吸血鬼ドラキュラ
『吸血鬼ドラキュラ』(きゅうけつきドラキュラ、原題:Dracula )は、ブラム・ストーカーのゴシック小説、ホラー小説。1897年5月26日に刊行された。
第一版のカバー | |
著者 | ブラム・ストーカー |
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国 | イギリス |
言語 | 英語 |
ジャンル | ホラー小説, ゴシック小説 |
出版社 | Archibald Constable and Company (UK) |
出版日 | 1897年5月26日 |
OCLC | 1447002 |
あらすじ
新たな獲物を求めて密かにイギリスに侵入したドラキュラ伯爵に対して、その存在に気づき、これを退治しようとするヴァン・ヘルシング教授とその仲間たちの戦いを描く。
背景
ドラキュラのモデルであるとされるヴラド・ツェペシュは統制のために見せしめとして裏切りを行った貴族階級の家臣を、本来は平民への刑罰であり貴族階級には行われない串刺し刑を行った事から、「串刺し公」と呼ばれた領主ではあった。しかし、当時の社会情勢を考えれば、ヴラド・ツェペシュが他の領主と比べて格別に残忍だったということでもない。ヴラド・ツェペシュに関して吸血鬼に類する記録や伝説、伝承は皆無である。
ドラキュラはルーマニアの出身であるが、小説「ドラキュラ」がルーマニア語に初めて翻訳されたのは1989年のルーマニア革命によって共産主義政権が終わった後の1990年であり、それまでストーカーの原作小説はルーマニアでは発禁書であった。このためルーマニアでは吸血鬼としてのドラキュラの知名度は著しく低かったと推測できる。ヴラド家の居城があったトランシルバニアの地元でも、吸血鬼伝説はない。
ドラキュラのモデルがヴラドとされていることについては、地元では観光に利用できることを喜ぶ反面、郷土の英雄を怪物扱いすることに対して複雑な気持ちを抱いている。
小説の舞台背景は1885年で、小説が書かれた時代の現代劇であり、当時の価値観からして近代科学技術を織り交ぜながらよりモダンに書かれている。物語は3人称で語られ、全て日記や手紙、電報、新聞記事、蝋管式蓄音機などによる記述で構成されている。各々の記述者や叙述者の発言によって、徐々にドラキュラの企みが浮上していく構成となっている。
登場人物
- ドラキュラ伯爵
- トランシルヴァニアはカルパチア山脈に居を構える吸血鬼。
- 彼がロンドンのカーファックス屋敷を買いたい、とホーキンズに依頼したことから物語が始まる。
- ジョナサン・ハーカー
- ホーキンズの代理としてカーファックス屋敷の買い入れを依頼された新人事務弁護士。
- ドラキュラ城に囚われるも脱出。しかしその恐怖体験から寝込んでしまう。
- ウィルヘルミナ・“ミナ”・ハーカー
- ジョナサン・ハーカーの婚約者。旧姓マリー。
- 物語後半で伯爵に襲われるも、それを逆手にとり逆に伯爵を追い詰める。
- ルーシー・ウェステンラ
- ウィットビーで心臓の弱い母親と住んでいる女性。ミナの友人。
- 夢遊病であり、それが元で伯爵に吸血されてしまう。
- エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授
- ジャック・セワードの恩師。ルーシーの治療を頼まれたアムステルダム大学名誉教授。
- ルーシーの衰弱が吸血鬼の仕業だといち早く気づき、対策を練る。
- アーサー・ホルムウッド(ゴダルミング卿)
- ルーシーの婚約者の男爵。セワード、モリスとは親友。
- ジャック・セワード
- カーファックス屋敷の近所の精神病院の院長。ルーシーの求婚者の一人。
- ルーシーの病変に恩師ヴァン・ヘルシング教授の助けを求める。
- キンシー・モリス
- 北米テキサス州の大地主。ルーシーの求婚者の一人。
- レンフィールド
- セワードが院長を務める精神病院の患者。蝿、蜘蛛、鳥などを食べ、その命を奪うという独自の観念を持つ。
- ドラキュラの花嫁たち
- ドラキュラ城においてハーカーに迫る三人の女吸血鬼。
- 二人は浅黒く、一人は色白で金髪、いずれも美しく官能的な容貌をしている。
翻訳
- 『魔人ドラキュラ』平井呈一訳(抄訳)1956年 東京創元社 世界大ロマン全集 3、後に東京創元新社により文庫化、改題『吸血鬼ドラキュラ』1963年 創元推理文庫
- 『吸血鬼ドラキュラ』川崎淳之助・師岡尚・水口志計夫 共訳(抄訳) 1958年 表現社、映画(1958年)公開に合わせての出版
- 『吸血鬼ドラキュラ』平井呈一訳(完訳)1971年 創元推理文庫 ISBN 978-4488502010
- 『ドラキュラ【完訳詳注版】』新妻昭彦・丹治愛訳/注釈 2000年 株式会社水声社 ISBN 4-89176-420-1 短編『ドラキュラの客』も収録
- 『吸血鬼ドラキュラ』田内志文訳 2014年 角川文庫 ISBN 978-4041014424
リライト等
- 『吸血鬼ドラキュラ』紀田順一郎・新田正明 共訳 中学生以上向 1989年 第三文明社/21C文庫;6 ISBN 978-4476116069
- 『吸血鬼ドラキュラ』菊地秀行著 2004年 講談社文庫 ISBN 978-4062748742
- 『新訳 吸血鬼ドラキュラ 女吸血鬼カーミラ』長井那智子 訳・碧風羽 絵 小学生以上向 2014年 集英社みらい文庫 ISBN 978-4083211973
映画
- 魔人ドラキュラ(Dracula、1931年)
- 女ドラキュラ(Dracula's Daughter、1936年)
- 夜の悪魔(英文版) (1943年)
- 吸血鬼ドラキュラ (1958年)(Dracula、1958年)
- 吸血鬼ドラキュラの花嫁 (The Brides of Dracula、1960年)
- 凶人ドラキュラ (Dracula:Prince of Drakness, Disciple of Dracula, Revenge of Dracula、1966年)
- 帰って来たドラキュラ(英文版) (Dracula Has Risen from the Grave、1968年)
- ドラキュラ血の味(英文版) (Taste the Blood of Dracula、1970年)
- ドラキュラ復活・血のエクソシズム(英文版) (Scars of Dracula、1970年)
- ドラキュラ(英文版) (Dracula、1979年)
- ドラキュラ(Bram Stoker's Dracula、1992年)
翻案映画
- 吸血鬼ノスフェラトゥ(Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens、1922年)
- 幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形(1970年、邦画、英題 VAMPIRE DOLL)
- 呪いの館 血を吸う眼(1971年、邦画、英題 LAKE OF DRACULA)
- ドラキュラ'72 (Dracula A.D.1972、1972年)
- 吸血鬼ブラキュラ(英語版)( Blacula、1972年)
- 新ドラキュラ/悪魔の儀式 (The Satanic Rites of Dracula、1973年)
- 吸血鬼ブラキュラの復活(英語版)(Scream Blacula Scream、1973年)
- 血を吸う薔薇(1974年、邦画、英題 EVIL OF DRACULA)
- 処女の生血 (Blood for Dracula、1974年)
- 吸血鬼ドラキュラ二世(英語版) (Son of Dracula、1974年、劇場未公開)
- ドラゴンVS.7人の吸血鬼 (The Legend of the 7 Golden Vampires、1974年)
- ノスフェラトゥ (Nosferatu: Phantom der Nacht、1974年)
- レスリー・ニールセンのドラキュラ(Dracula: Dead and Loving It、1995年)
- シャドウ・オブ・ヴァンパイア(Shadow of the Vampire、2000年)
- ヴァン・ヘルシング(Van Helsing、2004年)
- ドラキュラZERO(Dracula Untold、2014年)