼうで見聞ずみで目玉にならず。(4点/10点満点)」、渡辺祥子「平凡な少女のよさが美しく澄みきった海と空の中でうまく生かされていて、いい感じでした。(7点/10点満点)」[6]

受賞歴

映像ソフト

  • 角川ヒロイン第二選集(3枚組 DVD-BOX)(2001年3月23日、角川エンタテインメント、KABD-116) - 『ねらわれた学園』、『天国にいちばん近い島』、『晴れ、ときどき殺人』をセットにしたDVD-BOX。
  • 天国にいちばん近い島(DVD)(2001年3月23日、角川エンタテインメント、KABD-118)
  • 原田知世ベスト・セレクションBOX(3枚組 DVD-BOX)(2003年3月21日、角川エンタテインメント、KABD-530) - 『時をかける少女』、『天国にいちばん近い島』、『早春物語』をセットにしたDVD-BOX。
  • 天国にいちばん近い島 デジタル・リマスター版(DVD)(2011年6月24日、角川映画、DABA-0810)
  • 天国にいちばん近い島 ブルーレイ(Blu-ray Disc)(2012年9月28日[7]、角川映画、DAXA-4266)
  • 天国にいちばん近い島 角川映画 THE BEST(DVD)(2016年1月29日[8]KADOKAWA、DABA-91126)

脚注

  1. ^ 1985年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  2. ^ “天国にいちばん近い島キャンペーン”. ニューカレドニア観光局. オリジナルの2014年1月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140108033117/http://newcaledonia.jp/promotion/tengoku/ 2015年1月2日閲覧。 天国にいちばん近い島キャンペーン - Archived 2014年1月8日, at the Wayback Machine.、天国に一番近い島ニューカレドニアへ行きたい | マイナビニュースニューカレドニアのウベア島は まさに「天国にいちばん近い島」、「世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?」(フジテレビ)2014年8月6日放送、世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?|2014/08/06
  3. ^ a b c 中川右介「第四章 『復活の日』へ-一九七九年から八〇年」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』角川マガジンズ、2014年、223-228頁。ISBN 4-047-31905-8 
  4. ^ とり・みき (2013年11月28日). “時をかけた少女”. 日経ビジネスオンライン. 2016年12月25日閲覧。
  5. ^ 筑摩書房 文庫版
  6. ^ 「五ツ星採点表」『週刊平凡』1984年11月30日号、平凡出版、122-123頁。 
  7. ^ 「戦国自衛隊」や「七日間戦争」など角川映画20本BD化 - AV Watch” (2012年7月6日). 2016年8月13日閲覧。
  8. ^ 角川映画40周年記念、「犬神家」「セーラー服」など30タイトルの廉価版DVD発売 - 映画ナタリー” (2016年1月28日). 2016年8月13日閲覧。

注釈

  1. ^ この話はエリック・ロメール監督のフランス映画緑の光線』(1986年)や2007年の日本映画『恋するマドリ』にも出てくる。
  2. ^ 道中の模様はとりのエッセイ『とりの眼ひとの眼[5]』に詳しい。

関連項目

外部リンク